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ウルティア国戦役編
162 ニク、飛翔する
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γ1からの通信が途絶えた。
これは敵側のジャミングだろうとλ3は理解した。
μ型は万能型なため、ジャミング機能も持ち合わせているのだ。
厄介な相手だが、そこにリソースを使えば、攻撃や防御が疎かになる。
ある意味、γ1には有利になったともいえた。
これにより、λ3にはγ1が敵と接触したことが判った。
これで、λ3からは見えない場所へのγ1からの狙撃誘導という作戦が不可能となった。
だが、γ1ならば、自分が狙撃しやすいポイントまで敵を誘導してくれるはずだった。
バシッ!
「え? そっち?」
荷電粒子砲と次元空間壁のぶつかった衝撃音が彼方でするが、その場所はλ3の想定していた狙撃ポイントとはかなり離れていた。
どうやらγ1の誘導は失敗に終わったようだった。
「敵はμ型だったはず。万能とはいえ簡易量産型。
探査や広域ジャミングと同時に防御に回せるだけのリソースは足りてないはず。
まさか複数体いたのか!?」
となるとγ1は圧倒的に不利だ。
「早まらないでγ1」
λ3は、γ1が己の身を犠牲にしてまで任務を達成し、自分を生き残らせようとするのではないかと気が気では無かった。
そんな優しい姉の一面をγ1は持っているのだ。
だが、防御力を犠牲にして高出力荷電粒子砲と隠密機能を装備した、狙撃型のλ3には、前に出てγ1を援護するような戦法はとれなかった。
「組織の人間が撤退条件を示してくれていれば……」
γ1とλ3は中途半端な命令と強制力により撤退の道がなかった。
全滅するか、敵側の愛砢人形を1体倒すかの二択しか彼女たちには選択肢がなかった。
「狙撃地点を変えてγ1を援護するしかない」
λ3は、γ1が戦っているだろう地点が見える場所へと移動を開始した。
狙撃型としては無謀な己の身を晒しかねない危険な行為だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ミュー3からの支援要請を受諾。
シータ、イプシロンに命令。
武装の無制限使用を許可する。
マスターを護るために最大限の行動を取れ!」
「「イエス、マム!」」
ニクはミュー3からの支援要請を受け、カナタの危機だと判断。
自ら全ての能力を解放して、シータ、イプシロンと共に援護に向かうことを決断した。
そこには指揮万能型としての強力な権限が発動していた。
「敵と思われる砢システムの反応を確認。
マスターの直近です!」
索敵型のシータが全能力を解放し、広域探査を開始した。
そこには1体の愛砢人形の反応があった。
索敵特化型のシータともなれば広域ジャミングなどものともせずに索敵が出来るのだ。
「イプシロンは私と共にマスターの救援に向かう。
シータはこの場で索敵を継続。レーザー通信で報告を上げろ!」
レーザー通信とは目視できる状態の相手にレーザーを当て続けることで、ジャミング中であってもレーザーパルスによる通信を維持できる通信方法だった。
「「イエス、マム!」」
ニクはカナタ救出のため駆け出す。
それを追うイプシロンは強化外装を装備し、ホバー移動を開始した。
その姿はパワードスーツを纏った武装少女のようだった。
『荷電粒子砲発射警報!』
シータからのレーザー通信で敵が荷電粒子砲を撃ったことがわかった。
その位置はシータからのレーザー通信が途絶えてしまう死角になる場所だ。
『シータ、レーザー通信を維持。移動せよ』
『了解しました』
シータは高速移動装置を使い、瞬時に広域索敵とレーザー通信を維持し続けた。
『敵、反応微弱。消えました!』
この時、襲撃者であったγ1は捕縛され、カナタによりガチャオーブ化されていた。
そのため反応が喪失したのだ。
『あ、ジャミングも喪失しました。
砢システム反応回復。
敵味方識別、味方に代わりました』
つまり、脅威は去ったということだった。
ほっとしたのもつかの間、シータの慌てた声が響く。
『遠方に反応あり。移動中です!
狙撃型のλと思われます!』
この時、λ3が姿を晒す危険を冒してまで、γ1を援護しようと移動していた。
「私は狙撃型をけん制する!」
ニクは愛砢人形の翼を展開し、空へと舞った。
その姿は白い羽を広げた天使のようだった。
轟音を上げ飛び去るニクは、カナタたちの上空を飛び去り、狙撃型のλへと荷電粒子砲の照準を合わせた。
その時、カナタの声が通信機から聞こえて来た。
『ニクーー! 手加減!』
ニクは最大出力の荷電粒子砲をλ3の目前に威嚇射撃をした。
もう少しタイミングが遅かったら、λ3は完全に破壊されていたことだろう。
さらに全チャンネルで通信が届く。
『こちらγ1、λ3は降伏せよ』
カナタの指揮下に入ったγ1が、元々指揮下にあったλ3に強制力のある上官命令を出したのだ。
この後、降伏したλ3もカナタの【ガチャオーブ化】のスキルで仲間となった。
これにより、謎の組織の存在と、組織に隷属させられた愛砢人形の悲劇がカナタの知るところとなった。
これは敵側のジャミングだろうとλ3は理解した。
μ型は万能型なため、ジャミング機能も持ち合わせているのだ。
厄介な相手だが、そこにリソースを使えば、攻撃や防御が疎かになる。
ある意味、γ1には有利になったともいえた。
これにより、λ3にはγ1が敵と接触したことが判った。
これで、λ3からは見えない場所へのγ1からの狙撃誘導という作戦が不可能となった。
だが、γ1ならば、自分が狙撃しやすいポイントまで敵を誘導してくれるはずだった。
バシッ!
「え? そっち?」
荷電粒子砲と次元空間壁のぶつかった衝撃音が彼方でするが、その場所はλ3の想定していた狙撃ポイントとはかなり離れていた。
どうやらγ1の誘導は失敗に終わったようだった。
「敵はμ型だったはず。万能とはいえ簡易量産型。
探査や広域ジャミングと同時に防御に回せるだけのリソースは足りてないはず。
まさか複数体いたのか!?」
となるとγ1は圧倒的に不利だ。
「早まらないでγ1」
λ3は、γ1が己の身を犠牲にしてまで任務を達成し、自分を生き残らせようとするのではないかと気が気では無かった。
そんな優しい姉の一面をγ1は持っているのだ。
だが、防御力を犠牲にして高出力荷電粒子砲と隠密機能を装備した、狙撃型のλ3には、前に出てγ1を援護するような戦法はとれなかった。
「組織の人間が撤退条件を示してくれていれば……」
γ1とλ3は中途半端な命令と強制力により撤退の道がなかった。
全滅するか、敵側の愛砢人形を1体倒すかの二択しか彼女たちには選択肢がなかった。
「狙撃地点を変えてγ1を援護するしかない」
λ3は、γ1が戦っているだろう地点が見える場所へと移動を開始した。
狙撃型としては無謀な己の身を晒しかねない危険な行為だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ミュー3からの支援要請を受諾。
シータ、イプシロンに命令。
武装の無制限使用を許可する。
マスターを護るために最大限の行動を取れ!」
「「イエス、マム!」」
ニクはミュー3からの支援要請を受け、カナタの危機だと判断。
自ら全ての能力を解放して、シータ、イプシロンと共に援護に向かうことを決断した。
そこには指揮万能型としての強力な権限が発動していた。
「敵と思われる砢システムの反応を確認。
マスターの直近です!」
索敵型のシータが全能力を解放し、広域探査を開始した。
そこには1体の愛砢人形の反応があった。
索敵特化型のシータともなれば広域ジャミングなどものともせずに索敵が出来るのだ。
「イプシロンは私と共にマスターの救援に向かう。
シータはこの場で索敵を継続。レーザー通信で報告を上げろ!」
レーザー通信とは目視できる状態の相手にレーザーを当て続けることで、ジャミング中であってもレーザーパルスによる通信を維持できる通信方法だった。
「「イエス、マム!」」
ニクはカナタ救出のため駆け出す。
それを追うイプシロンは強化外装を装備し、ホバー移動を開始した。
その姿はパワードスーツを纏った武装少女のようだった。
『荷電粒子砲発射警報!』
シータからのレーザー通信で敵が荷電粒子砲を撃ったことがわかった。
その位置はシータからのレーザー通信が途絶えてしまう死角になる場所だ。
『シータ、レーザー通信を維持。移動せよ』
『了解しました』
シータは高速移動装置を使い、瞬時に広域索敵とレーザー通信を維持し続けた。
『敵、反応微弱。消えました!』
この時、襲撃者であったγ1は捕縛され、カナタによりガチャオーブ化されていた。
そのため反応が喪失したのだ。
『あ、ジャミングも喪失しました。
砢システム反応回復。
敵味方識別、味方に代わりました』
つまり、脅威は去ったということだった。
ほっとしたのもつかの間、シータの慌てた声が響く。
『遠方に反応あり。移動中です!
狙撃型のλと思われます!』
この時、λ3が姿を晒す危険を冒してまで、γ1を援護しようと移動していた。
「私は狙撃型をけん制する!」
ニクは愛砢人形の翼を展開し、空へと舞った。
その姿は白い羽を広げた天使のようだった。
轟音を上げ飛び去るニクは、カナタたちの上空を飛び去り、狙撃型のλへと荷電粒子砲の照準を合わせた。
その時、カナタの声が通信機から聞こえて来た。
『ニクーー! 手加減!』
ニクは最大出力の荷電粒子砲をλ3の目前に威嚇射撃をした。
もう少しタイミングが遅かったら、λ3は完全に破壊されていたことだろう。
さらに全チャンネルで通信が届く。
『こちらγ1、λ3は降伏せよ』
カナタの指揮下に入ったγ1が、元々指揮下にあったλ3に強制力のある上官命令を出したのだ。
この後、降伏したλ3もカナタの【ガチャオーブ化】のスキルで仲間となった。
これにより、謎の組織の存在と、組織に隷属させられた愛砢人形の悲劇がカナタの知るところとなった。
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