ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜

F星人

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最初に教わる仕事

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「やること結構多いので、一つ一つ覚えてもらうかたちになります」

「あ、はい」

 俺は鞘師さやしさんに続いて部屋を出た。

 床がカーペットの廊下を進むと、右側にはホテルのビュッフェ。

 突き当りに多目的トイレが。

 左側にはロックがかかったガラスの自動ドアがあった。

「ここはカードキーが無いと開かないので注意してください。出るときは必要ありませんが」

 言いながら鞘師さんは首にかかったカードキーをピッとかざして自動ドアを開けた。

 開けた先はエレベーターホール。ここから床がタイルになっている。

 広さはマンションのワンルームより少し広いくらいか。エレベーターは合計四つ。並んだ二つのエレベーターが向かい合うように設置してある。

 エレベーターの上と下のボタンの横にもカードキーをかざす場所がある。

「この階のエレベーターもロックされていて、ホテルに滞在してる人か、このカードキーを持ってる人しか動かせませんので注意してくださいね」

 ここで鞘師さんはピッとカードキーをかざしたあと、上のボタンを押した。

「カードキーが無くて下の階や上の階に行きたい場合は、さっきの部屋の裏から外に出て、非常階段から三階に上って下さい。そこの階のエレベーターはボタンを押すだけで動かせますので」

「分かりました」

「……そうですね、最初はエレベーター清掃から覚えてもらいます。実はワケありで、リネンの仕事になってるんです。エレベーターの清掃は」

 そうなんですね、とだけ俺は返しておいた。

 その『ワケ』は聞かない方がいい。

 そんな気がしてならなかった。

 そしてエレベーターが着いた。

 

 
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