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お呼びです
しおりを挟む※この物語は、ある男が2018年頃から現在に至るまでに辿った『実話』である。
なおプライバシーの関係上、全ての人物は偽名とする。
《第1話 お呼びです》
西暦2018年。5月12日。
俺は地面に目を逸らしながら、スクランブル交差点を速足で渡った。
何処から湧いて出てきたのか、何処を目指しているのか不明な人間たちの川を逆流して、パチンコ店に隣接するビルに入る。
そしてエレベーターに乗って5階へ。
(はあ……)
今日も大丈夫。
昨日、寝る前にメイラックスは飲んだし、今朝7時にデプロメールは飲んだし、さっきワイパックスを飲んできたのだから、倒れることはない。
5階の通路を歩いて奥へ進み、白い扉を開けて中へ入った。
入ると、カウンター越しに白衣姿の女性がニッコリとお迎えしていた。
「こんにちは。お預かりいたしますね」
受付の女性に診察券と保険証を渡して、待合室の長椅子に座る。
スーツ姿の男性、母親と来ている女子中学生くらいの少女、赤いミニスカートをはいた女性、いかつい男性等、皆がお呼びを待っている。
みんな、3人は座れる長椅子の端の方に座っている。
(はあ……)
呼ばれるまでモンストでもやろうとスマホを出した時だった。
「こちらの紙に『木』の絵を書いてください」
と、左側の椅子に座るミニスカートの女性に、女性スタッフが丁寧に紙を渡した。
受け取ったミニスカートの女性は「え?」と声を出して、
「『き』? ですか?」
「はい、樹木の木です」女性スタッフは優しく微笑む。
「あ、ああ、その木ですね。分かりました」
2人は微笑みあった。
女性スタッフは殺し屋のような静かな足取りで、受付の内側まで戻る。
俺も初めて来たとき、あの人と同じように聞き返したっけ。
(さて、モンストモンスト)
イベントクエストを周回していると、あっという間に時間が経ち、
「和泉(いずみ)さん、和泉浩介(いずみこうすけ)さーん」
「あ、はい」
俺の番が来た。
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