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第二話 軽度自閉症
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桜が保育園に行くようになり、家族の生活スタイルが確立された。ほっと一安心していた、私だが、上の子達は不満がある様だ、平日はまだ良い。だが、土日になると子供達3人が家にいる状況になる。
こうなると、私は桜から目が離せない状況になり、上の子達の相手をする事が出来なくなる。なるべく子供達3人で遊ばせる様に仕向けるのだが、桜はマイペースで遊びにならない。当然上の子達は不満が募る。
一応上の子達には桜の事を他の子とは少し違うと説明してあるのだが、理解しているかどうか難しい所だ。
まあ、土日程度なら、桜がお昼寝している時間に上の子達とのコミュニケーションを取る時間を作れるのだが、これが長期休暇。例えば夏休みとかになると大変な事になる。
テレビゲームやパッドを買い与え、上の子達のストレスを少しでも減らす様にした。本当はあまり低学年のうちからゲームとかやらせたくは無かったのだが、仕方がない。
更に言えば、桜がこの状況では旅行に行くのも困難だ。上の子達にはかなりの我慢を強いているのは解って居るが、どうする事も出来ない。
幸い、旦那がお盆休みを1週間程取れると言うので、上の子達だけテーマパークに連れて行って貰った。家族揃っての旅行はこの先行ける日が来るのだろうか?
桜が、4歳になろうと言う時、担当医に知能検査を受ける事を勧められ、児童相談所へ行った。
そこで桜に正式な診断名が付いた。『発達障害に伴う軽度自閉症』これが桜の抱える障害だ。
軽度と言う言葉に少しだけ希望を持ち、後日担当医に報告した。
「お母さん。自閉症と言うのは正式には病気では無いのです。また、軽度だから軽いとか重度だから重いと言う物でもありません。軽度、中度、重度と言うのは記号だと思って下さい。解り易く言うとA型自閉症、B型自閉症と言った感じで捉えると良いと思います。」
「それでは、桜はこれから先、人並みの生活は難しいと言う事になるのでしょうか?病気では無いと言う事は治らないと言う事なのでしょうか?」
「そうですね。自閉症でも一般人と同じ様に仕事をしたり結婚をしたりと言った例はあります。桜ちゃんが、この先どんな生活を送るかは現時点では解りません。また、自閉症は病気では無いので治ると言う事はありません。」
私は何度目かの絶望を味わう事になった。
先生が言うには自閉症で自立できるケースは非常に少ないそうだ。これは軽度、重度に関係ないらしい。
私は桜を連れて家に帰り、夜遅くに帰って来る旦那に報告した。
「やはり、俺達には桜を育てるのは難しいのかもしれないな。どうしても家で育てると言うのであれば、ヘルパーでも雇ったらどうだ?」
解っては居るのだが、言葉にされると刺さる物がある。
「もう少し、私にやらせて下さい。どうしても駄目なら、あなたの言う事に従います。」
私は桜を諦める事はしたくない。後悔はしたくないので、自分で出来る事は自分でやりたい。
旦那はそうかと一言だけ言って風呂に入ってしまった。
桜はだいぶ言葉が出る様になって来たが、まだ難しい単語は話せない。パパやママは言えるが、2語以上の単語を使って意思表示が出来ない。楓の事はネーネ、樹の事はニーニと呼んでいる。まんまは言えるが、まんま食べたいとは言えない。
普通の4歳児だと、ある程度の言葉のキャッチボールが出来る事を考えると、桜の発達の遅れは良く理解出来るだろう。
言葉を使いコミュニケーション能力を上げるのは自閉症のケアとしては基本だと言える。私は、まずここから訓練を始めようと考えた。
平日は保育園があるので、そこは園に任せるが、土日には1時間程の散歩に桜を連れて行く事にした。距離にすれば往復2~3キロの短い距離だが、なるべく危なくない道を選んで散歩をする。そして桜が興味を示した物の名前を教えて行く。
最初はあまり効果が無かったが、3か月も続けると桜の方から指を指して『なに?』と聞いて来る様になった。
そう言えば担当医が自閉症の子と向き合うのは根気が必要だと言って居たのを思い出す。
ちなみに桜は自分の事をさーちゃんと呼ぶ。恐らく保育園で覚えて来たのだろう。家族は皆桜と呼び捨てにしている。
ふと、思いついた事があり、試しに桜の事をさーちゃんと呼んでみた。
「さーちゃんはお花が好きなの?」
「うん。」
どうやら桜はさーちゃんと呼ばれるのが嬉しいらしい。これが切欠になったのかどうかは解らないが、その日から桜との会話が少しずつ増えた気がする。
会話が増えると自然に桜の語彙も増えて行き、徐々に言葉のキャッチボールが続くようになって来た。
月に1回の児童精神科に連れて行くと、担当医から、随分と急激に伸びましたねと驚かれた。
私にとってはほんの少しの変化だが、月に1度の先生にしてみれば大きな変化だったのかもしれない。
私は、少しだけ自信を取り戻した。
保育園でも最近友達と良くお喋りしてますよと言われた。
何気ない変化だが凄く嬉しかった。子供達が居ない時間には本やスマホで自閉症の勉強をする。その中から、効果がありそうな物を選んで色々と桜に試しているのだが、自閉症は個性、他の子の成功例が桜に合うとは限らない。
試行錯誤しながら根気よくやって行くしかない。自閉症の子供を持つ親たちのブログも色々と読んでいる。その中でSNSを使ったサークルの様な物があったので、試しに入って見る事にした。
普通のママ友には相談出来ない事も、ここでは相談出来るかもしれないと思ったからだ。
こうなると、私は桜から目が離せない状況になり、上の子達の相手をする事が出来なくなる。なるべく子供達3人で遊ばせる様に仕向けるのだが、桜はマイペースで遊びにならない。当然上の子達は不満が募る。
一応上の子達には桜の事を他の子とは少し違うと説明してあるのだが、理解しているかどうか難しい所だ。
まあ、土日程度なら、桜がお昼寝している時間に上の子達とのコミュニケーションを取る時間を作れるのだが、これが長期休暇。例えば夏休みとかになると大変な事になる。
テレビゲームやパッドを買い与え、上の子達のストレスを少しでも減らす様にした。本当はあまり低学年のうちからゲームとかやらせたくは無かったのだが、仕方がない。
更に言えば、桜がこの状況では旅行に行くのも困難だ。上の子達にはかなりの我慢を強いているのは解って居るが、どうする事も出来ない。
幸い、旦那がお盆休みを1週間程取れると言うので、上の子達だけテーマパークに連れて行って貰った。家族揃っての旅行はこの先行ける日が来るのだろうか?
桜が、4歳になろうと言う時、担当医に知能検査を受ける事を勧められ、児童相談所へ行った。
そこで桜に正式な診断名が付いた。『発達障害に伴う軽度自閉症』これが桜の抱える障害だ。
軽度と言う言葉に少しだけ希望を持ち、後日担当医に報告した。
「お母さん。自閉症と言うのは正式には病気では無いのです。また、軽度だから軽いとか重度だから重いと言う物でもありません。軽度、中度、重度と言うのは記号だと思って下さい。解り易く言うとA型自閉症、B型自閉症と言った感じで捉えると良いと思います。」
「それでは、桜はこれから先、人並みの生活は難しいと言う事になるのでしょうか?病気では無いと言う事は治らないと言う事なのでしょうか?」
「そうですね。自閉症でも一般人と同じ様に仕事をしたり結婚をしたりと言った例はあります。桜ちゃんが、この先どんな生活を送るかは現時点では解りません。また、自閉症は病気では無いので治ると言う事はありません。」
私は何度目かの絶望を味わう事になった。
先生が言うには自閉症で自立できるケースは非常に少ないそうだ。これは軽度、重度に関係ないらしい。
私は桜を連れて家に帰り、夜遅くに帰って来る旦那に報告した。
「やはり、俺達には桜を育てるのは難しいのかもしれないな。どうしても家で育てると言うのであれば、ヘルパーでも雇ったらどうだ?」
解っては居るのだが、言葉にされると刺さる物がある。
「もう少し、私にやらせて下さい。どうしても駄目なら、あなたの言う事に従います。」
私は桜を諦める事はしたくない。後悔はしたくないので、自分で出来る事は自分でやりたい。
旦那はそうかと一言だけ言って風呂に入ってしまった。
桜はだいぶ言葉が出る様になって来たが、まだ難しい単語は話せない。パパやママは言えるが、2語以上の単語を使って意思表示が出来ない。楓の事はネーネ、樹の事はニーニと呼んでいる。まんまは言えるが、まんま食べたいとは言えない。
普通の4歳児だと、ある程度の言葉のキャッチボールが出来る事を考えると、桜の発達の遅れは良く理解出来るだろう。
言葉を使いコミュニケーション能力を上げるのは自閉症のケアとしては基本だと言える。私は、まずここから訓練を始めようと考えた。
平日は保育園があるので、そこは園に任せるが、土日には1時間程の散歩に桜を連れて行く事にした。距離にすれば往復2~3キロの短い距離だが、なるべく危なくない道を選んで散歩をする。そして桜が興味を示した物の名前を教えて行く。
最初はあまり効果が無かったが、3か月も続けると桜の方から指を指して『なに?』と聞いて来る様になった。
そう言えば担当医が自閉症の子と向き合うのは根気が必要だと言って居たのを思い出す。
ちなみに桜は自分の事をさーちゃんと呼ぶ。恐らく保育園で覚えて来たのだろう。家族は皆桜と呼び捨てにしている。
ふと、思いついた事があり、試しに桜の事をさーちゃんと呼んでみた。
「さーちゃんはお花が好きなの?」
「うん。」
どうやら桜はさーちゃんと呼ばれるのが嬉しいらしい。これが切欠になったのかどうかは解らないが、その日から桜との会話が少しずつ増えた気がする。
会話が増えると自然に桜の語彙も増えて行き、徐々に言葉のキャッチボールが続くようになって来た。
月に1回の児童精神科に連れて行くと、担当医から、随分と急激に伸びましたねと驚かれた。
私にとってはほんの少しの変化だが、月に1度の先生にしてみれば大きな変化だったのかもしれない。
私は、少しだけ自信を取り戻した。
保育園でも最近友達と良くお喋りしてますよと言われた。
何気ない変化だが凄く嬉しかった。子供達が居ない時間には本やスマホで自閉症の勉強をする。その中から、効果がありそうな物を選んで色々と桜に試しているのだが、自閉症は個性、他の子の成功例が桜に合うとは限らない。
試行錯誤しながら根気よくやって行くしかない。自閉症の子供を持つ親たちのブログも色々と読んでいる。その中でSNSを使ったサークルの様な物があったので、試しに入って見る事にした。
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