ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜

F星人

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着信アリ

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 応募した翌日の昼のことだった。知らない電話番号から着信がきた。

「……もしもし?」

和泉いずみさんの電話で間違いないでしょうか?』

 女の人の声だった。声質からして四十から五十代のオバサンか?

「あ、はい」

『ああ良かったわ』

 急にフレンドリーな口調になった。

『タウンワークでCホテルの客室清掃のバイト募集したわよね?』

「はい」

『ああ良かったわ合ってて。タマに間違ってるのよねえ』

「は、はあ……」

 なんだろう。

 あれほどバイトに応募した時は緊張していたのに、電話先のオバサンのお陰で気が抜けたというか、緊張が解けたというか。

 不思議だった。

『うーん、そうねえ。和泉さん、いつなら面接に来られる?』

「ええと、いつでも」

『あらそお? じゃあ明日の朝11時にCホテルの前に来てちょうだい』

「あ、分かりました」

『服装とかテキトーで良いわよ、あとホテルの前に来たら、今ワタシがかけてる電話番号まで連絡頂戴ね。ロビーには絶対に入らないように、良い?』

「あ、はい、分かりました」

 ここで電話の向こうからピリリリリ! と音が聞こえてきた。

『ん? なに? あ、ごめんなさいね、ドタバタしてるから切るわ』

 と、オバサンは通話を切った。

「……何だったんだ……」

 本当にバイトに応募したんだよな? 

   学校の友達と通話しているかのような感覚がしていた。

 
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