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領主編
109 領主編3 反乱討伐1
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「アクア3の3って何?」
海洋リゾート惑星に興味津々の紗綾が唐突に訊ねて来た。
確かに何気なく呼んでいたけど、星系の命名基準について説明が必要かもしれない。
「はい、愛さんよろしく」
僕は愛さんに丸投げする。
「星系名は恒星の名前がそのまま使われ恒星〇〇の〇〇星系と呼ばれます。
その星系に存在する惑星は公転軌道が内側から順番に数字が振られます。
アクア星系ならアクア1、アクア2、三番目の惑星なのでアクア3です」
「でもグラウルは数字無いぞ?」
「グラウル星系は惑星が1つなので数字がありません。
その代わり複数ある衛星が居住可能です。
衛星にも命名基準があり惑星を公転する軌道が内側から順番にグラウルα、β、γ、δと名付けられます。
昔は観測能力の問題で発見できない衛星があったため、内側からではなく発見順に内側からでしたが、宇宙艦を要する現在では全ての衛星を把握済みなため、内側からという基準になっています。
グラウルの衛星はそのようなことでグラウルαと呼びますが、星系に惑星が複数あるアクア星系のアクア3では衛星はアクア3αになります」
「アノイ星系は惑星が複数あるのに惑星アノイで数字が無いぞ?」
「それはケイン元皇子が星系情報を秘匿していたのでデータがアップデートされていなかったのです。
アノイ星系はケイン元皇子が発見し、管理を帝国に丸投げしたため名目上は帝国直轄領となっていました。
しかし、それは防衛用の要塞艦を帝国から得るためで、実質ケイン元皇子の直轄領だったため、情報秘匿が成立していたのです。
今は得られた情報から惑星アノイはアノイ2という正式呼称になっています。
しかし今までの慣例でそのまま惑星アノイと呼ばれているのです」
「ふーーん。わかった」
横から聞いていて僕にもためになる話だった。さすが愛さん。
ビギニ星系にある次元跳躍門が銀河間跳躍できる超ハブ次元跳躍門だということも、どうやら秘匿されているらしい。
超ハブ次元跳躍門の一般会話内での呼称はビギニゲートなため、アノイ星系に配備されていた帝国所属のサポートAIであってもその情報は把握していないようだ。
いや、違う。愛さんなら把握しているはずだ。
だが、それが帝国に情報提供されていないというのは、帝国が知らない何らかの制限が愛さんにかかっているということだろうか?
そういや、愛さんは現帝国が”騙し討ちで帝位を奪った”と説明した。
もしかして、サポートAIのシステムは旧帝国のシステムのまま動いているのかもしれない。
なので、旧帝国の秘密を守ろうとする制限がかかっていると思える。
愛さんから帝国へ情報が行っているとなると、僕は愛さんの前で拙いことを話しすぎている。
楓の事とか、真・帝国のこととか筒抜けじゃないか。
それがないということはサポートAIのシステムは僕たちの味方と見ていいだろう。
裁判の時も無理をしながら僕の味方になってくれたしね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
ダグラス伯爵とケイン元皇子系代官のミラーに僕は討伐令を出した。
ミラーはケイン元皇子の家臣である上級騎士の3男で帝国本国の騎士学校を出た文官らしい。
そんな関係なので反乱に与したようだ。
一応ニ人には次元通信で降伏勧告を送ったのだが期限までに返事は無かった。
これはもう帝国法で定めた反乱で確定である。
討伐には2つの選択肢があった。
僕が先頭に立ち直接討伐する方法と、臣下の貴族に「刈り取り自由令」を出し間接的に討伐する方法だ。
ミラーが代官だった惑星ウェイゼン4は刈り取り自由令でいいだろう。
戦争に出てくれた臣下に出す恩賞にもなる。
主戦場のファム星系ファム5とタタラ星系タタラ4の工場衛星は、僕が軍を率いて指揮をする必要があるだろう。
ダグラス伯爵の所在が判らないうちは戦力を分散出来ないのが悩みだ。
僕はアノイ要塞にいる軍または領地関係者をアノイ要塞極秘会議室に集め軍議を開いた。
出席者は僕、アノイ要塞司令コマンダー・サンダース、カプリース領軍司令ノア、グラウル領軍司令ハンター、小領地混成軍司令ジョン、地球軍司令神澤、惑星アクア3星系領主アクア子爵、他代官4名だ。
そういや神澤社長は准男爵に叙爵した。一応地球軍司令なので箔をつける必要があったのだ。
僕は皇子という立場なため、子爵までの叙爵資格があった。それで爵位をばら撒いたというわけだ。
ばら撒いたというのは家臣団に対しても含めてだ。
カプリース男爵を子爵に、グラウル男爵を子爵に、ジョンことジョン=ドゥ=ラーテル准男爵を男爵に陞爵した。
コマンダー・サンダースには1階級昇進を打診したが固辞された。そんなに呼び名が変わるのが嫌なのだろうか?
管理が面倒だったので分配した無人艦7000×3も、彼らからすると恩賞になっていたようだ。
「そういやカプリース領の星系領主は誰なんだ? 小領地混成軍の領地がある惑星の星系領主も」
軍議の席で僕はカプリース領軍司令のノアと小領地混成軍のジョンに質問を投げかけた。
「カプリース領は帝国直轄領なので皇帝陛下になりますが、辺境のため名目上の意味以外のものではありません。
むしろ赤字でやっかいな領地扱いで誰も星系領主にならなかったため帝国直轄領となっていたというのが実状です。
カプリース子爵様が申請すれば若が星系領主になれましょう」
「小領地も帝国直轄領です。正直辺境故誰も引き取り手が無いというのが実状で、カプリースと同様に申請さえ受諾されれば若様が星系領主です」
二人がニヤリとほくそ笑む。
ちょっと君たち、若って何よ? 若って! まあ一応ジョンは義父だけどさ。
「その話しぶりと表情だと申請済みってことか?」
「「御意」」
帝国も管理を丸投げするぐらいの星系が僕の肩に伸し掛かってくるわけね。
あのケイン元皇子が態々手に入れなかった星系って、どんだけお金かかるんだろう?
だがそこは僕に付いてきてくれると誓ってくれた大事な臣下だ。
面倒を見ないなんて選択肢は有り得ない。
「その奉公に報いなければならないな」
僕の支配星系の産業は、畜産2、農業4、水産1、鉱業3、工業1、レジャー1、儲からないかもしれないけど、食べていくには大丈夫かな?
「「有り難き幸せ!」」
現在、反乱により畜産1、農業1、工業1が敵の手にあることになる。
今後のためにも工場衛星は無傷で奪還したいところだ。
「各領軍の出撃可能艦数はどのぐらいだ? 領地の防衛戦力は残してだぞ」
「はい、そこは若様の命令を遵守して領地に3000ほど残した他は各領軍7000ずつといったところです」
3軍を代表してコマンダー・サンダースが答える。
「3領軍はアノイ要塞の防衛戦力でもある。各領軍2000ずつは残ってもらうことになる」
「「「はっ」」」
「残り5000ずつだが、惑星ウェイゼン4は刈り取り自由とするが何艦で行く?」
「若に全艦付いて行きたいところですが、我々も戦争となると懐具合が厳しいので3000行かせもらいたい」
「うん、各領軍がそれぐらいなら合計9000になって充分制圧可能だろう。
ただし領民への略奪暴行は厳禁だ。代官を討伐し領地を3軍で分配せよ」
そんなに行くの? と思いつつ僕は平静を装って答える。
「「「はっ」」」
「アノイ防衛はコマンダー・サンダースに任せる」
「はっ」
「アクア子爵は惑星アクア3の守護。代官は領地が攻められたら防衛艦隊で遅滞戦闘、即時報告を送れ、救援に向かう。
悪いけど、アクア子爵と代官の軍は統帥権を僕に移譲してもらった。裏切ったら艦は動かない。そんなことの無いように頼む」
「「「「「はっ」」」」」
一応統帥権移譲で情報漏洩も防げるはず。裏切り者が居ないことを祈ろう。
「主力は地球軍5000、カプリース領軍2000、グラウル領軍2000、小領地混成軍2000、そして工場惑星からの無人艦10万を加えてタタラ星系を一気に叩く。
攻撃開始時間を合わせる。
作戦開始は明後日の12:00だ。
それまで3領軍は惑星ウェイゼン4攻略に向け次元跳躍門を潜って先行せよ。
主力はまず工場衛星を奪還する。
終了次第ファム5へ次元跳躍、強襲する。
以上質問はあるか?」
僕は周囲を見回す。誰も声を上げない。
「では作戦にうつる。各軍戦闘準備!」
全員が一斉に席を立ち自らの軍に、領地に散って行った。
穀倉地帯4星系はハブ次元跳躍門下の次元跳躍門になる。
移動には2日ほどしかかからない。
問題はタタラ星系の位置。ハブ次元跳躍門までは1週間かかるのだ。
作戦開始は明後日だけどね。
海洋リゾート惑星に興味津々の紗綾が唐突に訊ねて来た。
確かに何気なく呼んでいたけど、星系の命名基準について説明が必要かもしれない。
「はい、愛さんよろしく」
僕は愛さんに丸投げする。
「星系名は恒星の名前がそのまま使われ恒星〇〇の〇〇星系と呼ばれます。
その星系に存在する惑星は公転軌道が内側から順番に数字が振られます。
アクア星系ならアクア1、アクア2、三番目の惑星なのでアクア3です」
「でもグラウルは数字無いぞ?」
「グラウル星系は惑星が1つなので数字がありません。
その代わり複数ある衛星が居住可能です。
衛星にも命名基準があり惑星を公転する軌道が内側から順番にグラウルα、β、γ、δと名付けられます。
昔は観測能力の問題で発見できない衛星があったため、内側からではなく発見順に内側からでしたが、宇宙艦を要する現在では全ての衛星を把握済みなため、内側からという基準になっています。
グラウルの衛星はそのようなことでグラウルαと呼びますが、星系に惑星が複数あるアクア星系のアクア3では衛星はアクア3αになります」
「アノイ星系は惑星が複数あるのに惑星アノイで数字が無いぞ?」
「それはケイン元皇子が星系情報を秘匿していたのでデータがアップデートされていなかったのです。
アノイ星系はケイン元皇子が発見し、管理を帝国に丸投げしたため名目上は帝国直轄領となっていました。
しかし、それは防衛用の要塞艦を帝国から得るためで、実質ケイン元皇子の直轄領だったため、情報秘匿が成立していたのです。
今は得られた情報から惑星アノイはアノイ2という正式呼称になっています。
しかし今までの慣例でそのまま惑星アノイと呼ばれているのです」
「ふーーん。わかった」
横から聞いていて僕にもためになる話だった。さすが愛さん。
ビギニ星系にある次元跳躍門が銀河間跳躍できる超ハブ次元跳躍門だということも、どうやら秘匿されているらしい。
超ハブ次元跳躍門の一般会話内での呼称はビギニゲートなため、アノイ星系に配備されていた帝国所属のサポートAIであってもその情報は把握していないようだ。
いや、違う。愛さんなら把握しているはずだ。
だが、それが帝国に情報提供されていないというのは、帝国が知らない何らかの制限が愛さんにかかっているということだろうか?
そういや、愛さんは現帝国が”騙し討ちで帝位を奪った”と説明した。
もしかして、サポートAIのシステムは旧帝国のシステムのまま動いているのかもしれない。
なので、旧帝国の秘密を守ろうとする制限がかかっていると思える。
愛さんから帝国へ情報が行っているとなると、僕は愛さんの前で拙いことを話しすぎている。
楓の事とか、真・帝国のこととか筒抜けじゃないか。
それがないということはサポートAIのシステムは僕たちの味方と見ていいだろう。
裁判の時も無理をしながら僕の味方になってくれたしね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
ダグラス伯爵とケイン元皇子系代官のミラーに僕は討伐令を出した。
ミラーはケイン元皇子の家臣である上級騎士の3男で帝国本国の騎士学校を出た文官らしい。
そんな関係なので反乱に与したようだ。
一応ニ人には次元通信で降伏勧告を送ったのだが期限までに返事は無かった。
これはもう帝国法で定めた反乱で確定である。
討伐には2つの選択肢があった。
僕が先頭に立ち直接討伐する方法と、臣下の貴族に「刈り取り自由令」を出し間接的に討伐する方法だ。
ミラーが代官だった惑星ウェイゼン4は刈り取り自由令でいいだろう。
戦争に出てくれた臣下に出す恩賞にもなる。
主戦場のファム星系ファム5とタタラ星系タタラ4の工場衛星は、僕が軍を率いて指揮をする必要があるだろう。
ダグラス伯爵の所在が判らないうちは戦力を分散出来ないのが悩みだ。
僕はアノイ要塞にいる軍または領地関係者をアノイ要塞極秘会議室に集め軍議を開いた。
出席者は僕、アノイ要塞司令コマンダー・サンダース、カプリース領軍司令ノア、グラウル領軍司令ハンター、小領地混成軍司令ジョン、地球軍司令神澤、惑星アクア3星系領主アクア子爵、他代官4名だ。
そういや神澤社長は准男爵に叙爵した。一応地球軍司令なので箔をつける必要があったのだ。
僕は皇子という立場なため、子爵までの叙爵資格があった。それで爵位をばら撒いたというわけだ。
ばら撒いたというのは家臣団に対しても含めてだ。
カプリース男爵を子爵に、グラウル男爵を子爵に、ジョンことジョン=ドゥ=ラーテル准男爵を男爵に陞爵した。
コマンダー・サンダースには1階級昇進を打診したが固辞された。そんなに呼び名が変わるのが嫌なのだろうか?
管理が面倒だったので分配した無人艦7000×3も、彼らからすると恩賞になっていたようだ。
「そういやカプリース領の星系領主は誰なんだ? 小領地混成軍の領地がある惑星の星系領主も」
軍議の席で僕はカプリース領軍司令のノアと小領地混成軍のジョンに質問を投げかけた。
「カプリース領は帝国直轄領なので皇帝陛下になりますが、辺境のため名目上の意味以外のものではありません。
むしろ赤字でやっかいな領地扱いで誰も星系領主にならなかったため帝国直轄領となっていたというのが実状です。
カプリース子爵様が申請すれば若が星系領主になれましょう」
「小領地も帝国直轄領です。正直辺境故誰も引き取り手が無いというのが実状で、カプリースと同様に申請さえ受諾されれば若様が星系領主です」
二人がニヤリとほくそ笑む。
ちょっと君たち、若って何よ? 若って! まあ一応ジョンは義父だけどさ。
「その話しぶりと表情だと申請済みってことか?」
「「御意」」
帝国も管理を丸投げするぐらいの星系が僕の肩に伸し掛かってくるわけね。
あのケイン元皇子が態々手に入れなかった星系って、どんだけお金かかるんだろう?
だがそこは僕に付いてきてくれると誓ってくれた大事な臣下だ。
面倒を見ないなんて選択肢は有り得ない。
「その奉公に報いなければならないな」
僕の支配星系の産業は、畜産2、農業4、水産1、鉱業3、工業1、レジャー1、儲からないかもしれないけど、食べていくには大丈夫かな?
「「有り難き幸せ!」」
現在、反乱により畜産1、農業1、工業1が敵の手にあることになる。
今後のためにも工場衛星は無傷で奪還したいところだ。
「各領軍の出撃可能艦数はどのぐらいだ? 領地の防衛戦力は残してだぞ」
「はい、そこは若様の命令を遵守して領地に3000ほど残した他は各領軍7000ずつといったところです」
3軍を代表してコマンダー・サンダースが答える。
「3領軍はアノイ要塞の防衛戦力でもある。各領軍2000ずつは残ってもらうことになる」
「「「はっ」」」
「残り5000ずつだが、惑星ウェイゼン4は刈り取り自由とするが何艦で行く?」
「若に全艦付いて行きたいところですが、我々も戦争となると懐具合が厳しいので3000行かせもらいたい」
「うん、各領軍がそれぐらいなら合計9000になって充分制圧可能だろう。
ただし領民への略奪暴行は厳禁だ。代官を討伐し領地を3軍で分配せよ」
そんなに行くの? と思いつつ僕は平静を装って答える。
「「「はっ」」」
「アノイ防衛はコマンダー・サンダースに任せる」
「はっ」
「アクア子爵は惑星アクア3の守護。代官は領地が攻められたら防衛艦隊で遅滞戦闘、即時報告を送れ、救援に向かう。
悪いけど、アクア子爵と代官の軍は統帥権を僕に移譲してもらった。裏切ったら艦は動かない。そんなことの無いように頼む」
「「「「「はっ」」」」」
一応統帥権移譲で情報漏洩も防げるはず。裏切り者が居ないことを祈ろう。
「主力は地球軍5000、カプリース領軍2000、グラウル領軍2000、小領地混成軍2000、そして工場惑星からの無人艦10万を加えてタタラ星系を一気に叩く。
攻撃開始時間を合わせる。
作戦開始は明後日の12:00だ。
それまで3領軍は惑星ウェイゼン4攻略に向け次元跳躍門を潜って先行せよ。
主力はまず工場衛星を奪還する。
終了次第ファム5へ次元跳躍、強襲する。
以上質問はあるか?」
僕は周囲を見回す。誰も声を上げない。
「では作戦にうつる。各軍戦闘準備!」
全員が一斉に席を立ち自らの軍に、領地に散って行った。
穀倉地帯4星系はハブ次元跳躍門下の次元跳躍門になる。
移動には2日ほどしかかからない。
問題はタタラ星系の位置。ハブ次元跳躍門までは1週間かかるのだ。
作戦開始は明後日だけどね。
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