188 / 204
ウルティア国戦役編
188 謎の組織、気付く
しおりを挟む
ウルティア国の某所に黒いローブに身を包んだ者たちが集まっていた。
例の謎の組織を構成する幹部連中だ。
ここは彼ら本人も所在の判らない秘密のアジトであり、供給されている通信機に召集がかかると、この場の座標指定がしてある転移の魔道具で集まって来るのだ。
誰もが知らない場所であるため、誰かが捕まったとしても魔道具さえ破棄していれば、所在が露見することはないはずだった。
「Cの迷宮にある隠し部屋が暴かれた」
ついにカナタたちが隠し部屋に侵入したことが組織の知るところとなっていた。
しかし、誰が侵入したのか、中の備品がどこへ行ったのかまでは把握されていなかった。
「なんだと? あそこでは制御核の回収作業をしていたのではないのか?」
「そうだ。残念なことに回復型の人形が壊れたので、任務で損傷した防御型の人形と共に処分させたところだった」
「なぜ直ぐに制御核を回収しなかった?」
「C常駐の人形が任務中で、それも壊れたなら制御核を一緒に回収する予定だったのだ」
組織は、ガンマ1とラムダ3のどちらかが壊れても構わないという前提で任務を与えていたのだ。
「ナンバー8に預けた2体の人形のことか」
「あの任務は成功したとの報告が入っていただろう?」
「ああ、その報告と前後して隠し部屋が暴かれたのだ」
「最悪のタイミングではないか!」
組織には黒「め」の97番から遅めの報告が上がっていたのだが、仕事が遅いために回収を命じる前に隠し部屋が暴かれていたのだ。
その隠し部屋の件の報告が遅れたのも黒「め」の97番のせいなのだ。
「まあ、迷宮内のことだ。何があっても不思議ではない。
起こってしまったことは仕方がない。
偶然冒険者に隠し部屋が発見されるなど良くあることだ」
「管理者の連絡員がしっかり管理出来ていないのが悪い。
連絡員はどいつだ」
「黒「め」の97番だな」
報告書の綴りを捲り、連絡員の署名を確認したメンバーが答える。
「め組か。め組はどうも能力に欠ける者が多くないか?」
この組織の中でめ組はあまり評判が良くなかった。
「となると、この任務成功の報告もあてにならんな」
「ナンバー8、この件はお主の任務絡みでもある。
お主が調べて報告せよ」
そう言われたナンバー8は顔を顰める。
その任務を押し付けられたのも貧乏くじだと思っていたからだ。
その貧乏くじが貧乏神になったようなものだった。
「面倒な……。ならば任務に助手を付けてくれ。
冒険者が持ち去ったなら制御核が売りに出ているだろう。
俺は冒険者ギルドには入れない。
助手にやってもらうしかない」
「現地連絡員は……。無能だったな。
よし誰かつけてやろう」
「わかった。ならばなんとかしよう」
ナンバー8は嫌々ながら転移の魔道具で去って行った。
例の謎の組織を構成する幹部連中だ。
ここは彼ら本人も所在の判らない秘密のアジトであり、供給されている通信機に召集がかかると、この場の座標指定がしてある転移の魔道具で集まって来るのだ。
誰もが知らない場所であるため、誰かが捕まったとしても魔道具さえ破棄していれば、所在が露見することはないはずだった。
「Cの迷宮にある隠し部屋が暴かれた」
ついにカナタたちが隠し部屋に侵入したことが組織の知るところとなっていた。
しかし、誰が侵入したのか、中の備品がどこへ行ったのかまでは把握されていなかった。
「なんだと? あそこでは制御核の回収作業をしていたのではないのか?」
「そうだ。残念なことに回復型の人形が壊れたので、任務で損傷した防御型の人形と共に処分させたところだった」
「なぜ直ぐに制御核を回収しなかった?」
「C常駐の人形が任務中で、それも壊れたなら制御核を一緒に回収する予定だったのだ」
組織は、ガンマ1とラムダ3のどちらかが壊れても構わないという前提で任務を与えていたのだ。
「ナンバー8に預けた2体の人形のことか」
「あの任務は成功したとの報告が入っていただろう?」
「ああ、その報告と前後して隠し部屋が暴かれたのだ」
「最悪のタイミングではないか!」
組織には黒「め」の97番から遅めの報告が上がっていたのだが、仕事が遅いために回収を命じる前に隠し部屋が暴かれていたのだ。
その隠し部屋の件の報告が遅れたのも黒「め」の97番のせいなのだ。
「まあ、迷宮内のことだ。何があっても不思議ではない。
起こってしまったことは仕方がない。
偶然冒険者に隠し部屋が発見されるなど良くあることだ」
「管理者の連絡員がしっかり管理出来ていないのが悪い。
連絡員はどいつだ」
「黒「め」の97番だな」
報告書の綴りを捲り、連絡員の署名を確認したメンバーが答える。
「め組か。め組はどうも能力に欠ける者が多くないか?」
この組織の中でめ組はあまり評判が良くなかった。
「となると、この任務成功の報告もあてにならんな」
「ナンバー8、この件はお主の任務絡みでもある。
お主が調べて報告せよ」
そう言われたナンバー8は顔を顰める。
その任務を押し付けられたのも貧乏くじだと思っていたからだ。
その貧乏くじが貧乏神になったようなものだった。
「面倒な……。ならば任務に助手を付けてくれ。
冒険者が持ち去ったなら制御核が売りに出ているだろう。
俺は冒険者ギルドには入れない。
助手にやってもらうしかない」
「現地連絡員は……。無能だったな。
よし誰かつけてやろう」
「わかった。ならばなんとかしよう」
ナンバー8は嫌々ながら転移の魔道具で去って行った。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界帰りの元勇者・オブ・ザ・デッド
はんぺん千代丸
ファンタジー
異世界アルスノウェに勇者として召喚された橘利己(たちばな・としき)は魔王を討つことに成功した。
アルスノウェの女神ルリエラは、彼の日本への帰還を惜しんだが、
長い間アルスノウェで殺伐とした日々を過ごしていた利己は、とにかく日本に帰りたがっていた。
平穏な日常こそ至宝。
退屈な代わり映えのしない日々に優る宝はなし。
それを痛感した利己は、ルリエラによってついに日本へと帰還する。
数年ぶりの平和な日本に感激する利己だったが、しかしそこで違和感を感じる。
外を見ると、何とそこには燃え上がる車とゾンビの群れが。
日本の時間に換算して二週間程度しか空けていなかった間に何があったのか。
何もわからない中、ただひとつわかっているのは、利己が夢見た平和な日本はもうなくなったということ。
代り映えしない日常は、ゾンビという非日常によってあえなく壊し尽くされてしまった。
――だから俺はゾンビを殺す。何が何でもゾンビを殺す。全て殺す。絶対殺す。
失われた平穏の仇を討つために、異世界で『滅びの勇者』と呼ばれ恐れられた男が動き出す。
これは、ゾンビが溢れる終末世界を生き抜く人間の話ではない。
ゾンビに逆恨みを抱いた最強無敵の元勇者が、ゾンビを目の敵にして徹底的に殲滅し尽くすお話である!
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
植物使いの四天王、魔王軍を抜けてママになる
名無しの夜
ファンタジー
魔王と決別したフラウダは旅に出ることにした。だが元四天王であるフラウダは魔王軍にも帝国軍にも追われることに。
無意味な殺生をしたくないフラウダは人体の穴に入りたがるが直ぐに出てくるので安心安全な触手を使って平和的に追手を撃退していく。そんな逃亡生活の最中、帝国軍に追われる半人半魔な幼い双子の姉妹と出会ったフラウダは彼女達を娘として育てることに。
果たして元四天王とその娘達に安住の地はあるのだろうか?
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる