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第四章 ルナトーク王国奪還戦編
148 敗退
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魔力バーストの大爆発が収まった後、キルナール第1戦隊の5艦は全艦少なくない損傷を負っていた。
システムコンソールからエリュシオンのセルフチェック内容が聞こえて来る。
『セルフチェック起動。
制御システム異常なし。
魔導機関異常なし。
魔力ストレージ異常なし。
重力制御機関1番エラー。稼働していません。
重力制御機関2番異常なし。
重力傾斜装置異常なし。
第一魔導砲塔エラー。使用不能です。
第二魔導砲塔異常なし。
武器制御システム異常なし。
魔導通信機エラー。アンテナが破壊されています。
魔導レーダーエラー。アンテナが破壊されています。
魔導障壁展開装置エラー。再起動に時間がかかります。
セルフチェック終了。
限定的なれど航行に支障なし』
どうや我が艦は目と耳を奪われてしまったようだ。
魔導砲が1基使用可能だが、重力制御機関が片肺運転となっていて、戦闘機動には耐えられないだろう。
このままでもイスダル要塞まで帰ることは可能だが、追撃を受ければ危険なレベルの損傷だった。
幸い全ての艦の転移魔法陣は生きており、魔導機関にも損傷が無かったため、各艦から連絡員がエリュシオンへと転移して来て各艦の状況を知らせた。
「バーアムが一番損傷が激しいのか。
重力傾斜装置が動かないのであれば、浮くだけで動けないな。
そうなると曳航するしかないか……」
艦隊の一番先頭だったバーアムがもろに爆発の影響を受けていた。
魔力バースト反応を感知した段階で、艦の電脳が各々自らを守るために防御魔法陣を展開したために、艦橋などの主要区画が守られて人的被害は出なかった。
衝撃でコケた乗組員が掠り傷を負った程度だ。
だが、艦の各所で守りきれなかった部分は少なくなく、そこはごっそりと破壊されてしまっていた。
「使える魔導砲はエリュシオンの1門のみか……」
つまり、我が第1戦隊は戦闘継続が不可能なほどの損傷を負ったのだ。
ここで俺は決断せざるを得なかった。
このまま戦うか、撤退するかをだ。
まず、このまま戦うのは論外だった。
全艦戦闘機動が出来ず、武器も重力加速砲が何門か残っているのみ。
戦力としてはほぼ壊滅状態だったのだ。
ならば撤退するしかないのだが、どのようにして撤退するのかが問題だった。
このままイスダル要塞まで引くことは可能だが、ノロノロと撤退するのでは、敵主力艦隊の残存艦6艦の攻撃に晒されることだろう。
それならば、艦を俺のインベントリに収納して全員で転移してしまえば一瞬で引くことが出来る。
それは旧ルナトークの解放を諦めて逃げるということであり、我がキルナール王国の負けを意味していた。
だが、そんなプライドなど捨てなければならなかった。
旧ルナトーク奪還は何も今直ぐにしなければならないことではないのだ。
こちらには陸上戦艦を修理する技術がある。
艦の数を増やし、魔力バースト対策をして再戦を挑めば今度は必ず勝てるはずだ。
俺はここに転移による撤退を決意した。
「総員退艦。全員でエリュシオンに転移するように伝えろ」
「「「「はっ!」」」」
連絡員が転移魔法陣で各艦に帰った。
今負けて帰っても、次が必ずある。
それがわかっていたので、連絡員は速やかに行動に移ったのだ。
とその時、ダーボンから1発のSSMが発射された。
魔導レーダーの誘導はないが、発射すればミサイル自体が敵艦を探し出して飛んで行くため、最後に撃ち放ったのだろう。
気休めだが、こちらが撤退するまでの最後の牽制となる。
そうこうするうちにエリュシオンの転移魔法陣に各艦から全乗組員が転移して来た。
俺はルナワルド、オライオン、バーアム、ダーボンをインベントリに収納するとエリュシオンごと第13ドックへと転移した。
ここに旧ルナトーク解放作戦は失敗に終わったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「敵の飛翔体です!」
艦隊の最後尾を行く陸上戦艦デネブの見張り員が金切り声を上げる。
魔力バースト爆発の黒煙の中から例の飛翔体が飛び出して来たのだ。
それは我が帝国の技術では迎撃することすら叶わない必殺兵器だった。
「目標はどの艦だ!?」
艦長が確認する暇もなく、飛翔体はデネブの右舷をすり抜け前方へと向かって行った。
そしてポップアップすると前方の艦に突き刺さり大爆発を起こした。
「どの艦がやられた!?」
艦長の問いに鷹の目スキルを持つ見張り員が叫ぶ。
「旗艦アークツルスです!」
この飛翔体の攻撃により旗艦アークツルスは撃沈、司令のゲーベックも戦死した。
この混乱により占領軍主力艦隊の残存艦5艦は、キルナール王国の艦隊の被害も確認せずにそのまま撤退して行った。
司令の居なくなった今、わざわざ転進して戦おうなどという艦長は誰も居なかったのだ。
そこには亡きゲーベック司令の撤退命令を遂行するという大義名分があり、誰も異を唱えることは無かった。
システムコンソールからエリュシオンのセルフチェック内容が聞こえて来る。
『セルフチェック起動。
制御システム異常なし。
魔導機関異常なし。
魔力ストレージ異常なし。
重力制御機関1番エラー。稼働していません。
重力制御機関2番異常なし。
重力傾斜装置異常なし。
第一魔導砲塔エラー。使用不能です。
第二魔導砲塔異常なし。
武器制御システム異常なし。
魔導通信機エラー。アンテナが破壊されています。
魔導レーダーエラー。アンテナが破壊されています。
魔導障壁展開装置エラー。再起動に時間がかかります。
セルフチェック終了。
限定的なれど航行に支障なし』
どうや我が艦は目と耳を奪われてしまったようだ。
魔導砲が1基使用可能だが、重力制御機関が片肺運転となっていて、戦闘機動には耐えられないだろう。
このままでもイスダル要塞まで帰ることは可能だが、追撃を受ければ危険なレベルの損傷だった。
幸い全ての艦の転移魔法陣は生きており、魔導機関にも損傷が無かったため、各艦から連絡員がエリュシオンへと転移して来て各艦の状況を知らせた。
「バーアムが一番損傷が激しいのか。
重力傾斜装置が動かないのであれば、浮くだけで動けないな。
そうなると曳航するしかないか……」
艦隊の一番先頭だったバーアムがもろに爆発の影響を受けていた。
魔力バースト反応を感知した段階で、艦の電脳が各々自らを守るために防御魔法陣を展開したために、艦橋などの主要区画が守られて人的被害は出なかった。
衝撃でコケた乗組員が掠り傷を負った程度だ。
だが、艦の各所で守りきれなかった部分は少なくなく、そこはごっそりと破壊されてしまっていた。
「使える魔導砲はエリュシオンの1門のみか……」
つまり、我が第1戦隊は戦闘継続が不可能なほどの損傷を負ったのだ。
ここで俺は決断せざるを得なかった。
このまま戦うか、撤退するかをだ。
まず、このまま戦うのは論外だった。
全艦戦闘機動が出来ず、武器も重力加速砲が何門か残っているのみ。
戦力としてはほぼ壊滅状態だったのだ。
ならば撤退するしかないのだが、どのようにして撤退するのかが問題だった。
このままイスダル要塞まで引くことは可能だが、ノロノロと撤退するのでは、敵主力艦隊の残存艦6艦の攻撃に晒されることだろう。
それならば、艦を俺のインベントリに収納して全員で転移してしまえば一瞬で引くことが出来る。
それは旧ルナトークの解放を諦めて逃げるということであり、我がキルナール王国の負けを意味していた。
だが、そんなプライドなど捨てなければならなかった。
旧ルナトーク奪還は何も今直ぐにしなければならないことではないのだ。
こちらには陸上戦艦を修理する技術がある。
艦の数を増やし、魔力バースト対策をして再戦を挑めば今度は必ず勝てるはずだ。
俺はここに転移による撤退を決意した。
「総員退艦。全員でエリュシオンに転移するように伝えろ」
「「「「はっ!」」」」
連絡員が転移魔法陣で各艦に帰った。
今負けて帰っても、次が必ずある。
それがわかっていたので、連絡員は速やかに行動に移ったのだ。
とその時、ダーボンから1発のSSMが発射された。
魔導レーダーの誘導はないが、発射すればミサイル自体が敵艦を探し出して飛んで行くため、最後に撃ち放ったのだろう。
気休めだが、こちらが撤退するまでの最後の牽制となる。
そうこうするうちにエリュシオンの転移魔法陣に各艦から全乗組員が転移して来た。
俺はルナワルド、オライオン、バーアム、ダーボンをインベントリに収納するとエリュシオンごと第13ドックへと転移した。
ここに旧ルナトーク解放作戦は失敗に終わったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「敵の飛翔体です!」
艦隊の最後尾を行く陸上戦艦デネブの見張り員が金切り声を上げる。
魔力バースト爆発の黒煙の中から例の飛翔体が飛び出して来たのだ。
それは我が帝国の技術では迎撃することすら叶わない必殺兵器だった。
「目標はどの艦だ!?」
艦長が確認する暇もなく、飛翔体はデネブの右舷をすり抜け前方へと向かって行った。
そしてポップアップすると前方の艦に突き刺さり大爆発を起こした。
「どの艦がやられた!?」
艦長の問いに鷹の目スキルを持つ見張り員が叫ぶ。
「旗艦アークツルスです!」
この飛翔体の攻撃により旗艦アークツルスは撃沈、司令のゲーベックも戦死した。
この混乱により占領軍主力艦隊の残存艦5艦は、キルナール王国の艦隊の被害も確認せずにそのまま撤退して行った。
司令の居なくなった今、わざわざ転進して戦おうなどという艦長は誰も居なかったのだ。
そこには亡きゲーベック司令の撤退命令を遂行するという大義名分があり、誰も異を唱えることは無かった。
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