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領主編
118 領主編12 ドキッ! アイドルだらけの海洋リゾート 前編
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そろそろ楓にご褒美を渡さないと爆発しそうな雰囲気がある。
騙して何日も手伝わせたのだから怒って当然だろう。
AKR01、AKR07、AKR13では一緒に行動したけど、その他の可能性が低い星系は、詳細調査を別々に行ったからね。
ここは呼び出した時の餌だったアクア3の海洋リゾートに連れて行って機嫌を直してもらおう。
やっと諸々の手続きや内政の手配が終わったからね。
「楓、少し暇になったから海洋リゾートに行こうか?」
「やったー。やっと水着の出番が来たーーーーーーー!!」
僕がそう口にしたのはお馴染みのアノイ支店社長室。
そこには僕から仕事をふられて忙しく立ち回る神澤社長の姿があった。
「こら晶羅! 誰のおかげで暇になったと思っているんだ?」
拙い。これは拙い。社長に丸投げしたから暇になってるんだった。
社長がキレそうだ。
考えろ。何か回避策を。殺される前に。
「社長もアクア3の漁業を視察するべきじゃないかな?」
その一言で社長は何かを察したようだ。
社長の機嫌が直る。
「そうだな視察は大事だな視察は。
視察は公務だからな」
「ずるーい。紗綾も行くぞ」
「美優も……」
紗綾と美優も便乗する。
綾姫と菜穂さんはやれやれと呆れのポーズをしている。
だが、内心は嬉しいのか口元がニヤけている。
「なら社員旅行だな」
社長の一言でなし崩し的に全員参加となった。
当然社長預かりのシューティングドリームも参加となった。
嫌そうな顔をしているのは沙也加さんだけだ。
ステーションに、いや地球に帰りたかった沙也加さんは、専用艦の修理費で神澤プロモーションに借金を抱えていたため、返済終了までマネージャー業という小間使いをさせられていた。
ブレインハック事件の時に死ぬ思いをしたため、社長に借金をしてまで専用艦の修理を急いだのが彼女の運の悪い所だ。
ケイン元皇子失脚により地球帰還が現実のものとなった後では、修理さえしなければ帰れたのにと思っているようだ。
そんな状況で海洋リゾート全員参加となると、その雑事は全て沙也加さんのもとへと押し付けられることになる。
同じ借金を抱えている綾姫とは、貸主の違いにより扱いが雲泥の差だった。
そもそも社長、僕に借金してるよね?
専用艦修理の部品代、まだだからね?
まあ、そのおかげで移民政策を社長丸投げに出来たんだけどね。
あ、僕も大概だったわ。これで社長の借金は棒引きにしないとならないか……。
もう1000艦以上も鹵獲してるとお金なんてどうでもよくなる。
しかも星系領主だから税金なし。払っても自分のもとに返ってくるだけだし。
沙也加さんの専用艦修理には、僕の次元格納庫に入っていたブラッシュリップス名義の鹵獲艦が使用されていた。
あの時の鹵獲艦は事務所マージンを取られて大艦隊格納庫の部品倉庫へと収められた。
うちの事務所、僕たちが仕事をするとマージンを3:7――事務所3タレント7――でとるんですってよ。
その請求がVPとRPの儲けにがっつりかかって来やがった。
まあ、事務所からも強化費なんかが出てるから、納得できる額ではある。
某事務所のように9:1じゃないし、必要経費も出るし、芸能事務所としては優良な方だよね?
この社員旅行の経費だって事務所もちでしょ?
「みんな、海洋リゾートは第6皇子殿下の奢りだ。お礼の言いなさい」
「「「「ありがとう。晶羅♡♡♡」」」」
くっ。やられた。
確かに僕が楓を連れて行くと言い出したよ。
それに社長にも視察――公務じゃんか!――と言ってしまった。
ここは仕方ない。金はあるんだ。
だが、シューティングドリームは違うと思うよ?
まあ、可哀想だから連れて行くけどね。
「わはは。贅沢三昧させてやるぞ!」
僕は自暴自棄になっていた。
それがあんな事件に発展するとは……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
僕たちはアクア3に到着した。
次元跳躍門よりも次元跳躍の方が速いので、僕と楓の専用艦のCICに便乗という形をとった。
本来なら軌道上の宇宙港から転送で降下するところだが、アクア子爵の配慮で専用艦で直接降下出来るプライベートアイランドを用意してもらった。
プライベートアイランドの宇宙艦専用港に駐機する僕と楓の専用艦。
そこから降り立ったのは総勢20名。
僕、楓、社長、沙也加さん、菜穂さん、紗綾、美優、綾姫、嫁のキャリー、マリー、ジェーン、シューティングドリームのナギサ、カオリ、リサ、アミ、ユイ、そして護衛として付いてきたラーテル族、熊族、獅子族、虎族の女性戦士4名。
護衛たちはジョン=ドゥ=ラーテル男爵たってのお願いで同行した。
ジョン男爵からするとアクア子爵はまだ信用出来ないんだそうだ。
「専用艦に乗っていれば最強の若様でも生身の時に襲撃されたら一捻りですよ!」
これがジョン男爵の言い分だった。
ラーテルに言われると説得力がある。生身なら実際に一捻りされそうだ。
専用艦に乗れば最強というのは褒め過ぎだが、確かに生身の僕は戦闘力ゼロだ。
それで最強部族ラーテルが護衛の同行を申し出たというわけだ。
だがそこは他の部族も黙ってない。
戦闘民族の熊族、獅子族、虎族も護衛参加を表明、各部族から1名の参加となった。
チームワーク的に同一部族で統一した方が護衛には適しているんじゃないかと思ったけど、みんなの必死さで言い出せる空気じゃなかった。
で、当日集合場所に現れたのが女性戦士ばかり。おまけに嫁3人も参加。
ジョン男爵に伝わるということは嫁にも伝わるのは当たり前。
ジェーンはジョン男爵の娘だし、僕から誘わなかったのは明らかな失策だった。
だがこれほどの人数の獣人女性を同行させて彼らは何を期待している?
プライベートアイランドは宇宙艦専用港を離れると自然自然自然という人の手がほぼ入っていないリゾートだった。
南国植物に隠されるようにひっそりと建つコテージは、その外観と違って内部は高級ホテルのスイートだった。
ビーチの砂浜はサンゴの混じったピンク色。エメラルドグリーンの海。
「どこの新婚旅行先だよ!」
僕は思わず突っ込まざるを得なかった。
その言葉でスイッチが入り、ギラギラ光る嫁ーずの目に貞操の危機を感じる。
ちょっとハメられた感があるのは気のせいか?
部屋割りは僕と社長と楓が個室。菜穂さんと沙也加さん、綾姫と美優と紗綾、ジェーンとラーテル族護衛、マリーと熊族護衛、キャリーと獅子族護衛、シューティングドリームは別棟に5人と虎族護衛が同室となった。
ただし護衛はほぼ部屋を使わず護衛任務にあたるらしい。
意図的に個室化されてる気もするが怖いのでスルーしよう。
荷物を置き短パンの水着に開襟シャツ、ビーチサンダルというラフな格好に着替えると、皆でリビングに集まる。
トロピカルカラーの三角ビキニ一つでスタンバイする紗綾、青い水着の上に青白ボーダーのラッシュガードを羽織る綾姫、黄色のワンピースで水着を隠す菜穂さん、紺のスクール水着+ネコミミカチューシャの美優が既に待っていた。
シューティングドリームはお揃いのデザインで色違いのタンキニだった。
さすがアイドル。みんなカワイイ。
もじもじしながらピンクフリルのホルダーネックビキニの楓もやってくる。
嫁ーずは……。はりきり過ぎた危険な水着を着ている……。
一言言っておこう。布面積が少なかったと。
水着拒否の沙也加さんが一服の清涼剤のようだ。
「みんなそろってるか? よし仕事だ!」
そこへハーフパンツにアロハシャツ、頭にサングラスを乗せた怪しい現地コーディネーター風の社長が現れた。
動画用のビデオカメラが2台、スチールカメラが1台、その他レフ板やらを運んでくる。
「護衛の人達手伝ってね」
社長がスチールカメラ、僕と虎族護衛にビデオカメラ、獅子族と熊族護衛にレフ板を持たせていく。
「ちょっと社長、何を始めるんだ?」
「決まってるだろ、DVDと写真集撮影だ!」
僕は頭を抱えた。社長に近づいて耳元で囁く。
「ちょっと社長。僕は水着撮影NGだよ。男なんだから」
シューティングドリームのメンバーが晶羅を男だと思い込んだふしがあるので彼女たちの前で正体を明かすわけにはいかない。
「元から晶羅に期待はしていない。おまえはビデオカメラ担当だ」
「え? じゃあ晶羅は?」
社長が徐ろに指を差す。
その指差す先には楓がいた。
そうだった。楓を僕の影武者にしようと提案したのは僕自身だった。
「「「「「わー。きららちゃんカワイイ」」」」」
シューティングドリームのメンバーも僕ときららが双子――三つ子だが――だと認識してくれたようだ。
これできらら男説は勘違いだったと納得してくれただろう。
これだけでもシューティングドリームのメンバーを連れて来たかいがあったというもの。
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
トロピカルカラーの三角ビキニで波打ち際を走る紗綾。
さすがアイドル、めっちゃ南国リゾートに映える。
砂で城を作る紺のスクール水着の美優。
胸に「みゆ」の文字が書かれた白い布が縫い付けてある。あざとい。
好きな人は大喜びだろう。
ビーチマットに寝転びグラビアポーズをとる白いモノキニの菜穂さん。
さすがリーダー。グラビアのイロハを熟知している。
大人のお姉さんの雰囲気がたまらない。
葉っぱ模様の青いハンドゥビキニの綾姫が紗綾と水を掛け合う。
恥ずかしがり屋の綾姫には隠し撮り的な撮影が最適だ。
しかもそれがマニア心をくすぐる演出となっている。
ピンクフリルのホルダーネックビキニで、ぎこちないグラビアポーズをとるきららこと楓。
初々しさにファンの皆様も満足してくれることだろう。
次々と指示される社長演出で僕たちは忙しく撮影をこなしていく。
「ん? 紗綾、その水着の穴はなんだい?」
ビキニを別バージョンに着替えた紗綾の水着の尻の部分に穴が開いていた。
破れたとか切れたとかではなく、きちんと縫製されて強化されている穴。
「んー? デザインじゃないのー?」
紗綾は気にしていないようだが、どうも気になる。
そこでハッと気付いた。
「それ獣人用の尻尾穴じゃないか?」
僕の声に嫁ーずが紗綾の水着を確認する。
「それは猫族用ですね」
どうやら水着を手に入れたアノイ要塞の商店では、獣人用の水着が当たり前に置いてあって、気付かずに一緒に購入してしまったようだ。
アノイ要塞の住人はほとんどが獣人なので当然と言えば当然だ。
デザイン的には地球の文化が入りやすい地であるため、全く違和感がなかったことが混入の原因だろう。
「ふーん。まあいいやー」
紗綾の適当さに呆気にとられる僕たち。
ファンには良い目の保養になることだろう。
それにしても嫁ーずの水着には穴なんて無いぞ?
ああ、布地が少なくてローライズの水着の上から尻尾が出てるのね……。
じっくりお尻を見つめてしまった僕に嫁ーずの目がキラリと光る。
後が怖い。
こうしてプライベートアイランドの一日は撮影のみで過ぎていった。
一番働いたのは沙也加さんかもしれない。
日焼け止めを塗ったりメイクを直したり、飲み物を用意したり。
僕はひたすら重労働だった。
カメラの重さもさることながら、撮影中ずっと半裸の嫁ーずがまとわりついていたんだ……。
それにしても、社長、これ公務じゃないよね?
やっぱり旅費は事務所経費じゃない?
何にしても楽しい一日だった。
そして夜。僕は肉食獣の襲撃を受けた。
追記
旧作では100話SPだったのですが、アイドル編を大幅加筆したために話数がズレてしまいました。
戦闘ばっかりで殺伐とする中、こういったノリは好きなんですよね。
ここは加筆サービスするしかない!
後編につづく。
騙して何日も手伝わせたのだから怒って当然だろう。
AKR01、AKR07、AKR13では一緒に行動したけど、その他の可能性が低い星系は、詳細調査を別々に行ったからね。
ここは呼び出した時の餌だったアクア3の海洋リゾートに連れて行って機嫌を直してもらおう。
やっと諸々の手続きや内政の手配が終わったからね。
「楓、少し暇になったから海洋リゾートに行こうか?」
「やったー。やっと水着の出番が来たーーーーーーー!!」
僕がそう口にしたのはお馴染みのアノイ支店社長室。
そこには僕から仕事をふられて忙しく立ち回る神澤社長の姿があった。
「こら晶羅! 誰のおかげで暇になったと思っているんだ?」
拙い。これは拙い。社長に丸投げしたから暇になってるんだった。
社長がキレそうだ。
考えろ。何か回避策を。殺される前に。
「社長もアクア3の漁業を視察するべきじゃないかな?」
その一言で社長は何かを察したようだ。
社長の機嫌が直る。
「そうだな視察は大事だな視察は。
視察は公務だからな」
「ずるーい。紗綾も行くぞ」
「美優も……」
紗綾と美優も便乗する。
綾姫と菜穂さんはやれやれと呆れのポーズをしている。
だが、内心は嬉しいのか口元がニヤけている。
「なら社員旅行だな」
社長の一言でなし崩し的に全員参加となった。
当然社長預かりのシューティングドリームも参加となった。
嫌そうな顔をしているのは沙也加さんだけだ。
ステーションに、いや地球に帰りたかった沙也加さんは、専用艦の修理費で神澤プロモーションに借金を抱えていたため、返済終了までマネージャー業という小間使いをさせられていた。
ブレインハック事件の時に死ぬ思いをしたため、社長に借金をしてまで専用艦の修理を急いだのが彼女の運の悪い所だ。
ケイン元皇子失脚により地球帰還が現実のものとなった後では、修理さえしなければ帰れたのにと思っているようだ。
そんな状況で海洋リゾート全員参加となると、その雑事は全て沙也加さんのもとへと押し付けられることになる。
同じ借金を抱えている綾姫とは、貸主の違いにより扱いが雲泥の差だった。
そもそも社長、僕に借金してるよね?
専用艦修理の部品代、まだだからね?
まあ、そのおかげで移民政策を社長丸投げに出来たんだけどね。
あ、僕も大概だったわ。これで社長の借金は棒引きにしないとならないか……。
もう1000艦以上も鹵獲してるとお金なんてどうでもよくなる。
しかも星系領主だから税金なし。払っても自分のもとに返ってくるだけだし。
沙也加さんの専用艦修理には、僕の次元格納庫に入っていたブラッシュリップス名義の鹵獲艦が使用されていた。
あの時の鹵獲艦は事務所マージンを取られて大艦隊格納庫の部品倉庫へと収められた。
うちの事務所、僕たちが仕事をするとマージンを3:7――事務所3タレント7――でとるんですってよ。
その請求がVPとRPの儲けにがっつりかかって来やがった。
まあ、事務所からも強化費なんかが出てるから、納得できる額ではある。
某事務所のように9:1じゃないし、必要経費も出るし、芸能事務所としては優良な方だよね?
この社員旅行の経費だって事務所もちでしょ?
「みんな、海洋リゾートは第6皇子殿下の奢りだ。お礼の言いなさい」
「「「「ありがとう。晶羅♡♡♡」」」」
くっ。やられた。
確かに僕が楓を連れて行くと言い出したよ。
それに社長にも視察――公務じゃんか!――と言ってしまった。
ここは仕方ない。金はあるんだ。
だが、シューティングドリームは違うと思うよ?
まあ、可哀想だから連れて行くけどね。
「わはは。贅沢三昧させてやるぞ!」
僕は自暴自棄になっていた。
それがあんな事件に発展するとは……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
僕たちはアクア3に到着した。
次元跳躍門よりも次元跳躍の方が速いので、僕と楓の専用艦のCICに便乗という形をとった。
本来なら軌道上の宇宙港から転送で降下するところだが、アクア子爵の配慮で専用艦で直接降下出来るプライベートアイランドを用意してもらった。
プライベートアイランドの宇宙艦専用港に駐機する僕と楓の専用艦。
そこから降り立ったのは総勢20名。
僕、楓、社長、沙也加さん、菜穂さん、紗綾、美優、綾姫、嫁のキャリー、マリー、ジェーン、シューティングドリームのナギサ、カオリ、リサ、アミ、ユイ、そして護衛として付いてきたラーテル族、熊族、獅子族、虎族の女性戦士4名。
護衛たちはジョン=ドゥ=ラーテル男爵たってのお願いで同行した。
ジョン男爵からするとアクア子爵はまだ信用出来ないんだそうだ。
「専用艦に乗っていれば最強の若様でも生身の時に襲撃されたら一捻りですよ!」
これがジョン男爵の言い分だった。
ラーテルに言われると説得力がある。生身なら実際に一捻りされそうだ。
専用艦に乗れば最強というのは褒め過ぎだが、確かに生身の僕は戦闘力ゼロだ。
それで最強部族ラーテルが護衛の同行を申し出たというわけだ。
だがそこは他の部族も黙ってない。
戦闘民族の熊族、獅子族、虎族も護衛参加を表明、各部族から1名の参加となった。
チームワーク的に同一部族で統一した方が護衛には適しているんじゃないかと思ったけど、みんなの必死さで言い出せる空気じゃなかった。
で、当日集合場所に現れたのが女性戦士ばかり。おまけに嫁3人も参加。
ジョン男爵に伝わるということは嫁にも伝わるのは当たり前。
ジェーンはジョン男爵の娘だし、僕から誘わなかったのは明らかな失策だった。
だがこれほどの人数の獣人女性を同行させて彼らは何を期待している?
プライベートアイランドは宇宙艦専用港を離れると自然自然自然という人の手がほぼ入っていないリゾートだった。
南国植物に隠されるようにひっそりと建つコテージは、その外観と違って内部は高級ホテルのスイートだった。
ビーチの砂浜はサンゴの混じったピンク色。エメラルドグリーンの海。
「どこの新婚旅行先だよ!」
僕は思わず突っ込まざるを得なかった。
その言葉でスイッチが入り、ギラギラ光る嫁ーずの目に貞操の危機を感じる。
ちょっとハメられた感があるのは気のせいか?
部屋割りは僕と社長と楓が個室。菜穂さんと沙也加さん、綾姫と美優と紗綾、ジェーンとラーテル族護衛、マリーと熊族護衛、キャリーと獅子族護衛、シューティングドリームは別棟に5人と虎族護衛が同室となった。
ただし護衛はほぼ部屋を使わず護衛任務にあたるらしい。
意図的に個室化されてる気もするが怖いのでスルーしよう。
荷物を置き短パンの水着に開襟シャツ、ビーチサンダルというラフな格好に着替えると、皆でリビングに集まる。
トロピカルカラーの三角ビキニ一つでスタンバイする紗綾、青い水着の上に青白ボーダーのラッシュガードを羽織る綾姫、黄色のワンピースで水着を隠す菜穂さん、紺のスクール水着+ネコミミカチューシャの美優が既に待っていた。
シューティングドリームはお揃いのデザインで色違いのタンキニだった。
さすがアイドル。みんなカワイイ。
もじもじしながらピンクフリルのホルダーネックビキニの楓もやってくる。
嫁ーずは……。はりきり過ぎた危険な水着を着ている……。
一言言っておこう。布面積が少なかったと。
水着拒否の沙也加さんが一服の清涼剤のようだ。
「みんなそろってるか? よし仕事だ!」
そこへハーフパンツにアロハシャツ、頭にサングラスを乗せた怪しい現地コーディネーター風の社長が現れた。
動画用のビデオカメラが2台、スチールカメラが1台、その他レフ板やらを運んでくる。
「護衛の人達手伝ってね」
社長がスチールカメラ、僕と虎族護衛にビデオカメラ、獅子族と熊族護衛にレフ板を持たせていく。
「ちょっと社長、何を始めるんだ?」
「決まってるだろ、DVDと写真集撮影だ!」
僕は頭を抱えた。社長に近づいて耳元で囁く。
「ちょっと社長。僕は水着撮影NGだよ。男なんだから」
シューティングドリームのメンバーが晶羅を男だと思い込んだふしがあるので彼女たちの前で正体を明かすわけにはいかない。
「元から晶羅に期待はしていない。おまえはビデオカメラ担当だ」
「え? じゃあ晶羅は?」
社長が徐ろに指を差す。
その指差す先には楓がいた。
そうだった。楓を僕の影武者にしようと提案したのは僕自身だった。
「「「「「わー。きららちゃんカワイイ」」」」」
シューティングドリームのメンバーも僕ときららが双子――三つ子だが――だと認識してくれたようだ。
これできらら男説は勘違いだったと納得してくれただろう。
これだけでもシューティングドリームのメンバーを連れて来たかいがあったというもの。
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
トロピカルカラーの三角ビキニで波打ち際を走る紗綾。
さすがアイドル、めっちゃ南国リゾートに映える。
砂で城を作る紺のスクール水着の美優。
胸に「みゆ」の文字が書かれた白い布が縫い付けてある。あざとい。
好きな人は大喜びだろう。
ビーチマットに寝転びグラビアポーズをとる白いモノキニの菜穂さん。
さすがリーダー。グラビアのイロハを熟知している。
大人のお姉さんの雰囲気がたまらない。
葉っぱ模様の青いハンドゥビキニの綾姫が紗綾と水を掛け合う。
恥ずかしがり屋の綾姫には隠し撮り的な撮影が最適だ。
しかもそれがマニア心をくすぐる演出となっている。
ピンクフリルのホルダーネックビキニで、ぎこちないグラビアポーズをとるきららこと楓。
初々しさにファンの皆様も満足してくれることだろう。
次々と指示される社長演出で僕たちは忙しく撮影をこなしていく。
「ん? 紗綾、その水着の穴はなんだい?」
ビキニを別バージョンに着替えた紗綾の水着の尻の部分に穴が開いていた。
破れたとか切れたとかではなく、きちんと縫製されて強化されている穴。
「んー? デザインじゃないのー?」
紗綾は気にしていないようだが、どうも気になる。
そこでハッと気付いた。
「それ獣人用の尻尾穴じゃないか?」
僕の声に嫁ーずが紗綾の水着を確認する。
「それは猫族用ですね」
どうやら水着を手に入れたアノイ要塞の商店では、獣人用の水着が当たり前に置いてあって、気付かずに一緒に購入してしまったようだ。
アノイ要塞の住人はほとんどが獣人なので当然と言えば当然だ。
デザイン的には地球の文化が入りやすい地であるため、全く違和感がなかったことが混入の原因だろう。
「ふーん。まあいいやー」
紗綾の適当さに呆気にとられる僕たち。
ファンには良い目の保養になることだろう。
それにしても嫁ーずの水着には穴なんて無いぞ?
ああ、布地が少なくてローライズの水着の上から尻尾が出てるのね……。
じっくりお尻を見つめてしまった僕に嫁ーずの目がキラリと光る。
後が怖い。
こうしてプライベートアイランドの一日は撮影のみで過ぎていった。
一番働いたのは沙也加さんかもしれない。
日焼け止めを塗ったりメイクを直したり、飲み物を用意したり。
僕はひたすら重労働だった。
カメラの重さもさることながら、撮影中ずっと半裸の嫁ーずがまとわりついていたんだ……。
それにしても、社長、これ公務じゃないよね?
やっぱり旅費は事務所経費じゃない?
何にしても楽しい一日だった。
そして夜。僕は肉食獣の襲撃を受けた。
追記
旧作では100話SPだったのですが、アイドル編を大幅加筆したために話数がズレてしまいました。
戦闘ばっかりで殺伐とする中、こういったノリは好きなんですよね。
ここは加筆サービスするしかない!
後編につづく。
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