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第三章 北の帝国戦役編
083 戦闘奴隷解放2
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まず俺は、戦闘奴隷たちの隷属魔法を広域魔法で書き換えた。
今の北の帝国に縛られている契約を、我々に危害を加えられない契約としたのだ。
これは俺の魔力が多いために成立したことだそうで、本来ならこのような大人数を魔道具なしで縛るのは無理なんだそうだ。
北の帝国も大人数に魔道具を用意出来なかったせいで督戦隊で煽るという手段をとっていたのだ。
この魔法により無害となった戦闘奴隷たちをリーンワース王国の兵たちによって集めてもらった。
その集めた戦闘奴隷たちを重傷者と軽傷者を分けてもらい、【エリアハイヒール】で重傷者から治していく。
不幸にも雷撃杖や爆裂弾の爆発、それと督戦隊により危害を受け部位欠損になっている者には個別に【リカバー】をかけてやる。
その作業中、様子のおかしい集団が、キルトやルナトーク、獣人ではない他国の戦闘奴隷として分類した中にいた。
ルナトークの民は自己申告だが、キルト人や獣人は人種的に肌の色やケモミミ尻尾などで判断出来る。
俺はリーンワース王国の兵に目配せをしてその集団を包囲させた。
なぜその集団がおかしいと思ったのかというと、武器も持たず、満足な武具もつけていないが、服装がやたら綺麗すぎたのだ。
この戦場で這いつくばって戦っていたとは思えないほどで、例えば汚れた装備をさっき脱ぎ捨てたかのような綺麗な服装だったのだ。
決定打はそいつらだけ隷属魔法で縛られていなかったこと。
まさか俺が隷属魔法に通じているとは思ってもいないため、看破されるとは思っていなかったのだろう。
このままスルーして要塞都市の内部に入れていたら破壊工作をされていたかもしれなかった。
それを俺がやってしまったら大失態だった。危ない所だった。
「こいつらは督戦隊の生き残りだろう。隷属魔法で縛られていない」
おれの言葉に緊張するリーンワース王国の兵と囲まれた督戦隊。
そのまま北の帝国の督戦隊は縛り上げられ連行された。
彼らは北の帝国の上級市民の証である黒髪黒目ではなかった。
おそらく、二級市民と位置づけされた北の帝国の協力者たちなのだろう。
「我々はどうすればいいんだ?」
北の帝国の督戦隊を縛り上げている横で、不安な顔をしていた男から声をかけられた。
彼らはキルトやルナトークと同様に北の帝国に占領された国の民だった。
俺とリーンワース王国の契約では、俺の国――キルトとルナトーク――の奴隷を納入した武器の代金として引き渡してもらうということだったので、彼らは契約の対象外となってしまう。
さてどうしたものか。
「怪我は治そう。だが、リーンワース王国との契約上、君たちを我が国に迎えるわけにはいかない。
奴隷契約も俺が勝手に解除するわけにはいかないな……」
俺が困り顔で思案していると、その男が俺の足に縋り付いて来た。
「頼む。あんたの所に行けば国を取り返せそうな気がする。
俺たちを亡命させてくれ!」
「しかし、君たちの扱いはリーンワース王国の捕虜になるから、俺の一存では決められないんだ。すまん」
男は大いに落胆していた。
戦争捕虜となると、そのまま戦闘奴隷にされる可能性が高い。
元の出身国が違うだけで、奴隷解放され住むところも自由もある我が国の国民と、戦闘奴隷とに立場が分かれる岐路だった。
その待遇は雲泥の差だ。
「消耗品の戦闘奴隷としてゴミのように死ぬより、正式な国民にしてもらって誇りを持って戦って死にたい。頼む!」
その気持ちは痛いほどわかる。どうにかしてやりたい。
こういった人材こそ、俺の国に欲しい所だ。
そうだ。キルトとルナトークの民も奴隷として買い戻しているんだ。
彼らを奴隷として購入して何が悪い。
代金は、大量に供給してやった蒸気砲の代金がある。
それに、俺に対して雷撃杖を撃った奴の落とし前がまだだった。
「よし、俺がなんとかしよう。お前らは俺の元で戦ってもらう!
ただし戦闘奴隷なんかじゃない。正式な軍の兵隊としてだ」
「「「「うおーーーーーーー!!!」」」」
俺は彼らに【エリアハイヒール】と【奴隷解放】の魔法をかけてしまう。
既成事実をここで作ってしまうのだ。
ここには【奴隷契約】の魔法を使える者がいない。
俺には、自国の民の解放のため、ここで【奴隷解放】の魔法をかける権限がある。
うっかり国民と間違えて解放してしまったからには、俺が責任を持って引き取るしかない。
リーンワース王国に対する建前としてはこれで良いだろう。
代金は王都に送った簡易式蒸気砲の貸しがたっぷりある。
弱みも握っている。強引に押し通せばなんとかなるだろう。
こうして俺は彼ら「ザール連合国解放師団」を俺は配下に従えることになった。
ザール連合国は獣人たちの国であるガルフ国も所属している連合国家で、獣人たちを引き取る方法も同じ建前を使うことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
落とし前の話をしなければならない。
同盟国の王に雷撃杖を向け、こともあろうに引き金を引いた反逆者の落とし前をさすがにつけなければ国としてやっていけない。
俺はとりあえず殺傷力が高く俺しか製造の出来ない雷撃杖と爆裂弾の供給を停止することにした。
このままでも北の要塞を奪還するだけの戦力はあるはずだ。
北の帝国も陸上戦艦が落とされたなどとは思っていないので、北の要塞の守備は手緩いものになっているはずだ。
おそらく戦闘奴隷を人間の盾とし、北の帝国の二級市民を守備隊として後詰させているだけだろう。
それほど陸上戦艦の力を過信してしまっているのが北の帝国なのだ。
後は交渉しだいだが、二度とあのような事態を起こされてもらっては困る。
俺は怒ってますよアピールで、解放された戦闘奴隷たちと共にズイオウ租借地に【転移】で帰ってしまった。
慌てるブラハード将軍に「北の要塞でも戦闘奴隷は殺さないように」と釘を刺してから帰還してやった。
数日後、ワイバーン特急便でリーンクロス公爵がズイオウ租借地にやって来た。
リーンワース王国からは謝罪としてズイオウ租借地の完全譲渡と、加えて周辺の土地が更に割譲された。
加えて政略結婚でリーンワース王国の第七王女クラリス=ザール=リーンワース姫がクランドの元に嫁いで来た。
彼女はリーンワース王国へと友好のために嫁いで来たザール連合国の王女とリーンワース王の間に生まれた姫だった。
現リーンワース王の娘であり、ザール連合国の正当な血筋という、クランドが抱えたザール連合国解放師団のまさに旗印として相応しい姫だった。
そして、リーンワース王に二心が無いという証であり人質でもあるという人選だった。
「ザ・政略結婚の見本みたいなそんな手に誰が引っかか……」
見事に引っかかりました。
俺はクラリスの顔を見て断りの言葉が出なくなってしまったのだ。
嫁の二人は怒るかもしれないが、長いピンクブロンドの髪といい、大きな淡いピンクの瞳といい小動物を思わせるような動作といい、クラリスは俺の好みのど真ん中だった。
うん。ザール連合国に縁が出来れば新たな民も融和しやすいかもしれないな。
さすが、爺さん。そこら辺の機微は巧みだな。
「リーンワース王からの友好の証、断るわけにはまいりませんな」
「理解が早くて助かるわい」
俺とリーンクロス公爵はがっちりと握手をした。
これで俺とリーンワース王は義理の親子となった。
ここまでされて義理の父の国と義理の息子の国、その国同士の友好を疑うわけにはいかないのだった。
そんな王に手出しできるリーンワース王国の貴族もいないだろう。
俺の立場は少なくともリーンワース王国の中では保障されたことになる。
断れば、俺はガイアベザル帝国どころかリーンワース王国とも戦わなければならなくなっただろう。
今後は俺達を傷つけられないような武器を供給するか魔導具で守りを固めれば良いだけだ。
日本の戦国時代でも娘婿を殺してしまうような事案は見受けられた。
俺はリーンワース王国を完全に信じることは流石に出来なかった。
「ササキ王国?に嫁ぐ事が出来嬉しく思います♡」
クラリスは小首を傾げながら俺に笑顔で挨拶をした。
そういえば、この国の正式名がまだ決まってなかったな。
だが良かった。その笑顔には俺に嫁ぐことに対する嫌悪感はないようだ。
クラリスの笑顔を見るとリーンワース王国を少しは信じても良いかと思ってしまうな。
ハニートラップならば終わってるなと自覚はするのだが……。
今の北の帝国に縛られている契約を、我々に危害を加えられない契約としたのだ。
これは俺の魔力が多いために成立したことだそうで、本来ならこのような大人数を魔道具なしで縛るのは無理なんだそうだ。
北の帝国も大人数に魔道具を用意出来なかったせいで督戦隊で煽るという手段をとっていたのだ。
この魔法により無害となった戦闘奴隷たちをリーンワース王国の兵たちによって集めてもらった。
その集めた戦闘奴隷たちを重傷者と軽傷者を分けてもらい、【エリアハイヒール】で重傷者から治していく。
不幸にも雷撃杖や爆裂弾の爆発、それと督戦隊により危害を受け部位欠損になっている者には個別に【リカバー】をかけてやる。
その作業中、様子のおかしい集団が、キルトやルナトーク、獣人ではない他国の戦闘奴隷として分類した中にいた。
ルナトークの民は自己申告だが、キルト人や獣人は人種的に肌の色やケモミミ尻尾などで判断出来る。
俺はリーンワース王国の兵に目配せをしてその集団を包囲させた。
なぜその集団がおかしいと思ったのかというと、武器も持たず、満足な武具もつけていないが、服装がやたら綺麗すぎたのだ。
この戦場で這いつくばって戦っていたとは思えないほどで、例えば汚れた装備をさっき脱ぎ捨てたかのような綺麗な服装だったのだ。
決定打はそいつらだけ隷属魔法で縛られていなかったこと。
まさか俺が隷属魔法に通じているとは思ってもいないため、看破されるとは思っていなかったのだろう。
このままスルーして要塞都市の内部に入れていたら破壊工作をされていたかもしれなかった。
それを俺がやってしまったら大失態だった。危ない所だった。
「こいつらは督戦隊の生き残りだろう。隷属魔法で縛られていない」
おれの言葉に緊張するリーンワース王国の兵と囲まれた督戦隊。
そのまま北の帝国の督戦隊は縛り上げられ連行された。
彼らは北の帝国の上級市民の証である黒髪黒目ではなかった。
おそらく、二級市民と位置づけされた北の帝国の協力者たちなのだろう。
「我々はどうすればいいんだ?」
北の帝国の督戦隊を縛り上げている横で、不安な顔をしていた男から声をかけられた。
彼らはキルトやルナトークと同様に北の帝国に占領された国の民だった。
俺とリーンワース王国の契約では、俺の国――キルトとルナトーク――の奴隷を納入した武器の代金として引き渡してもらうということだったので、彼らは契約の対象外となってしまう。
さてどうしたものか。
「怪我は治そう。だが、リーンワース王国との契約上、君たちを我が国に迎えるわけにはいかない。
奴隷契約も俺が勝手に解除するわけにはいかないな……」
俺が困り顔で思案していると、その男が俺の足に縋り付いて来た。
「頼む。あんたの所に行けば国を取り返せそうな気がする。
俺たちを亡命させてくれ!」
「しかし、君たちの扱いはリーンワース王国の捕虜になるから、俺の一存では決められないんだ。すまん」
男は大いに落胆していた。
戦争捕虜となると、そのまま戦闘奴隷にされる可能性が高い。
元の出身国が違うだけで、奴隷解放され住むところも自由もある我が国の国民と、戦闘奴隷とに立場が分かれる岐路だった。
その待遇は雲泥の差だ。
「消耗品の戦闘奴隷としてゴミのように死ぬより、正式な国民にしてもらって誇りを持って戦って死にたい。頼む!」
その気持ちは痛いほどわかる。どうにかしてやりたい。
こういった人材こそ、俺の国に欲しい所だ。
そうだ。キルトとルナトークの民も奴隷として買い戻しているんだ。
彼らを奴隷として購入して何が悪い。
代金は、大量に供給してやった蒸気砲の代金がある。
それに、俺に対して雷撃杖を撃った奴の落とし前がまだだった。
「よし、俺がなんとかしよう。お前らは俺の元で戦ってもらう!
ただし戦闘奴隷なんかじゃない。正式な軍の兵隊としてだ」
「「「「うおーーーーーーー!!!」」」」
俺は彼らに【エリアハイヒール】と【奴隷解放】の魔法をかけてしまう。
既成事実をここで作ってしまうのだ。
ここには【奴隷契約】の魔法を使える者がいない。
俺には、自国の民の解放のため、ここで【奴隷解放】の魔法をかける権限がある。
うっかり国民と間違えて解放してしまったからには、俺が責任を持って引き取るしかない。
リーンワース王国に対する建前としてはこれで良いだろう。
代金は王都に送った簡易式蒸気砲の貸しがたっぷりある。
弱みも握っている。強引に押し通せばなんとかなるだろう。
こうして俺は彼ら「ザール連合国解放師団」を俺は配下に従えることになった。
ザール連合国は獣人たちの国であるガルフ国も所属している連合国家で、獣人たちを引き取る方法も同じ建前を使うことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
落とし前の話をしなければならない。
同盟国の王に雷撃杖を向け、こともあろうに引き金を引いた反逆者の落とし前をさすがにつけなければ国としてやっていけない。
俺はとりあえず殺傷力が高く俺しか製造の出来ない雷撃杖と爆裂弾の供給を停止することにした。
このままでも北の要塞を奪還するだけの戦力はあるはずだ。
北の帝国も陸上戦艦が落とされたなどとは思っていないので、北の要塞の守備は手緩いものになっているはずだ。
おそらく戦闘奴隷を人間の盾とし、北の帝国の二級市民を守備隊として後詰させているだけだろう。
それほど陸上戦艦の力を過信してしまっているのが北の帝国なのだ。
後は交渉しだいだが、二度とあのような事態を起こされてもらっては困る。
俺は怒ってますよアピールで、解放された戦闘奴隷たちと共にズイオウ租借地に【転移】で帰ってしまった。
慌てるブラハード将軍に「北の要塞でも戦闘奴隷は殺さないように」と釘を刺してから帰還してやった。
数日後、ワイバーン特急便でリーンクロス公爵がズイオウ租借地にやって来た。
リーンワース王国からは謝罪としてズイオウ租借地の完全譲渡と、加えて周辺の土地が更に割譲された。
加えて政略結婚でリーンワース王国の第七王女クラリス=ザール=リーンワース姫がクランドの元に嫁いで来た。
彼女はリーンワース王国へと友好のために嫁いで来たザール連合国の王女とリーンワース王の間に生まれた姫だった。
現リーンワース王の娘であり、ザール連合国の正当な血筋という、クランドが抱えたザール連合国解放師団のまさに旗印として相応しい姫だった。
そして、リーンワース王に二心が無いという証であり人質でもあるという人選だった。
「ザ・政略結婚の見本みたいなそんな手に誰が引っかか……」
見事に引っかかりました。
俺はクラリスの顔を見て断りの言葉が出なくなってしまったのだ。
嫁の二人は怒るかもしれないが、長いピンクブロンドの髪といい、大きな淡いピンクの瞳といい小動物を思わせるような動作といい、クラリスは俺の好みのど真ん中だった。
うん。ザール連合国に縁が出来れば新たな民も融和しやすいかもしれないな。
さすが、爺さん。そこら辺の機微は巧みだな。
「リーンワース王からの友好の証、断るわけにはまいりませんな」
「理解が早くて助かるわい」
俺とリーンクロス公爵はがっちりと握手をした。
これで俺とリーンワース王は義理の親子となった。
ここまでされて義理の父の国と義理の息子の国、その国同士の友好を疑うわけにはいかないのだった。
そんな王に手出しできるリーンワース王国の貴族もいないだろう。
俺の立場は少なくともリーンワース王国の中では保障されたことになる。
断れば、俺はガイアベザル帝国どころかリーンワース王国とも戦わなければならなくなっただろう。
今後は俺達を傷つけられないような武器を供給するか魔導具で守りを固めれば良いだけだ。
日本の戦国時代でも娘婿を殺してしまうような事案は見受けられた。
俺はリーンワース王国を完全に信じることは流石に出来なかった。
「ササキ王国?に嫁ぐ事が出来嬉しく思います♡」
クラリスは小首を傾げながら俺に笑顔で挨拶をした。
そういえば、この国の正式名がまだ決まってなかったな。
だが良かった。その笑顔には俺に嫁ぐことに対する嫌悪感はないようだ。
クラリスの笑顔を見るとリーンワース王国を少しは信じても良いかと思ってしまうな。
ハニートラップならば終わってるなと自覚はするのだが……。
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