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アイドル編

076 アイドル編52 アイドル活動

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「そろそろアイドル活動の配信をしないと、年末のあの歌合戦の候補になれないな」

 突然神澤社長が突拍子も無い事を口走った。

「え? あの歌合戦狙ってるの?」

 神澤社長が逆に「何を言ってるんだ当たり前だろう」という顔をする。

「アイドルの目標はあの歌合戦に参加することだろ?」

 まさかと思うが深夜帯にやってる地下アイドルの歌合戦のことじゃないだろうな?
あの有名歌合戦のことだとは思うけど、SFOから生で直配信なんてたぶん無理だぞ。
それにリハーサルで3日は拘束されると言われているのに、当日だけ配信で出るなんて大御所歌手に睨まれる。

「まあ、夢を持つのはいいんじゃないの?」

 僕は他愛の無い雑談として流すことにした。

「よしヲタ艦隊を招集して接待プレイを配信しよう」

「社長、今のご時世にヤラセは炎上の火種になりかねないから危ないんだぞ」

 呆れて言うが、本気にとられていないようだ。
もうコンプライアンス遵守に煩い世の中になったんだけどな。
そこらへんの感覚が年齢相応なのかもしれないな。


 翌日、ヲタ艦隊が召集され個別のVPが開催された。
完全に僕らブラッシュリップスのためのミニライブだ。
ヲタ艦隊は全員でサイリウムブレードを振ってヲタ芸を打っている。
いつのまにあんな専用装備を造ったんだろう?
この接待プレイを配信で見た人達が予定調和ととってくれればありがたい。
ゲストにシューティングドリームも呼んだのでライブとしては盛り上がったと思う。

 だが、僕たちが強くなりすぎていた。
僕たちブラッシュリップス艦隊はCランク艦隊だが、ヲタ艦隊はEランク艦隊だ。
シューティングドリームはDランク艦隊だが、SFOランカーが抜けたので実力的にはEランク艦隊といっていい。
そのヲタ艦隊とシューティングドリーム艦隊を同時に相手にしても、ブラッシュリップス艦隊が簡単に勝ってしまう。

「ちょっとこれ、弱い者虐めに見えると印象悪いかも……」

 これはSFOでのアイドル活動の根幹に関わる問題かもしれない。


◇  ◇  ◇  ◇  ◆


「この前のミニライブは失敗だった。
ネットではお前達が強すぎてヤラセ感が酷いという評価だ」

 いや、だからヤラセは……。

「そこでRPにライブをぶち込もうかと思う」

 何言ってるんだ? このおっさん。
RPは命がけなんだぞ?

「社長、それは身の安全に係わるところだから、ダメでしょ」

晶羅あきら、おまえは自分達の実力を過小評価している。
ボルド星系での戦いを見れば、お前達なら楽勝だ」

 社長がやたら楽観的な発言をする。

「いや、せっかく戦力強化の素材を入手したんだから、査定が終わって装備を充実させるまで、そこは待とうよ」

 やっぱり命大事にだよ。
直ぐそこにさらなる安全のための手段があるんだから、それを待ってもいいじゃないか。

「あの公共放送局にアピールするなら今なんだよ。
なぜかあそこはサブカル文化――所謂クールジャパンのコンテンツに乗り気だ。
そのど真ん中、eスポーツの最先端にブラッシュリップスがいる。
今年がチャンスなんだよ!」

 うわー。僕たち以上に社長がヒートアップしちゃってるのね。

「俺も出る。元SFOランカーの実力で、お前達に降り注ぐ火の粉は払ってやる。
それにもし撃墜されてもパイロット転送システムがある。
そうはさせないつもりだがな」

 社長が本気なのはわかった。
どうするべきか。

「私は社長の判断を尊重するわ。
あの歌合戦はアイドルの夢だもの」

 菜穂なほさんは賛成。

「私は借金が減るならどっちでもいい」

 綾姫あやめは態度保留。

紗綾さーやは~、専用艦を強くしてもらったから~大丈夫だよ~」

「ん。問題ない」

 紗綾さーや美優みゆも賛成。
これで多数決は決した。

「わかった。危険になったらライブ中止が条件だ。それなら賛成する」

「当たり前だ。その判断は晶羅あきらに任せる。それでいいか?」

「仕方ないな。安全第一、命大事にだよ?」

「「「おー」」」「ん」

 前代未聞のRPでライブを行うという方針が決定した。
この後、SFO運営に話を通して許可が出るのを待つことになった。


「許可が下りた。
元々RPの映像配信を行っているし、個々のプレイヤーがどのように自己主張するかは自由だそうだ。
ただし、音楽配信できる通信チャンネルは指定チャンネルのみ。
他の邪魔だけはしないことという条件だ」

 それは当然だ。
僕たちだって作戦中に通信を邪魔されたら怒る。
指定チャンネルが割り振られただけでも有り難い。

「でも、せっかくなら敵艦隊に聞かせてやりたかったな」

「ん。ミ〇メイアタック」

「あれもアイドルの夢だよね~」

「あれだ。5cmレールガンでスピーカーポッドでも撃ち込もうか?」

「どこの7やね~ん!」

 冗談を言っていたら社長がニヤリとしていた。
まさか冗談だよね?
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