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第二章 逃亡生活

065 飛行機械3

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『意見具申。FA69とASM75の回収を進言します』

 システムコンソールから戦闘機とミサイル回収の要望があがった。
確かにあれを回収し修理出来ればこちらの戦力になるな。
友軍機らしいし、元々この陸上戦艦は航空母艦だったそうだ。
過去には艦載機が乗っていたそうなので壊れていても修理出来るかもしれなかった。

「ちょっとワイバーンに乗って行ってくる」

「「主君、危険です。お供します」」

 リーゼとティアが護衛として同行を希望した。
確かにあの機体の操縦手が生きていたなら、俺だけでは危険かもしれない。
何しろ俺は戦闘系のスキルが魔法以外には全くないのだ。
魔法は接近戦を仕掛けられると発動時間の関係で弱い。
体術に秀でたリーゼとティアが付いて来てくれれば確かに心強い。
俺たちは農園を停止させると、各自ブルー、レッド、オレンジに乗って農園を飛び立った。

「あれか」

 ミサイルは頭から地面に突き刺さっていた。
後部の推進機は破壊されているが、弾頭はそのままのようだった。
弾頭が生きているなら再利用、いや【鑑定】や【錬金術】で調べれば複製も可能かもしれなかった。

 俺はミサイルを空中から遠隔でインベントリへと収納した。
俺のインベントリは自動収拾の機能がある。
遠隔地のものでも存在を把握出来れば収納することが出来るのだ。
余談だが、ダンジョンの魔物やドロップした品々を収納出来たのも、この自動収拾のおかげだった。
ミサイルは信管の状態がわからないので、手に触れるのは危険だった。
だがインベントリの中は時間が停止しているので、もし遅れて爆発する状態だったとしても、時間が止まっているので爆発しないはずだった。

「よし、次行くぞ」

 次は農園の先に落ちたFA69とかいう戦闘機の方だ。
俺はワイバーンの鼻先を農園の進路の向こうへと向けた。


 しばらく進むと戦闘機が墜落した跡が地面に線を引いていた。
状況的には胴体着陸というやつだろうか?
車輪が出ていなくてそのまま地面に傷跡を残して止まっている。
右の翼は地面を擦って壊れている。

「操縦者は動いていないな?」

「はい、主君」

「やってみるか」

 俺は空中でブルーを旋回させるとインベントリへ機体を収納してみた。
もし操縦者が亡くなっていれば、収納が可能なはずだった。

「だめか」

 案の定、収納は失敗した。
つまり操縦者が生きているということだった。

「リーゼ、ティア、降りて操縦者を確保する。
訊きたいことがある。殺すなよ?」

 俺たちは戦闘機を囲むようにワイバーンを降ろした。
リーゼとティアが長剣を抜き構える。
俺は腰のホルスターから魔銃を抜いて備えた。
そして地上に降りると戦闘機の様子を伺いながら三方から接近していった。

「あー、主君、これは駄目だ。エリクサーでもないと無理だ」

 コクピットを覗くと操縦者は頭部を破損していて既に意識が無かった。
操縦者はまともな操縦服というものを着ておらず、ヘルメットも被っていなかった。
シートベルトという存在にも気付いていないのかしていなかった。
そのため墜落の衝撃で頭を強打し破損したのだろう。

 【鑑定】をかけると所謂脳死という状態だった。
身体は生命反応があるが、精神は死んでしまったというところだろうか。
この世界でもここまでの損傷は回復魔法やポーションでも無理と判断されていた。
唯一助けられるとしたら、死んで間もなくなら生き返らせることが出来るというエリクサーを使うしかない事案だった。

「こいつ、空賊だよ。
前の襲撃の時に先頭でワイバーンに乗ってたのを見た」

 空賊如きにはさすがにエリクサーを使うわけにはいかなかった。
インベントリを見たらダンジョンのお宝で拾ってたけど……。

「空賊ならば、こいつらのアジトを探せば何か手掛かりがあるだろう」

 俺は戦闘機の機体に描かれた古代ガイア文字を読むと、コクピットの開閉機構を探し当てた。
その蓋を開けてコックを捻るとキャノピーが開いた。

「くそ、脳死状態だとまだインベントリに入れられないのか」

 俺は操縦者をコクピットからぴっぱり上げることになった。
酷いことになっているコクピットには【浄化】をかけて綺麗にした。

「あ、レビテーションで浮かせれば良かったのか」

 コクピットから遺体を持ち上げてから、俺はレビテーションを使えば良かったと気付いた。
魔導の極などの極シリーズを持っているとはいえ、逆にスキルの文字からは何が出来るのかわからなくなってしまっていた。
ここらへんがまさに俺の弱点だった。
唯一わかっているのが、剣術や武術などの戦闘系スキルが一切ないことだった。
生産や魔法を使うことは来るけど、体術で戦うことはほぼ無理。
魔法も応用が効かない。それが俺の原状だった。

「魔導の極も、こういった単純なことには反応してくれないんだよな」

 魔導の極や生産の極は、何か特別にやりたいと思ったことに手助けとして囁きをくれることがある。
しかし、全ての行為にアドバイスが受けられるわけではないのだ。

「遺体を放り投げないで済んで良かったよ」

 レビテーションのおかげで楽に遺体を降ろすことが出来た。
空賊ならお尋ね者になっていて討伐報奨金があるかもしれない。
遺体はインベントリ内に収納しておいた方が良いだろう。
しかし、いま俺が冒険者ギルドに顔を出すと追手に手がかりを与えることになる。
あとでクロードとして換金できるまで入れておけば良い。

「とりあえず、インベントリに入れられるようになるまで放置かな」

 地球人のアイデンティティでは、死にそうな人は助けないとと思わないでもないが、地球でも脳死は無理やり肉体を生かすしか方法はないので、これも仕方ないだろう。
しかも相手は犯罪者。既にガイアベザル帝国人を大量に殺している身としては、ドライにならざるを得なかった。
それがこの世界で生きていくということだった。

 【鑑定】をかけ続けて目の端に空賊のステータスをAR表示し続けていると、空賊のステータスが脳死から死亡になった。

「俺たちを殺しに来た報いだと諦めてくれ」

 俺は空賊に手を合わせるとそう独り言ちた。
殺そうとして来るなら殺す。
俺にもそこは曲げることは出来なかった。
既にこの農園は俺一人のものではなく、俺は皆の命のも預かっているのだから。

「よし戻るぞ」

 俺は戦闘機と空賊の遺体をインベントリに収納すると農園へと戻るのだった。

「面白いものが手に入ったな」

 戦闘機を修理出来れば少しは防衛力が上がるだろう。
そしてポイント11に辿り着けば、なんらかの手がかりも手にすることが出来るはずだ。
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