ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜

F星人

文字の大きさ
上 下
29 / 31

恥ずかしい没頭

しおりを挟む

「んーっと……」

 一応、エレベーター清掃は終わったけど、ここからどうすれば良いんだろう。

 いろいろ考えながら、俺は何気なくというか、ボーっとした頭で二十八階のエレベーターホールの鏡の指紋を拭いていた。

 すると、

和泉いずみさん、終わりましたか?」

 鞘師さやしさんが奥から歩いてきた。

「和泉さんありがとうございます。そこまでしてくれて……」

「え?」俺は鏡を拭いていたことを思い出した。「あ、ついやってました」

 ボーっと拭いていたことが、すごく恥ずかしかった。

 自分でも顔が赤くなっていることが分かった。

 でも鞘師さんは笑ってくれた。

「あの鞘師さん、確認お願いしても良いですか?」

「分かりました。丁度エレベーターも止まってますね。乗りましょう」

 俺は鞘師さんと一緒にエレベーターに乗った。鞘師さんは三階のボタンを押したのちに、エレベーター内を確認。

「完璧です。基本的なことはもう問題ないですね」

「え、ホントですか?」

「はい。あとはエレベーター内に落とし物がある場合もあるので、注意して下さいね。中には指輪とか高級なものとかもあったりしますので」

「分かりました」

「ゲストが居る時に、エレベーターを降りる場合『失礼します』と言うこともお願いします」

「あ、はい」

 鞘師さんが何故その話を持ち出したのか分かった。

 次に止まる階が十九階。ゲストが下に行こうとしているからだ。

 十九階だけでなく、十五、十、八階でもゲストは乗ってきた。

 外国人のゲストが多いなと感じた。

 そして三階に着いた時、

「失礼します」

 と、鞘師さんは降りた。それに続いて俺も「失礼します」と降りた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

昨日19万円失った話(実話)

アガサ棚
エッセイ・ノンフィクション
19万円を失った様とその後の奇行を記した物

「繊細さんの日々のこと」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
「繊細さん」の私が、日常で感じたことなどを綴ります。 ちなみに私は内向型HSPです✨

処理中です...