ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜

F星人

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リネンとは?

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「そう。リネンの人が足りなくてね」

「リネン……初めて聞きます。何をする仕事ですか?」

「各階の布団カバーの数を数えたり、アメニティーの在庫を管理したりするお仕事よ。他にも一杯あるけど、難しくないからどお?」

 どうしよう……。

 客室清掃より人と話さなければいけない仕事だったら……。

「リネンでしたら大丈夫ですよ」

 と言いながら、サヤシさんが奥の扉から入ってきた。

「あらサヤシくん。でも土日、人が居ないんでしょう?」

「……そうですが……」

「でしょ? じゃあ和泉いずみさんに入ってもらえば楽じゃない? サヤシくん、無理して土日入ったりしてるし」

「……まあ……」

 と、サヤシさんは何故か厄介者を見るように俺を見た。

「あ、あのー、大丈夫ならボクは客室清掃にしますけど……」

 あの感じだと、サヤシさんはリネン。

 そして俺には入ってほしくなさそうだし。

 俺も敵意を向けてくる人と仕事したくないし。

「そう言わずに、ね? リネンに入ってくれない?」

「え、ええと……」

「もしかしたら客室清掃だと不採用になるかもしてないわよ?」

 いやさっき採用っつったろ履歴書も見ずに。

「う、うーん、でも……」

「リネンの方が楽しいかもしれないよ? ね?」

「えっと、じゃあ、その……」

 俺はサヤシさんをチラッと見てから、

「人手不足なら……」

 押し負けてしまった。

「ありがとう。じゃあリネンで決まりね!」

 サヤシさんのため息が聞こえた。

 彼は何故、俺を煙たがるのだろう……。

「服のサイズはLで良いかしら?」

 と、沢井さわいさんは奥の部屋からビニールで包まれた新品の白シャツを持ってきた。

「はい、Lで大丈夫です」

 俺は白シャツを受け取った。

「ズボンはそっちで用意してね。黒い長ズボンよ、良い?」

「あ、はい」

「じゃあ来月の六月二十日、朝の十時にまたここに来てちょうだい」

「……分かりました」

 面接が終わった時に思い出した。

 俺自身が『倒れちゃいけないと考えれば考えるほど倒れてしまうという人間だ』ということに。

 それを忘れるほど変な面接だったのか、それともワイパックスの効能のお陰だったのか。

「絶対おかしいって、あそこ……」

 もちろん前者だ。
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