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アイドル編
032 アイドル編9 アバターだから問題ない
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SIDE:社長ら
「僕は男だよ?」
「は?」
神澤社長は顎を大きく落として呆然としている。
そりゃそうだ。既にSNSで合格決定を全世界に発信済みなのだから。
そして今後のことを考えているのだろうか思案顔になる。
「え?」
菜穂さんは、状況が呑み込めずに頭に???が出ている。
そりゃそうだろう。初心者講習の時からずっと晶羅を女の子だと思い込んでいたのだから。
晶羅という名前もどっちとも取れるしね。
「クスクス」
紗綾は(え? こんなカワイイ顔して男の子なの? 私よりカワイイってズルくない?)と思いながらも成り行きを楽しんでいた。
(社長、どうする気なんだろw)他人事だった。
「……」
美優は……。何を考えているかわからなかった。
じーっと晶羅の顔を見つめていた。
◇◇◇◇◆
SIDE:アキラ
事務所内が騒然となる。
さすがに再起動した菜穂さんが口火を切る。
「ちょっと待って、アキラちゃんって初心者講習の時に女子チームだったわよね?」
「あれは、3対3に分ける時にたまたま女性側に混ざっただけだ」
「でも、アバターが女性アバターだったじゃない」
「あれはどうしてなんだろうね? 特殊な模擬戦ではネカマになれるってあったから、何かの設定のせいじゃないかな」
「確かにそうね。私もそこらへんは初心者で知らなかったし……」
「ほら、一人称ずっと僕だったでしょ?」
「それはボクっ娘だとばかり……」
菜穂さんは頭を抱えてしまった。
そこへ神澤社長が割って入る。
「それじゃ、なんでアイドルオーディションに参加を?」
「僕は通信担当に応募したんだけど、なぜか変な面接に呼ばれちゃって。これは違うなって解ったから合格もらって直ぐに辞退したんだ」
「ああっ! 通信担当でも募集をかけていたのを忘れていた!」
「「「社長ーーーーーーーーーーーーー!!(ジト目)」」」
みんな頭を抱えてしまった。
しかし百戦錬磨の神澤社長、直ぐに立ち直って詭弁を弄し始める。
「菜穂、もう既に合格の速報は流したんだな?」
「はい。社長。SFO公式で全世界に発信済みです」
「なら合格を覆すのは不可能だ。事務所のメンツに関わる」
「おい! 僕の立場は?」
「それに基本はSFO内のことだから、自分の顔とはいえアバターでの活動だ。
さすがに専用艦を見せてしまえば気付かれるだろうが、今後はアバターのみでの参加とすれば問題ない。
幸い晶羅ちゃんは女の子にしか見えない。菜穂のメイク術があればバレやしない!」
「言い切った! このおっさん言い切ったよ!」
(だが甘い、甘いよ神澤社長。僕にはまだ切り札があるんだ)
「だけど、僕は未成年だよ? 保護者の同意が無ければ契約は結べないぞ。しかも唯一の肉親は行方不明中だ」
(どうだ! 会心の一撃だろ!?)
「ああ、そこはクリアしている。SFOは外国扱いだからね。成人年齢は15歳だ。晶羅ちゃんもプロ契約しただろ?」
「そうだった。でもクーリングオフが……」
「そちらの応募が先だから適用外だし、外国だし」
(大人って怖い。こうやってAVに売られていくんだな……)
僕は最後の手段を使うことにした。
「じゃあ、9歳差の双子騒動って知ってるでしょ?」
僕は断る目的であの忌まわしい過去を話した。
これで断ってくれるならそれでいいと思ったからだ。
後で知られて排除されるのは散々やられてうんざりしていたんだ。
「ああ、そんなの俺もやられたわ。俺はSFO成功者がなんだと有る事無い事書かれまくったよ。ガハハ」
神澤社長は僕の生い立ちスキャンダルを笑って一蹴した。
万策尽きた。ここまで受け入れられたら断る糸口はもうない。
「それより合格者には賞金が出るんだが、いらないってことはないよな?」
「え? いくら?」
僕は神澤社長の賞金の一言に思わず食いついた。
それはSFOにしている借金の一割を繰り上げ返済出来るほどの金額だった。
「よろしくお願いします!」
こうして僕は神澤プロモーションのアイドルグループ、ブラッシュリップスの新メンバー晶羅になった。
目立ちすぎた代償を目立つことで解消しようという手は悪くはない。
それにまともな艦隊に所属出来るという利点もある。
露出はどうせVR空間での模擬戦の配信映像のみ。
地球には帰れないんだから生身での露出がないのは誤魔化し易いだろう。
アバターだから問題ない。そう自分に言い聞かす。
神澤社長には利己的な思惑があるのだろうけど、僕を僕として当たり前に受け入れてくれているのは嬉しい。
早速、アイドル仕様のアバターを作ることになった。
アバターをカスタム出来るなんて知らなかった。
菜穂さんにがっつりアイドルメイクをしてもらう。
メイク完成後、基本となる顔情報をアイドルメイクで登録する。
ついでと言ってはなんだけど、宣材写真も撮影し流用する。
事務所HP(SFO公式)に新メンバー晶羅の顔写真が公式発表された。
次に衣装。オリジナルデザインの衣装を課金で作って着させる。
これは曲毎に別バージョンを用意するそうだ。お金は事務所持ち。当然だ。
これでアイドルアバターは完成、アイドルアバター1で登録する。
アイドルアバター2、3と次々に登録した。
ステージ上でこれを切り替えれば早着替えになるという裏テクを菜穂さんが披露してくれた。
本人アバターとも簡単に切り替え可能だ。
今後は新曲の歌詞とダンスを覚えて初ステージを待つのみ。
オーディション合格賞金で借金の一部返済が出来たのは怪我の功名。
だが、そのお金で縛られたということでもある。
今後もSFOからもアイドルからも逃れられない。
「どうしてこうなった!」
でも、ぼっちの僕は生まれて初めて居場所を見つけられたのかもしれない。
「僕は男だよ?」
「は?」
神澤社長は顎を大きく落として呆然としている。
そりゃそうだ。既にSNSで合格決定を全世界に発信済みなのだから。
そして今後のことを考えているのだろうか思案顔になる。
「え?」
菜穂さんは、状況が呑み込めずに頭に???が出ている。
そりゃそうだろう。初心者講習の時からずっと晶羅を女の子だと思い込んでいたのだから。
晶羅という名前もどっちとも取れるしね。
「クスクス」
紗綾は(え? こんなカワイイ顔して男の子なの? 私よりカワイイってズルくない?)と思いながらも成り行きを楽しんでいた。
(社長、どうする気なんだろw)他人事だった。
「……」
美優は……。何を考えているかわからなかった。
じーっと晶羅の顔を見つめていた。
◇◇◇◇◆
SIDE:アキラ
事務所内が騒然となる。
さすがに再起動した菜穂さんが口火を切る。
「ちょっと待って、アキラちゃんって初心者講習の時に女子チームだったわよね?」
「あれは、3対3に分ける時にたまたま女性側に混ざっただけだ」
「でも、アバターが女性アバターだったじゃない」
「あれはどうしてなんだろうね? 特殊な模擬戦ではネカマになれるってあったから、何かの設定のせいじゃないかな」
「確かにそうね。私もそこらへんは初心者で知らなかったし……」
「ほら、一人称ずっと僕だったでしょ?」
「それはボクっ娘だとばかり……」
菜穂さんは頭を抱えてしまった。
そこへ神澤社長が割って入る。
「それじゃ、なんでアイドルオーディションに参加を?」
「僕は通信担当に応募したんだけど、なぜか変な面接に呼ばれちゃって。これは違うなって解ったから合格もらって直ぐに辞退したんだ」
「ああっ! 通信担当でも募集をかけていたのを忘れていた!」
「「「社長ーーーーーーーーーーーーー!!(ジト目)」」」
みんな頭を抱えてしまった。
しかし百戦錬磨の神澤社長、直ぐに立ち直って詭弁を弄し始める。
「菜穂、もう既に合格の速報は流したんだな?」
「はい。社長。SFO公式で全世界に発信済みです」
「なら合格を覆すのは不可能だ。事務所のメンツに関わる」
「おい! 僕の立場は?」
「それに基本はSFO内のことだから、自分の顔とはいえアバターでの活動だ。
さすがに専用艦を見せてしまえば気付かれるだろうが、今後はアバターのみでの参加とすれば問題ない。
幸い晶羅ちゃんは女の子にしか見えない。菜穂のメイク術があればバレやしない!」
「言い切った! このおっさん言い切ったよ!」
(だが甘い、甘いよ神澤社長。僕にはまだ切り札があるんだ)
「だけど、僕は未成年だよ? 保護者の同意が無ければ契約は結べないぞ。しかも唯一の肉親は行方不明中だ」
(どうだ! 会心の一撃だろ!?)
「ああ、そこはクリアしている。SFOは外国扱いだからね。成人年齢は15歳だ。晶羅ちゃんもプロ契約しただろ?」
「そうだった。でもクーリングオフが……」
「そちらの応募が先だから適用外だし、外国だし」
(大人って怖い。こうやってAVに売られていくんだな……)
僕は最後の手段を使うことにした。
「じゃあ、9歳差の双子騒動って知ってるでしょ?」
僕は断る目的であの忌まわしい過去を話した。
これで断ってくれるならそれでいいと思ったからだ。
後で知られて排除されるのは散々やられてうんざりしていたんだ。
「ああ、そんなの俺もやられたわ。俺はSFO成功者がなんだと有る事無い事書かれまくったよ。ガハハ」
神澤社長は僕の生い立ちスキャンダルを笑って一蹴した。
万策尽きた。ここまで受け入れられたら断る糸口はもうない。
「それより合格者には賞金が出るんだが、いらないってことはないよな?」
「え? いくら?」
僕は神澤社長の賞金の一言に思わず食いついた。
それはSFOにしている借金の一割を繰り上げ返済出来るほどの金額だった。
「よろしくお願いします!」
こうして僕は神澤プロモーションのアイドルグループ、ブラッシュリップスの新メンバー晶羅になった。
目立ちすぎた代償を目立つことで解消しようという手は悪くはない。
それにまともな艦隊に所属出来るという利点もある。
露出はどうせVR空間での模擬戦の配信映像のみ。
地球には帰れないんだから生身での露出がないのは誤魔化し易いだろう。
アバターだから問題ない。そう自分に言い聞かす。
神澤社長には利己的な思惑があるのだろうけど、僕を僕として当たり前に受け入れてくれているのは嬉しい。
早速、アイドル仕様のアバターを作ることになった。
アバターをカスタム出来るなんて知らなかった。
菜穂さんにがっつりアイドルメイクをしてもらう。
メイク完成後、基本となる顔情報をアイドルメイクで登録する。
ついでと言ってはなんだけど、宣材写真も撮影し流用する。
事務所HP(SFO公式)に新メンバー晶羅の顔写真が公式発表された。
次に衣装。オリジナルデザインの衣装を課金で作って着させる。
これは曲毎に別バージョンを用意するそうだ。お金は事務所持ち。当然だ。
これでアイドルアバターは完成、アイドルアバター1で登録する。
アイドルアバター2、3と次々に登録した。
ステージ上でこれを切り替えれば早着替えになるという裏テクを菜穂さんが披露してくれた。
本人アバターとも簡単に切り替え可能だ。
今後は新曲の歌詞とダンスを覚えて初ステージを待つのみ。
オーディション合格賞金で借金の一部返済が出来たのは怪我の功名。
だが、そのお金で縛られたということでもある。
今後もSFOからもアイドルからも逃れられない。
「どうしてこうなった!」
でも、ぼっちの僕は生まれて初めて居場所を見つけられたのかもしれない。
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