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ガチャ屋開業編

056 カナタ、引っ越しを完了する

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「つまり、ヨーコたちは、戦争奴隷という名の奴隷狩りにあって、国を滅ぼされたお姫様とその護衛メイドってことね?」

「はい」

 ヨーコから事の経緯を聞いたカナタは、ヨーコたちの立場を理解した。

「この国の国民ならば違法奴隷として問答無用で開放される立場だけど、隣国であるスヴェルナ帝国で奴隷化され、この国に輸入されると合法と見做されてしまうんだよね」

「はい……」

 しかし、奴隷狩りにあった被害者だとしても、カナタは4人の購入に8300万DGもの大金を支払っている。
おいそれと解放するわけにはいかなかった。
しかし、奴隷として高額だったのは、その出自による器量のせいであって、まさか性奴隷込みのオールオッケーな契約のせいだとは気付いていなかった。
カナタは奴隷とは皆高額なものであると勘違いしていたのだ。

「さっきも言ったけど、戦争奴隷という開放なしの終身奴隷としては、君たちを扱わない。
だけど、契約奴隷所謂年季奉公としては働いてもらわないとね。
本当は奴隷解放してもいいんだけど、解放して直ぐに逃げられたら大金を出した僕としても困る。
なので、奴隷契約は継続させてもらうよ。
でも、奴隷だからと酷い扱いはしないつもりだから、安心して欲しい」

 カナタのその言葉にヨーコは真剣な目で訴える。
カナタの言い分だと一般の契約奴隷の扱いであり、元の性奴隷を含む契約とは返せる額が違うのだ。

「でも、それだと一生働いても返せない……。
それならば私を性奴隷として扱ってもらって早く返した方がマシ。
私が姉さまの分も返すから、姉さまは解放して」

 ヨーコの言葉を遮るように、キキョウも訴えでる。

「ヨーコ、私が解放してもらっても、ここでは生きていく術がないわ。
私が性奴隷になるから、ヨーコこそ解放してもらうのです。
ヨーコのスキルならば、冒険者も可能でしょう」

 姉妹が自分こそが性奴隷になると言いあいになってしまった。
カナタは2人を性奴隷になんかするつもりがない。
しかし、そのまま一般職で働いたのでは、一生購入代を返せないという意見は一理あると思っていた。

「ごめん。僕は11歳でまだ未成年だから性奴隷はないよ?」

「「え? 11歳?」」

 ヨーコ、キキョウ姉妹が揃って驚いたのは、カナタの外観が成長阻害のせいで7歳児ぐらいに見えるからだ。
しかし、そう考えると性奴隷になっても8年はスルーされるだろうと姉妹は思っていたということだった。
むしろ11歳なら、そのスルー期間が4年に短縮されることになる。
案外したたかな姉妹だった。
カナタは顔を引きつらせながら話を続ける。

「性奴隷はないけど、ヨーコが冒険者として活動出来るなら、その働きによって給料を査定しても良いよ」

 カナタは自らグラス系魔物を退治したことで、そこで手に入れたオーブを1UPさせた方が、ハズレオーブ買取よりも高レアリティのアイテムを得易い事に気付いていた。
今後は戦闘職の奴隷――サキとレナ――に魔物を討伐してもらってHN以上のオーブを得て、それを1UPさせるという商売を考えていた。
そのパーティーにヨーコを加えれば安全性が増すことになるだろう。

「私が冒険者になって、一生ずっとカナタ様に仕えます。
それであれば、姉さまは働かせなくても良い?」

 カナタは、ヨーコも解放するつもりなのだが、本人が永久就職してでも姉を助けたいと言うので、時が来るまではその気持ちを酌むことにした。

「キキョウを今すぐ奴隷解放することは出来ないけど、奴隷として扱わず生活の面倒も見ることを約束するよ」

 こうしてカナタとヨーコ、キキョウの間には奇妙な奴隷関係が成立するのだった。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 カナタのお店は、ニクが破壊したお店の前面と内部の修理が終わり、以前以上に綺麗な店先となっていた。
大工さんに頼んでいた通り、店の軒下には”ガチャ屋”の文字とガチャオーブの絵の描かれた看板が掲げられていた。
名実ともにガチャ屋の営業が可能だった。

「今後の予定を話すよ。
ハズレオーブ買取担当にルル、アイテム販売担当にララ、アダルトアイテム販売担当がカリナ、サポートにユキノでお店を回す。
ヨーコ、サキ、レナの3人は冒険者登録をして魔物を討伐、ドロップしたオーブをお店に納入して欲しい。
キキョウはお屋敷で寛いでいてくれ」

 お店はララ、ルル、カリナ、ユキノが担当する。
ニクはその護衛、シフォンは看板犬となる。
ララは秘書役、カリナ、ユキノ、ルルはお屋敷の清掃や料理も担当する。
外に出てのオーブ回収はヨーコ、サキ、レナの3人が担当。
この3人には魔物を討伐しつつグリーンバレーまで遠征してもらい、グリーンバレーにてハズレオーブを買い入れてもらう。
それを持ち帰るのも彼女たちの任務とした。
キキョウはヨーコとの約束通りに何もせず寛いでもらう。
カナタは申し訳なさそうにしているキキョウをヨーコに説得してもらった。
原因はヨーコにあるのだからそこは丸投げで良いだろう。

「午後からは、お屋敷で生活するうえで足りないものを買いに行くよ。
ベッドは人数分ある? 足りなければ買うからね。
シーツやタオル、毛布、枕などは新しくしてね。
台所の火はつく? 水は出る? 魔導冷蔵庫は動いてる?
燃料石の規格はチェックした?」

「「はい」」

 この屋敷は、魔法鍵を開けるまで状態保存の時間停止魔法がかかっていたため、ベッドなどの居抜き家具がそのままの使える状態で保存されていた。
それに【クリーン】の魔法をかけて掃除をすれば、そのまま使用しても問題ない状態が維持されているのだ。
まあ、大貴族とお妾さんがあの・・目的で使っていたベッドを、そもまま使えるかというのは本人次第というところだが、カナタはダブルキングサイズのベッドは広すぎると思っただけで、虫も居ないし変な匂いもしないしで、普通に使う分には気にしていなかった。
いや、そこまで想像力が働かなかったと言った方が良いのかもしれない。
ニク以外の女性陣は全員顔を赤らめていたが、カナタが良いならばとスルーした。

「よし、それでは買い物に出発!」

 キキョウとシフォンはお屋敷で留守番。
お店担当はルルのみがハズレオーブの買取で居残り、その護衛にユキノ。
アイテムの販売はどうしてもという以外は販売停止とした。
ニク、ララ、カリナ、ヨーコ、サキ、レナの6人とカナタで買い物に出かけた。
カナタの【ロッカー】が4m×4m×4mに容量がアップしているので、ベッドも楽々入れられる。
荷物持ちは必要ではなかったが、ヨーコ、サキ、レナの3人は冒険者ギルドで冒険者登録をするので連れてきていたのだ。

 3人の冒険者登録もテンプレ無しで終わり、追加のベッドや諸々の生活必需品も手に入れ屋敷へと戻って来た。
カナタは、それらの品を【ロッカー】から屋敷の各所に出すと、ララとニクを伴ってウッドランド子爵家別邸へと向かった。
引っ越し完了の挨拶をするためだ。



「そうか。もう引っ越すのか」

 ウッドランド子爵は、カナタが大工に修理代を支払ったという報告を受けて、引っ越しが近いことは察していた。
だが、その日のうちに引っ越しを完了するとは思っていなかった。
カナタが【ロッカー】という【亜空間倉庫】を上回るスキルを持っていることを隠していたこともあるが、新しいベッドの搬入等時間がかかるものと思っていたようだ。

「寂しくなります。いつでもお越しくださいね?」

 サーナリアも残念がっている。
そしてサーナリアはある事に気付く。

「お父様、カナタさまに私が助けられたお礼と、カナタさまが盗賊団を討伐したお礼を領主としてまだされていないのでは?」

 たしかに、カナタを居候させただけで、お礼というお礼をウッドランド子爵は渡していなかった。
サーナリアを助けたお礼は冒険者としての働きなら金貨1枚程度だろう。
領主の娘の命の対価とすればもっと上がるはずだが、レグザスのパーティーであるカリストの栄光も馬車を守っていたわけで、加勢のお礼となれば相場はそんなものだった。
盗賊団の討伐も、王都での懸賞金が莫大だったため、領主として渡す分としては微々たるものになってしまう。
それならばと、ウッドランド子爵はある奇策を提案する。

「そうだな。カナタくんにはお礼をしなければならないな。
サーナリア、カナタくんに嫁げ。お前ももう12歳、結婚相手を決めてもおかしくない歳だ。
今は年齢的に婚約止まりだが、私からもファーランド伯爵に書状を送ってお伺いを立てる」

 ウッドランド子爵は、カナタの戦闘力に加えてオークションで見せた財力にも目をつけていた。
しかも英雄ファーランド家の血筋、他の誰かの手に落ちるまえに引き込んでおきたい逸材だった。
伯爵家三男に子爵家二女なら格としても釣り合いがとれる。
いや、カナタなら将来自ら爵位を手に入れられるだろう。
そうなった時にこの婚約があればサーナリアは玉の輿となる。
この情報は今のところウッドランド子爵しか知り得ないものだった。
さすがウッドランド子爵、利に敏い男だった。
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