ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜

F星人

文字の大きさ
上 下
1 / 31

お呼びです

しおりを挟む


※この物語は、ある男が2018年頃から現在に至るまでに辿った『実話』である。

 

 なおプライバシーの関係上、全ての人物は偽名とする。

 

 

《第1話 お呼びです》

 

 

 西暦2018年。5月12日。



 俺は地面に目を逸らしながら、スクランブル交差点を速足で渡った。



 何処から湧いて出てきたのか、何処を目指しているのか不明な人間たちの川を逆流して、パチンコ店に隣接するビルに入る。



  そしてエレベーターに乗って5階へ。

 

(はあ……)

 

 今日も大丈夫。



 昨日、寝る前にメイラックスは飲んだし、今朝7時にデプロメールは飲んだし、さっきワイパックスを飲んできたのだから、倒れることはない。

 

 5階の通路を歩いて奥へ進み、白い扉を開けて中へ入った。



 入ると、カウンター越しに白衣姿の女性がニッコリとお迎えしていた。

 

「こんにちは。お預かりいたしますね」

 

 受付の女性に診察券と保険証を渡して、待合室の長椅子に座る。



 スーツ姿の男性、母親と来ている女子中学生くらいの少女、赤いミニスカートをはいた女性、いかつい男性等、皆がお呼びを待っている。



 みんな、3人は座れる長椅子の端の方に座っている。

 

(はあ……)

 

 呼ばれるまでモンストでもやろうとスマホを出した時だった。

 

「こちらの紙に『木』の絵を書いてください」

 

 と、左側の椅子に座るミニスカートの女性に、女性スタッフが丁寧に紙を渡した。



 受け取ったミニスカートの女性は「え?」と声を出して、

 

「『き』? ですか?」

 

「はい、樹木の木です」女性スタッフは優しく微笑む。

 

「あ、ああ、その木ですね。分かりました」

 

 2人は微笑みあった。



 女性スタッフは殺し屋のような静かな足取りで、受付の内側まで戻る。



 俺も初めて来たとき、あの人と同じように聞き返したっけ。

 

(さて、モンストモンスト)

 

 イベントクエストを周回していると、あっという間に時間が経ち、

 

「和泉(いずみ)さん、和泉浩介(いずみこうすけ)さーん」

 

「あ、はい」

 

 俺の番が来た。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

昨日19万円失った話(実話)

アガサ棚
エッセイ・ノンフィクション
19万円を失った様とその後の奇行を記した物

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

「繊細さんの日々のこと」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
「繊細さん」の私が、日常で感じたことなどを綴ります。 ちなみに私は内向型HSPです✨

処理中です...