133 / 169
第四章 ルナトーク王国奪還戦編
133 ペリアルテ商国
しおりを挟む
いつのまにかリーンワース王国との国境がキルナール王国との国境となったこともあるが、そこに堅牢な要塞が建造され陸上戦艦の艦隊と軍隊が駐留していたことに、国境を接していた小国であるペリアルテ商国は大騒ぎになった。
ガイアベザル帝国の砲艦外交に屈して属国扱いとなってしまったのに、それに比肩する軍備を持つ国家が隣に領土を構えてしまったのだ。
「噂では、キルナール王国はリーンワース王国と共にガイアベザル帝国の艦隊を退けたらしいぞ」
「そのキルナール王国は、キルト王国、ルナトーク王国、ザール連合国の継承国らしいぞ」
「ああ、各国縁の姫が王に嫁いでいるらしい」
「リーンワース王国の姫も嫁いでいるそうだ」
「だからリーンワース王国が彼の地を割譲したのか!」
「となると、彼の地を得たのも、ルナトーク王国奪還のためであろう」
「拙い。我らがガイアベザル帝国と懇意だと思われたら、我が国が戦場になってしまう!」
商国の6代表は頭を抱えることとなった。
商国は6つの大商会の代表が合議で治める国だった。
古来から大陸の北と南の物資をお互いに流通させることで利益を得て来た国家だった。
それがキルナール王国が隣国となったことで、国境は要塞により塞がれ自由な商売が不可能となった。
いや、元々はガイアベザル帝国がリーンワース王国に戦争を仕掛けたことが原因だった。
リーンワース王国は商人に寛容だったため、戦争中でも物資の流通を止めなかった。
しかし、キルナール王国は豊富な物資を持ち合わせているようで、北からの物資を必要としていなかった。
「あれは恨まれていると見て良いであろうな」
代表の一人がぽつりと零したのは、ルナトーク王国の奴隷を取引した件についてだった。
キルナール王国がルナトーク奪還を試みるのならば、ルナトークの奴隷を扱った商会は、皆敵とみなされる可能性があった。
「ガイアベザル帝国の軍門に下ったからには、あの取引は不可避だったのだ」
「その言い訳が通じればよいがな。
事実、我らは奴隷取引で儲けを出しているのだ」
「その儲けを全て差し出せば、許してもらえんだろうか?」
「無理じゃな。お主の所は奴隷の扱いが殊の外厳しかったからのう」
「ああ、勝ち組に乗ったつもりが、とんでもないことになった」
商国の6代表は溜め息をつくしかなかった。
「とりあえず、我らの誰かを代表に立てて挨拶に向かわねばならない」
「だが、それをすればガイアベザル帝国の駐留軍に目をつけられるぞ」
「なに、奴らは本国が大敗して慌てている。
秘密裡に接触すればバレはしないだろ」
「ならば、アルペン、お主が特使としてキルナール王国へ向かえ」
「え? 私が?」
「言い出しっぺはアルペン、貴様だ。
キルナール王国の戦力がガイアベザル帝国以上ならば、帝国を追い出す手助けを要請し、勝ち組に乗るのだ」
こうして商国6代表の一人、アルペン商会代表のカムロ=アルペンが商国の特使としてキルナール王国、イスダルの要塞に赴くこととなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ペリアルテ商国の特使が密かに接触して来たという報告を受け、俺はその代表特使であるカムロ=アルペンという人物と会うことにした。
しかし、商国は北の帝国の属国となっており傀儡国家のはずだった。
陸上戦艦で勝てないなら、国の中枢人物を殺害して勝機を得るという手段を取らないとも限らなかった。
なので、俺は彼らに会う前に彼らのステータスを【鑑定】により丸裸にすることとした。
商国の特使団をイスダル要塞の応接室へと迎え入れ、俺は隣の部屋から特使団全員に【鑑定】をかけた。
カムロ=アルペン
ペルアルテ商国出身
ペルアルテ商国6代表の一人
賞罰 なし
リケロ=ミューズ
ペルアルテ商国出身
アルペン商会代表補佐
賞罰 なし
リザベラ
ルナトーク王国出身 奴隷
アルペン商会メイド
賞罰 なし
マヌエラ
ルナトーク王国出身 奴隷
アルペン商会メイド
賞罰 なし
2人目までは良かったが、3人目、4人目で俺はカムロとやらの真意を疑った。
わざわざ俺の目の前にルナトーク出身の奴隷を連れて来るとはいったいどういった了見なのだろうか。
だが、そんなことよりも問題だったのが5人目だった。
ハマス(ハンス=ザイデル)
ペルアルテ商国出身(ガイアベザル帝国出身 1級帝国民)
アルペン商会番頭(隠密 スパイ)
賞罰 なし(殺人 傷害)
俺の魔導の極に含まれている【鑑定】だから見破る事が出来たが、()内は全て隠蔽されていた情報だ。
おそらく北の帝国の間者なのだろう。
こんな奴と会ったら、いつ命を狙われるかわかったものではない。
それをカムロは知っているのか知らないのか。
わからないのなら、丁重にお断りしよう。
俺は会見を断ることにした。
ガイアベザル帝国の砲艦外交に屈して属国扱いとなってしまったのに、それに比肩する軍備を持つ国家が隣に領土を構えてしまったのだ。
「噂では、キルナール王国はリーンワース王国と共にガイアベザル帝国の艦隊を退けたらしいぞ」
「そのキルナール王国は、キルト王国、ルナトーク王国、ザール連合国の継承国らしいぞ」
「ああ、各国縁の姫が王に嫁いでいるらしい」
「リーンワース王国の姫も嫁いでいるそうだ」
「だからリーンワース王国が彼の地を割譲したのか!」
「となると、彼の地を得たのも、ルナトーク王国奪還のためであろう」
「拙い。我らがガイアベザル帝国と懇意だと思われたら、我が国が戦場になってしまう!」
商国の6代表は頭を抱えることとなった。
商国は6つの大商会の代表が合議で治める国だった。
古来から大陸の北と南の物資をお互いに流通させることで利益を得て来た国家だった。
それがキルナール王国が隣国となったことで、国境は要塞により塞がれ自由な商売が不可能となった。
いや、元々はガイアベザル帝国がリーンワース王国に戦争を仕掛けたことが原因だった。
リーンワース王国は商人に寛容だったため、戦争中でも物資の流通を止めなかった。
しかし、キルナール王国は豊富な物資を持ち合わせているようで、北からの物資を必要としていなかった。
「あれは恨まれていると見て良いであろうな」
代表の一人がぽつりと零したのは、ルナトーク王国の奴隷を取引した件についてだった。
キルナール王国がルナトーク奪還を試みるのならば、ルナトークの奴隷を扱った商会は、皆敵とみなされる可能性があった。
「ガイアベザル帝国の軍門に下ったからには、あの取引は不可避だったのだ」
「その言い訳が通じればよいがな。
事実、我らは奴隷取引で儲けを出しているのだ」
「その儲けを全て差し出せば、許してもらえんだろうか?」
「無理じゃな。お主の所は奴隷の扱いが殊の外厳しかったからのう」
「ああ、勝ち組に乗ったつもりが、とんでもないことになった」
商国の6代表は溜め息をつくしかなかった。
「とりあえず、我らの誰かを代表に立てて挨拶に向かわねばならない」
「だが、それをすればガイアベザル帝国の駐留軍に目をつけられるぞ」
「なに、奴らは本国が大敗して慌てている。
秘密裡に接触すればバレはしないだろ」
「ならば、アルペン、お主が特使としてキルナール王国へ向かえ」
「え? 私が?」
「言い出しっぺはアルペン、貴様だ。
キルナール王国の戦力がガイアベザル帝国以上ならば、帝国を追い出す手助けを要請し、勝ち組に乗るのだ」
こうして商国6代表の一人、アルペン商会代表のカムロ=アルペンが商国の特使としてキルナール王国、イスダルの要塞に赴くこととなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ペリアルテ商国の特使が密かに接触して来たという報告を受け、俺はその代表特使であるカムロ=アルペンという人物と会うことにした。
しかし、商国は北の帝国の属国となっており傀儡国家のはずだった。
陸上戦艦で勝てないなら、国の中枢人物を殺害して勝機を得るという手段を取らないとも限らなかった。
なので、俺は彼らに会う前に彼らのステータスを【鑑定】により丸裸にすることとした。
商国の特使団をイスダル要塞の応接室へと迎え入れ、俺は隣の部屋から特使団全員に【鑑定】をかけた。
カムロ=アルペン
ペルアルテ商国出身
ペルアルテ商国6代表の一人
賞罰 なし
リケロ=ミューズ
ペルアルテ商国出身
アルペン商会代表補佐
賞罰 なし
リザベラ
ルナトーク王国出身 奴隷
アルペン商会メイド
賞罰 なし
マヌエラ
ルナトーク王国出身 奴隷
アルペン商会メイド
賞罰 なし
2人目までは良かったが、3人目、4人目で俺はカムロとやらの真意を疑った。
わざわざ俺の目の前にルナトーク出身の奴隷を連れて来るとはいったいどういった了見なのだろうか。
だが、そんなことよりも問題だったのが5人目だった。
ハマス(ハンス=ザイデル)
ペルアルテ商国出身(ガイアベザル帝国出身 1級帝国民)
アルペン商会番頭(隠密 スパイ)
賞罰 なし(殺人 傷害)
俺の魔導の極に含まれている【鑑定】だから見破る事が出来たが、()内は全て隠蔽されていた情報だ。
おそらく北の帝国の間者なのだろう。
こんな奴と会ったら、いつ命を狙われるかわかったものではない。
それをカムロは知っているのか知らないのか。
わからないのなら、丁重にお断りしよう。
俺は会見を断ることにした。
0
お気に入りに追加
813
あなたにおすすめの小説
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道~悪いな勇者、この物語の主役は俺なんだ~
萩鵜アキ
ファンタジー
主人公はプロミネント・デスティニーという名作ゲームを完全攻略した途端に絶命。気がつくとゲームの中の悪役貴族エルヴィン・ファンケルベルクに転移していた。
エルヴィンは勇者を追い詰め、亡き者にしようと画策したことがバレ、処刑を命じられた。
享年16才。ゲームの中ではわりと序盤に死ぬ役割だ。
そんなエルヴィンに転生?
ふざけるな!
せっかく大好きなプロデニの世界に転移したんだから、寿命までこの世界を全力で楽しんでやる!
エルヴィンの中に転移したのは丁度初等部三年生の春のこと。今から処刑までは7年の猶予がある。
それまでに、ゲームの知識を駆使してデッドエンドを回避する!
こうして始まった処刑回避作戦であるが、エルヴィンの行動が静かな波紋となって広がっていく。
無自覚な行動により、いくつものフラグが立ったり折れたり、家臣の心を掌握したり過大な評価を受けたりしながら、ついに勇者と相まみえる。
果たしてエルヴィン・ファンケルベルクはバッドエンドを回避出来るのか……?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる