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二章 誇れる自分である為に
11 突破口
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アイリスの家でケーキとカレーをご馳走になった日の翌日の放課後。
「た、確かに……とんでもないピンチじゃないですか俺」
「そう。お前今とんでもねえピンチなんだよ。首の皮一枚繋がってるだけなんだぜ?」
「そ、そうなりますよね……うわぁ、マジか……」
ブルーノ先生に呼び出され、ブルーノ先生の研究室に呼び出された俺は、とんでもない事実を指摘された。
どうやら俺はまだ退学の危機に瀕しているようだ。
言われてみれば理由は納得で、この前の追試もその場凌ぎにしかなっていないという現実は自然と頭に入って来た。
……でも、だからといってどうするべきなのかはすぐに浮かんでこないけど。
だけどブルーノ先生には見えているようで。
「で、そんなお前に提案があるんだが」
「提案?」
特に焦る表情とかを見せずに提案してくる。
「魔戦競技祭。コイツで大活躍して実績貰っちまおう」
言われて思わず目を見開いた。確かに名案だ。もしそれができれば、アイリスが魔術の論文で追試を突破したように、俺もなんとか追試を逃れる事ができるかもしれない。
……いや、まあ追試の時と同じでアイリスの力に頼る事になっちまうんだけど。
それも今度は、アイリスの為じゃなく100パーセント自分の為に。
「……気が乗らないか?」
「いえ、大丈夫です……やります」
色々と俺の中で引っ掛かる事は当然ある。
追試と違って相手はあのハゲじゃなく他の学生だ。
皆が皆、自分が積み上げてきたのを此処で出す。
そこに人の力を携えて出ていくというのは、まあ……あんまり気が進まねえよな。
とはいえじゃあ出ません、そういう事をやる位なら大人しく次に追試を受けなくちゃならなくなったら大人しく退学します、みたいなストイックな考え方はできなくて。
何よりこの状況でそんな楽観的な事を考えたり……そもそもこんな事で悩んだりしている事自体が、アイリスに心配を掛ける事に繋がるわけで、それは駄目だ。
例えアイリスに言って貰えた事が俺の中でメッキが剥がれるように消えてしまっても。
アイリスが俺にそういう事を言ってくれた事に対する気持ちは消えないんだから。
アイリスの気持ちは裏切りたくない。アイリスの前位では、強い自分で居たい。
その為にもこんな所で退学になる訳にはいかない。
だからこの突破口は遠慮しながらも進ませて貰う……多少心は痛むけど。
……でもちょっと待て。
「あの……すんません。すげえ良い感じの提案をしてもらったのに悪いんですけど……個人戦の予選、確かもう終わってますよ?」
今年は順当に三年生で枠が埋まった。
二年生が……兄貴が、結構惜しい所までいったみたいだけど駄目だったらしい……どうでもいいけど。
「ああ、個人戦はな……でも団体戦が残ってるだろ?」
「いや、残ってますけどその……お恥ずかしい話ですけど、頭数集められませんよ俺」
「そんなお前に朗報。ルール上は上限五人でチームを組むって感じだから、極論言えば一人でも出られるんだよな」
そうか。
当たり前のように5人チームしか話を聞かないから、先入観でそうじゃないと駄目だって思ってた。
いけるんだ……だったら、決まりだ。
「そういう事なら……俺一人でも出られますね」
マジで誰も誘える奴がいないからな……一人で頑張るしかない。
……いや、実質二人か。俺の手にあるのはアイリスの魔術だからな。
「一人、ね。一応アイリスを誘うっていう選択肢もあるんじゃないのか?」
「いやいやいや、無いです無いです。先生も知ってると思うんですけど普通に危ないんですよあれ。殺すのルール違反なんで死ぬような事は無いと思うんですけど……それでも危ないし。そんな事にアイリスを巻き込む訳にはいかないです。力貰ってるだけで十分すぎる位支援して貰ってますし、そういう変な負担まで掛けてられない」
「変な負担……ね。まあ良いか」
そう言ってブルーノ先生は書類を手渡してくる。
「これが構内予選参加の申請書な。これ書いて俺んとこ持ってこい」
「分かりました……でもこういうのって基本担任に提出する者じゃないんですか?」
「基本はそうだが……あのハゲがまともに通すとは思えない。別に俺に提出するのもルール違反って訳じゃねえんだ。遠慮せずに持ってこいよ」
「……なんか何から何までありがとうございます」
「気にすんな。教師なんていくらでも利用してけ!」
「は、はい!」
ほんと良い先生だ。
アイリスになら分かるけど、何故俺まで贔屓され続けてるんだろう。
あの時助けてもらったので十分で、そこから先、肩を持ち続ける理由なんて無い筈なのに。
でも、本当に助かるし……マジで感謝だ。
多分というか間違いなく、ハゲはこういう抜け道みたいな事を教えてはくれないだろうから。
率先して俺を退学に追い込もうとしてきそうだから。この人には頭が上がらないな。
「ああ、そうそう。この事アイリスには相談しとけよ」
「え、いや、アイリスとは組まないですよ?」
「そうじゃない。アイツの頭ん中にはすげえ魔術が色々あるんだ。これからやる事に合わせて手札組んどけって話」
「ああなるほど」
……確かにそれなら相談しといた方が良いな。
ほんと、色々な人に助けて貰ってばっかりだ。
だから認められたいとか、そういうどうしようもない位膨れ上がってくる承認欲求とかは別としてさ。
助けてくれる人の為にも……勝たないとな。
行ける所まで行くんだ。
「た、確かに……とんでもないピンチじゃないですか俺」
「そう。お前今とんでもねえピンチなんだよ。首の皮一枚繋がってるだけなんだぜ?」
「そ、そうなりますよね……うわぁ、マジか……」
ブルーノ先生に呼び出され、ブルーノ先生の研究室に呼び出された俺は、とんでもない事実を指摘された。
どうやら俺はまだ退学の危機に瀕しているようだ。
言われてみれば理由は納得で、この前の追試もその場凌ぎにしかなっていないという現実は自然と頭に入って来た。
……でも、だからといってどうするべきなのかはすぐに浮かんでこないけど。
だけどブルーノ先生には見えているようで。
「で、そんなお前に提案があるんだが」
「提案?」
特に焦る表情とかを見せずに提案してくる。
「魔戦競技祭。コイツで大活躍して実績貰っちまおう」
言われて思わず目を見開いた。確かに名案だ。もしそれができれば、アイリスが魔術の論文で追試を突破したように、俺もなんとか追試を逃れる事ができるかもしれない。
……いや、まあ追試の時と同じでアイリスの力に頼る事になっちまうんだけど。
それも今度は、アイリスの為じゃなく100パーセント自分の為に。
「……気が乗らないか?」
「いえ、大丈夫です……やります」
色々と俺の中で引っ掛かる事は当然ある。
追試と違って相手はあのハゲじゃなく他の学生だ。
皆が皆、自分が積み上げてきたのを此処で出す。
そこに人の力を携えて出ていくというのは、まあ……あんまり気が進まねえよな。
とはいえじゃあ出ません、そういう事をやる位なら大人しく次に追試を受けなくちゃならなくなったら大人しく退学します、みたいなストイックな考え方はできなくて。
何よりこの状況でそんな楽観的な事を考えたり……そもそもこんな事で悩んだりしている事自体が、アイリスに心配を掛ける事に繋がるわけで、それは駄目だ。
例えアイリスに言って貰えた事が俺の中でメッキが剥がれるように消えてしまっても。
アイリスが俺にそういう事を言ってくれた事に対する気持ちは消えないんだから。
アイリスの気持ちは裏切りたくない。アイリスの前位では、強い自分で居たい。
その為にもこんな所で退学になる訳にはいかない。
だからこの突破口は遠慮しながらも進ませて貰う……多少心は痛むけど。
……でもちょっと待て。
「あの……すんません。すげえ良い感じの提案をしてもらったのに悪いんですけど……個人戦の予選、確かもう終わってますよ?」
今年は順当に三年生で枠が埋まった。
二年生が……兄貴が、結構惜しい所までいったみたいだけど駄目だったらしい……どうでもいいけど。
「ああ、個人戦はな……でも団体戦が残ってるだろ?」
「いや、残ってますけどその……お恥ずかしい話ですけど、頭数集められませんよ俺」
「そんなお前に朗報。ルール上は上限五人でチームを組むって感じだから、極論言えば一人でも出られるんだよな」
そうか。
当たり前のように5人チームしか話を聞かないから、先入観でそうじゃないと駄目だって思ってた。
いけるんだ……だったら、決まりだ。
「そういう事なら……俺一人でも出られますね」
マジで誰も誘える奴がいないからな……一人で頑張るしかない。
……いや、実質二人か。俺の手にあるのはアイリスの魔術だからな。
「一人、ね。一応アイリスを誘うっていう選択肢もあるんじゃないのか?」
「いやいやいや、無いです無いです。先生も知ってると思うんですけど普通に危ないんですよあれ。殺すのルール違反なんで死ぬような事は無いと思うんですけど……それでも危ないし。そんな事にアイリスを巻き込む訳にはいかないです。力貰ってるだけで十分すぎる位支援して貰ってますし、そういう変な負担まで掛けてられない」
「変な負担……ね。まあ良いか」
そう言ってブルーノ先生は書類を手渡してくる。
「これが構内予選参加の申請書な。これ書いて俺んとこ持ってこい」
「分かりました……でもこういうのって基本担任に提出する者じゃないんですか?」
「基本はそうだが……あのハゲがまともに通すとは思えない。別に俺に提出するのもルール違反って訳じゃねえんだ。遠慮せずに持ってこいよ」
「……なんか何から何までありがとうございます」
「気にすんな。教師なんていくらでも利用してけ!」
「は、はい!」
ほんと良い先生だ。
アイリスになら分かるけど、何故俺まで贔屓され続けてるんだろう。
あの時助けてもらったので十分で、そこから先、肩を持ち続ける理由なんて無い筈なのに。
でも、本当に助かるし……マジで感謝だ。
多分というか間違いなく、ハゲはこういう抜け道みたいな事を教えてはくれないだろうから。
率先して俺を退学に追い込もうとしてきそうだから。この人には頭が上がらないな。
「ああ、そうそう。この事アイリスには相談しとけよ」
「え、いや、アイリスとは組まないですよ?」
「そうじゃない。アイツの頭ん中にはすげえ魔術が色々あるんだ。これからやる事に合わせて手札組んどけって話」
「ああなるほど」
……確かにそれなら相談しといた方が良いな。
ほんと、色々な人に助けて貰ってばっかりだ。
だから認められたいとか、そういうどうしようもない位膨れ上がってくる承認欲求とかは別としてさ。
助けてくれる人の為にも……勝たないとな。
行ける所まで行くんだ。
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