ここ掘れわんわんから始まる異世界生活―陸上戦艦なにそれ?―

北京犬(英)

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第四章 ルナトーク王国奪還戦編

136 開く遺跡

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 現在、この大陸の北半分は全てガイアベザル帝国の支配地域だった。
大陸を東西に分断する大山脈、その山脈に分かたれた北側がほぼ全てガイアベザル帝国の支配下にあった。
ほぼの理由は属国扱いで生かしている小国がいくつかまだ存在するからだ。
それらの小国は生かすメリットがあるというだけで、そのメリットが無くなれば帝国の気まぐれでいつでも攻め滅ぼされてしまう立場だった。
ここ最近キルト王国やルナトーク王国、ザール連合国が滅ぼされたのも、そんな気まぐれによるものだった。

 ガイアベザル帝国の旧領といえばいいのだろうか、元々帝国領だった地域の北方に新たな遺跡が発見された。
それはどうやら、敵が放った魔導信号に反応して活性化したようだった。
この遺跡の調査に調査兵団団長イオリと元帝国主力艦隊司令のヴェルナールが調査兵団の旗艦エギビゴルと僚艦2艦でやって来ていた。
この地は帝国として他の侵攻を許さない帝国最奥の始祖の地であり、こんな場所に遺跡があるなど盲点と言わざるを得なかった。

「ここが遺跡の入り口だろう」

 調査兵団団長イオリが誘導信号を三角測量し、長年の経験で入り口の位置を推測する。

「地面を掘るぞ。爆破準備にかかれ」

 調査兵団の兵士たちが慣れた手つきで爆薬を仕掛けていく。
しばらくして爆破の準備が整った。

「舷側火薬砲、爆裂弾用意。目標爆破地点。全門斉射!」

 イオリの命令で旗艦エギビゴルが火薬砲を発砲する。
火薬砲の爆裂弾が着弾、爆発すると仕掛けられていた爆薬が連鎖爆発を起こす。
爆発が収まった後は地面が大きくえぐれ、固い隔壁が見えてた。

「よし、この外部構造物は間違いなく遺跡だぞ!
それも工場クラスと見た」

 イオリは管理者権限による遺跡の解放を試みた。
しかし、遺跡は何の反応も示さなかった。
イオリの管理者権限をこの遺跡は主人と認めなかったのだ。

「工兵隊出動! 蓋を開けろ」

 イオリが土魔法が使える工兵隊の出動を命じる。
遺跡の隔壁は管理者権限を持っていれば開くはずなのだが、ここは権限レベルが高く、イオリには開くことが出来なかった。
イオリが調査兵団の団長を任されているのは、この管理者権限が他人より高かったからだった。
これは生まれつきのものであり、イオリはその管理者権限の高さによって数々の遺跡を解放し出世したのだ。
だが、ここはイオリでさえ解放できない遺跡だった。

 この遺跡はクランドの管理者権限と紐づいたキルトタルの識別信号に反応していた。
その権限より遥かに下回るイオリの権限など眼中になかったのだ。
管理者権限が高い、つまりそれだけ重要度が高いということだった。
彼らが発見したのは第13ドックに匹敵する遺跡だったのだ。

 イオリたち調査兵団の面々は土魔法で隔壁に穴をあけ縄梯子で遺跡内部に侵入した。
その様子を端から見れば、まるで遺跡に侵入する盗掘者のようだった。
遺跡内部の床に到着し、あたりを見まわすイオリたち調査兵団の面々。
遺跡内部はほのかな光に照らされ遺跡が生きていることを示していた。
盗掘者に対して生きている遺跡がすることと言えば当然のように警備システムによる排除だ。
警備用の武装ゴーレムがやってくる……とイオリたち調査兵団の面々が身構えていると、遺跡の隔壁が音を立てて開き始めた。

 ここでの本来の手順は武装ゴーレムに対し管理者権限を主張、武装ゴーレムが権限を認めれば、その権限レベルにより限定的に遺跡内を行動できるというものだった。
イオリはガイアベザル帝国において一番高い管理者権限の保有者なため、この武装ゴーレムのチェックを突破するのは容易だと考えていた。
この管理者権限というものは、勇者の血筋であるガイアベザル帝国の上級帝国民であれば、誰でも保持しているものだった。
つまり遺跡は勇者の残した遺産であり、その正当な末裔であるガイアベザル帝国が手にするのは正当な権利であるというのが帝国での常識だった。
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