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放浪編
089 放浪編8 三人目
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「晶羅様、初めまして。私、「はい。そこまで!」」
「事情は把握してる。猫族と犬族からも押しかけ嫁が来てるからね」
僕の言葉を聞き、畏まった態度だった彼女は、すっと肩から力が抜けると開き直ったかのように豹変した。
「小領地混成軍司令ジョン=ドゥ=ラーテル准男爵息女、ジェーン=ドゥ=ラーテルだ。
親の都合でアキラの所に嫁に来た」
なにこの娘。貴族令嬢なのにこの態度。
しかも開き直ってぶっちゃけたよw
猫被ってやがったな。それで僕の態度を見てこれは破談だと喜んで地が出たと。
筋肉質で野性味あふれる雰囲気で貴族令嬢というより女戦士っぽい。
それにあまり乗り気じゃないようだ。
面白い娘だな。
「猫族と犬族の彼女達にも言ったんだけど、アノイ三大勢力のどれかの陣営だけから嫁を取るわけにはいかない。
僕も急な話で戸惑っている。
全ての陣営が仲良く、特に猫族と犬族が仲良く出来たなら三人とも受け入れよう。
とりあえず嫁候補として、お試しで共同生活をすることになっている。
そこへ合流してもらうことになるが、新居の改築が終わるまでは待機していて欲しい」
ジョン司令には悪いけど、事情を説明してさっさとお引き取り願った。
これでジェーン本人が断ってくれるならそれで良しだ。
「それにしてもラーテルってあのラーテルか?」
地球にはラーテルという野生動物がいる。
強靭な皮膚を持ち、ライオンに喧嘩を売って引かないなど武勇伝の数々を持つ獣だ。
猫族と犬族が猫と犬のDNAを取り込んで肉体強化された獣人なら、彼女の種族はラーテルのDNAを取り込んだ獣人なのか?
「はい。肉体強化実験で地球の野生動物からDNAをもらったので、間違いなくそのラーテルです」
「うわ、愛さん! いつの間にそこに!」
いつのまにかサポートAIの有機端末である愛さんが僕の後ろに控えていた。
気配がしないから結構驚くんだよな。
「勇猛果敢、怖いもの知らずで最後まで猫族犬族と争いましたが、好戦的すぎるということで不採用となりました。
その後、貧民から傭兵になり、戦場に出て戦果を上げて叙爵し、小領地領主の准男爵にまで上り詰めた叩き上げの種族です」
「うーん。ジョンさんが何人なのかわからないはずだよ」
愛さんがじっと僕を見つめている。
「ん? どうしたの?」
「よろしいのですか?」
「何が?」
「小領地混成軍のジョン司令は険悪な猫族と犬族の間を取り持ってアノイ要塞をまとめている影の功労者です。
ジェーン嬢が同様の勤めを果たせば、キャロライナ嬢とマリアンナ嬢の間を取り持つ可能性があります」
その見解は僕の目論見を見事に潰すものだった。
「しまった! ”二人の仲が悪いから無かったことに作戦”が破綻する!」
僕はがっくりと項垂れた。
僕がしばらく放心状態になっていると、僕の脇腹がつんつんされる。
そちらを見ると美優がじっと僕を見つめている。
「美優、どうしたの?」
「美優も……」
「えっ?」
「嫁……」
「マジですか」
美優が嫁に立候補した。
「地球……。帰れない。この先生きのこる、晶羅嫁」
先生、きのこりました。
そうか、美優は、地球への帰還が絶望的になって、この世界で生きていくのに僕の嫁を選択したのか。
いや、僕としては可愛い美優がお嫁さんになってくれるのは大歓迎だけど……。
「えーー! ずるーい! 私もだからねー」
僕が頭の中で美優との新婚生活を妄想していると、紗綾までが飛び付いて来た。
そのままギューっと抱き付いて離れない。
「紗綾まで。何を言ってるんだよ」
「このまま地球に帰れないかもしれないじゃん……」
「ああ、目を逸らしてたけど……。その不安はあるな……」
「そうなると、もうアイドルなんてやってられないし、地球人の中から旦那を見つけるわけでしょ?」
「あーそうか」
たしかに、SFOでプロやってるプレイヤーって、僕らの年代はあまりいないからな。
「地球人の中で晶羅以上の優良物件なんていないんだからね?」
いや、紗綾、帝国人からって手もあるぞ?
「でも、僕には嫁候補があんなに……」
「だからだよ。第一夫人は地球人からにするべきだぞ」
いや、地球特に日本では一夫多妻は拙いでしょ。
「だめ……。美優が第一」
うわ。普段は表情が乏しい美優が独占欲丸出しって新鮮だな。
めちゃ可愛い。僕は美優が第一夫人で全然かまわないぞ。
「そこらへんは曖昧にしとけばいいんだよ。
綾姫ちゃんだって入るんだからさ」
そう振られて綾姫の存在に気が付いた。
なんかワナワナと怒りに震えているようだ。
あ、そういや社長の悪戯で僕が男ってことを綾姫にだけ教えてなかったんだった。
これ、拙いでしょ。
「晶羅ちゃん、どういうこと?
まさかと思うけど男の子だったの?」
綾姫の背後に般若が見える。
ああ、着替えの件とかもろもろ、怒られることが山ほどあるな……。
殺されるかもしれない。僕は生命の危機を感じた。
だが、ここは正直に話すしかない。
「ごめん、言い出しにくくて今まで黙ってた。
実は僕は男だ」
僕の告白を聞いて綾姫が真っ赤になるとぶっ倒れた。
初心者講習の時からずっと僕を女だと思って接して来たからな。
もろもろの事を思い出して恥ずかしさで倒れたのだろう。
慌てて抱きかかえるも、どうやら失神しようだ。
綾姫をソファーに横たえると沙也加さんに介抱を任せる。
「それにしても、紗綾の真面目口調初めて聞いたぞ。
綾姫も嫁に貰わないと駄目なのか?」
「うん。地球人2000人の中で条件が良くて、年齢の釣り合う男子なんて晶羅ぐらいしかいないんだからね。
貴族からの晶羅への求婚の逆を考えてみてよ。
ここは貴族に見初められたら強制的に結婚させられるかもしれない世界だよ?
もう貴族の嫁ですって断れるのは地球人では騎士爵の晶羅だけなんだからね?」
ああ、なるほど。
確かに、この世界ではそうなってしまうかもしれない。
変なロリコン貴族に嫁がされるより僕の方がマシってコラ。
「もちろん、晶羅が好きって気持ちが大前提なんだからね♡」
あ、デレた。
紗綾もコケティッシュで可愛いんだよな。
しょうがないなもう。
「あ、菜穂と沙也加さんは社長に嫁いでね」
紗綾がニヤニヤしながら爆弾発言をする。
「「何言ってるんですか!」」
菜穂さんと沙也加さんが顔を真赤にして焦る。
菜穂さんが社長の事が好きなのは薄々勘付いていた。お幸せに。
沙也加さんはアワアワしている。
しかし、貴族と強制結婚というワードに恐れを抱いているようだ。
社長なら、そのうち騎士爵ぐらい簡単に手に入れる。
守ってくれるさ。
そうか、僕は彼女たちを守っていかないといけないんだな。
「これは”もう嫁が三人いるから無理です作戦”でいけないかな?」
僕は、それでも貴族令嬢との結婚は避ける方向を模索していた。
「社長と、け、結婚……」
菜穂さんが妄想の彼方に行ってしまった。
あ、シューティングドリームの娘たちはどうしよう。
アイドルだから美人ぞろいだし、貴族が目をつけそうだ。
いや、僕が嫁にしたいなんて、これっぽっちも思ってないんだからね。
社長預かりなんだし、社長が面倒をみるのがスジだしね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
新居の部屋は六部屋増築に増えた。
それに加えて風呂場や洗面、トイレ、リビングの拡張増築など、まるでお屋敷になってしまった。
「新築の方が早くないか?」
紗綾が工事を見ながら呟く。
「まあ、格納庫の都合で場所は一緒にするしかないから」
古い部屋を拡張して新しく壁を作るんだから、ほぼ新築と言っても過言じゃない。
元々構造材はステーション型要塞の区画なんだし、どこからが新築なんだって話だし。
「私達の部屋と壁をぶち抜いて廊下にすればいいんじゃない?」
「それ、結構長い廊下になるよ。それならその空間をリビングにしたらいいかも」
あの後、目を覚ました綾姫も嫁入りを受け入れていた。
「責任とってね?」と言われてしまった。
いや、綾姫は着替えのガードが鉄壁だったし、何の責任だかわからないんだけど?
これって新婚ラブラブ住宅相談みたいになってない?
まあ資金はあるんだ。
グラウル星系への遠征で狩ってきた巡洋艦の装備がごっそりあるからね。
今回は後方からの狙撃ばっかりだったから、推進機や反応炉の破損が多い。
ニコイチで復活させることなく装備をバラして販売となった。
戦艦の扱いは、神澤社長の融合待ちだ。
いや、そのまま戦艦に乗ってもらった方が戦力増強になるんじゃないのか?
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
神澤社長の専用艦の融合が終わった。
武装の融合は数時間で済むが、大破からの補修を兼ねた融合は10日かかった。
融合後の諸元は以下。
『KAMIZAWA』
艦種 ポケット戦艦
艦体 全長830m 重巡洋艦改型 2腕
主機 対消滅反応炉D型(18) 高速推進機D型
補機 熱核反応炉D型(9) 高速推進機E型
兵装 主砲 長砲身35cmレールガン単装1基1門 通常弾 80/80
副砲 30cm粒子ビーム砲連装3基6門
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 D型標準2基2門 最大弾数4×2 ミサイル残弾 8
防御 耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板
ビームキャンセラー(対ビームバリヤー)
耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲盾S型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)C型
電子兵装 電脳B型 対艦レーダーB型 通信機B型 サブ電脳B型
空きエネルギースロット 7
状態 良好
神澤艦は賭けだった対消滅反応炉の修理に成功していた。
エネルギー伝送系と制御系の破損だけだったことが幸いしたようだ。
性能的には高速推進機がダウングレードしているが、主機補機で反応炉を二つ持っていることで、なんとか速度を維持している。
逆に余剰エネルギーが補機分増えているため、エネルギースロットの空きが増え武装を増設可能になっている。
ここで融合が仕事をしており、外していた30cm粒子ビーム砲連装1基2門が生えていた。
これで武装はサブ電脳増設前の状態まで戻っている。
他には艦の後部装甲が戦艦準拠の耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板になっていて防御力が上がっている。
補機分全長が伸びているが装甲板を多めに用意した分で賄ったようだ。
大破からの修理としては思った以上に上出来じゃないだろうか。
「7スロットも余剰エネルギーがあるなら、副砲を後部にも増やせるな。
30cm粒子ビーム砲を降ろした時の美しくない状態の悲しさといったら無かった。
今も後部伸長分で微妙にバランスを崩している。
これは副砲増設で調整するしかない!」
「社長、お金あるの?
降ろした30cm粒子ビーム砲なら出せるけど、副砲より推進機の高速化の方が先だよね?」
「いや、晶羅、推進機ならグラウル星系で鹵獲した戦艦があっただろ」
戦艦そのままなら戦力になるのに、なんで社長の趣味でバラさなければならないんだよ。
艦のバランスや美しさというのは確かにあるけど、そこまで微妙じゃないと思うけどな。
「あれは対消滅反応炉を使わないなら戦力として維持した方が得でしょ?
無人で動かせるし、なんだったら社長がそのまま乗ってもいいんだよ?」
「せっかく修理した俺の専用艦の立場は!」
神澤社長が落ち込んでしまった。
これ以上は自分で稼いで手に入れてよ。
ちなみにこの後、神澤社長は降ろしてあった30cm粒子ビーム砲連装1基の融合をした。
『KAMIZAWA』
艦種 ポケット戦艦
艦体 全長830m 重巡洋艦改型 2腕
主機 対消滅反応炉D型(18) 高速推進機D型
補機 熱核反応炉D型(9) 高速推進機E型
兵装 主砲 長砲身35cmレールガン単装1基1門 通常弾 80/80
副砲 30cm粒子ビーム砲連装4基8門
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 D型標準2基2門 最大弾数4×2 ミサイル残弾 8
防御 耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板
ビームキャンセラー(対ビームバリヤー)
耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲盾S型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)C型
電子兵装 電脳B型 対艦レーダーB型 通信機B型 サブ電脳B型
空きエネルギースロット 5
状態 良好
今は推進機が美しくないと言っている。
「事情は把握してる。猫族と犬族からも押しかけ嫁が来てるからね」
僕の言葉を聞き、畏まった態度だった彼女は、すっと肩から力が抜けると開き直ったかのように豹変した。
「小領地混成軍司令ジョン=ドゥ=ラーテル准男爵息女、ジェーン=ドゥ=ラーテルだ。
親の都合でアキラの所に嫁に来た」
なにこの娘。貴族令嬢なのにこの態度。
しかも開き直ってぶっちゃけたよw
猫被ってやがったな。それで僕の態度を見てこれは破談だと喜んで地が出たと。
筋肉質で野性味あふれる雰囲気で貴族令嬢というより女戦士っぽい。
それにあまり乗り気じゃないようだ。
面白い娘だな。
「猫族と犬族の彼女達にも言ったんだけど、アノイ三大勢力のどれかの陣営だけから嫁を取るわけにはいかない。
僕も急な話で戸惑っている。
全ての陣営が仲良く、特に猫族と犬族が仲良く出来たなら三人とも受け入れよう。
とりあえず嫁候補として、お試しで共同生活をすることになっている。
そこへ合流してもらうことになるが、新居の改築が終わるまでは待機していて欲しい」
ジョン司令には悪いけど、事情を説明してさっさとお引き取り願った。
これでジェーン本人が断ってくれるならそれで良しだ。
「それにしてもラーテルってあのラーテルか?」
地球にはラーテルという野生動物がいる。
強靭な皮膚を持ち、ライオンに喧嘩を売って引かないなど武勇伝の数々を持つ獣だ。
猫族と犬族が猫と犬のDNAを取り込んで肉体強化された獣人なら、彼女の種族はラーテルのDNAを取り込んだ獣人なのか?
「はい。肉体強化実験で地球の野生動物からDNAをもらったので、間違いなくそのラーテルです」
「うわ、愛さん! いつの間にそこに!」
いつのまにかサポートAIの有機端末である愛さんが僕の後ろに控えていた。
気配がしないから結構驚くんだよな。
「勇猛果敢、怖いもの知らずで最後まで猫族犬族と争いましたが、好戦的すぎるということで不採用となりました。
その後、貧民から傭兵になり、戦場に出て戦果を上げて叙爵し、小領地領主の准男爵にまで上り詰めた叩き上げの種族です」
「うーん。ジョンさんが何人なのかわからないはずだよ」
愛さんがじっと僕を見つめている。
「ん? どうしたの?」
「よろしいのですか?」
「何が?」
「小領地混成軍のジョン司令は険悪な猫族と犬族の間を取り持ってアノイ要塞をまとめている影の功労者です。
ジェーン嬢が同様の勤めを果たせば、キャロライナ嬢とマリアンナ嬢の間を取り持つ可能性があります」
その見解は僕の目論見を見事に潰すものだった。
「しまった! ”二人の仲が悪いから無かったことに作戦”が破綻する!」
僕はがっくりと項垂れた。
僕がしばらく放心状態になっていると、僕の脇腹がつんつんされる。
そちらを見ると美優がじっと僕を見つめている。
「美優、どうしたの?」
「美優も……」
「えっ?」
「嫁……」
「マジですか」
美優が嫁に立候補した。
「地球……。帰れない。この先生きのこる、晶羅嫁」
先生、きのこりました。
そうか、美優は、地球への帰還が絶望的になって、この世界で生きていくのに僕の嫁を選択したのか。
いや、僕としては可愛い美優がお嫁さんになってくれるのは大歓迎だけど……。
「えーー! ずるーい! 私もだからねー」
僕が頭の中で美優との新婚生活を妄想していると、紗綾までが飛び付いて来た。
そのままギューっと抱き付いて離れない。
「紗綾まで。何を言ってるんだよ」
「このまま地球に帰れないかもしれないじゃん……」
「ああ、目を逸らしてたけど……。その不安はあるな……」
「そうなると、もうアイドルなんてやってられないし、地球人の中から旦那を見つけるわけでしょ?」
「あーそうか」
たしかに、SFOでプロやってるプレイヤーって、僕らの年代はあまりいないからな。
「地球人の中で晶羅以上の優良物件なんていないんだからね?」
いや、紗綾、帝国人からって手もあるぞ?
「でも、僕には嫁候補があんなに……」
「だからだよ。第一夫人は地球人からにするべきだぞ」
いや、地球特に日本では一夫多妻は拙いでしょ。
「だめ……。美優が第一」
うわ。普段は表情が乏しい美優が独占欲丸出しって新鮮だな。
めちゃ可愛い。僕は美優が第一夫人で全然かまわないぞ。
「そこらへんは曖昧にしとけばいいんだよ。
綾姫ちゃんだって入るんだからさ」
そう振られて綾姫の存在に気が付いた。
なんかワナワナと怒りに震えているようだ。
あ、そういや社長の悪戯で僕が男ってことを綾姫にだけ教えてなかったんだった。
これ、拙いでしょ。
「晶羅ちゃん、どういうこと?
まさかと思うけど男の子だったの?」
綾姫の背後に般若が見える。
ああ、着替えの件とかもろもろ、怒られることが山ほどあるな……。
殺されるかもしれない。僕は生命の危機を感じた。
だが、ここは正直に話すしかない。
「ごめん、言い出しにくくて今まで黙ってた。
実は僕は男だ」
僕の告白を聞いて綾姫が真っ赤になるとぶっ倒れた。
初心者講習の時からずっと僕を女だと思って接して来たからな。
もろもろの事を思い出して恥ずかしさで倒れたのだろう。
慌てて抱きかかえるも、どうやら失神しようだ。
綾姫をソファーに横たえると沙也加さんに介抱を任せる。
「それにしても、紗綾の真面目口調初めて聞いたぞ。
綾姫も嫁に貰わないと駄目なのか?」
「うん。地球人2000人の中で条件が良くて、年齢の釣り合う男子なんて晶羅ぐらいしかいないんだからね。
貴族からの晶羅への求婚の逆を考えてみてよ。
ここは貴族に見初められたら強制的に結婚させられるかもしれない世界だよ?
もう貴族の嫁ですって断れるのは地球人では騎士爵の晶羅だけなんだからね?」
ああ、なるほど。
確かに、この世界ではそうなってしまうかもしれない。
変なロリコン貴族に嫁がされるより僕の方がマシってコラ。
「もちろん、晶羅が好きって気持ちが大前提なんだからね♡」
あ、デレた。
紗綾もコケティッシュで可愛いんだよな。
しょうがないなもう。
「あ、菜穂と沙也加さんは社長に嫁いでね」
紗綾がニヤニヤしながら爆弾発言をする。
「「何言ってるんですか!」」
菜穂さんと沙也加さんが顔を真赤にして焦る。
菜穂さんが社長の事が好きなのは薄々勘付いていた。お幸せに。
沙也加さんはアワアワしている。
しかし、貴族と強制結婚というワードに恐れを抱いているようだ。
社長なら、そのうち騎士爵ぐらい簡単に手に入れる。
守ってくれるさ。
そうか、僕は彼女たちを守っていかないといけないんだな。
「これは”もう嫁が三人いるから無理です作戦”でいけないかな?」
僕は、それでも貴族令嬢との結婚は避ける方向を模索していた。
「社長と、け、結婚……」
菜穂さんが妄想の彼方に行ってしまった。
あ、シューティングドリームの娘たちはどうしよう。
アイドルだから美人ぞろいだし、貴族が目をつけそうだ。
いや、僕が嫁にしたいなんて、これっぽっちも思ってないんだからね。
社長預かりなんだし、社長が面倒をみるのがスジだしね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
新居の部屋は六部屋増築に増えた。
それに加えて風呂場や洗面、トイレ、リビングの拡張増築など、まるでお屋敷になってしまった。
「新築の方が早くないか?」
紗綾が工事を見ながら呟く。
「まあ、格納庫の都合で場所は一緒にするしかないから」
古い部屋を拡張して新しく壁を作るんだから、ほぼ新築と言っても過言じゃない。
元々構造材はステーション型要塞の区画なんだし、どこからが新築なんだって話だし。
「私達の部屋と壁をぶち抜いて廊下にすればいいんじゃない?」
「それ、結構長い廊下になるよ。それならその空間をリビングにしたらいいかも」
あの後、目を覚ました綾姫も嫁入りを受け入れていた。
「責任とってね?」と言われてしまった。
いや、綾姫は着替えのガードが鉄壁だったし、何の責任だかわからないんだけど?
これって新婚ラブラブ住宅相談みたいになってない?
まあ資金はあるんだ。
グラウル星系への遠征で狩ってきた巡洋艦の装備がごっそりあるからね。
今回は後方からの狙撃ばっかりだったから、推進機や反応炉の破損が多い。
ニコイチで復活させることなく装備をバラして販売となった。
戦艦の扱いは、神澤社長の融合待ちだ。
いや、そのまま戦艦に乗ってもらった方が戦力増強になるんじゃないのか?
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
神澤社長の専用艦の融合が終わった。
武装の融合は数時間で済むが、大破からの補修を兼ねた融合は10日かかった。
融合後の諸元は以下。
『KAMIZAWA』
艦種 ポケット戦艦
艦体 全長830m 重巡洋艦改型 2腕
主機 対消滅反応炉D型(18) 高速推進機D型
補機 熱核反応炉D型(9) 高速推進機E型
兵装 主砲 長砲身35cmレールガン単装1基1門 通常弾 80/80
副砲 30cm粒子ビーム砲連装3基6門
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 D型標準2基2門 最大弾数4×2 ミサイル残弾 8
防御 耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板
ビームキャンセラー(対ビームバリヤー)
耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲盾S型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)C型
電子兵装 電脳B型 対艦レーダーB型 通信機B型 サブ電脳B型
空きエネルギースロット 7
状態 良好
神澤艦は賭けだった対消滅反応炉の修理に成功していた。
エネルギー伝送系と制御系の破損だけだったことが幸いしたようだ。
性能的には高速推進機がダウングレードしているが、主機補機で反応炉を二つ持っていることで、なんとか速度を維持している。
逆に余剰エネルギーが補機分増えているため、エネルギースロットの空きが増え武装を増設可能になっている。
ここで融合が仕事をしており、外していた30cm粒子ビーム砲連装1基2門が生えていた。
これで武装はサブ電脳増設前の状態まで戻っている。
他には艦の後部装甲が戦艦準拠の耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板になっていて防御力が上がっている。
補機分全長が伸びているが装甲板を多めに用意した分で賄ったようだ。
大破からの修理としては思った以上に上出来じゃないだろうか。
「7スロットも余剰エネルギーがあるなら、副砲を後部にも増やせるな。
30cm粒子ビーム砲を降ろした時の美しくない状態の悲しさといったら無かった。
今も後部伸長分で微妙にバランスを崩している。
これは副砲増設で調整するしかない!」
「社長、お金あるの?
降ろした30cm粒子ビーム砲なら出せるけど、副砲より推進機の高速化の方が先だよね?」
「いや、晶羅、推進機ならグラウル星系で鹵獲した戦艦があっただろ」
戦艦そのままなら戦力になるのに、なんで社長の趣味でバラさなければならないんだよ。
艦のバランスや美しさというのは確かにあるけど、そこまで微妙じゃないと思うけどな。
「あれは対消滅反応炉を使わないなら戦力として維持した方が得でしょ?
無人で動かせるし、なんだったら社長がそのまま乗ってもいいんだよ?」
「せっかく修理した俺の専用艦の立場は!」
神澤社長が落ち込んでしまった。
これ以上は自分で稼いで手に入れてよ。
ちなみにこの後、神澤社長は降ろしてあった30cm粒子ビーム砲連装1基の融合をした。
『KAMIZAWA』
艦種 ポケット戦艦
艦体 全長830m 重巡洋艦改型 2腕
主機 対消滅反応炉D型(18) 高速推進機D型
補機 熱核反応炉D型(9) 高速推進機E型
兵装 主砲 長砲身35cmレールガン単装1基1門 通常弾 80/80
副砲 30cm粒子ビーム砲連装4基8門
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 D型標準2基2門 最大弾数4×2 ミサイル残弾 8
防御 耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板
ビームキャンセラー(対ビームバリヤー)
耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲盾S型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)C型
電子兵装 電脳B型 対艦レーダーB型 通信機B型 サブ電脳B型
空きエネルギースロット 5
状態 良好
今は推進機が美しくないと言っている。
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お名前使用してもいいよ💕っていう
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悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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