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第四章 ルナトーク王国奪還戦編
152 火事場泥棒たち
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ペリアルテ商国の東に位置するシセイド市上空に突如として陸上戦艦が出現した。
ここはガイアベザル帝国の陸上戦艦とキルナール王国の陸上戦艦が戦闘を行った、まさにその現場だった。
ガイアベザル帝国の陸上戦艦は、自らが攻撃を受けにくくなるようにとペリアルテ商国の市街地を盾とするために、わざとこのシセイド市の上空を通過していた。
戦争状態であったため、キルナール王国の陸上戦艦が躊躇することなくこの場で撃墜したのは致し方の無い事だった。
ここにはその撃墜されたガイアベザル帝国の陸上戦艦が市街を破壊しつつ墜落し鎮座していた。
「バカな! いつの間にここに?」
ガイアベザル帝国の陸上戦艦に取りついた監督官が、その突如として出現した陸上戦艦を見上げて呟く。
ガイアベザル帝国の陸上戦艦から備品や物資を盗み出していたのは、このシセイド市を支配している商国6代表の一家、オルゼン商会の手の者たちだった。
彼らは陸上戦艦の所有権が撃墜した当事国であるキルナール王国にある事を知りながら、当事者がいないことを良いことに火事場泥棒をはたらいていたのだ。
そこには被害を受けた市街の補償を貰って何が悪いという身勝手な解釈が存在していた。
『今から陸上戦艦を回収する。地元住民は離れて欲しい』
陸上戦艦から拡声魔法による音声が響く。
『こちらは商国との条約による権利を行使するため此処に来ている。
中にいる帝国の生き残りは、商国で捕虜として収監してもらうことになっているはずだ。
協力を要請する』
ペリアルテ商国とキルナール王国及びリーンワース王国との間で結ばれた同盟条約には、撃墜された陸上戦艦の所有権に関する取り決めや、そのような協力をする義務を謳った条文があった。
だが、この時点で既に商国は同盟条約を反故にすることを決定して略奪を正当化したところだった。
「あの舷側の国旗はキルナール王国のものだ」
「全滅したのではなかったのか!」
「いや、どう見ても無傷の艦だぞ」
「まさかまだ陸上戦艦が残っていたのか!」
「我らは既に彼の国を裏切ったと聞く。
陸上戦艦が全滅したというからその決断をしたはずではなかったのか?」
「拙い。あのたった1艦だけで商国は火の海になるぞ!」
後の祭りだった。
「いや、まだキルナール王国に条約反故の通知は行っていないはずだ」
「ここは誤魔化すしかないぞ」
とその時、彼らは浮遊感を覚えたと思ったら空中に投げ出されていた。
今まで立っていた中破した陸上戦艦が跡形もなく消えたのだ。
これはクランドが陸上戦艦をインベントリに収納したからであり、生き物は全てその収納から弾かれて空中に舞ったのだった。
クランドは陸上戦艦の中にいるのは帝国の生き残りのみと思っているため、容赦ない実力行使を行っていた。
しかし、捕虜に対して人道的に扱うというのは日本人の魂に染み込んだ行動原理であったため、クランドは風魔法のエアクッションで全員を怪我することなく地上へと優しく降ろした。
『その捕虜のことは頼みます』
そう言うとキルナール王国の陸上戦艦は一瞬で消え失せた。
「助かった……」
「どうやら奴は我らの裏切りに気付いていない」
「早く、代表に知らせなければ」
「ワイバーン便を飛ばせ!」
しかし、クランドの転移で移動しているエルシークは、ワイバーン便の速度を遥かに上回る速度で残骸の回収を続けて行った。
おかげで略奪を免れた陸上戦艦が5艦もいたというの不幸中の幸いか。
まあ、その事にクランドが気付くのは、第13ドックで備品を盗まれた陸上戦艦を修理しようとした時だったのだが……。
第13ドックでは、未だに修理待ちの艦が多数あったため、これらの新たな鹵獲艦は後回しとされたため、気付くのが遅れたのだった。
この時の戦闘により鹵獲した敵艦は、残骸3を除くと14艦存在していた。
これらの艦は第13ドックで解体され他の艦の修理部品として後に活用された。
ここはガイアベザル帝国の陸上戦艦とキルナール王国の陸上戦艦が戦闘を行った、まさにその現場だった。
ガイアベザル帝国の陸上戦艦は、自らが攻撃を受けにくくなるようにとペリアルテ商国の市街地を盾とするために、わざとこのシセイド市の上空を通過していた。
戦争状態であったため、キルナール王国の陸上戦艦が躊躇することなくこの場で撃墜したのは致し方の無い事だった。
ここにはその撃墜されたガイアベザル帝国の陸上戦艦が市街を破壊しつつ墜落し鎮座していた。
「バカな! いつの間にここに?」
ガイアベザル帝国の陸上戦艦に取りついた監督官が、その突如として出現した陸上戦艦を見上げて呟く。
ガイアベザル帝国の陸上戦艦から備品や物資を盗み出していたのは、このシセイド市を支配している商国6代表の一家、オルゼン商会の手の者たちだった。
彼らは陸上戦艦の所有権が撃墜した当事国であるキルナール王国にある事を知りながら、当事者がいないことを良いことに火事場泥棒をはたらいていたのだ。
そこには被害を受けた市街の補償を貰って何が悪いという身勝手な解釈が存在していた。
『今から陸上戦艦を回収する。地元住民は離れて欲しい』
陸上戦艦から拡声魔法による音声が響く。
『こちらは商国との条約による権利を行使するため此処に来ている。
中にいる帝国の生き残りは、商国で捕虜として収監してもらうことになっているはずだ。
協力を要請する』
ペリアルテ商国とキルナール王国及びリーンワース王国との間で結ばれた同盟条約には、撃墜された陸上戦艦の所有権に関する取り決めや、そのような協力をする義務を謳った条文があった。
だが、この時点で既に商国は同盟条約を反故にすることを決定して略奪を正当化したところだった。
「あの舷側の国旗はキルナール王国のものだ」
「全滅したのではなかったのか!」
「いや、どう見ても無傷の艦だぞ」
「まさかまだ陸上戦艦が残っていたのか!」
「我らは既に彼の国を裏切ったと聞く。
陸上戦艦が全滅したというからその決断をしたはずではなかったのか?」
「拙い。あのたった1艦だけで商国は火の海になるぞ!」
後の祭りだった。
「いや、まだキルナール王国に条約反故の通知は行っていないはずだ」
「ここは誤魔化すしかないぞ」
とその時、彼らは浮遊感を覚えたと思ったら空中に投げ出されていた。
今まで立っていた中破した陸上戦艦が跡形もなく消えたのだ。
これはクランドが陸上戦艦をインベントリに収納したからであり、生き物は全てその収納から弾かれて空中に舞ったのだった。
クランドは陸上戦艦の中にいるのは帝国の生き残りのみと思っているため、容赦ない実力行使を行っていた。
しかし、捕虜に対して人道的に扱うというのは日本人の魂に染み込んだ行動原理であったため、クランドは風魔法のエアクッションで全員を怪我することなく地上へと優しく降ろした。
『その捕虜のことは頼みます』
そう言うとキルナール王国の陸上戦艦は一瞬で消え失せた。
「助かった……」
「どうやら奴は我らの裏切りに気付いていない」
「早く、代表に知らせなければ」
「ワイバーン便を飛ばせ!」
しかし、クランドの転移で移動しているエルシークは、ワイバーン便の速度を遥かに上回る速度で残骸の回収を続けて行った。
おかげで略奪を免れた陸上戦艦が5艦もいたというの不幸中の幸いか。
まあ、その事にクランドが気付くのは、第13ドックで備品を盗まれた陸上戦艦を修理しようとした時だったのだが……。
第13ドックでは、未だに修理待ちの艦が多数あったため、これらの新たな鹵獲艦は後回しとされたため、気付くのが遅れたのだった。
この時の戦闘により鹵獲した敵艦は、残骸3を除くと14艦存在していた。
これらの艦は第13ドックで解体され他の艦の修理部品として後に活用された。
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