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ヒロタアツシ
ヒロタアツシ その2
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普通、という単語は胡散臭いけれど、僕を表すのに、その普通という胡散臭い単語以外に思い浮かべようがなかった。そのくらい、僕は薄っぺらい。少なくとも、薄っぺらいという自覚がある。だからあまり他人様に迷惑をかけないように心がけてきたし、人並みに勉強も頑張った。多くの人がそうであるように、僕は自分という人間に不満を持ちつつも満足していたし、失望しつつも希望を持っていた。漠然と大恋愛をして童貞を捨てることを夢見ていたし、死ぬときは家族に囲まれて大往生なんて光景を想像していた。それが普通とはかけ離れた普通であることは知っていたけれど、叶わない夢を見ることは人間の特権だった。
先に断っておくが、別に僕にレイプ願望はない。そこまで性に血迷っていた覚えはない。無論健全な男子学生なのだから、それなりに性的なコンテンツには触れていたが、それはそれとして、自分の人生を棒に振ってまで性に溺れたいとは思わなかった。それに、僕は先述の通り大恋愛を夢見る意外とロマンチストな人間だったし、エロゲだって凌辱ものよりも純愛ものの方を好んでいた。クラスに好きな人もいた。
ハナヤミツキ。彼女を異性として好きなのは、きっと僕だけではないだろう。ハナヤさんは屈託なく誰にでも優しい、典型的な「可愛い子」だったから、どんな自己評価の低い根暗も多少は勘違いしただろう。かくいう僕もその一人なのだが。もちろん性格だけではなく、顔とスタイルも良かった。もしハナヤさんの顔がこの世の者とは思えないようなブサイクなら、どんなに優しくても誰も見向きもしないだろう。僕は彼女が可愛くてスタイルが良くておまけに優しかったから、異性として彼女に惚れていたのだ。それは性欲ではないか、というのは野暮だ。誰でも結婚したら子作りをするものだろう。どれだけ性格が良い相手でも、股間が反応しない相手と男女の関係を築くなんてどだい無理な話である。
そういうわけだから、僕は性格以上にハナヤさんの容姿を好んでいたし、彼女とセックスしたいと考えたことも一度や二度ではない。それでもレイプしたいと思ったことはない。せいぜい、クラスメイトから隠れて買った水着姿や体操着姿の盗撮写真をオカズにマスターベーションに励んだことくらいだ。妄想の中の彼女は、決まって僕と好き同士だったし、そこに嫌悪の要素は微塵もなかった。誰だって好きな人には嫌われたくないものである。
しかし、僕は妄想の中の彼女で何度も射精しながらも、ハナヤさんに告白しようとはしなかった。それは僕の他の、ハナヤさんで自慰行為に励んでいるクラスメイトたちと共通した気持ちが来るものだったのだろうと思う。それはとどのつまり、「拒絶されたくない」ということである。非常にシンプルかつしょうもない理由だが、結局のところ、僕のような薄っぺらい人間には、女の子と並んで歩く勇気なんてあるはずがないのだ。それに、きっと現実のハナヤさんは妄想の中のハナヤさんを越えることはできないだろうし、僕にとってのハナヤさんは妄想の中のハナヤさんでしかなかった。僕は現実のハナヤさんを見なかったし、見たいとも思わなかった。
でも、やはり実物を見ると、セックスをしたいと思った。現実のハナヤさんの心はいらないけれど、身体は欲しいと思った。現実のハナヤさんの肉体と、妄想のハナヤさんの心だけを手に入れる術があればいいのにな、なんてアホなことを一瞬考えるのだけど、チャイムが鳴った瞬間には、そんなことはいつも頭の片隅に追いやってしまうのだった。
先に断っておくが、別に僕にレイプ願望はない。そこまで性に血迷っていた覚えはない。無論健全な男子学生なのだから、それなりに性的なコンテンツには触れていたが、それはそれとして、自分の人生を棒に振ってまで性に溺れたいとは思わなかった。それに、僕は先述の通り大恋愛を夢見る意外とロマンチストな人間だったし、エロゲだって凌辱ものよりも純愛ものの方を好んでいた。クラスに好きな人もいた。
ハナヤミツキ。彼女を異性として好きなのは、きっと僕だけではないだろう。ハナヤさんは屈託なく誰にでも優しい、典型的な「可愛い子」だったから、どんな自己評価の低い根暗も多少は勘違いしただろう。かくいう僕もその一人なのだが。もちろん性格だけではなく、顔とスタイルも良かった。もしハナヤさんの顔がこの世の者とは思えないようなブサイクなら、どんなに優しくても誰も見向きもしないだろう。僕は彼女が可愛くてスタイルが良くておまけに優しかったから、異性として彼女に惚れていたのだ。それは性欲ではないか、というのは野暮だ。誰でも結婚したら子作りをするものだろう。どれだけ性格が良い相手でも、股間が反応しない相手と男女の関係を築くなんてどだい無理な話である。
そういうわけだから、僕は性格以上にハナヤさんの容姿を好んでいたし、彼女とセックスしたいと考えたことも一度や二度ではない。それでもレイプしたいと思ったことはない。せいぜい、クラスメイトから隠れて買った水着姿や体操着姿の盗撮写真をオカズにマスターベーションに励んだことくらいだ。妄想の中の彼女は、決まって僕と好き同士だったし、そこに嫌悪の要素は微塵もなかった。誰だって好きな人には嫌われたくないものである。
しかし、僕は妄想の中の彼女で何度も射精しながらも、ハナヤさんに告白しようとはしなかった。それは僕の他の、ハナヤさんで自慰行為に励んでいるクラスメイトたちと共通した気持ちが来るものだったのだろうと思う。それはとどのつまり、「拒絶されたくない」ということである。非常にシンプルかつしょうもない理由だが、結局のところ、僕のような薄っぺらい人間には、女の子と並んで歩く勇気なんてあるはずがないのだ。それに、きっと現実のハナヤさんは妄想の中のハナヤさんを越えることはできないだろうし、僕にとってのハナヤさんは妄想の中のハナヤさんでしかなかった。僕は現実のハナヤさんを見なかったし、見たいとも思わなかった。
でも、やはり実物を見ると、セックスをしたいと思った。現実のハナヤさんの心はいらないけれど、身体は欲しいと思った。現実のハナヤさんの肉体と、妄想のハナヤさんの心だけを手に入れる術があればいいのにな、なんてアホなことを一瞬考えるのだけど、チャイムが鳴った瞬間には、そんなことはいつも頭の片隅に追いやってしまうのだった。
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