ここ掘れわんわんから始まる異世界生活―陸上戦艦なにそれ?―

北京犬(英)

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第四章 ルナトーク王国奪還戦編

138 数の利

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 陸上重巡洋艦エリュシオンの魔導レーダーには、北の帝国のぺリアルテ商国駐留軍所属の陸上駆逐艦2艦の動きが捕らえられていた。
2艦は最大速度で北上し、旧ルナトーク王国領へと逃げていった。

「これでぺリアルテ商国は解放されたぞ!」

「いや、俺たちが居なくなったら、奴らはいつでも戻ってくるからな」

「そんなぁ」

 エリュシオンの艦橋に同乗していたぺリアルテ商国のカムロ特使は大いに喜んだが、俺の一言で意気消沈していた。
事実、エリュシオンの魔導レーダーには旧ルナトーク王国領に駐屯している北の帝国の艦隊が20艦映っていた。
商国から逃げた2艦を加えれば22艦にもなる。

 今回使ったエリュシオンの魔導レーダーは、地平線の先の長距離を探知できるパッシブモードではなかった。
アクティブモードで地平線の先の旧ルナトーク王国の様子を伺っていたのだ。
本来レーダー波は一直線にしか飛ばないため、地平線の先までは探知することが出来ない。

 そこで我が艦隊には観測機という垂直離着陸機を3機まで搭載できる航空巡洋艦が配備されていた。
その観測機を中継することにより、地平線の彼方であってもアクティブ探知が可能となるのだ。
観測機はVA52という垂直離着陸機で、対艦ミサイルを装備すれば対艦攻撃にも使える航空戦力だった。

「相手は総数22艦を擁する大艦隊だ。
その全てが商国のあちこちに攻撃を仕掛けてきたらどうする?
我が方の艦隊は5艦しかいないのだ。
距離が離れていれば17艦は取り逃すことになるぞ?」

 俺の忠告にカムロは青くなっていた。
物量作戦を仕掛けられたら、いくら魔導砲があっても商国に被害が出るのは間違いないだろう。

「拠点防御も1箇所か2箇所しか出来ないだろう。
俺たちが勝てたのは、狙われる場所がわかっていたからだ。
そこに敵が集まってくれるのなら、5艦の艦隊でも対処できる」

「つまり、商国の国土全体を守ることは不可能ということですね?」

「物理的に無理ですからね」

 カムロは頭を抱えてしまった。
ガイアベザル帝国を打ち破るには、最低でも4回の襲撃を容認しなければならなかったのだ。
その4回とは毎回ガイアベザル帝国の陸上戦艦を5艦沈めて4回で、次は正面切って戦えるという意味だった。

「なんということだ……。
こんなことなら、帝国を裏切るんじゃなかった」

「まあ、我々も北の帝国の艦がさっさと逃げるとは思っていませんでしたからね」

 落ち込むカムロに俺は優しい声をかけてあげた。

「なので、こちらから攻め込みます。
攻め込まれて防衛しない指揮官などいないでしょう。
相手が防衛に22艦全艦出して来ればしめたものです。
こちらの5艦で全艦沈めて見せましょう」

 今回の俺は、ルナトーク王国解放のためにとことん戦うつもりだった。
だが、懸念事項もあった。
我が艦隊を無視して商国に攻め込まれたら打つ手がないのだ。
そこに気付かないでくれというのは、俺の希望的観測すぎるだろうか?
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