ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜

F星人

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人心掌握?

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 夜。
 俺はプレステでモバというネットゲームをやっていた。

 モバとは、インターネットを通じて知らない人と数人でチームを組み、相手のチームと戦うゲームである。

 チームは色んな種類のキャラで編成しないと勝てない。

 攻撃が得意なアタッカー。

 味方を守るタンク。

 味方を支援するサポート。

 物陰から素早く飛び出て敵を倒すアサシン。

 全ての能力が平均で使いやすいバランス。

 この五種が揃えば勝ちやすい編成ということになる。逆にアタッカーばかりのチームだったりと、編成が偏ると負けやすくなる。

 俺がプレイするモバにはチャット機能がある。

 それでコミュニケーションを取って、チーム編成する際に意思疎通をするのが鍵となる。

「うーんと……」

 他の人のチャットが飛んでくる。

『バランスやります』

『アタッカーやります』

『アタッカーやります』

『アタッカーやります』

 なるほどと俺は呟いた。

 基本、下手な人ほどアタッカーで敵を倒したがる傾向にある。

 しかも敵を沢山倒せばゲームの勝利に直結するわけではないのに、『なんでこんなに敵を倒したのに負けるんだ、他のチームメイトのせいだ』と人のせいにするのである。

 俺もこのゲームを始めたばかりはその手だった。

 もちろん、アタッカーには上手い人も多いが、たいていはあまりゲームの本質を理解していない人が他の編成を考えずにアタッカーを使うことが多い。

「じゃあ俺は……」

 タンクやります、のチャットを送ってタンクのキャラを選んだ。

 タンクは味方を守ったり、味方が敵に攻撃を仕掛けやすい状況を作る役割が出来る。

 下手な人をサポートして敵を倒しやすく出来るし、味方に上手い人が来たらほぼ勝ちパターンを作れるほど、俺はタンクを極めていた。

 そう、味方を補助するに長けているのだ。

 約七年のニート生活の中、モバでタンクを中心にプレイしてきた関係上、他の型がやりたいことや、他の型がタンクに何をしてほしいのかが分かるのだ。

 それすなわち、人が何を求めているか分かるようになっているのである。

 ……というのは言いすぎかな?

「ん? このアタッカーの人たち……」

 どうやら敵に攻撃を仕掛けたいが、なかなか出来ないといった感じらしい。

 それを読み取り、俺は前に出て敵の攻撃を受け、アタッカーの人が攻撃し易い形を作った。

 すると、二人のアタッカーが一気に相手に攻め込み、次々と敵を倒していった。

『ありがとう』

『ありがとう』

 アタッカー二人からチャットが飛んでくる。この快感があるからモバは止められない。

「よし、勝ち」

 今日は11戦全てタンクをやって九勝した。

 上手いアタッカーの人が入ってくれたこともあるが、やはり俺はタンクのような役割が適しているからだ。

「バイトもこんな感じでやれたらな……」

 明日、ついにバイトの面接だ。

 

 
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