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ⅩⅦ
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一番重要であるはずの事実を、無意識の内に無いものとしてしまっていた。
その事実を十年以上経った今、今朝見た夢のように思い出した総次の目からは涙が溢れていた。
「無、理……」
――すまない綾瀬。 許してくれ
総次を現実に引き戻したのは修哉からの深い口付けだった。総次の人生の中、これ程嫌悪感しか無いディープキスも初めてで、口腔内を修哉に乱暴に荒らされながらも修哉の指が肌の上を這う度総次の身体は素直に反応を示していくのだった。
そして途端に下半身に得た違和感に総次は抵抗を強めた。容赦無く総次の体内に侵入しようとしている玩具の亀頭に、総次の足はただ空を蹴るばかりだったが、その行動が気に触った修哉に頬を打たれ渇いた音が室内に響く。
「死ぬ前に教えてよ総次……お前の何がそんなに貴斗を惹き付けたのか」
真人と貴斗の二重交際に総次が悩んでいた時、親切そうな顔をして近付いてきた修哉に相談をしたのが間違いだった。
「…や、っだ……入ら、なっ……」
慣らしもせず修哉が無理に捩じ込もうとしているそれは総次に苦痛しか与えず、それは初めての時の痛みにも似ていた。
――初めての、貴斗に強姦された時のような
「……も、っ……許し、っ…っあ、やぁっ……!」
「ふうっ、入った入った。 気持ちいい? 総次」
結合部から刺すような痛みが続いている。見えはしないが、恐らく切れているのだろう。体内が内側から無理に押し広げられて気持ち良いというよりは寧ろ苦しいだけだった。
息を切らせる総次の両目に薄ら涙が滲み、紅潮している頬を見ると修哉は満足気に上唇を舐め、結合部から頭を覗かせる持ち手を握ると上下に軽く動かす。
「う、あっ……しゅ、やさんっ……やめ、てっ……」
「うん、大丈夫みたいだね」
総次の様子を確認すると修哉は一人納得をして振動のスイッチを入れる。その瞬間に総次の背筋が大きく弓形に跳ね上がる。
「……ッ!」
苦痛にも近い刺激ではあったが、自らの舌に歯を立てる事で総次は声を上げる事を防いだのだった。
「うわっ……大分強情……」
「……っれが、…死ねば、満足……だろ…」
総次は苦し紛れに笑みを浮かべる。その口元には血が滲んでおり、修哉は面白くなさそうにその姿を見下ろす。
「それじゃつまらないじゃない」
再度、修哉は渇いた音を立てて総次の頬を打った。
「お前が貴斗の人生を奪ったんだよ? お前に出会わなければ貴斗は今でも平和に暮らしていただろ。 お前なんかに出会ったせいで貴斗はっ……!」
修哉の言葉は的を射ていた。自分が貴斗と出会わなければ貴斗が自分に対し劣情を抱く事も無く、何もかも狂わなかっただろう。若しくは、自分が毅然とした態度で貴斗を退けていれば……
貴斗も、祐一郎も誰も死ぬ事は無かっただろう。自分とさえ出会わなければ。
――ごめんな。 愛してる
貴斗の最期の顔。
首を絞められ、意識を失い、目を覚ました時に貴斗と目があった。
貴斗はずっと総次を見ていた。
天井からぶら下がって――
――ごめんな。 愛してる
「……た、かと……」
総次は抵抗する事をやめた。下半身は常に痙攣し続け、腹部は既に白濁で汚れていた。
「総次! 中に居るのか?」
突然チャイムと共に鳴り響くノックの音と進の声。
時間を掛け過ぎた、と修哉は慌てて玩具の持ち手を握り直し奥を激しく突き上げながら振動を更に大きくする。
「ッ、あぁ…あっ……!やめ、っ……」
「ほら、早く昇天しちまえよっ……!」
総次の目はもう何も捉えてはおらず、身体だけが過敏に反応し精を飛ばす。
「……ころ、してっ……」
総次は譫言のように呟いた。
「総次さんっ……!」
施錠されているはずの扉を何故か正義が開き、寝室へと走ってきた時、正義が目にしたものは、総次と総次に覆い被さっている修哉の背中。
「貴様ァア!」
正義の叫びで、修哉の身体が部屋の奥の壁へと吹き飛ぶ。修哉は昏倒し意識を失い、残されたのは胸元にナイフが突き刺さり、ゆっくりと血が広がりつつある総次の姿だった。
「総次さん、総次さん…!」
「透、総次が修哉に刺された。 これから病院に連れていくからお前は……」
総次の姿を見付けて顔面蒼白になり駆け寄る正義と動揺しつつも透へ真っ先に連絡を入れる進。車で病院に連れていく前に最低限の身仕度を整えなければと浴室に向かう直前、正義に指示を出す。
「泣くのは後にしろ、ソレ抜いておけ」
「は、はいぃ……」
修哉の確保もしておかなければならないが今の状態の正義にそこまでの事は望めないと、体液を拭き取る湯を取りに行く為に浴室に向かった。
「ぬ、抜きますよ……」
一応と伺いを立てるものの総次からの反応は無い。抵抗なく抜けた玩具は日本人のソレとは一回り以上大きく、その大きさに正義はゾッとした。
上下両方から流れ出る血は総次の身体から全て抜けきるのではないかと思うほど、総次の顔色は普段以上に青白くなっていた。
「……ころ、す」
昏倒していたはずの修哉が身を起こそうと腕を着くも、正義が視線すら向けずに片手を向けるだけで見えぬ空気の圧に修哉の身は押し付けられる。パキッと乾いた音がしたかと思うと修哉の胸元が大きく凹み喀血していた。
「正義、その位にしておけ。そろそろ死ぬ」
浴室から湯を入れた桶を持ってきた進は膝を着き正義の肩に手を置く。部屋を見渡し恐らく修哉が持ち込んだのであろう麻縄を手にすると正義に顎で指示をし手渡した。進の意図を汲み縄を持った正義が修哉へと近付いていくと、進は湯に浸したタオルを絞って総次の身体を拭き始める。
「……貴斗の元へ行きたいか?」
どこか総次の表情は幸せそうに見えた。これで生から解放されて愛する者の元へ行けると満ち足りているようにも思えた。総次にとってはそれが一番の幸せなのかもしれない。考えれば貴斗と幸せに居られた時間などほんの僅かだったに違いない。その何倍もの時間を掛けて悩んだ結果の結論がやはり貴斗と一緒に過ごした時間なのだとしたら、その自由を奪う権利は誰にも無いはずだ。しかし――
「悪いな、俺もエゴイストなんだ」
――すまない、綾瀬。
――どうして林葉さんが謝るんですか?
――お前を強姦して無理矢理渡会から奪い取ったのは俺だから
――俺自身が決めたことですから
――すまない、総次
――貴斗さん?
――すまない、総次……
その事実を十年以上経った今、今朝見た夢のように思い出した総次の目からは涙が溢れていた。
「無、理……」
――すまない綾瀬。 許してくれ
総次を現実に引き戻したのは修哉からの深い口付けだった。総次の人生の中、これ程嫌悪感しか無いディープキスも初めてで、口腔内を修哉に乱暴に荒らされながらも修哉の指が肌の上を這う度総次の身体は素直に反応を示していくのだった。
そして途端に下半身に得た違和感に総次は抵抗を強めた。容赦無く総次の体内に侵入しようとしている玩具の亀頭に、総次の足はただ空を蹴るばかりだったが、その行動が気に触った修哉に頬を打たれ渇いた音が室内に響く。
「死ぬ前に教えてよ総次……お前の何がそんなに貴斗を惹き付けたのか」
真人と貴斗の二重交際に総次が悩んでいた時、親切そうな顔をして近付いてきた修哉に相談をしたのが間違いだった。
「…や、っだ……入ら、なっ……」
慣らしもせず修哉が無理に捩じ込もうとしているそれは総次に苦痛しか与えず、それは初めての時の痛みにも似ていた。
――初めての、貴斗に強姦された時のような
「……も、っ……許し、っ…っあ、やぁっ……!」
「ふうっ、入った入った。 気持ちいい? 総次」
結合部から刺すような痛みが続いている。見えはしないが、恐らく切れているのだろう。体内が内側から無理に押し広げられて気持ち良いというよりは寧ろ苦しいだけだった。
息を切らせる総次の両目に薄ら涙が滲み、紅潮している頬を見ると修哉は満足気に上唇を舐め、結合部から頭を覗かせる持ち手を握ると上下に軽く動かす。
「う、あっ……しゅ、やさんっ……やめ、てっ……」
「うん、大丈夫みたいだね」
総次の様子を確認すると修哉は一人納得をして振動のスイッチを入れる。その瞬間に総次の背筋が大きく弓形に跳ね上がる。
「……ッ!」
苦痛にも近い刺激ではあったが、自らの舌に歯を立てる事で総次は声を上げる事を防いだのだった。
「うわっ……大分強情……」
「……っれが、…死ねば、満足……だろ…」
総次は苦し紛れに笑みを浮かべる。その口元には血が滲んでおり、修哉は面白くなさそうにその姿を見下ろす。
「それじゃつまらないじゃない」
再度、修哉は渇いた音を立てて総次の頬を打った。
「お前が貴斗の人生を奪ったんだよ? お前に出会わなければ貴斗は今でも平和に暮らしていただろ。 お前なんかに出会ったせいで貴斗はっ……!」
修哉の言葉は的を射ていた。自分が貴斗と出会わなければ貴斗が自分に対し劣情を抱く事も無く、何もかも狂わなかっただろう。若しくは、自分が毅然とした態度で貴斗を退けていれば……
貴斗も、祐一郎も誰も死ぬ事は無かっただろう。自分とさえ出会わなければ。
――ごめんな。 愛してる
貴斗の最期の顔。
首を絞められ、意識を失い、目を覚ました時に貴斗と目があった。
貴斗はずっと総次を見ていた。
天井からぶら下がって――
――ごめんな。 愛してる
「……た、かと……」
総次は抵抗する事をやめた。下半身は常に痙攣し続け、腹部は既に白濁で汚れていた。
「総次! 中に居るのか?」
突然チャイムと共に鳴り響くノックの音と進の声。
時間を掛け過ぎた、と修哉は慌てて玩具の持ち手を握り直し奥を激しく突き上げながら振動を更に大きくする。
「ッ、あぁ…あっ……!やめ、っ……」
「ほら、早く昇天しちまえよっ……!」
総次の目はもう何も捉えてはおらず、身体だけが過敏に反応し精を飛ばす。
「……ころ、してっ……」
総次は譫言のように呟いた。
「総次さんっ……!」
施錠されているはずの扉を何故か正義が開き、寝室へと走ってきた時、正義が目にしたものは、総次と総次に覆い被さっている修哉の背中。
「貴様ァア!」
正義の叫びで、修哉の身体が部屋の奥の壁へと吹き飛ぶ。修哉は昏倒し意識を失い、残されたのは胸元にナイフが突き刺さり、ゆっくりと血が広がりつつある総次の姿だった。
「総次さん、総次さん…!」
「透、総次が修哉に刺された。 これから病院に連れていくからお前は……」
総次の姿を見付けて顔面蒼白になり駆け寄る正義と動揺しつつも透へ真っ先に連絡を入れる進。車で病院に連れていく前に最低限の身仕度を整えなければと浴室に向かう直前、正義に指示を出す。
「泣くのは後にしろ、ソレ抜いておけ」
「は、はいぃ……」
修哉の確保もしておかなければならないが今の状態の正義にそこまでの事は望めないと、体液を拭き取る湯を取りに行く為に浴室に向かった。
「ぬ、抜きますよ……」
一応と伺いを立てるものの総次からの反応は無い。抵抗なく抜けた玩具は日本人のソレとは一回り以上大きく、その大きさに正義はゾッとした。
上下両方から流れ出る血は総次の身体から全て抜けきるのではないかと思うほど、総次の顔色は普段以上に青白くなっていた。
「……ころ、す」
昏倒していたはずの修哉が身を起こそうと腕を着くも、正義が視線すら向けずに片手を向けるだけで見えぬ空気の圧に修哉の身は押し付けられる。パキッと乾いた音がしたかと思うと修哉の胸元が大きく凹み喀血していた。
「正義、その位にしておけ。そろそろ死ぬ」
浴室から湯を入れた桶を持ってきた進は膝を着き正義の肩に手を置く。部屋を見渡し恐らく修哉が持ち込んだのであろう麻縄を手にすると正義に顎で指示をし手渡した。進の意図を汲み縄を持った正義が修哉へと近付いていくと、進は湯に浸したタオルを絞って総次の身体を拭き始める。
「……貴斗の元へ行きたいか?」
どこか総次の表情は幸せそうに見えた。これで生から解放されて愛する者の元へ行けると満ち足りているようにも思えた。総次にとってはそれが一番の幸せなのかもしれない。考えれば貴斗と幸せに居られた時間などほんの僅かだったに違いない。その何倍もの時間を掛けて悩んだ結果の結論がやはり貴斗と一緒に過ごした時間なのだとしたら、その自由を奪う権利は誰にも無いはずだ。しかし――
「悪いな、俺もエゴイストなんだ」
――すまない、綾瀬。
――どうして林葉さんが謝るんですか?
――お前を強姦して無理矢理渡会から奪い取ったのは俺だから
――俺自身が決めたことですから
――すまない、総次
――貴斗さん?
――すまない、総次……
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