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アイドル編
058 アイドル編34 SFOランカー
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草壁プロ、通称カベプロから合同ライブに関する正式な企画書類が送られてきた。
ここで神澤プロモーションが断れば、負けを認めたという印象をSFO全体に与えてしまうことになる。
社交辞令で済ませる段階は既に超えてしまっていた。
「仕方ない。SFOランカー対策をして勝つしかないな」
そんな無責任発言をする社長にメンバーが白い眼を向ける。
「元ランカーさんは、彼女の実力をどう見てるのかな?」
菜穂さんが社長に嫌味を込めて問う。
元ランカーとは神澤社長の事だ。
神澤社長はRPで大手柄をたてて高額な売却益を手にした所謂SFO成功者だ。
その金で契約を途中キャンセルし、それでも残った大金を持って地球に戻ったという生きる伝説だった。
この成功は地球ではeゲームの無差別大会での優勝と偽装され、引退時にはSFOランク最高10位という地位を得たのだ。
「SFOランカーともなると俺でさえ専用艦は戦艦クラスになる。
まあ俺の専用艦はミニ戦艦、所謂ポケット戦艦と呼ばれる艦だがね。
少なくともSFOランクがシングルの彼女の艦は戦艦だろう」
「そこは収集した配信映像で確認済みよ。彼女の専用艦は速度に勝る巡洋戦艦ね」
菜穂さんが社長の発言の補足をする。
巡洋戦艦か。となると防御力は劣るのかな?
「とりあえず。その映像を見た方がいいんじゃない?」
「ん」「そうね」「だな」
紗綾の提案で全員がその配信映像を見ることになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
VP配信映像『対艦隊戦 単艦戦闘 艦隊クラスS SFOランク個人8位 ゲーマー名:リーリエ』
最初の映像は、どうやら単艦で艦隊を相手にするVPの映像らしい。
スマートな艦体の巡洋戦艦が宇宙を高速で移動していく様子をカメラが横から捉える。
カットが変わり、カメラアングルが艦橋視点の映像になる。
前方から複数の艦が接近してくるのが見える。
その敵艦をやっと捕捉したというぐらいの長距離で巡洋戦艦がレールガンを発射、次々と敵艦を撃沈していく。
「大口径レールガンによる長距離射撃だね」
「射撃補正装置による狙撃でしょうね」
僕の独り言に菜穂さんが頷く。
菜穂さんも狙撃担当だから、SFOランカーの実力に舌を巻いている。
一撃で敵艦を撃沈していることから、口径は40cmだろうか。
さすがSFOランカー、狙撃技術は一流だ。
映像は進み、敵艦隊から大量のミサイルが撃ち込まれてくる。
それを高速機動だけで避けていく巡洋戦艦の俯瞰映像が流れる。
「巧いね。巡洋戦艦の機動力以上に操縦センスが凄い」
僕はSFOランカーの実力に打ちのめされた。
ただ艦を育てただけじゃない。それ以上に個人技が凄いのだ。
単艦で敵艦隊を撃破していく巡洋戦艦が敵艦隊の中へと突っ込んで行く。
距離をとった狙撃だけじゃなく、接近してからがまた凄かった。
至近距離で発射されたビームを発射予兆だけを見て避けていく。
まるでシューティングゲームの鬼弾幕を避けるような機動だ。
避けてビームを撃ち敵艦を撃破。その繰り返しで敵艦隊は次々に数を減らしていく。
敵艦隊の中央を突破した巡洋戦艦が後ろを見せている敵艦隊に向けて大量のミサイルを撃つ。
艦の設計上、後方は武装が少ない。その手薄な方向からのミサイル攻撃。
敵艦隊の隊列が乱れまくる。その隙を突いて反転した巡洋戦艦が迫る。
とうとう敵艦隊は全艦撃破されてしまった。
「やばいね。これ単艦だけで圧倒的な戦闘力だよ」
僕がそう言うと菜穂さんが続く。
「長距離射撃、接近戦、全てに於いて完璧だね……」
皆、頭を抱えてしまった。
今流れた映像の敵艦隊は、僕たちの艦隊の十数倍の数の艦隊だった。
それがあっと言う間に撃墜されてしまった。
弱点を探るどころじゃなかった。
むしろこちらの実力不足や戦力不足に目が行ってしまうほどだった。
「弱点といえば、巡洋戦艦は装甲が薄いってことだけど、僕たちの艦は最高でも巡洋艦だから、それでも僕らの艦より厚いんだよね」
「それに、あれだけの回避力があったら当たる気がしないわ」
綾姫も同じような回避系の戦い方だが、遥か上の実力に落ち込んでいる。
「こちらには勝る点はある?」
菜穂さんが、こちらの艦隊に勝ち目があるのかという質問をする。
「僕のGバレットなら速射力で勝っているかもね。
破壊力もあるから避けられないようにして撃ち込めば勝てるかもしれない」
「たぶん避けるのよね」
「うん」
さて困ったぞ。
僕が秘密兵器を投入すれば勝てる見込みが出るけど、それ以前に同等以上の攻撃を受けてしまったら守りに不安が出る。
油断させる? SFOランカーはそんなに甘くないだろう。
唯一戦える状況になる可能性はカベプロがこちらを舐めてかかってSFOランカーを使わないという場合だろうか。
まあ、そんな他力本願を願ってもしょうがない。
「なんとか防御力を上げないとだめだね。
盾を耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板で作ろうか?
戦艦を鹵獲した時の装甲版がたしか次元格納庫に余っていたはず」
「それなら40cmレールガンの一撃ぐらいは防げそうね」
それぞれが意見を出し合い、戦力アップをはかることにした。
その結果はシミュレートしてみるしかないな。
「というわけで、社長、仮想SFOランカーをやってもらうからね」
戦力アップしてもそれを使いこなすのは個々の技能による。
その技能を上げなければSFOランカーには太刀打ちできないだろう。
ここで神澤プロモーションが断れば、負けを認めたという印象をSFO全体に与えてしまうことになる。
社交辞令で済ませる段階は既に超えてしまっていた。
「仕方ない。SFOランカー対策をして勝つしかないな」
そんな無責任発言をする社長にメンバーが白い眼を向ける。
「元ランカーさんは、彼女の実力をどう見てるのかな?」
菜穂さんが社長に嫌味を込めて問う。
元ランカーとは神澤社長の事だ。
神澤社長はRPで大手柄をたてて高額な売却益を手にした所謂SFO成功者だ。
その金で契約を途中キャンセルし、それでも残った大金を持って地球に戻ったという生きる伝説だった。
この成功は地球ではeゲームの無差別大会での優勝と偽装され、引退時にはSFOランク最高10位という地位を得たのだ。
「SFOランカーともなると俺でさえ専用艦は戦艦クラスになる。
まあ俺の専用艦はミニ戦艦、所謂ポケット戦艦と呼ばれる艦だがね。
少なくともSFOランクがシングルの彼女の艦は戦艦だろう」
「そこは収集した配信映像で確認済みよ。彼女の専用艦は速度に勝る巡洋戦艦ね」
菜穂さんが社長の発言の補足をする。
巡洋戦艦か。となると防御力は劣るのかな?
「とりあえず。その映像を見た方がいいんじゃない?」
「ん」「そうね」「だな」
紗綾の提案で全員がその配信映像を見ることになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
VP配信映像『対艦隊戦 単艦戦闘 艦隊クラスS SFOランク個人8位 ゲーマー名:リーリエ』
最初の映像は、どうやら単艦で艦隊を相手にするVPの映像らしい。
スマートな艦体の巡洋戦艦が宇宙を高速で移動していく様子をカメラが横から捉える。
カットが変わり、カメラアングルが艦橋視点の映像になる。
前方から複数の艦が接近してくるのが見える。
その敵艦をやっと捕捉したというぐらいの長距離で巡洋戦艦がレールガンを発射、次々と敵艦を撃沈していく。
「大口径レールガンによる長距離射撃だね」
「射撃補正装置による狙撃でしょうね」
僕の独り言に菜穂さんが頷く。
菜穂さんも狙撃担当だから、SFOランカーの実力に舌を巻いている。
一撃で敵艦を撃沈していることから、口径は40cmだろうか。
さすがSFOランカー、狙撃技術は一流だ。
映像は進み、敵艦隊から大量のミサイルが撃ち込まれてくる。
それを高速機動だけで避けていく巡洋戦艦の俯瞰映像が流れる。
「巧いね。巡洋戦艦の機動力以上に操縦センスが凄い」
僕はSFOランカーの実力に打ちのめされた。
ただ艦を育てただけじゃない。それ以上に個人技が凄いのだ。
単艦で敵艦隊を撃破していく巡洋戦艦が敵艦隊の中へと突っ込んで行く。
距離をとった狙撃だけじゃなく、接近してからがまた凄かった。
至近距離で発射されたビームを発射予兆だけを見て避けていく。
まるでシューティングゲームの鬼弾幕を避けるような機動だ。
避けてビームを撃ち敵艦を撃破。その繰り返しで敵艦隊は次々に数を減らしていく。
敵艦隊の中央を突破した巡洋戦艦が後ろを見せている敵艦隊に向けて大量のミサイルを撃つ。
艦の設計上、後方は武装が少ない。その手薄な方向からのミサイル攻撃。
敵艦隊の隊列が乱れまくる。その隙を突いて反転した巡洋戦艦が迫る。
とうとう敵艦隊は全艦撃破されてしまった。
「やばいね。これ単艦だけで圧倒的な戦闘力だよ」
僕がそう言うと菜穂さんが続く。
「長距離射撃、接近戦、全てに於いて完璧だね……」
皆、頭を抱えてしまった。
今流れた映像の敵艦隊は、僕たちの艦隊の十数倍の数の艦隊だった。
それがあっと言う間に撃墜されてしまった。
弱点を探るどころじゃなかった。
むしろこちらの実力不足や戦力不足に目が行ってしまうほどだった。
「弱点といえば、巡洋戦艦は装甲が薄いってことだけど、僕たちの艦は最高でも巡洋艦だから、それでも僕らの艦より厚いんだよね」
「それに、あれだけの回避力があったら当たる気がしないわ」
綾姫も同じような回避系の戦い方だが、遥か上の実力に落ち込んでいる。
「こちらには勝る点はある?」
菜穂さんが、こちらの艦隊に勝ち目があるのかという質問をする。
「僕のGバレットなら速射力で勝っているかもね。
破壊力もあるから避けられないようにして撃ち込めば勝てるかもしれない」
「たぶん避けるのよね」
「うん」
さて困ったぞ。
僕が秘密兵器を投入すれば勝てる見込みが出るけど、それ以前に同等以上の攻撃を受けてしまったら守りに不安が出る。
油断させる? SFOランカーはそんなに甘くないだろう。
唯一戦える状況になる可能性はカベプロがこちらを舐めてかかってSFOランカーを使わないという場合だろうか。
まあ、そんな他力本願を願ってもしょうがない。
「なんとか防御力を上げないとだめだね。
盾を耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板で作ろうか?
戦艦を鹵獲した時の装甲版がたしか次元格納庫に余っていたはず」
「それなら40cmレールガンの一撃ぐらいは防げそうね」
それぞれが意見を出し合い、戦力アップをはかることにした。
その結果はシミュレートしてみるしかないな。
「というわけで、社長、仮想SFOランカーをやってもらうからね」
戦力アップしてもそれを使いこなすのは個々の技能による。
その技能を上げなければSFOランカーには太刀打ちできないだろう。
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