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第四章 ルナトーク王国奪還戦編
150 ぺリアルテ商国2
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「おい、どうなっているんだ!」
ペリアルテ商国の6代表が代表部と呼ばれる国の行政府に集まったのは、ガイアベザル帝国の旧ルナトーク占領軍主力艦隊とキルナール王国の艦隊が激突した直後だった。
「まさかキルナール王国の艦隊が消滅――転移で消えたため爆発で跡形もなくなったと誤認している――するとは……」
「あの国の艦隊はたった5艦で20艦以上の艦隊を葬る強さがあるのではなかったのか!?」
「いや、撃沈されて我が国に残されたガイアベザル帝国の陸上戦艦は14艦に及び、少なくとも大爆発の爆心地には3艦の残骸がある」
「つまり17艦を葬るだけの実力はあったのか……」
「しかし、全滅したのでは、今後の抑止力としては期待できんぞ」
「かの国とリーンワース王国に付いたのは早計だったのではないか?」
「アルペン(カムロ)氏に全権代表を任せたのは間違っていたようだな」
カムロはキルナール王国の艦隊が全滅するなどとは思っていなかったので反論することが出来なかった。
自分の見立てが間違っていたのかと自問するも、全滅などという結果は想定の範囲外のことだった。
「シセイド市の市街地には陸上戦艦3艦が落ちた。
その被害も甚大だ」
これは占領軍分遣艦隊が市街地の上を通過して攻撃をしかけたせいだった。
そのままキルナール艦隊の反撃により撃墜されたため、陸上戦艦が市街に落下したのだ。
だが、この状況で被害が出るから反撃するななどと言えるわけがない。
「それより、我がセントネル市だ。
大爆発の爆心地から半径20kmにかかる市街が丸ごと消えたのだぞ!
この賠償はどうしてくれるのだ?
キルナール王国が払ってくれるのだろうな?」
これもガイアベザル帝国側の自爆なので、非はキルナール王国にはなかった。
完全な言いがかりだった。
「さすがにその要求は無理だろう。
しかし、我が国の国土で戦闘を繰り広げたことに抗議せねばならん」
カムロはこいつら何を言っているんだと思っていた。
リーンワース王国とキルナール王国と我が商国は同盟を結んだのだ。
しかもガイアベザル帝国を国内から追い出すのは我が商国自らの戦いだ。
キルナール王国は我が商国の代わりにガイアベザル艦隊と戦ったのだ。
それを責任論など何を考えているのだとカムロは憤った。
「いや、いっそガイアベザル帝国と共にキルナール王国を攻めるべきでは?」
「それならば、キルナール王国に賠償請求が出来るな」
主力の艦隊を失い戦力が激減したと見るや、さっさと強い方に尻尾を振る。
まさに蝙蝠外交というやつだった。
「同盟はアルペン氏の先走りだったということで良いだろう」
「我らは関与していなかった」
「よって、我が商国は未だにガイアベザル帝国の管理国である」
「「「「異議なし」」」」
カムロは開いた口が塞がらなかった。
カムロ以外の代表全員が同盟条約を反故にするつもりなのだ。
「そんなバカなことが通るか!
私は反対する!」
この6代表会議は全員一致でなければ議案は通らない仕組みだった。
しかし、代表議長が有り得ない行動に出る。
「勝手に先走ったアルペン氏の罷免を要求する」
「「「「異議なし」」」」
「5代表の同意により議案は成立とする」
「なんだこの茶番は!」
カムロは代表を罷免されてしまい、商国はガイアベザル帝国にまたすり寄ることに決定した。
「そうなると、落ちた陸上戦艦は帝国に返還しなければならなくなるな」
「おいおい、既に内部は略奪を開始しているのだぞ?」
この連中、火事場泥棒を行っていた。
本来ならば、撃墜された陸上戦艦の所有権は落としたキルナール王国にあるのだ。
「それもキルナール王国のせいにすれば良い」
その火事場泥棒の責任をキルナール王国になすりつけて帝国に良い顔をしようというのだ。
何処まで厚顔無恥なのか……。
「セントネル市には、まだ手付かずの艦が残っているだろう。
それをこちらにも寄越せ」
「帝国が戻って来る前に我らが関与した証拠を消さねばならん。
それに協力してやろうではないか」
自分たちの支配地域に陸上戦艦が落ちなかった代表が、セントネル市を持つ代表に分け前を要求した。
時間がないから、自分達に火事場泥棒を任せろという事だ。
「時間の問題か。ならば仕方ない」
どうしようもない連中だった。
だからこそいち早く帝国に付き、ルナトーク王国を食い物にして儲けていたのだ。
カムロが結んだ条約が反故になるということは、ルナトークの民が奴隷から開放されることも無くなった。
この裏切りは後で高くつくことだろう。
既にその頃、キルナール王国のイスダル要塞には再建された第一戦隊が戻って来ていた。
その情報を商国の代表たちは誰もまだ知らなかった。
ペリアルテ商国の6代表が代表部と呼ばれる国の行政府に集まったのは、ガイアベザル帝国の旧ルナトーク占領軍主力艦隊とキルナール王国の艦隊が激突した直後だった。
「まさかキルナール王国の艦隊が消滅――転移で消えたため爆発で跡形もなくなったと誤認している――するとは……」
「あの国の艦隊はたった5艦で20艦以上の艦隊を葬る強さがあるのではなかったのか!?」
「いや、撃沈されて我が国に残されたガイアベザル帝国の陸上戦艦は14艦に及び、少なくとも大爆発の爆心地には3艦の残骸がある」
「つまり17艦を葬るだけの実力はあったのか……」
「しかし、全滅したのでは、今後の抑止力としては期待できんぞ」
「かの国とリーンワース王国に付いたのは早計だったのではないか?」
「アルペン(カムロ)氏に全権代表を任せたのは間違っていたようだな」
カムロはキルナール王国の艦隊が全滅するなどとは思っていなかったので反論することが出来なかった。
自分の見立てが間違っていたのかと自問するも、全滅などという結果は想定の範囲外のことだった。
「シセイド市の市街地には陸上戦艦3艦が落ちた。
その被害も甚大だ」
これは占領軍分遣艦隊が市街地の上を通過して攻撃をしかけたせいだった。
そのままキルナール艦隊の反撃により撃墜されたため、陸上戦艦が市街に落下したのだ。
だが、この状況で被害が出るから反撃するななどと言えるわけがない。
「それより、我がセントネル市だ。
大爆発の爆心地から半径20kmにかかる市街が丸ごと消えたのだぞ!
この賠償はどうしてくれるのだ?
キルナール王国が払ってくれるのだろうな?」
これもガイアベザル帝国側の自爆なので、非はキルナール王国にはなかった。
完全な言いがかりだった。
「さすがにその要求は無理だろう。
しかし、我が国の国土で戦闘を繰り広げたことに抗議せねばならん」
カムロはこいつら何を言っているんだと思っていた。
リーンワース王国とキルナール王国と我が商国は同盟を結んだのだ。
しかもガイアベザル帝国を国内から追い出すのは我が商国自らの戦いだ。
キルナール王国は我が商国の代わりにガイアベザル艦隊と戦ったのだ。
それを責任論など何を考えているのだとカムロは憤った。
「いや、いっそガイアベザル帝国と共にキルナール王国を攻めるべきでは?」
「それならば、キルナール王国に賠償請求が出来るな」
主力の艦隊を失い戦力が激減したと見るや、さっさと強い方に尻尾を振る。
まさに蝙蝠外交というやつだった。
「同盟はアルペン氏の先走りだったということで良いだろう」
「我らは関与していなかった」
「よって、我が商国は未だにガイアベザル帝国の管理国である」
「「「「異議なし」」」」
カムロは開いた口が塞がらなかった。
カムロ以外の代表全員が同盟条約を反故にするつもりなのだ。
「そんなバカなことが通るか!
私は反対する!」
この6代表会議は全員一致でなければ議案は通らない仕組みだった。
しかし、代表議長が有り得ない行動に出る。
「勝手に先走ったアルペン氏の罷免を要求する」
「「「「異議なし」」」」
「5代表の同意により議案は成立とする」
「なんだこの茶番は!」
カムロは代表を罷免されてしまい、商国はガイアベザル帝国にまたすり寄ることに決定した。
「そうなると、落ちた陸上戦艦は帝国に返還しなければならなくなるな」
「おいおい、既に内部は略奪を開始しているのだぞ?」
この連中、火事場泥棒を行っていた。
本来ならば、撃墜された陸上戦艦の所有権は落としたキルナール王国にあるのだ。
「それもキルナール王国のせいにすれば良い」
その火事場泥棒の責任をキルナール王国になすりつけて帝国に良い顔をしようというのだ。
何処まで厚顔無恥なのか……。
「セントネル市には、まだ手付かずの艦が残っているだろう。
それをこちらにも寄越せ」
「帝国が戻って来る前に我らが関与した証拠を消さねばならん。
それに協力してやろうではないか」
自分たちの支配地域に陸上戦艦が落ちなかった代表が、セントネル市を持つ代表に分け前を要求した。
時間がないから、自分達に火事場泥棒を任せろという事だ。
「時間の問題か。ならば仕方ない」
どうしようもない連中だった。
だからこそいち早く帝国に付き、ルナトーク王国を食い物にして儲けていたのだ。
カムロが結んだ条約が反故になるということは、ルナトークの民が奴隷から開放されることも無くなった。
この裏切りは後で高くつくことだろう。
既にその頃、キルナール王国のイスダル要塞には再建された第一戦隊が戻って来ていた。
その情報を商国の代表たちは誰もまだ知らなかった。
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