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第三章 北の帝国戦役編

105 第13ドック5

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 迎賓館では思った以上に豪華な食事が出て来た。
さすがは未だ機能を維持している生きている施設だ。
この何百年もの間、内部の維持保存に魔力の全てを捧げ、キルトタルからの魔導通信を受けて活動再開を果たしたのだ。
だが待て。これらの食材は何らかの保存庫の中で何百年もストックされていたものじゃないだろうな?
時間停止倉庫なら確かに入れた当時のままなんだろうけど、気分的に何百年物は躊躇する。

「セバスチャン、この食材の出どころは?」

「はい。久しぶりに稼働させた食品工場の品です。
こちらをご覧ください」

 セバスチャンが魔法による巨大スクリーンを壁際に展開し、食品工場のリアルタイム映像を映してくれた。
その結果、しっかり新鮮食材だと確認できた。

 植物は農業プラントで促成栽培されていた。
種は使わず、植物のDNA培養によるクローン増殖だった。
全てゴーレム機械化されていて全自動で野菜が収穫されていた。

「作れる野菜の種類は、あまり多くないようだな」

「はい。昔の品種ですので、現在とは多様性が異なるかと思います」

 所謂原種か。

「現在の品種も生産可能か?」

「はい。実物があれば」

 それは是非生産してもらおう。
ここで生産してズイオウ領へ運んでもいいだろう。
俺の農園で採れた野菜や果物をDNAサンプルとして提供すれば良いだろう。
それらのDNAを登録することで、次からは馴染みの野菜を食べることが出来るそうだ。

 肉と魚も食肉鮮魚工場があった。
なんと魔法陣に魔力を流すと肉系魔物や魚系魔物がポップするのだ。
この魔物が自動的に麻痺させられて、ある区画を通ると解体食肉となって出て来る。
肉を解体するプロセスは見えないようになっているという親切な映像だった。
さすがに食事の席でスプラッタ映像は見たくないからね。
魚も大きいものは三枚におろされて柵になったものが出て来ていた。

「小さなエビやカニみたいな魚介類も供給できるのか?」

「はい。こちらをご覧ください」

 魔法陣で大量にポップしたエビ、カニ、魚、貝類が生きたまま箱に氷詰めされた状態で出て来ている。

「おお、これはいいな。
ちなみにあれは?」

 俺が指さした先は会場の中央に添えられた牛の丸焼きだ。
あ、プチが嚙り付いている。大きな肉に大喜びだ。

「はい。こちらはパーティー食材として予め指定すれば解体せずに用意できるのです。
こちらの巨大カニも同様です」

 パーティー用途の巨大カニや丸焼き用牛などは要予約らしい。

「魔物ポップ魔法陣いいな。うちにも食肉鮮魚工場を設置したいところだ」

「はい。工場設備をご用意いたしましょう」

 おお、輸送艦を造っておいて良かった。
これで最新――いや過去の技術だが――設備が手に入り放題だぞ。

「ちなみにここの食品製造能力は、どのぐらいあるんだ?」

「はい。そうですね。
1人1日3食として日産100万人分でしょうか」

 あれ? ここに住んだ方がズイオウ領より便利だぞ?
これからも人口は増えるし、ここに遷都しようか?
いや、この施設移動出来ないかな?

「ちなみに第13ドック全体は移動出来ないよね?」

「はい。流石に無理です。
この施設の稼働には魔力を大量に必要とします。
その魔力は魔導機関だけでは足らず、地下を流れる龍脈から大部分を得ています。
ここを離れるということは魔力不足で稼働できなくなるという事です」

 なるほど。ここに地の利があるわけね。
ただ、この言い方だと動けることは動けるという感じだな。
まあ施設が稼働しないのであれば宝の持ち腐れだもんな。
龍脈か。それさえズイオウ領の側にあれば移動させるのも手だな。


◇  ◇  ◇  ◇  ◆


 迎賓館で快適に過ごして4日、ルナワルドの整備とガルムドの修理が終了した。
使用不能だった単装魔導砲塔は新品に交換され使用できるようになっていた。
これは陸上戦艦なら1発で大破させられる決戦兵器だ。
それを保有する艦が2艦あるということは大きな抑止力になるだろう。
ルナワルドの後部甲板にはキルトタル用の連装魔導砲塔が乗せられ、荷崩れしないようにワイヤーで拘束固定されていた。

「一応、これで目的は達したんだが、輸送艦の建造終了にはまだかかるよね?」

 俺の質問にセバスチャンが即答する。

「はい。クランド様のおかげで工期が短縮されましたが、あと1週間はかかります」

 1週間か。意外に早いな。
最初は1か月予定で、俺が艦体を製造してやったら工期の50%が終わったという話だったから、もっとかかるかと思っていた。

「1週間なら待ってもいいか。
ちなみに食肉鮮魚工場は、どのぐらい出来ている?」

「はい。基幹部品の魔法陣部分なら既に完成しています。
それ以外の解体工程他の工場全体があと1か月はかかるかと」

「待て、基幹部品があればいい。
箱詰めや解体は人手があり余っている。
逆に仕事を増やせて助かるぐらいだ。
工場全体はさすがに必要ない」

「はい。それではそのように手配いたします」

 危ねー。俺が工場が欲しいと言ってしまったから、セバスチャンが建物から全体を製造するように依頼してたよ。
ルナワルドはキルトタルの魔導砲塔でいっぱいいっぱいだし、ガルムドは後甲板に荷物を置くスペースがない。
これを持ち帰るには輸送艦の竣工を待った方が良さそうだ。
この大陸は北の帝国の陸上戦艦がウロウロしているし、また遺跡を探しに来ないとも限らない。
非武装の輸送艦単艦で運ばせるのは、ちょっと心もとない。
なので護衛戦力込みで移動したい。
それに、輸送艦の新装備も試してみたいからね。
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