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家出編
026 ニク、実力を見せる
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この3人の冒険者は、昨日カナタが冒険者ギルドで高価買取をしてもらっている場面に、たまたま居合わせた者たちだった。
買取で金貨が支払われたことを知っており、カナタたちが子供と美少女という無防備なパーティなこともあって、簡単に金銭を奪えるカモだと思いタイミングを見計らっていたのだ。
「金を出せ。ああ、その女も置いていけ」
「お嬢ちゃん、俺たちとイイコトしようぜ」
「ゲヒャヒャヒャヒャ」
冒険者は、嫌らしい笑い声とともに腰の剣を抜くと強盗に早変わりした。
この世界、犯罪を証明するのは難しい。
一般人の間では、主に現行犯でなければ捕まる事は早々ない。
貴族が関わる事件の場合は審議官が入って調査することで犯罪が証明されるが、一般人の事件にまでは審議官が出て来ることはほぼ無かった。
なので、冒険者でありながら強盗や野党となる事例が多々あった。
今回の連中も冒険者兼強盗の常習者だった。
「マスターの生命に関する重大な危機を確認。
殲滅してもよろしいですか?」
カナタはニクが返事や説明以外を口にしたのに驚き思わず頷いてしまった。
「マスターの承認受諾。武器使用制限解除」
何やらニクの右腕が変形し光っている。
「敵の殲滅を開始します」
ここに来て、カナタは殲滅の意味に恐怖した。
「(このままだと危ない。強盗たちが!)
待った。殲滅はなし。武装解除のうえ無力化せよ!」
ニクがカナタの方に顔を向ける。
その表情はとても残念そうだ。
しかし、ニクはコクリと頷きカナタの命令を受け入れた。
「命令を受諾。
武装解除のうえ無力化を優先します」
「何をゴチャゴチャ言ってるんだよ!
早く【財布】を出せ」
強盗が右腕の剣を振り上げ脅して来る。
その右腕に眩い光が直撃する。
ニクの右腕から放たれた光魔法だ。
「はっ?」
強盗は自分の右腕が剣ごと消えて無くなっていることに暫し気付かなかった。
そして少し時間を置いて襲って来た痛みに、地面を転げまわることになった。
「ギャー! 痛てー! お、俺の右腕が!」
「こいつ魔法を使うのか!
おい、やるぞ!」
慌てて襲い掛かる他2人の強盗。
おそらく魔法なら2人同時には攻撃できないとでも思ったのだろう。
確かにこの世界では魔法の同時発動が出来るのは高位の魔術師だけだった。
そんな高位の魔術師は宮廷魔術師になるものなので、こんな田舎町の路地裏にいるはずがなかった。
またニクの右腕に光が宿る。
そして連続して光魔法が撃ち出され強盗たちの右腕を剣ごと消し飛ばした。
「敵対勢力の無力化を確認。
荷電粒子砲待機状態に入ります」
ニクの攻撃が光魔法の【マジックミサイル】ではなく、荷電粒子砲だったことには誰も気付かなかった。
成熟した科学は魔法と区別がつかない。
それは多田野信の知識を得たカナタでさえ解っていなかった。
カナタは強盗達の傷が焼けて塞がっていて、このまま放置しても死ぬことはないと確認すると、地面をのた打ち回る強盗たちの横をすり抜けて路地を出た。
強盗への反撃は正当防衛であり、カナタに罪悪感は微塵もなかった。
むしろ殺さなかったことが、多田野信の知識に引き摺られた結果だった。
この世界では強盗など殺しても構わないというのが一般的な風潮なのだ。
命の価値が軽い世の中だった。
「これ、衛兵に通報した方がいいのかな?」
「マスター、消し炭に変えれば手間いらずです」
ニクが怖いことを言う。
こんな時だけ会話が成立するのもなんだかなぁと思うカナタだった。
買取で金貨が支払われたことを知っており、カナタたちが子供と美少女という無防備なパーティなこともあって、簡単に金銭を奪えるカモだと思いタイミングを見計らっていたのだ。
「金を出せ。ああ、その女も置いていけ」
「お嬢ちゃん、俺たちとイイコトしようぜ」
「ゲヒャヒャヒャヒャ」
冒険者は、嫌らしい笑い声とともに腰の剣を抜くと強盗に早変わりした。
この世界、犯罪を証明するのは難しい。
一般人の間では、主に現行犯でなければ捕まる事は早々ない。
貴族が関わる事件の場合は審議官が入って調査することで犯罪が証明されるが、一般人の事件にまでは審議官が出て来ることはほぼ無かった。
なので、冒険者でありながら強盗や野党となる事例が多々あった。
今回の連中も冒険者兼強盗の常習者だった。
「マスターの生命に関する重大な危機を確認。
殲滅してもよろしいですか?」
カナタはニクが返事や説明以外を口にしたのに驚き思わず頷いてしまった。
「マスターの承認受諾。武器使用制限解除」
何やらニクの右腕が変形し光っている。
「敵の殲滅を開始します」
ここに来て、カナタは殲滅の意味に恐怖した。
「(このままだと危ない。強盗たちが!)
待った。殲滅はなし。武装解除のうえ無力化せよ!」
ニクがカナタの方に顔を向ける。
その表情はとても残念そうだ。
しかし、ニクはコクリと頷きカナタの命令を受け入れた。
「命令を受諾。
武装解除のうえ無力化を優先します」
「何をゴチャゴチャ言ってるんだよ!
早く【財布】を出せ」
強盗が右腕の剣を振り上げ脅して来る。
その右腕に眩い光が直撃する。
ニクの右腕から放たれた光魔法だ。
「はっ?」
強盗は自分の右腕が剣ごと消えて無くなっていることに暫し気付かなかった。
そして少し時間を置いて襲って来た痛みに、地面を転げまわることになった。
「ギャー! 痛てー! お、俺の右腕が!」
「こいつ魔法を使うのか!
おい、やるぞ!」
慌てて襲い掛かる他2人の強盗。
おそらく魔法なら2人同時には攻撃できないとでも思ったのだろう。
確かにこの世界では魔法の同時発動が出来るのは高位の魔術師だけだった。
そんな高位の魔術師は宮廷魔術師になるものなので、こんな田舎町の路地裏にいるはずがなかった。
またニクの右腕に光が宿る。
そして連続して光魔法が撃ち出され強盗たちの右腕を剣ごと消し飛ばした。
「敵対勢力の無力化を確認。
荷電粒子砲待機状態に入ります」
ニクの攻撃が光魔法の【マジックミサイル】ではなく、荷電粒子砲だったことには誰も気付かなかった。
成熟した科学は魔法と区別がつかない。
それは多田野信の知識を得たカナタでさえ解っていなかった。
カナタは強盗達の傷が焼けて塞がっていて、このまま放置しても死ぬことはないと確認すると、地面をのた打ち回る強盗たちの横をすり抜けて路地を出た。
強盗への反撃は正当防衛であり、カナタに罪悪感は微塵もなかった。
むしろ殺さなかったことが、多田野信の知識に引き摺られた結果だった。
この世界では強盗など殺しても構わないというのが一般的な風潮なのだ。
命の価値が軽い世の中だった。
「これ、衛兵に通報した方がいいのかな?」
「マスター、消し炭に変えれば手間いらずです」
ニクが怖いことを言う。
こんな時だけ会話が成立するのもなんだかなぁと思うカナタだった。
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