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第四章 ルナトーク王国奪還戦編
140 ルナトーク解放へ進軍する
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旧ルナトーク王国に、ルナトークの民はほとんど居ない。
北の帝国はルナトーク王国に対して陸上戦艦で押しかけ、その武力を誇示する所謂砲艦外交により、まず陸上戦艦の寄港を要求した。
その上で相互不可侵条約と不平等条約を結んで搾取を始め、生活が苦しくなった民が蜂起したのを理由に侵略を開始したのだ。
相互不可侵条約があったにも拘らず、それは北の帝国の気分次第で簡単に踏みにじられた。
民どころか王族や貴族まで奴隷化され他国に売られ、戦うことの出来る者は北の帝国と他国との戦場へと送られた。
こうしてルナトークの地は元々住んでいたルナトークの民が排除され、他から植民して来た二級帝国民と奴隷が住み、農工漁業の生産をするようになった。
ルナトーク王国は北の帝国に同化され、食料庫とされたのだ。
「つまり、民を人質にされて盾として使われることは無いんだな?」
「はい。ですが、例え盾とされても、王国奪還のためならば、ルナトークの民は喜んで命を差し出すでしょう」
ウェイデン伯爵の目が怖い。
今回エリュシオンと共に艦隊を組んでいるのは、ルナワルド――これは旧ニムルドの後部に輸送艦を接続し航空巡洋艦に改造したものだ――と、オライオン、バーアム、ダーボンの駆逐艦3艦だった。
このルナトークの象徴であるルナワルド艦長がウェイデン伯爵なのだ。
ウェイデン伯爵は、ルナトーク王国奪還に闘志を燃やしており、その手綱を握るのは俺にとって容易な事ではなかった。
貴族の悪い所が多少出ているのが俺は気になっている。
「伯爵、民が残っているなら、出来る限りの事はしよう。
ただし我らの命と交換などということはしない。
そこは割り切るつもりだ」
「は、主君の仰せのままに」
ウェイデン伯爵の忠誠心は信じてもいいだろう。
俺は王族の生き残りアイリーンの夫としてルナトークの王になっているからな。
だが、ルナトーク奪還の話になると彼は多少暴走ぎみになるのだ。
「基本的に商国からルナトークへと至る街道は3つあります。
陸奥道と中央道と海岸道です。
我がイスダル要塞から最も近いのが海岸道。
ガイアベザル帝国の商国駐屯軍が逃げ出したのが中央道です」
商国から提供された地図を作戦台に広げながら、ウェイデン伯爵が街道3つを指示棒で示した。
敵の艦隊が侵攻してくるならば、この3つの街道が使われることが濃厚だった。
陸上戦艦が浮上して航行するとはいえ、不整地の上を飛ぶのは陸上戦艦的にも地上的にも不都合があった。
陸上戦艦は地上の何かに当たり損傷する危険があり、地上では畑の作物が荒らされたり建物が吹っ飛んだりした。
なので、通常はそういった影響の少ない街道上を航行するのが常だった。
まあ、戦争ともなれば、そんな悠長なことは言ってられないのだが、そこは常識の範囲内でということだった。
なので、我が艦隊が侵攻するために使用するのもこの3つの街道のどれかだった。
「我が艦隊が海岸道から侵攻すれば、敵艦隊が陸奥道と中央道から商国を侵す可能性がある。
かと言って、我が艦隊が陸奥道か中央道を使えば、敵艦隊がイスダル要塞に侵攻して来る可能性があるわけだ」
敵が数の論理で動けば、我が艦隊はその力を発揮することなく戦略拠点を叩かれてしまうだろう。
イスダル要塞には重力加速砲も長距離魔導砲もあるので、ただではやられないが、機動戦力がない拠点は数に狙われると弱い所がある。
無敵要塞というわけにはいかないのだ。
「我が国にとって、商国を守る必要があるのでしょうか?
商国を盾にされて、我が国が動けないなど論外でしょう」
一応、商国は連合の一員なので、一緒に戦う或いは防衛してあげなければならない。
しかし、ルナトーク出身者は、商国の奴隷商に売られていて、商国を恨んでいる者も多い。
俺は、泣きついて来る商国と、ルナトーク奪還が第一と考えるルナトーク出身の臣下との板挟み状態になっていた。
悩みに悩んだ末、俺は決断を下した。
「イスダル要塞には第2戦隊を防衛に投入する。
第1戦隊は中央道より北進しルナトーク王国の奪還を行う」
第2戦隊はズイオウ領防衛のための戦力だった。
キルナール王国には第3戦隊までの艦隊が編成されていたが、第3戦隊は鹵獲艦の修理が追い付いておらず、未だ艦数が揃っていなかった。
しかも旗艦設備を持つ巡洋艦は新造せざるを得ず、未だ竣工の目途は立っていなかった。
つまり、第2戦隊は状況によりイスダル要塞とズイオウ領のどちらかを防衛しなければならず、第1戦隊に同行することは出来ないのだ。
もし敵艦隊が陸奥道と海岸道を通って侵攻してきたら、俺はある秘密兵器を使うつもりだった。
まだ実戦で使ったことはないが、その秘密兵器なら中央道から射程外の陸奥道や海岸道の敵艦隊を攻撃できるはずだった。
「中央道からならば、ルナトーク王国の王城が一番近い。
奴らをルナトークから追い出すぞ」
「「「「うおーーーーーーーーーーーーー!!」」」」
こうして、俺たちは艦隊を旧ルナトーク王国へと向けた。
これがルナトーク奪還の第一歩だった。
商国解放が第一歩だって? あれはいつ裏切るかわからない獅子身中の虫だからカウントしない。
北の帝国はルナトーク王国に対して陸上戦艦で押しかけ、その武力を誇示する所謂砲艦外交により、まず陸上戦艦の寄港を要求した。
その上で相互不可侵条約と不平等条約を結んで搾取を始め、生活が苦しくなった民が蜂起したのを理由に侵略を開始したのだ。
相互不可侵条約があったにも拘らず、それは北の帝国の気分次第で簡単に踏みにじられた。
民どころか王族や貴族まで奴隷化され他国に売られ、戦うことの出来る者は北の帝国と他国との戦場へと送られた。
こうしてルナトークの地は元々住んでいたルナトークの民が排除され、他から植民して来た二級帝国民と奴隷が住み、農工漁業の生産をするようになった。
ルナトーク王国は北の帝国に同化され、食料庫とされたのだ。
「つまり、民を人質にされて盾として使われることは無いんだな?」
「はい。ですが、例え盾とされても、王国奪還のためならば、ルナトークの民は喜んで命を差し出すでしょう」
ウェイデン伯爵の目が怖い。
今回エリュシオンと共に艦隊を組んでいるのは、ルナワルド――これは旧ニムルドの後部に輸送艦を接続し航空巡洋艦に改造したものだ――と、オライオン、バーアム、ダーボンの駆逐艦3艦だった。
このルナトークの象徴であるルナワルド艦長がウェイデン伯爵なのだ。
ウェイデン伯爵は、ルナトーク王国奪還に闘志を燃やしており、その手綱を握るのは俺にとって容易な事ではなかった。
貴族の悪い所が多少出ているのが俺は気になっている。
「伯爵、民が残っているなら、出来る限りの事はしよう。
ただし我らの命と交換などということはしない。
そこは割り切るつもりだ」
「は、主君の仰せのままに」
ウェイデン伯爵の忠誠心は信じてもいいだろう。
俺は王族の生き残りアイリーンの夫としてルナトークの王になっているからな。
だが、ルナトーク奪還の話になると彼は多少暴走ぎみになるのだ。
「基本的に商国からルナトークへと至る街道は3つあります。
陸奥道と中央道と海岸道です。
我がイスダル要塞から最も近いのが海岸道。
ガイアベザル帝国の商国駐屯軍が逃げ出したのが中央道です」
商国から提供された地図を作戦台に広げながら、ウェイデン伯爵が街道3つを指示棒で示した。
敵の艦隊が侵攻してくるならば、この3つの街道が使われることが濃厚だった。
陸上戦艦が浮上して航行するとはいえ、不整地の上を飛ぶのは陸上戦艦的にも地上的にも不都合があった。
陸上戦艦は地上の何かに当たり損傷する危険があり、地上では畑の作物が荒らされたり建物が吹っ飛んだりした。
なので、通常はそういった影響の少ない街道上を航行するのが常だった。
まあ、戦争ともなれば、そんな悠長なことは言ってられないのだが、そこは常識の範囲内でということだった。
なので、我が艦隊が侵攻するために使用するのもこの3つの街道のどれかだった。
「我が艦隊が海岸道から侵攻すれば、敵艦隊が陸奥道と中央道から商国を侵す可能性がある。
かと言って、我が艦隊が陸奥道か中央道を使えば、敵艦隊がイスダル要塞に侵攻して来る可能性があるわけだ」
敵が数の論理で動けば、我が艦隊はその力を発揮することなく戦略拠点を叩かれてしまうだろう。
イスダル要塞には重力加速砲も長距離魔導砲もあるので、ただではやられないが、機動戦力がない拠点は数に狙われると弱い所がある。
無敵要塞というわけにはいかないのだ。
「我が国にとって、商国を守る必要があるのでしょうか?
商国を盾にされて、我が国が動けないなど論外でしょう」
一応、商国は連合の一員なので、一緒に戦う或いは防衛してあげなければならない。
しかし、ルナトーク出身者は、商国の奴隷商に売られていて、商国を恨んでいる者も多い。
俺は、泣きついて来る商国と、ルナトーク奪還が第一と考えるルナトーク出身の臣下との板挟み状態になっていた。
悩みに悩んだ末、俺は決断を下した。
「イスダル要塞には第2戦隊を防衛に投入する。
第1戦隊は中央道より北進しルナトーク王国の奪還を行う」
第2戦隊はズイオウ領防衛のための戦力だった。
キルナール王国には第3戦隊までの艦隊が編成されていたが、第3戦隊は鹵獲艦の修理が追い付いておらず、未だ艦数が揃っていなかった。
しかも旗艦設備を持つ巡洋艦は新造せざるを得ず、未だ竣工の目途は立っていなかった。
つまり、第2戦隊は状況によりイスダル要塞とズイオウ領のどちらかを防衛しなければならず、第1戦隊に同行することは出来ないのだ。
もし敵艦隊が陸奥道と海岸道を通って侵攻してきたら、俺はある秘密兵器を使うつもりだった。
まだ実戦で使ったことはないが、その秘密兵器なら中央道から射程外の陸奥道や海岸道の敵艦隊を攻撃できるはずだった。
「中央道からならば、ルナトーク王国の王城が一番近い。
奴らをルナトークから追い出すぞ」
「「「「うおーーーーーーーーーーーーー!!」」」」
こうして、俺たちは艦隊を旧ルナトーク王国へと向けた。
これがルナトーク奪還の第一歩だった。
商国解放が第一歩だって? あれはいつ裏切るかわからない獅子身中の虫だからカウントしない。
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