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二章 誇れる自分である為に

14 夜の山にて

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 その後、具体的にどんな事を叩き込もうとしてくれているのかはその場では教えてくれず、ただ指定した時間に指定した場所まで来いとだけを告げられた。

 平日日中はお互い時間が取れないからっていう理由で指定された時間は夜。
 夜の……山の中。

「なんでこんな山の中なんだろうな」

「学園の敷地内だと、色々許可取り大変なんじゃないかい? それに先生はボク達を特別贔屓してくれてる感じみたいだから……表だってやりにくいとか」

「それでこの山の中って事か。周囲に人もいねえし、絶好の場所といえばそうかも」

「しっかし……ほんと、なんで此処までやってくれるんだろうな」

 やろうとしてくれている事は完全に業務外で。夜なら時間を取れるみたいな話をしてたけど、夜って普通に考えてプライベートな時間な訳で、そういう時間を割いてくれている。

 ……ありがたいけど、まあ意味が分からない。

「そういうの聞いても、それっぽい事を言われるだけだからね。本当にそう思ってくれているのか、それとも他に何かあるのか……まあなんにせよあの先生がボクらを助けてくれているのは揺るがない事実だ。あまり変な事を邪推するのも失礼な気がするよ」

「そうなんだよな……それは本当にそうなんだよ」

 だからこそ俺達はありがたく此処に足を運んできている。

「ていうかアイリスも悪いな、付き合って貰って」

 術式の入れ替えにはアイリスが必要になってくるし、更に言えば俺達は二人で出場する訳で、アイリスも呼ばれているけど……夜遅くにこんな所に付き合わせて悪いなって思う。

「ボクの事は気にしないでくれ」

「……そっか」

 ありがとな、ほんといつも。

「とりあえず足元気を付けろよ」

「うん」

 夜の森の中だ。当然、無茶苦茶暗い。
 一応アイリスが手に光を灯して足元を照らしているけど、それでも結構危ない。
 というか何気なくそんな事やってるけど、これも俺がコピーしている術式とはまた別で、少ない魔力で魔術を行使するっていう超技術の賜物なんだよな。
 マジで天才。

 ……で、改めてアイリスからコピーした強化魔術の凄さに気付いた。
 暗いがそれでもハッキリ見える。
 視界良好。

 普通はそういう魔術を別に使わないといけないのに、この強化魔術はオプションで付けておきましたとでも言わんばかりに、暗闇での視界が確保されている。
 マジですげえ。
 とまあそんな感じでしばらく歩いていると。

「お、来たな。約束の時間10分前。良い心掛けだ」

 暗闇の開けた場所。こんな時間にはまず人が寄り付かない、山の中の自然公園でジャージ姿のブルーノ先生が立っていた。
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