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自由浮遊惑星編
188 自由浮遊惑星編9 外殻侵入
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side:ニビル外殻構造物外縁宙域 アキラ視点
『それでは、宇宙港へ誘導しますので、そのまま進入してください。
自動防衛システムは停止していますのでご安心ください』
ニビルの表面に明かりが灯ると大きな円を描いていく。
地球の直径の8倍もある球体であるニビルの表面に、しっかり円として描かれて見えるということは、あの円一つで地球の月ぐらいの大きさがあるのか。
その中心にあるのが宇宙港の入り口なのだろう。
僕は宇宙空間から円の中心を仮想スクリーンに拡大表示して観察する。
するとそこには宇宙港の入り口と思われる開口部があり、そこから誘導のレーザーが発信されていた。
僕は専用艦をその二条のレーザーの間に入るようにコースを取らせ進めて行った。
そこには宇宙港というより巨大な通路とでも言うような空間が待ち受けていた。
どうやら空気は無さそうだ。
「あ、拙い。パイロットスーツを着てなかったんだ。どうやって上陸しようか?」
1200年も隔絶した文明同士が接触するからには、お互い検疫をしないと致命的な病気をうつされてしまう可能性がある。
それを防ぐには安全が確認されるまでは防疫服、いやここなら宇宙服を着て接触するべきだ。
しばし僕が思案しているとまた通信が届いた。
『外部扉が閉まると内部扉が開きます。
そのまま外殻の裏側を航行し北極点真上の制御エリアにお越しください』
通信の通り、外部扉が閉まると内部扉が開き出した。
その内部扉の向こうには夕方ぐらいの明るさで輝く1つの惑星が丸々収められていた。
なるほど、ニビルは人工惑星ではなく、内部に本物の惑星を収納したダイソン球だったんだ。
おそらく惑星ごと銀河を旅するために外殻構造物で覆って運ぼうという大掛かりな仕掛けなのだろう。
惑星はほぼ地球サイズ。外殻との間に空間を設けるため、外殻部の直径が8倍になっているのだろう。
その惑星と外殻の隙間を航行して制御エリアに行けということらしい。
僕は専用艦を外殻の厚みである数百kmの通路を進めて外殻内部に進入した。
そして外殻に添って航行し北極点真上つまり惑星の自転軸の北天方向の外殻裏側の制御エリアを目指す。
「なるほど、最重要設備には外から直接行けないようになっているんだな。
それにしても暗い。まるで夕方のようだ」
そういえば、惑星を照らす光源が少なく疎らだ。
外殻の裏側には大きく損傷した形跡がある。
その損傷がそのまま修理されることなく放置されているのだろう。
「もしや人工太陽が壊れているのか?」
惑星を銀河間航行させる技術力がありながら人工太陽を直せない。
外殻裏には防衛用の兵器が配備されているが、良く見るとそれが破壊され残骸となっている箇所がある。
その周辺の人工太陽が機能していない様子だ。
これは何かあったとしか思えないな。
惑星が1個あれば10億人の食糧を生産する能力ぐらいはあるだろうに、人工太陽がこれでは、もしかするとあの惑星には人が住めないのかもしれない。
なぜコールドスリープに入ったのか? なぜ食糧援助が必要なのか?
その理由がこの破壊によるものなのかもしれない。
そんなことを考えながら進むと専用艦は北極点真上に到着した。
『到着した。どうすればいい?』
『外殻の格納扉を開けます。そちらに着陸して下さい。
こちらの制御室にご案内します。そこで制御端末を操作していただきます』
外殻を見ていると、侵入経路を示すラインが描かれていく。
その侵入経路に添って専用艦を進めると人工重力を感じた。
慌てて艦の上下を入れ替えるべくロールをする。
そのまま誘導に従い、外殻に開いた格納庫へと僕は専用艦を着陸させた。
「それにしても、制御端末を直接操作しなければならないのか?
検疫の問題もあるし、あまり相手のテリトリーで生身は晒したくないんだけどな」
検疫も出来てない所に生身で乗り込むのは遠慮したい。
もしニビルの民がコールドスリープに入った原因が疫病なら、そこに生身は晒すのは自殺行為だ。
なんとかならないものか。
僕の専用艦に向かって格納庫のあちこちからケーブルや乗降用チューブなどが伸びてくる。
さすが同一技術の末裔。1200年経っても互換性があるようだ。
「ん? ケーブル? そうかネットワークも互換性があるはずだ!
現帝国にネットワーク技術が残っているということは、ニビルにも残っているはずだ」
僕は専用艦の電脳を通じてニビルの有線ネットワークに侵入を開始した。
ニビルのネットワークのセキュリティは現帝国が使っているものとほとんど違わなかった。
権限レベルが設定されていて、その権限を持たない者は操作出来ないという基本は同じ。
ただし、その権限レベルを設定したのが1200年前なのだ。
つまり同じシステムでもクローズド環境で使い続けられたネットワークには、外部から新たな権限を持つ人間がアクセスしても、その人間が権限を持っているという情報を得ていないのでアクセス出来ないということだ。
開放されているアクセス権限のコードでも現帝国に残っていれば問題ないのだが、それこそ現帝国では失伝していて意味をなさない。
だから権限を度外視出来る端末を直接操作しなければならないのか……。
『こちらは緊急発進で宇宙服が無い。検疫も無いまま生身を晒せないので上陸出来ない。
端末操作ではなく、ネットワークからの操作を試みたい。
そちらのアクセス権限をお借りしたいんだけど無理ですか?』
『アクセス権限? わかりません。
端末の操作は誰でも出来るはずですが、我らにはその操作方法すら失伝してしまっているので……』
なんということだ。
そんな重要なことを失伝していたのでは、何も出来なくて当然だ。
端末操作すら出来ないからコールドスリープの解凍を止められないんだ。
いや、コールドスリープを解けば操作方法を知るオリジナル帝国人が目覚めるということか。
本末転倒だな。
『わかりました。電脳に強制介入してもいいですか?』
『よくわかりませんが、同胞の命が救えるのならお願いします』
よし言質はとった。
電脳を乗っ取って権限を奪ってしまおう。
「提督コマンド、最上位命令発動! ナーブクラック、権限掌握!」
僕はネットワークを通じて奥の手を使ってみた。
『皇翼艦隊旗艦からの提督コマンドを確認。
ニビル制御電脳は陛下に全権限を委譲します。
なんなりとご命令を』
ネットワークを通じてニビルの制御電脳から返事が来た。
「ん? 制御電脳が何か変なことを言ったぞ?
まあいいや。皇帝の因子が何かに作用したんだろう。
とりあえず何でも言う事を聞いてくれるらしいから命令しよう」
僕はネットワーク経由で命令を発した。
星の守り人達を間に入れても、システムを理解しているように思えないからね。
『コールドスリープ解凍中止。解凍シーケンス中の者は再凍結だ』
『命令を受領しました。コールスリープ解凍中止。再凍結開始します』
「ふ~。なんとかなったか。
彼らを起こすにしてもまだ早い」
それにしても星の守り人達が歳月を経て全く機能していない感じだ。
これは星の守り人達よりニビル制御電脳に経緯を聞いた方が早いな。
『コールドスリープに至る経緯を報告してくれ。そしてニビルの食糧生産事情も頼む』
『了解しました。ニビルの民がコールドスリープに入ったのは……』
ニビルの制御電脳が語り始めた話に僕は愕然とした。
『それでは、宇宙港へ誘導しますので、そのまま進入してください。
自動防衛システムは停止していますのでご安心ください』
ニビルの表面に明かりが灯ると大きな円を描いていく。
地球の直径の8倍もある球体であるニビルの表面に、しっかり円として描かれて見えるということは、あの円一つで地球の月ぐらいの大きさがあるのか。
その中心にあるのが宇宙港の入り口なのだろう。
僕は宇宙空間から円の中心を仮想スクリーンに拡大表示して観察する。
するとそこには宇宙港の入り口と思われる開口部があり、そこから誘導のレーザーが発信されていた。
僕は専用艦をその二条のレーザーの間に入るようにコースを取らせ進めて行った。
そこには宇宙港というより巨大な通路とでも言うような空間が待ち受けていた。
どうやら空気は無さそうだ。
「あ、拙い。パイロットスーツを着てなかったんだ。どうやって上陸しようか?」
1200年も隔絶した文明同士が接触するからには、お互い検疫をしないと致命的な病気をうつされてしまう可能性がある。
それを防ぐには安全が確認されるまでは防疫服、いやここなら宇宙服を着て接触するべきだ。
しばし僕が思案しているとまた通信が届いた。
『外部扉が閉まると内部扉が開きます。
そのまま外殻の裏側を航行し北極点真上の制御エリアにお越しください』
通信の通り、外部扉が閉まると内部扉が開き出した。
その内部扉の向こうには夕方ぐらいの明るさで輝く1つの惑星が丸々収められていた。
なるほど、ニビルは人工惑星ではなく、内部に本物の惑星を収納したダイソン球だったんだ。
おそらく惑星ごと銀河を旅するために外殻構造物で覆って運ぼうという大掛かりな仕掛けなのだろう。
惑星はほぼ地球サイズ。外殻との間に空間を設けるため、外殻部の直径が8倍になっているのだろう。
その惑星と外殻の隙間を航行して制御エリアに行けということらしい。
僕は専用艦を外殻の厚みである数百kmの通路を進めて外殻内部に進入した。
そして外殻に添って航行し北極点真上つまり惑星の自転軸の北天方向の外殻裏側の制御エリアを目指す。
「なるほど、最重要設備には外から直接行けないようになっているんだな。
それにしても暗い。まるで夕方のようだ」
そういえば、惑星を照らす光源が少なく疎らだ。
外殻の裏側には大きく損傷した形跡がある。
その損傷がそのまま修理されることなく放置されているのだろう。
「もしや人工太陽が壊れているのか?」
惑星を銀河間航行させる技術力がありながら人工太陽を直せない。
外殻裏には防衛用の兵器が配備されているが、良く見るとそれが破壊され残骸となっている箇所がある。
その周辺の人工太陽が機能していない様子だ。
これは何かあったとしか思えないな。
惑星が1個あれば10億人の食糧を生産する能力ぐらいはあるだろうに、人工太陽がこれでは、もしかするとあの惑星には人が住めないのかもしれない。
なぜコールドスリープに入ったのか? なぜ食糧援助が必要なのか?
その理由がこの破壊によるものなのかもしれない。
そんなことを考えながら進むと専用艦は北極点真上に到着した。
『到着した。どうすればいい?』
『外殻の格納扉を開けます。そちらに着陸して下さい。
こちらの制御室にご案内します。そこで制御端末を操作していただきます』
外殻を見ていると、侵入経路を示すラインが描かれていく。
その侵入経路に添って専用艦を進めると人工重力を感じた。
慌てて艦の上下を入れ替えるべくロールをする。
そのまま誘導に従い、外殻に開いた格納庫へと僕は専用艦を着陸させた。
「それにしても、制御端末を直接操作しなければならないのか?
検疫の問題もあるし、あまり相手のテリトリーで生身は晒したくないんだけどな」
検疫も出来てない所に生身で乗り込むのは遠慮したい。
もしニビルの民がコールドスリープに入った原因が疫病なら、そこに生身は晒すのは自殺行為だ。
なんとかならないものか。
僕の専用艦に向かって格納庫のあちこちからケーブルや乗降用チューブなどが伸びてくる。
さすが同一技術の末裔。1200年経っても互換性があるようだ。
「ん? ケーブル? そうかネットワークも互換性があるはずだ!
現帝国にネットワーク技術が残っているということは、ニビルにも残っているはずだ」
僕は専用艦の電脳を通じてニビルの有線ネットワークに侵入を開始した。
ニビルのネットワークのセキュリティは現帝国が使っているものとほとんど違わなかった。
権限レベルが設定されていて、その権限を持たない者は操作出来ないという基本は同じ。
ただし、その権限レベルを設定したのが1200年前なのだ。
つまり同じシステムでもクローズド環境で使い続けられたネットワークには、外部から新たな権限を持つ人間がアクセスしても、その人間が権限を持っているという情報を得ていないのでアクセス出来ないということだ。
開放されているアクセス権限のコードでも現帝国に残っていれば問題ないのだが、それこそ現帝国では失伝していて意味をなさない。
だから権限を度外視出来る端末を直接操作しなければならないのか……。
『こちらは緊急発進で宇宙服が無い。検疫も無いまま生身を晒せないので上陸出来ない。
端末操作ではなく、ネットワークからの操作を試みたい。
そちらのアクセス権限をお借りしたいんだけど無理ですか?』
『アクセス権限? わかりません。
端末の操作は誰でも出来るはずですが、我らにはその操作方法すら失伝してしまっているので……』
なんということだ。
そんな重要なことを失伝していたのでは、何も出来なくて当然だ。
端末操作すら出来ないからコールドスリープの解凍を止められないんだ。
いや、コールドスリープを解けば操作方法を知るオリジナル帝国人が目覚めるということか。
本末転倒だな。
『わかりました。電脳に強制介入してもいいですか?』
『よくわかりませんが、同胞の命が救えるのならお願いします』
よし言質はとった。
電脳を乗っ取って権限を奪ってしまおう。
「提督コマンド、最上位命令発動! ナーブクラック、権限掌握!」
僕はネットワークを通じて奥の手を使ってみた。
『皇翼艦隊旗艦からの提督コマンドを確認。
ニビル制御電脳は陛下に全権限を委譲します。
なんなりとご命令を』
ネットワークを通じてニビルの制御電脳から返事が来た。
「ん? 制御電脳が何か変なことを言ったぞ?
まあいいや。皇帝の因子が何かに作用したんだろう。
とりあえず何でも言う事を聞いてくれるらしいから命令しよう」
僕はネットワーク経由で命令を発した。
星の守り人達を間に入れても、システムを理解しているように思えないからね。
『コールドスリープ解凍中止。解凍シーケンス中の者は再凍結だ』
『命令を受領しました。コールスリープ解凍中止。再凍結開始します』
「ふ~。なんとかなったか。
彼らを起こすにしてもまだ早い」
それにしても星の守り人達が歳月を経て全く機能していない感じだ。
これは星の守り人達よりニビル制御電脳に経緯を聞いた方が早いな。
『コールドスリープに至る経緯を報告してくれ。そしてニビルの食糧生産事情も頼む』
『了解しました。ニビルの民がコールドスリープに入ったのは……』
ニビルの制御電脳が語り始めた話に僕は愕然とした。
応援ありがとうございます!
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