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第四章 ルナトーク王国奪還戦編

143 会敵

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 観測機VA52に向けて放たれた魔導砲の光条は、魔導反射結界リフレクターに当たると滑るように下方に逸れて敵二番艦へと向かった。

「敵二番艦魔導反応消失!」

「よし、続けて敵三番艦に照準、撃て!」

 ルナワルドから長距離魔導砲の第四射が発射され、同様に方向を変えられた光条が敵三番艦に向かう。

『敵三番艦、防御結界により健在です』

 観測機VA52からの通信が第四射が無効化されたことを伝えて来た。

「ほう。敵も魔導砲対策をして来たというわけか」

 俺は自分たちが第13ドックで行った防御結界の増強を、北の帝国が行っていたことに関心してしまった。
その時、観測機VA52へ向けて敵艦の魔導砲が撃ち込まれ高空に消えて行った。

『回避により反射攻撃不能。
これよりレーダーサポートに切り替え後退します』

 観測機VA52が狙われたことで、長距離魔導砲による反射攻撃が出来なくなってしまった。
魔導砲を避けるための急な回避により魔力伝送が切れてしまうため、魔導反射結界リフレクターが機能しないからだ。
そして敵陸上戦艦の魔導砲の有効射程外に出るため、観測機VA52は安全圏まで後退した。
それでも高空からの魔導アクティブレーダーによる探知は健在だった。

「敵艦隊、進路を西に変えて突っ込んで来ます!」

 敵艦隊の動向は、観測機VA52魔導アクティブレーダーが捕らえた情報が転送され、エリュシオンのレーダー画面に表示されている。
その画面で敵艦隊の残り3艦がこちらに突っ込んで来ていることが判明したのだ。

「あ、北より敵主力艦隊急速接近!
距離は推定60km」

 エリュシオンの魔導パッシブレーダーが捕らえたのは、全艦で南下する敵占領軍主力艦隊だった。
どうやら北の帝国の艦隊は北と東から我が艦隊を挟撃するつもりだったらしい。

「敵、分遣艦隊の距離は?」

「48km。なおも接近中」

 敵分遣艦隊は、俺たちに長距離魔導砲攻撃を受けたために、転進のタイミングを誤ったようだ。
魔導砲で狙われたのだから、敵に艦首を向け被弾面積を小さくするのは正しい判断だ。
だが、主力艦隊と同調しての行動でなければ、この後タイミングがずれた状態で会敵することとなり、各個撃破の憂き目にあう可能性を考慮すべきだ。
俺たちが先に攻撃したのは正解だったようだ。

「よし、先に分遣艦隊を叩く。
射程圏内に入ったら全艦で魔導砲ならびに重力加速砲を撃ち込め」

「魔導砲を撃ったのは?」

 北の帝国の陸上戦艦は、魔導砲を撃てる艦が少ない。
先程魔導砲を撃った艦を優先的に叩く必要があるのだ。

「敵四番艦です!」

「バーアム、エリュシオン、ルナワルドで敵四番艦を集中攻撃だ。
敵も魔導砲を撃ってくるぞ。
防護魔法陣展開準備を怠るな」

 俺はレーダー画面を見つめて敵の動きを見極めつつ各艦に指示をだす。
こちらはオライオンを先頭にバーアム、エリュシオン、ルナワルド、ダーボンの順番で単縦陣を組んで北上中だ。
エリュシオンが魔導砲2門搭載なので、敵分遣艦隊3艦に対し魔導砲6門を向けられる。
オライオンが敵五番艦、バーアム、エリュシオン、ルナワルドが敵四番艦、ダーボンが敵三番艦を狙う。
まず魔導砲搭載の敵四番艦を叩くため魔導砲4門で攻撃するつもりだ。

 レーダー画面には接近しつつある敵分遣艦隊が映っていた。
その距離38km。どうやら方針は曲げないつもりらしい。
敵占領軍主力艦隊は魔導通信が使えないため、敵分遣艦隊の動向を把握出来ていないはずなので、未だ遠方をおっとりと南下中だろう。
これにより、敵分遣艦隊はたった3艦でこちらと戦うことになる。
艦の数では3:5だが、魔導砲の数では1:6だ。
圧倒的不利ということだが、こちらに狙われた以上、やるしかないという事だろう。

「敵主力艦隊増速!
距離40kmまで詰まってます!」

「ばかな、どうして?」

 どのように連絡したのかは判明しないが、敵分遣艦隊が敵占領軍主力艦隊に突入の連絡を入れていたということだろう。
その方法は解らなくとも、事実として敵占領軍主力艦隊がタイミングを合わせて来たことだけは理解できた。

「あれです!」

 見張り員が指さした先には、敵分遣艦隊一番艦が落ちた時の誘爆による黒いキノコ雲が上がっていた。

「しまった。あれでバレたのか!」

 俺たちの第一戦隊は敵艦20艦による同時攻撃を受けようとしていた。
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