60 / 199
アイドル編
058 アイドル編34 SFOランカー
しおりを挟む
草壁プロ、通称カベプロから合同ライブに関する正式な企画書類が送られてきた。
ここで神澤プロモーションが断れば、負けを認めたという印象をSFO全体に与えてしまうことになる。
社交辞令で済ませる段階は既に超えてしまっていた。
「仕方ない。SFOランカー対策をして勝つしかないな」
そんな無責任発言をする社長にメンバーが白い眼を向ける。
「元ランカーさんは、彼女の実力をどう見てるのかな?」
菜穂さんが社長に嫌味を込めて問う。
元ランカーとは神澤社長の事だ。
神澤社長はRPで大手柄をたてて高額な売却益を手にした所謂SFO成功者だ。
その金で契約を途中キャンセルし、それでも残った大金を持って地球に戻ったという生きる伝説だった。
この成功は地球ではeゲームの無差別大会での優勝と偽装され、引退時にはSFOランク最高10位という地位を得たのだ。
「SFOランカーともなると俺でさえ専用艦は戦艦クラスになる。
まあ俺の専用艦はミニ戦艦、所謂ポケット戦艦と呼ばれる艦だがね。
少なくともSFOランクがシングルの彼女の艦は戦艦だろう」
「そこは収集した配信映像で確認済みよ。彼女の専用艦は速度に勝る巡洋戦艦ね」
菜穂さんが社長の発言の補足をする。
巡洋戦艦か。となると防御力は劣るのかな?
「とりあえず。その映像を見た方がいいんじゃない?」
「ん」「そうね」「だな」
紗綾の提案で全員がその配信映像を見ることになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
VP配信映像『対艦隊戦 単艦戦闘 艦隊クラスS SFOランク個人8位 ゲーマー名:リーリエ』
最初の映像は、どうやら単艦で艦隊を相手にするVPの映像らしい。
スマートな艦体の巡洋戦艦が宇宙を高速で移動していく様子をカメラが横から捉える。
カットが変わり、カメラアングルが艦橋視点の映像になる。
前方から複数の艦が接近してくるのが見える。
その敵艦をやっと捕捉したというぐらいの長距離で巡洋戦艦がレールガンを発射、次々と敵艦を撃沈していく。
「大口径レールガンによる長距離射撃だね」
「射撃補正装置による狙撃でしょうね」
僕の独り言に菜穂さんが頷く。
菜穂さんも狙撃担当だから、SFOランカーの実力に舌を巻いている。
一撃で敵艦を撃沈していることから、口径は40cmだろうか。
さすがSFOランカー、狙撃技術は一流だ。
映像は進み、敵艦隊から大量のミサイルが撃ち込まれてくる。
それを高速機動だけで避けていく巡洋戦艦の俯瞰映像が流れる。
「巧いね。巡洋戦艦の機動力以上に操縦センスが凄い」
僕はSFOランカーの実力に打ちのめされた。
ただ艦を育てただけじゃない。それ以上に個人技が凄いのだ。
単艦で敵艦隊を撃破していく巡洋戦艦が敵艦隊の中へと突っ込んで行く。
距離をとった狙撃だけじゃなく、接近してからがまた凄かった。
至近距離で発射されたビームを発射予兆だけを見て避けていく。
まるでシューティングゲームの鬼弾幕を避けるような機動だ。
避けてビームを撃ち敵艦を撃破。その繰り返しで敵艦隊は次々に数を減らしていく。
敵艦隊の中央を突破した巡洋戦艦が後ろを見せている敵艦隊に向けて大量のミサイルを撃つ。
艦の設計上、後方は武装が少ない。その手薄な方向からのミサイル攻撃。
敵艦隊の隊列が乱れまくる。その隙を突いて反転した巡洋戦艦が迫る。
とうとう敵艦隊は全艦撃破されてしまった。
「やばいね。これ単艦だけで圧倒的な戦闘力だよ」
僕がそう言うと菜穂さんが続く。
「長距離射撃、接近戦、全てに於いて完璧だね……」
皆、頭を抱えてしまった。
今流れた映像の敵艦隊は、僕たちの艦隊の十数倍の数の艦隊だった。
それがあっと言う間に撃墜されてしまった。
弱点を探るどころじゃなかった。
むしろこちらの実力不足や戦力不足に目が行ってしまうほどだった。
「弱点といえば、巡洋戦艦は装甲が薄いってことだけど、僕たちの艦は最高でも巡洋艦だから、それでも僕らの艦より厚いんだよね」
「それに、あれだけの回避力があったら当たる気がしないわ」
綾姫も同じような回避系の戦い方だが、遥か上の実力に落ち込んでいる。
「こちらには勝る点はある?」
菜穂さんが、こちらの艦隊に勝ち目があるのかという質問をする。
「僕のGバレットなら速射力で勝っているかもね。
破壊力もあるから避けられないようにして撃ち込めば勝てるかもしれない」
「たぶん避けるのよね」
「うん」
さて困ったぞ。
僕が秘密兵器を投入すれば勝てる見込みが出るけど、それ以前に同等以上の攻撃を受けてしまったら守りに不安が出る。
油断させる? SFOランカーはそんなに甘くないだろう。
唯一戦える状況になる可能性はカベプロがこちらを舐めてかかってSFOランカーを使わないという場合だろうか。
まあ、そんな他力本願を願ってもしょうがない。
「なんとか防御力を上げないとだめだね。
盾を耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板で作ろうか?
戦艦を鹵獲した時の装甲版がたしか次元格納庫に余っていたはず」
「それなら40cmレールガンの一撃ぐらいは防げそうね」
それぞれが意見を出し合い、戦力アップをはかることにした。
その結果はシミュレートしてみるしかないな。
「というわけで、社長、仮想SFOランカーをやってもらうからね」
戦力アップしてもそれを使いこなすのは個々の技能による。
その技能を上げなければSFOランカーには太刀打ちできないだろう。
ここで神澤プロモーションが断れば、負けを認めたという印象をSFO全体に与えてしまうことになる。
社交辞令で済ませる段階は既に超えてしまっていた。
「仕方ない。SFOランカー対策をして勝つしかないな」
そんな無責任発言をする社長にメンバーが白い眼を向ける。
「元ランカーさんは、彼女の実力をどう見てるのかな?」
菜穂さんが社長に嫌味を込めて問う。
元ランカーとは神澤社長の事だ。
神澤社長はRPで大手柄をたてて高額な売却益を手にした所謂SFO成功者だ。
その金で契約を途中キャンセルし、それでも残った大金を持って地球に戻ったという生きる伝説だった。
この成功は地球ではeゲームの無差別大会での優勝と偽装され、引退時にはSFOランク最高10位という地位を得たのだ。
「SFOランカーともなると俺でさえ専用艦は戦艦クラスになる。
まあ俺の専用艦はミニ戦艦、所謂ポケット戦艦と呼ばれる艦だがね。
少なくともSFOランクがシングルの彼女の艦は戦艦だろう」
「そこは収集した配信映像で確認済みよ。彼女の専用艦は速度に勝る巡洋戦艦ね」
菜穂さんが社長の発言の補足をする。
巡洋戦艦か。となると防御力は劣るのかな?
「とりあえず。その映像を見た方がいいんじゃない?」
「ん」「そうね」「だな」
紗綾の提案で全員がその配信映像を見ることになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
VP配信映像『対艦隊戦 単艦戦闘 艦隊クラスS SFOランク個人8位 ゲーマー名:リーリエ』
最初の映像は、どうやら単艦で艦隊を相手にするVPの映像らしい。
スマートな艦体の巡洋戦艦が宇宙を高速で移動していく様子をカメラが横から捉える。
カットが変わり、カメラアングルが艦橋視点の映像になる。
前方から複数の艦が接近してくるのが見える。
その敵艦をやっと捕捉したというぐらいの長距離で巡洋戦艦がレールガンを発射、次々と敵艦を撃沈していく。
「大口径レールガンによる長距離射撃だね」
「射撃補正装置による狙撃でしょうね」
僕の独り言に菜穂さんが頷く。
菜穂さんも狙撃担当だから、SFOランカーの実力に舌を巻いている。
一撃で敵艦を撃沈していることから、口径は40cmだろうか。
さすがSFOランカー、狙撃技術は一流だ。
映像は進み、敵艦隊から大量のミサイルが撃ち込まれてくる。
それを高速機動だけで避けていく巡洋戦艦の俯瞰映像が流れる。
「巧いね。巡洋戦艦の機動力以上に操縦センスが凄い」
僕はSFOランカーの実力に打ちのめされた。
ただ艦を育てただけじゃない。それ以上に個人技が凄いのだ。
単艦で敵艦隊を撃破していく巡洋戦艦が敵艦隊の中へと突っ込んで行く。
距離をとった狙撃だけじゃなく、接近してからがまた凄かった。
至近距離で発射されたビームを発射予兆だけを見て避けていく。
まるでシューティングゲームの鬼弾幕を避けるような機動だ。
避けてビームを撃ち敵艦を撃破。その繰り返しで敵艦隊は次々に数を減らしていく。
敵艦隊の中央を突破した巡洋戦艦が後ろを見せている敵艦隊に向けて大量のミサイルを撃つ。
艦の設計上、後方は武装が少ない。その手薄な方向からのミサイル攻撃。
敵艦隊の隊列が乱れまくる。その隙を突いて反転した巡洋戦艦が迫る。
とうとう敵艦隊は全艦撃破されてしまった。
「やばいね。これ単艦だけで圧倒的な戦闘力だよ」
僕がそう言うと菜穂さんが続く。
「長距離射撃、接近戦、全てに於いて完璧だね……」
皆、頭を抱えてしまった。
今流れた映像の敵艦隊は、僕たちの艦隊の十数倍の数の艦隊だった。
それがあっと言う間に撃墜されてしまった。
弱点を探るどころじゃなかった。
むしろこちらの実力不足や戦力不足に目が行ってしまうほどだった。
「弱点といえば、巡洋戦艦は装甲が薄いってことだけど、僕たちの艦は最高でも巡洋艦だから、それでも僕らの艦より厚いんだよね」
「それに、あれだけの回避力があったら当たる気がしないわ」
綾姫も同じような回避系の戦い方だが、遥か上の実力に落ち込んでいる。
「こちらには勝る点はある?」
菜穂さんが、こちらの艦隊に勝ち目があるのかという質問をする。
「僕のGバレットなら速射力で勝っているかもね。
破壊力もあるから避けられないようにして撃ち込めば勝てるかもしれない」
「たぶん避けるのよね」
「うん」
さて困ったぞ。
僕が秘密兵器を投入すれば勝てる見込みが出るけど、それ以前に同等以上の攻撃を受けてしまったら守りに不安が出る。
油断させる? SFOランカーはそんなに甘くないだろう。
唯一戦える状況になる可能性はカベプロがこちらを舐めてかかってSFOランカーを使わないという場合だろうか。
まあ、そんな他力本願を願ってもしょうがない。
「なんとか防御力を上げないとだめだね。
盾を耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板で作ろうか?
戦艦を鹵獲した時の装甲版がたしか次元格納庫に余っていたはず」
「それなら40cmレールガンの一撃ぐらいは防げそうね」
それぞれが意見を出し合い、戦力アップをはかることにした。
その結果はシミュレートしてみるしかないな。
「というわけで、社長、仮想SFOランカーをやってもらうからね」
戦力アップしてもそれを使いこなすのは個々の技能による。
その技能を上げなければSFOランカーには太刀打ちできないだろう。
0
お気に入りに追加
406
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる