ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜

F星人

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謎の……女の子?

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 エレベーターの扉がしまるまでの、僅かな時間に俺は二十五、二十六、二十七、二十八階のボタンを押した。

「上がり切る前に清掃、と」

 まず最初に鏡から拭こうと思ったとき、エレベーターの液晶パネルが『次に十階に止まること』を示していた。

(ていうことは……)

 十階のゲストが上に行こうとしている。

 上に行くってことは、大浴場か? 

 時間的にもまだ大浴場は開いているし。

(ってことだよな……)

 俺は25、26、27階のボタンだけをもう一度押してキャンセルした。

 ほぼ同じタイミングでエレベーターは十階に着いた。

 俺は扉側のボタンの近くまでいき、後ろ手で拭き上げタオルと衛生検査官を持ってゲストが見えないようにした。

 扉が開き切る前に入ってきたのは、なんともあっさりした顔立ちの女性だった。

 いや女性というより女の子? どちらか判別できないショートカットのゲストだった。

「あ、間違えた」

 と言うと、女子は速やかにエレベーターから出て行った。

(ボタン押し間違えたのか……?)

 あの人が下のボタンと間違えて上を押して、エレベーターが十階に着いたのだろう。

 勘弁してくれよと思いながらも、俺は再び25階から二十七階のボタンを押しなおした。

 そして鏡を拭き始める。

 その時は思ってもいなかった。

 あの女の子が、後にちょっとした騒動を引き起こすことを。

 
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