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ウルティア国戦役編

181 カナタ、魔法で無双する

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 カナタは続けて、愛砢人形ラブラドールを製造するために必要な素材の残り一つであるヒヒイロカネが手に入るかを実験した。
周回ボスアタックもあったため、現在のカナタのレベルは26。
幸運値も324になっていた。

「ヒヒイロカネゴーレム、1体召喚!」

『レベルが足りません』

 そのシステムメッセージとともに召喚が失敗した。
オリハルコンとヒヒイロカネ、どうやら希少性ではヒヒイロカネの方が上だったようだ。
カナタには、素材としての使い勝手で言えばオリハルコンの方が上な気がしていたが、神様が設定した価値は、時にこの世界の人間の価値観と相違することがあった。
例えば、この世界では銅は鉄よりも素材価値が低い。
しかし、神様が設定したDG硬貨の価値では鉄よりも銅の方が価値が高いのだ。
これは銅が電化製品の配線やモーターに使えることをこの世界の人達が知らないからだった。
魔力中心の魔導具や魔道具を使う文化なため、魔力配線として重宝されるのはミスリルであり、銅はその価値にすら気付かれていないのだ。
ヒヒイロカネもその利用価値をこの世界ではあまり知られておらず、ヒヒイロカネ製の剣が美術価値も加わって評価される程度なのだ。

 ヒヒイロカネゴーレムは、カナタのレベルが足りなかったために召喚することが出来なかった。
だが、レベルいくつになれば良いのかという情報が齎されなかったため、カナタは先の見えないレベリングが必要になった。
あるいは、このまま下層を目指してヒヒイロカネを採掘するかだった。

「錬金術師のレベルも上げないとならないし、このまま下層に降りてレベリングするべきかな。
もし、素材としてヒヒイロカネが採掘できたなら、それでも良いしね」

「なら魔物は全てマスターに倒してもらいましょう」

 シータがカナタのレベリングのために都合の良い魔物を選別して案内を始めた。
至れり尽くせりの状態でカナタは鉱山ダンジョンを踏破していった。
カナタはスキルオーブによりHNの戦闘スキルやRの身体強化系スキルをいくつも持っていたので、その剣技や体術だけで魔物を倒せてしまっていた。

「マスター、この25階層はオープンフィールドのようです。
植物系の魔物と動物系の魔物の反応があります」

「ここは鉱石採取も出来なさそうだし、さっさと進んじゃおうか」

「いいえ、マスターをレベルアップさせるのに都合の良い魔物がいます。
マスターの魔法を使うだけの簡単なお仕事です。
それを倒しに行きますよ?」

 カナタには全種類の属性魔法を使用出来るスキルがあった。
あとは魔法レベルを上げるだけで新たなスペルも覚えるはずだったのだが、カナタの初級魔法は尋常な威力ではなく上級魔法など必要がなく覚えることはなかった。
【携帯ガチャ機】に課金すれば魔法スペル限定ガチャも引けるのだが、それを引くことは今のところ滅多になかった。

 その中でカナタが唯一持っているUR魔法があった。
水竜斬滅アクアドラグーンLv.1、水の竜を具現化し対象をその顎で切り刻むという究極の水魔法だった。
その水竜斬滅アクアドラグーンと相性の良い魔物が、まさにこの階層には存在したのだ。

「さあ、こちらです。
この巣穴に水竜斬滅アクアドラグーンをぶち込んで下さい♪」

 シータが案内したのはギガアントと呼ばれる、巨大な蟻の魔物の巣だった。
巣であるからには、そこにはソルジャーアントからグラディエイトアントが巣を守っており、そして巣の奥底には主のクイーンアントがいるはずだった。

「ちょっとシータ!
ギガアントは、1匹倒したら10匹出て来ると言われるぐらいの危険な魔物じゃない!
それが巣となると数千匹いてもおかしくないわよ!」

「そうですわ。
私たちが手を貸せば簡単でも、マスターだけでは危険なのではないのですか?」

 ミューとガンマ1がシータを止める。
それほどギガアントはやっかいなのだ。
その外殻は剣を通さず、火魔法にも強い。
1匹倒しているうちに次から次へと襲って来て、その強靭な顎で噛みつかれてしまえば、脚でも腕でも簡単に切り飛ばされてしまう。
まさに凶悪危険魔物なのだ。

「だからこそ、マスターの魔法なのです。
巣を水竜斬滅アクアドラグーンで水攻めすれば、ギガアントなど恐れるに足りません」

ギギギギギギギ

 そうこうするうちにカナタたちはギガアントに発見されてしまった。
この音はギガアントが顎を鳴らして発する警戒音だった。
この音を聞きつけると巣穴から大量のギガアントが出てきてしまうため、いっそう質が悪くなるのだ。

「ほら、巣から出てきたらやっかいよ。
マスター、やっちゃって♪」

「どうなっても知らないよ?
水竜斬滅アクアドラグーン】!」

ズドーーーーーーーーーーン!

 カナタは一度も撃ったことのないUR水魔法水竜斬滅アクアドラグーンを巣穴に撃ち込んだ。
暴れる濁流、そう表現すれば良いのだろうか、水の竜はその勢いを衰えさせることなく巣穴の中隅々までまるで生きているかのように侵入していった。
その水量は尋常ではなく、圧により遠く離れた空気穴から水しぶきとともに空気が噴出していた。
ギガアントの巣は所謂水攻め状態になっていたのだ。
しかも斬撃を伴う水流であり、中ではギガアントやその上位種が斬り刻まれ瀕死状態だった。

「まだね。はい、続けて雷魔法!」

「【雷撃破サンダーブレイク!」

バリバリバリバリ

 雷が巣穴に落ちるとその電流が水を伝わって巣穴の中のギガアントたちに止めを刺した。

「魔物の殲滅を確認。
マスターは、自動収拾のスキルはありますよね?」

 シータはセンサーでギガアントたちの反応を確認すると殲滅終了を宣言した。
そして瘴気へと変わったギガアントたちがドロップしたガチャオーブやDGを自動的に収拾するスキルがないかとカナタに訊ねた。

「それなら、スキルオーブから出てたと思う。
【自動収拾】」

 カナタが【自動収拾】のスキルを使うと、巣穴の中でドロップしたガチャオーブとDGが自動的に拾われて【ロッカー】に収納された。

「こんな使い方があるのか」

 カナタは驚いたが、このスキルはパーティーメンバーが倒した魔物のドロップ品には使用出来ないという欠点があった。
あくまでも自分が倒した魔物ドロップ限定であり、さらに収納系のスキルかマジックバッグを持っていなければ機能しなかった。
これは他人のドロップ品を奪ってしまうという問題が起きないようにという制限であって、いくら同じパーティーのメンバーでも個別に使う必要があった。

「ガチャオーブが1万6千個に2億3千万DG手に入った……」

 カナタはここでギガアントとその上位種を合計6千5百匹討伐していた。
当然、その経験値でカナタはレベル34へと到達していた。

「どう? 私の言った通り簡単なお仕事だったでしょう?」

 シータがドヤ顔でカナタに迫る。
確かにガチャオーブもDGも経験値も簡単に手に入った。

「シータ様のおかげです。
ありがとうございました」

 カナタはその効果に素直に感謝の言葉を伝えるのだった。
索敵型と言いながら、シータには軍師的な素養があるようだった。
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