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第三章 北の帝国戦役編
120 キルトタル修理と開戦の兆し
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「さてと、ここが第一魔導砲塔の隔壁だったかな?」
隔壁が開くとそこは巨大な落とし穴になる。
キルトタルの甲板は農園の土が乗っているため、急に穴が開くと作業している者が落ちる可能性があり、大変危険なので、ペンキで黄色い枠を描いてもらっていた。
俺は黄色い線の外側に下がるとモバイル端末を取り出して指示を送る。
「第一魔導砲塔隔壁解放、魔導砲浮上」
俺の命令で隔壁が開くと第一魔導砲塔が競り上がってくる。
これは遥か昔の戦闘で損傷したままになっていて、俺では修理不可能だったものだ。
「魔導砲を交換する、メンテナスモードみたいものはあるか?」
『ございます。メンテナンスモードに入ります』
俺の指示で魔導砲塔を固定するための隔壁がメンテナンスモードで開いたままになった。
よしこれでユニット交換が可能だな。
「ゴーレム、第一魔導砲塔交換作業開始」
『魔力エネルギー伝送管を取り外します。完了。
基部の固定具を外します。完了。
これで魔導砲を撤去することができます』
俺は電脳の指示に従ってインベントリに第一魔導砲塔を収納し撤去する。
目の前にあった壊れた魔導砲塔が跡形もなく消える。
次に陸上輸送艦の上にある交換用魔導砲塔の梱包を解き、レビテーションで浮かせる。
そのままユニットごと第一魔導砲塔の穴に設置する。
砲塔を回転させるためのターレット部に上手く合わせてやるのが大事だ。
「よし、第一魔導砲塔接続」
階下でゴーレムが動き出し、第一魔導砲塔の固定が行われ、魔力ストレージから出ていた魔力エネルギー伝送管が魔導砲に接続される。
「次は第二魔導砲塔だ」
第二魔導砲塔はポイント11から修理部品を手に入れて修理を行っていたのだが、思った以上に部品の状態が悪く、発射はせいぜい3回が限度と見積もられていた。
なので、こちらも第13ドックから丸々魔導砲塔を取り寄せていた。
陸上輸送艦の格納庫の隔壁が開くと、第一魔導砲塔と同様の梱包された砲塔が格納されていた。
俺は第一魔導砲塔と同様に第二魔導砲塔を撤去すると、格納庫の砲塔の梱包を剥がし、レビテーションで浮かせてキルトタルの上甲板に上げると、第二魔導砲塔の位置に設置した。。
砲塔を回転させるターレット部も上手くかみ合い、まずまずの出来だった。
『システムコマンド、セルフチェック開始』
『セルフチェック起動。
制御システム異常なし。
魔導機関異常なし。
魔力ストレージ異常なし。
重力制御機関1番異常なし。
重力制御機関2番異常なし。
重力制御機関3番異常なし。
重力制御機関4番異常なし。
重力傾斜装置異常なし。
第一魔導砲塔異常なし。
第二魔導砲塔異常なし。
武器管制装置異常なし。
魔導通信機異常なし。
魔導レーダー異常なし。
魔導障壁展開装置異常なし。
言語パックのインストール完了。
王国公用語並びにキルト語に対応いたしました。
セルフチェック終了。
前回メンテナンスから854年経っています。
メンテナンスの必要があります。
第13ドックに向かってください』
ああ、そういえばキルト語のアップデートソフトをもらっていたんだった。
モバイル端末に入れてくれていたんだな。
これでキルトタルも他の陸上戦艦もキルト語での制御が出来る。
王国公用語が出来ないキルトの民でも運用が可能だ。
よし、全て異常なしだ。
あとは第13ドックで定期メンテナンス?をすればいいだけだな。
この後、俺は屋敷で至上の安らぎを得ることが出来た。
我が家っていいな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
陸路を航行して来た、ラーケンとレオパルドがズイオウ領まで無事に帰って来た。
数日間の航行実績は乗組員にとって良い経験になっただろう。
ズイオウ領でも次の乗組員候補たちが陸上輸送艦に乗って第13ドックへと旅立った。
陸上輸送艦の上甲板にはキルトタルから降ろした魔導砲塔が1基梱包されて乗せられている。
もう1基も格納庫内に積んである。
これらを第13ドックに届けて修理してもらうのが任務だ。
戻ってくる頃には彼、彼女たちも一端の乗組員になっていることだろう。
北の大峡谷では敵の動きは全く無く、膠着状態が続いている。
もし北の帝国が戦力を増強していても、あの狭い谷であれば攻めるのにも難儀するだろう。
そんなある日、パンテルから魔導通信機で連絡が入った。
『こちらパンテル艦長ドルマ―です。
リーンワース王国軍の陸上戦艦ジーベルド艦長ランドルフ卿が強行偵察を敢行。
峡谷の先を魔導レーダーで探知して帰還いたしました』
「大峡谷を北の帝国側へ強行偵察したのか!」
なんという無謀。
たまたま攻撃されなかったから良かったものの、敵の魔導砲1発で大破するところだったぞ。
魔導レーダーの仕組みにはアクティブ探知とパッシブ探知の二つがある。
薄い魔力を放射し、それに反応した物の魔力を受信するアクティブ探知と、魔力を強く放射する物体の魔力そのものを受信するパッシブ探知だ。
これは魔法に長けた者が魔物をみつける【探知魔法】と同じ仕組みといえよう。
【探知魔法】は、本人の能力や精度によっては電波レーダーと違って地平線の先まで探知することが可能だった。
これがキルトタルの魔導レーダーと他の陸上戦艦の性能差でもあるのだが、何もキルトタルだけしかパッシブ探知が使えないというわけではない。
キルトタル以外の陸上戦艦に搭載されている魔導レーダーは、魔力放射によって探知するアクティブ探知の方に重きを置いている。
キルトタルは空母という性質上、より遠くの敵艦艇を察知する必要があり、それだけ性能の良い魔導レーダーを装備しているのだ。
しかし、相手が陸上戦艦のような大魔力を使用する物体ならば、これら一般的な陸上戦艦のパッシブ探知でも十分に能力を発揮できる場合がある。
ジーベルド艦長ランドルフは、最悪でもアクティブ探知を、可能ならばパッシブ探知をしようと、わざわざ大峡谷の北側出口まで赴いて強行偵察を行ったのだ。。
『その結果、敵の陣容が判明いたしました』
「おお、それは朗報だな」
『はい。北の帝国は3艦の増援を得て8艦で峡谷の出口を固めていました』
つまり、こちらもズイオウ領の5艦を繰り出せば8:9になり、数でも戦力的にも有利で戦えるということか。
『北の要塞では、打って出るべしという強硬論が台頭しています』
「いや、それも罠かもしれないぞ。
パッシブ探知を逃れるために魔力放射を抑え地平線の先に隠れているかもしれない。
そもそも峡谷の出口では8:1にされてしまうのだ。
それこそが敵が峡谷から引いた最大のメリットだったはずだ」
『しかし、強行偵察が成功したことで、敵魔導砲は壊れて使えないのではないかという楽観論が囁かれ、リーンワース王国軍はその気になってしまっています』
短絡的な暴挙に出ない良い所のお坊ちゃんを乗組員にしたはいいけど、逆に戦いに不慣れで楽観論による無謀な行動に出かねないのか……。
リーンワース王国には、まともな貴族はいないのか。
これは俺が手綱を握るしかないか。
「ブラハード将軍に伝えろ。我が国は参加しないと。
やりたいならリーンワース王国軍だけで好きにしろと伝えろ。
やるならパンテル、オライオンも撤退だと脅しておけ」
『了解しました』
さて、どうなることやら……。
隔壁が開くとそこは巨大な落とし穴になる。
キルトタルの甲板は農園の土が乗っているため、急に穴が開くと作業している者が落ちる可能性があり、大変危険なので、ペンキで黄色い枠を描いてもらっていた。
俺は黄色い線の外側に下がるとモバイル端末を取り出して指示を送る。
「第一魔導砲塔隔壁解放、魔導砲浮上」
俺の命令で隔壁が開くと第一魔導砲塔が競り上がってくる。
これは遥か昔の戦闘で損傷したままになっていて、俺では修理不可能だったものだ。
「魔導砲を交換する、メンテナスモードみたいものはあるか?」
『ございます。メンテナンスモードに入ります』
俺の指示で魔導砲塔を固定するための隔壁がメンテナンスモードで開いたままになった。
よしこれでユニット交換が可能だな。
「ゴーレム、第一魔導砲塔交換作業開始」
『魔力エネルギー伝送管を取り外します。完了。
基部の固定具を外します。完了。
これで魔導砲を撤去することができます』
俺は電脳の指示に従ってインベントリに第一魔導砲塔を収納し撤去する。
目の前にあった壊れた魔導砲塔が跡形もなく消える。
次に陸上輸送艦の上にある交換用魔導砲塔の梱包を解き、レビテーションで浮かせる。
そのままユニットごと第一魔導砲塔の穴に設置する。
砲塔を回転させるためのターレット部に上手く合わせてやるのが大事だ。
「よし、第一魔導砲塔接続」
階下でゴーレムが動き出し、第一魔導砲塔の固定が行われ、魔力ストレージから出ていた魔力エネルギー伝送管が魔導砲に接続される。
「次は第二魔導砲塔だ」
第二魔導砲塔はポイント11から修理部品を手に入れて修理を行っていたのだが、思った以上に部品の状態が悪く、発射はせいぜい3回が限度と見積もられていた。
なので、こちらも第13ドックから丸々魔導砲塔を取り寄せていた。
陸上輸送艦の格納庫の隔壁が開くと、第一魔導砲塔と同様の梱包された砲塔が格納されていた。
俺は第一魔導砲塔と同様に第二魔導砲塔を撤去すると、格納庫の砲塔の梱包を剥がし、レビテーションで浮かせてキルトタルの上甲板に上げると、第二魔導砲塔の位置に設置した。。
砲塔を回転させるターレット部も上手くかみ合い、まずまずの出来だった。
『システムコマンド、セルフチェック開始』
『セルフチェック起動。
制御システム異常なし。
魔導機関異常なし。
魔力ストレージ異常なし。
重力制御機関1番異常なし。
重力制御機関2番異常なし。
重力制御機関3番異常なし。
重力制御機関4番異常なし。
重力傾斜装置異常なし。
第一魔導砲塔異常なし。
第二魔導砲塔異常なし。
武器管制装置異常なし。
魔導通信機異常なし。
魔導レーダー異常なし。
魔導障壁展開装置異常なし。
言語パックのインストール完了。
王国公用語並びにキルト語に対応いたしました。
セルフチェック終了。
前回メンテナンスから854年経っています。
メンテナンスの必要があります。
第13ドックに向かってください』
ああ、そういえばキルト語のアップデートソフトをもらっていたんだった。
モバイル端末に入れてくれていたんだな。
これでキルトタルも他の陸上戦艦もキルト語での制御が出来る。
王国公用語が出来ないキルトの民でも運用が可能だ。
よし、全て異常なしだ。
あとは第13ドックで定期メンテナンス?をすればいいだけだな。
この後、俺は屋敷で至上の安らぎを得ることが出来た。
我が家っていいな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
陸路を航行して来た、ラーケンとレオパルドがズイオウ領まで無事に帰って来た。
数日間の航行実績は乗組員にとって良い経験になっただろう。
ズイオウ領でも次の乗組員候補たちが陸上輸送艦に乗って第13ドックへと旅立った。
陸上輸送艦の上甲板にはキルトタルから降ろした魔導砲塔が1基梱包されて乗せられている。
もう1基も格納庫内に積んである。
これらを第13ドックに届けて修理してもらうのが任務だ。
戻ってくる頃には彼、彼女たちも一端の乗組員になっていることだろう。
北の大峡谷では敵の動きは全く無く、膠着状態が続いている。
もし北の帝国が戦力を増強していても、あの狭い谷であれば攻めるのにも難儀するだろう。
そんなある日、パンテルから魔導通信機で連絡が入った。
『こちらパンテル艦長ドルマ―です。
リーンワース王国軍の陸上戦艦ジーベルド艦長ランドルフ卿が強行偵察を敢行。
峡谷の先を魔導レーダーで探知して帰還いたしました』
「大峡谷を北の帝国側へ強行偵察したのか!」
なんという無謀。
たまたま攻撃されなかったから良かったものの、敵の魔導砲1発で大破するところだったぞ。
魔導レーダーの仕組みにはアクティブ探知とパッシブ探知の二つがある。
薄い魔力を放射し、それに反応した物の魔力を受信するアクティブ探知と、魔力を強く放射する物体の魔力そのものを受信するパッシブ探知だ。
これは魔法に長けた者が魔物をみつける【探知魔法】と同じ仕組みといえよう。
【探知魔法】は、本人の能力や精度によっては電波レーダーと違って地平線の先まで探知することが可能だった。
これがキルトタルの魔導レーダーと他の陸上戦艦の性能差でもあるのだが、何もキルトタルだけしかパッシブ探知が使えないというわけではない。
キルトタル以外の陸上戦艦に搭載されている魔導レーダーは、魔力放射によって探知するアクティブ探知の方に重きを置いている。
キルトタルは空母という性質上、より遠くの敵艦艇を察知する必要があり、それだけ性能の良い魔導レーダーを装備しているのだ。
しかし、相手が陸上戦艦のような大魔力を使用する物体ならば、これら一般的な陸上戦艦のパッシブ探知でも十分に能力を発揮できる場合がある。
ジーベルド艦長ランドルフは、最悪でもアクティブ探知を、可能ならばパッシブ探知をしようと、わざわざ大峡谷の北側出口まで赴いて強行偵察を行ったのだ。。
『その結果、敵の陣容が判明いたしました』
「おお、それは朗報だな」
『はい。北の帝国は3艦の増援を得て8艦で峡谷の出口を固めていました』
つまり、こちらもズイオウ領の5艦を繰り出せば8:9になり、数でも戦力的にも有利で戦えるということか。
『北の要塞では、打って出るべしという強硬論が台頭しています』
「いや、それも罠かもしれないぞ。
パッシブ探知を逃れるために魔力放射を抑え地平線の先に隠れているかもしれない。
そもそも峡谷の出口では8:1にされてしまうのだ。
それこそが敵が峡谷から引いた最大のメリットだったはずだ」
『しかし、強行偵察が成功したことで、敵魔導砲は壊れて使えないのではないかという楽観論が囁かれ、リーンワース王国軍はその気になってしまっています』
短絡的な暴挙に出ない良い所のお坊ちゃんを乗組員にしたはいいけど、逆に戦いに不慣れで楽観論による無謀な行動に出かねないのか……。
リーンワース王国には、まともな貴族はいないのか。
これは俺が手綱を握るしかないか。
「ブラハード将軍に伝えろ。我が国は参加しないと。
やりたいならリーンワース王国軍だけで好きにしろと伝えろ。
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