ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜

F星人

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何でオレはオレなんだろう。

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 早くバイトを探さなければ。
 あまり人と関わらない仕事……。
 うーん。やっぱり清掃とかが良いかな……。

(でもなあ……)

 ワイパックスを飲んでもバイト中に倒れない保証は無い。

(でもなあ……)

 そろそろ始めないとなあ……。とダラダラ駅まで歩いていると、母からメールが届いた。

《バイト見つかると良いですね。少しずつ、自立していきましょう》

 何度目だろう。
 このメールが届くのは。

 何度目だろう。 
 メールを見て胸に釘を刺されたような感覚になるのは。

 何度目だろう。
 まあでも何とかなると、その後、現実から目を背けてダラけるのは。

(このままなんて、嫌だ……)

 親からのメールはいつも背中を押してくれるのだが、どうやら俺は熱しやすく冷めやすいタイプのようで、数日経てば熱は冷め、また『何とかなるだろう』の振り出しに戻ってしまう。

(働ける人は良いよなあ……)

 道中、いつも見かける人たちが羨ましかった。

  工事現場で働く人。

 カフェで働く人。

 パチンコ屋で働く人。

 本屋で働く人。

 牛丼屋で働く人。

 ドラッグストアで働く人。

 すれ違うスーツ姿のサラリーマン。

 etc。

 俺には皆がキラキラ輝いて見えた。

 働ける人たちが眩しかった。

 みんな出勤して、タイムカードを機械に通して、帰りに『お疲れ』と言い合って家に帰るんだろう。

 当たり前だが、その当たり前が羨ましかった。

 俺は当たり前の人生が欲しかった。

(何で俺は俺なんだろう……)

 もし俺が、自分以外の人間だったら……。

 普通に働いて、普通に結婚して、普通に家族が出来て……。

(何で俺だけ……)

 何で俺だけ普通に生きていけないんだろう。

 前世で悪いことをしたから?

 んなもん俺に背負わせるなよ。

 今の俺は何も悪いことしてないだろ。

 いい加減にしてほしい。

(何で俺が……)

 ボタンを押してすぐ死ねる装置があれば、俺は迷わず押してる。

 全てをリセットして、新しく生まれ変わりたい。

 でもそんな装置なんて無いし、普通に死ぬ度胸もない。

 たぶん、俺はこのままズルズル何も出来ずに、苦しんで生きていくんだ……。

(嫌だよ……そんなの……)

 熱が冷める前に、バンジージャンプを飛ばなければ、変わらない。

 俺は足を止めて反転し、病院に向かっていた。

「あの、すみません」

 熱が冷める前に、俺は病院の受付に戻っていた。

 「予約、明日に変えることって出来ますか?」

 急な予約のため、かなり待たなければならない旨を聞いた。

「はい、大丈夫です、待てます」

 予約は明日14時頃になった。

 明日、前から考えていた、あの策を決行する。

 

 
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