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第二章 逃亡生活

067 戦闘機修復

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 俺は屋敷のリビングにサラーナたちを集めていた。

「皆に話がある。
これから空賊のアジトを攻略しようと思う。
そこがポイント11であり、どうしても修理に寄らなければならないからだ。
しかし、さっき攻撃して来た戦闘機のような遺物がまだ空賊の手にあるかもしれない。
危険なんだ。だから皆にはこの陸上戦艦を降りてもらいたい。
必ず迎えに戻るから待っていて欲しい」

 俺はポイント11攻略に際してサラーナたちを艦から降ろそうと思った。
彼女たちは護衛となる戦闘職もいるし、ワイバーンも扱えるので安全な街まで移動することも可能だ。
俺にもしもの事があっても充分なお金を持たせておけば、今後の生活も成り立つはずだ。
とりあえず、暫く身を隠すための建物をここに建てても良いだろう。

 しかし、俺の提案に彼女たちは反発した。

「主様、それはどういうこと?」
「主君、水臭いぞ」
「まったく、私がそんなことであなた様の側を離れると思っていらっしゃるの?」
「クランドはアホにゃ」
「必ず戻るなら、一緒に行っても問題ないということです」
「そうそう」
「わんわわんわん(ご主人、いつも一緒)」

 皆、俺と一緒に来ると言って聞かなかった。
プチと一緒にこの異世界に来て、なんの縁なのか彼女たちと巡り合った。
最初はただの従業員として雇うつもりの奴隷購入だったが、いつか自称妻だと言い出したり、掛け替えのない存在となっていた。
だからこそ、彼女たちを巻き込みたくないと思ったのだが、それこそ俺の独り善がりだったようだ。
どんな困難に遭遇しても共に歩む。
その覚悟は彼女たちの方が出来ていたようだ。
俺はそんな彼女たちとの絆に答えなければならないだろう。

「わかった。いや、ありがとう。
共に行こう。そのために身を守る武器を準備しよう」

 俺は遺跡の遺物である古代兵器相手であっても有利に戦えるだろう武器を準備することにした。
どうやら、この陸上戦艦の倉庫には、戦闘機のように過去に搭載していた兵器の予備部品が格納されているようだ。
それを使えば今以上に戦える可能性がある。
戦闘機の修理完了を待つだけでも戦力は向上する。
俺だけなら勢いで突っ走って、そこまでしようとは思わなかったかもしれない。
彼女たちに感謝だ。


 俺はシステムコンソールの案内で格納庫に隣接した倉庫を物色した。
そこには艦載兵器の修理部品や武器弾薬が格納されているのだ。

「これは戦闘機に搭載されている機銃か?」

『はい。交換用の予備パーツになります。
ただし、弾薬に限りがあります』

 弾薬は魔力により加速されて発射され、当たると弾頭の属性石が爆発するというものだった。
これは俺の錬金術で製造が可能だったが、数を揃えるのには時間がかかるので、戦闘機が直ればここにある弾薬を優先的に搭載するつもりだった。
この予備機銃は、余った弾薬でもしもの時に運用しようと決めた。

「了解した。
この機銃は蒸気砲と同様にゴーレム制御で設置しようと思う」

 あとは……。これか。

「ミサイルだな。空対空ミサイルと対艦対地ミサイルになるのか?」

『はい。艦載機の搭載兵器です』

 弾薬庫には少量だがミサイルが存在していた。
弾薬庫の中は時間停止と停滞フィールドにより劣化と破損を免れていた。
停滞フィールドは斜めに傾いた状態でも中の物資をそのままの位置に維持していた装置のことだ。

「戦闘機の修理はいつ終わる?」

『ユニット交換によりあと2時間で万全となる予定です。
ミサイル弾薬は、ここから搬出して機体のミサイルベイに装備します』

 となるとパイロットを誰にするかだが、そもそもそんなに簡単に操縦できるものなのだろうか?

「操縦は誰でも簡単に出来るのか?」

『操縦には人工知能により補助が入りますので可能です。
しかし、その性能を100%発揮するためには熟練が必要です』

 空賊が操縦できたのは、その人工知能による補助があったおかげだった。
墜落は長年の未整備状態で機体各所にガタが来ていたせいと、魔導エンジンの魔力切れが原因だそうだ。
それをまた飛べる状態まで直せるというのだから、もしや予備パーツだけで1機組めたんじゃないかと疑いたくなるほどだった。

「人工知能なら無人運用が出来る?」

『いいえ、人工知能には攻撃の許可が必要です。
そのため操縦者を必要とします』

 そこにはロボット三原則のような縛りがあるのだそうだ。
この陸上戦艦もゴーレムも俺の許可がないと攻撃することが出来なかった。
あくまでも人に従う存在であり、人工知能が自ら引き金を引くことは不可能なのだった。
ポイント11が占拠されたのも、命令する人が居なくて、空賊に襲われても自衛すら出来なかったのかもしれない。

「しかし、いきなり何も出来ない人を乗せても問題ないだろうか?」

『第2格納庫にシミュレーターがあります。
そこで操縦者適正を調べることが可能です』

「なるほど、希望者を募って調べてみるか」


「はい、はい! やってみたいにゃ」

 俺が戦闘機の操縦者を募るとミーナが真っ先に手を挙げた。

「主君のためなら」

 続いて消極的だがターニャが手を挙げる。
以上2名が希望者だった。
適正があるかを調べるのだから、もっと気楽に参加しても良いはずなのだが、リーゼとティアの騎士組はあまり乗り気ではなく、地上の方が良いのだそうだ。
ワイバーンには乗るので高い所が怖いわけではないはずなのだが?

「我らは地上戦力として従事するべきであり、そこで一番実力を発揮できると自負しております」

 なるほど、空賊といえども全員が空を飛ぶとは限らないわけだ。
元々アイリーンの護衛もしていることから、農園に陸戦を挑む空賊の対処を任せるのが妥当かもしれない。

「では2人に試してもらうとしよう」

 俺とミーナ、ターニャは第2格納庫に向かった。


 俺が見本――ゲーセンの大型操縦筐体みたいなもんだ――を見せた後、2人にシミュレーターをやらせてみた。
すると2人とも適正があったのだが、特にミーナが優れていた。
ミーナは豹獣人であり空間認識能力がずば抜けていた。
これによりミーナが操縦者に決定し、暫くシミュレーターで腕を磨いてもらうことになった。

「頼むよ」

「まかせてにゃ」

 よし、これで戦闘機が戦力化できた。
戦闘機は空賊の切り札だったのだろうと思われた。
それを撃退してから空賊は一切攻撃をしかけて来ていなかった。
逆にこちらがこの戦闘機を運用出来れば、戦いを有利に運ぶ事が出来るはずだ。
俺は片手間で造っていた機銃ゴーレムを完成させつつ、戦いの推移を想像して知らず知らずのうちに笑みを浮かべていた。
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