【改訂版】異世界転移で宇宙戦争~僕の専用艦は艦隊旗艦とは名ばかりの単艦行動(ぼっち)だった~

北京犬(英)

文字の大きさ
65 / 199
アイドル編

062 アイドル編38 エキシビションVP顛末

しおりを挟む
「社長、昨日のカベプロの不正行為、抗議してくれた?」

 神澤プロモーションSFO本社にやって来た僕は、社長室に乗り込むと開口一番社長に訊く。

「いや、あれから配信を見ていた視聴者から猛抗議があったらしくて、俺の出る幕はなかったよ。
SFOの掟を破ったからには、SFO運営が何もしなかったら視聴者が黙っていないだろ。ほれ」

 神澤社長が僕の目の前に仮想スクリーンを滑らせる。
ナノマシンがその行動を情報の受け渡しと判断し、僕の目の前に神澤社長が見ていた仮想スクリーンが表示される。
そこにはSFO側にしかアクセス権の無い掲示板と、地球側の視聴者が自由に書き込んでいる掲示板が表示されていた。
SFO側の掲示板は、SFOプレイヤーしか書き込めない。
その書き込みはセキュリティの関係で地球に開示出来ない情報をブロックしている。
地球側の視聴者が書き込んでいる掲示板はセキュリティの関係でSFOプレイヤーは書き込めない。
SFO側では情報統制のため、地球側の書き込みは閲覧しか出来ないようになっていた。

「情報統制か。なんで、こんなに面倒なことになっているんだろうね?」

「それはね」(と言いつつ菜穂なほさんが紅茶のカップを僕の前に置く)

「あ、どうも」

「昔、双方向で情報のやり取りをしていたら、隠語や暗号を使って八百長をしようとした連中がいたかららしいわよ。
VPは賭けの対象になっているから……。悪いことを思いつく人はいくらでもいるのよね」

 僕がボソッと口に出した疑問に菜穂なほさんが紅茶を持って来たついでに説明してくれた。
あれか。公営ギャンブルの選手が八百長防止でレースの前の何日か隔離されるってやつ。
それを拡大して情報のやりとり自体を全面的に禁止したってことか。

閑話休題

 SFO側の雑談掲示板には不正行為を糾弾する書き込みがあった。
どうやらSFOプレイヤーの間でも不正行為という認識で意見が統一されているようだ。
これなら掲示板を監視しているはずのSFO運営が既に動いているだろうな。

 地球側の掲示板は……。祭りが発生していた。
どこで調べたのか、地球側のSFO事務局やカベプロの電話番号まで載っている。
所謂「電突」という現象が発生したもようだ。

「これ? 本物の電話番号?」

「みたいだな」

「こういった過度の叩きは、こっちにまで影響がありそうだよね?」

「ああ。向こうのファンが反撃するターゲットはブラッシュリップスだろうからな」

「うわー。どうすんのこれ?」

「……過激なファンはこっちステーションにまでは来れないからな……。とりあえずこれを上げてみた」

 神澤社長が示したのはブラッシュリップス公式HPだった。
そこに代表である神澤社長の名前でコメントが発表されていた。


&     &     &     *     *     *     &     &     &


【昨日のエキシビションVPに関するお願い】

 平素よりブラッシュリップスを応援いただきありがとうございます。
さて、昨日行われましたエキシビションVPですが、SFOアイドルという新たな道に進んだアイドル達が切磋琢磨し真剣に戦った素晴らしいものであったと自画自賛しております。
その過程で問題があったことは事実ですが、それによって勝敗にはなんら影響を与えておらず、SFOランカーを倒すに至ったアイドル達の頑張りに嘘はございません。
またVPでありますので撃沈されたアイドル達は怪我一つ追っていません。
シューティングドリームのようなライバルを迎えられたことは、私共にとっても非常に励みになり幸運なことです。
これからもSFOでアイドル対戦が行われるように願っています。
そのため、先方への過度な抗議等はなるべくお控えになっていただけると幸いです。
これからもブラッシュリップスを応援よろしくお願いします。

                20××年8月〇日 神澤プロモーション代表取締役 神澤達也


&     &     &     *     *     *     &     &     &


「ぶはっ!」

 僕は思わず吹き出してしまった。

「社長、心にも無いこと言ってw」

「心外だな。丸っと俺の本心じゃないかw」

 神澤社長がしれっとうそぶく。
確かに神澤社長のマウントがチラチラ見えている気もする。
まあ、SFOアイドルトップはうちで決まりだからね。


「SFO運営の公式発表来たよ!」

 紗綾さーやが社長室に飛び込んで来る。
と同時に神澤社長の腕輪にもメールが届く。


&     &     &     *     *     *     &     &     &


【準公式VPにおける不正行為に関する報告】

 昨日行われたシューティングドリーム艦隊VSブラッシュリップス艦隊による準公式VPにおいて、オブザーバーによる自らの艦隊が有利になる情報提供があったことが確認されました。
これはSFO規約第7条「不当な介入の禁止」に違反する行為であると判断しました。
オブザーバー資格によるVPへの参加はギブアップ宣言のみが許されるものであり、アドバイスましてや対戦相手の秘匿された位置情報の提供は許されるものではありません。
当事者であるゲーマー名:山田PのVP参加資格無期限停止と、SFOランカーであるゲーマー名:リーリアをランク降格処分といたします。
これからも皆様にはルールを守ってSFOにご参加くださるようにお願いいたします。

                              SFO行政府代表 プリンス


&     &     &     *     *     *     &     &     &


「プリンスってSFO行政府の代表だったんかい!
それは置いといて、厳しい処分だね」

「特にリーリア女史はトップ10ランカーだからな。
スポンサー契約とかいろいろ影響があるぞ」

 うわー。それは高い一発になったな。

「SFOランカーなのに、なんで規約違反なんてしちゃったんだろうね?」

「おそらく思考を通さない反射神経で攻撃していたんだろうな。
光速のビームをあれだけ避けるんだから、思考の遅れが命取りになる」

「だから通信で指示を受けてそっちに美優みゆ艦を発見したから即撃ったと」

 一流故にあの場で規約違反の通信が入るなんて頭に無かったんだろうな。
しかも極限状態での反射行動か。
単艦での突破作戦が得意なのはそんな理由なんだろうな。
コーチで呼ばれてアイドルさせられたのも、本人の意思じゃないのかもね。
この発表を受けてネットが沈静化するのかどうか、僕たちは静観するしかなかった。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...