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第二章 逃亡生活
063 飛行機械1
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空賊の頭は、秘密兵器である古代遺物を使うことにした。
それは銀色に鈍く輝く金属で出来ており、矢じりの先のような形をしていて後部から炎を噴射して空を飛ぶ機械だった。
それは上部の水滴のような形をした透明な部分に人が乗れるようになっており、座席の右横にある突き出た棒を動かすことによって自由に動かすことが出来た。
この飛行機械を見つけたのは偶然だった。
先代の頭がアジトとして入り込んだ洞窟の先に広い空間があり、そこにこの飛行機械があった。
先代は、広い空間から外へと続く長い通路とその先の扉をみつけ、飛行機械を外へと持ち出した。
そして自らこの飛行機械に乗り、動作を確認し、操縦方法を会得するに至った。
その後、この飛行機械は空賊を生きながらえさせる秘密兵器となり、先代が死の淵に付くと今の頭へと操縦方法の手引きとともに譲渡された。
今の頭は、先代ほど操縦が上手くはないが、それでもワイバーンを軽く倒すほどには操縦に熟練していた。
棒に取り付けられた引き金を引くと飛行機械の先端から弾が出ることもわかっていた。
だが、この強力な飛行機械も未来永劫動き続けるわけではない。
弾にも限りがあるようで、座席の前にあるガラスの板には赤い警告が出ていた。
なぜそれが弾に関係するものだと思われたのかだが、弾を撃つ度に警告の色が変わり音が大きくなったからだ。
なので、この秘密兵器はここぞという時にしか使用出来なかった。
「今こそがそのここぞという時だ」
頭は覚悟を決めた。
「頭、やるんですかい?」
「ああ、こいつであいつらに目にもの見せてやる!」
憧れの秘密兵器が動く、手下も憧れの目で頭を見る。
仲間を殺され悔しい思いをした彼らにとって、その飛行機械はヒーローだった。
それは空賊という犯罪者の逆恨みでしかないのだが……。
手下が押さえる木の梯子を登って頭が飛行機械の操縦席に乗る。
操縦席正面横のスイッチを押すとエンジンに火が入った。
と同時に透明な覆いが下がり操縦席を覆う。
慌ただしく手下が梯子を担いで下がる。
頭が左側前にあるレバーを下げるとブレーキが解除され、エンジンの推力によって飛行機械が前進しだした。
頭は左横のレバーを前にスライドさせる。
すると推力が上がり飛行機械が滑走しだした。
飛行機械の速度が乗る。頃合いだと頭は判断し右側の棒を手前に引いた。
すると飛行機械は地を離れ、ついに大空へと飛び立った。
車輪は自動的に胴体に格納された。
「見てろよ、農家! やってやるぜ」
空賊の頭は農園の方角へと機首を向けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
一方、クランドは……。
俺は空賊を避けるため陸上戦艦を昼間も動かすことにした。
家畜のストレスと乗り物酔い対策は、艦内に家畜を格納することで我慢してもらうことにした。
定期的に休憩を挟んで外の空気を吸わせてあげればなんとかなるだろう。
「ポイント11の方角は、空賊が逃げた先なのか……。
ならば大きく迂回して避けた方が良さそうだな。
進路変更、面舵いっぱい、南西に進路をとれ」
空賊のアジトがどうやら南の進行方向にあるらしい。
ならば、迂回して避ければ良い。
少し遠回りになるが、空賊と鉢合わせればまた面倒なことになる。
今は魔導砲も使えない状態なので、何があるかわからないこの状況では、危険な場所にはなるべき近寄らない方が良いだろう。
しばらく平穏に進んでいるとシステムコンソールから警告が発せられた。
『魔導レーダーに感有り。未確認飛行物体接近中。
迎撃態勢をとってください』
「また来たか!
ゴーレム、対空戦闘用意」
『レーダー反応確認。友軍機FA69のもよう』
システムコンソールの言いように俺は首を傾げた。
友軍機など数百年埋まっていたこの陸上戦艦にはいるわけがない。
俺のように乗っている者は全くの無関係なのかもしれない。
例え機体が友軍機だろうが、操縦者によって敵である可能性は否定できない。
「例え機体が友軍機でも、乗ってるやつは敵かもしれないぞ?」
『友軍機であれば、こちらを攻撃できません』
何を言っているのかわからない。
攻撃するのは操縦しているやつの意思だろう?
「操縦してるやつが攻撃しようと思ってもか?」
『はい。敵味方識別信号によって攻撃不能のはずです』
「はずってことは、その信号を受信していなかったら攻撃されるってことだろ」
『……そうなります』
俺の指摘にシステムコンソールが一瞬間をあける。
まさか言いよどんだということか?
どちらにしろ危険は危険だ。
「攻撃されても大丈夫なのか?」
幸い俺の嫁と従業員たちは艦内に避難済みだ。
家畜も初めから艦内にいて避難の必要はなかった。
『FA69の固定武装では我が艦に被害を与えられません。
しかしASM75対艦ミサイルを装備していれば危険です』
拙いだろ。そんなものを撃たれたらどうするんだ。
「そのミサイルの迎撃は可能か?」
『……現在の対空装備では迎撃不能です。
速やかに整備ポイントまで向かってください』
こいつも壊れすぎていてダメなんじゃないか。
さてどうしようか。
俺が悩んでいるうちに事態は進展してしまう。
『ミサイル阻止限界点突破。
この内側でミサイルを発射され場合避けられません』
ここはミサイルを持っていないことを神に祈るしかない。
『敵味方識別信号受信確認しました』
それは攻撃出来ないってことでいいのかな?
それは銀色に鈍く輝く金属で出来ており、矢じりの先のような形をしていて後部から炎を噴射して空を飛ぶ機械だった。
それは上部の水滴のような形をした透明な部分に人が乗れるようになっており、座席の右横にある突き出た棒を動かすことによって自由に動かすことが出来た。
この飛行機械を見つけたのは偶然だった。
先代の頭がアジトとして入り込んだ洞窟の先に広い空間があり、そこにこの飛行機械があった。
先代は、広い空間から外へと続く長い通路とその先の扉をみつけ、飛行機械を外へと持ち出した。
そして自らこの飛行機械に乗り、動作を確認し、操縦方法を会得するに至った。
その後、この飛行機械は空賊を生きながらえさせる秘密兵器となり、先代が死の淵に付くと今の頭へと操縦方法の手引きとともに譲渡された。
今の頭は、先代ほど操縦が上手くはないが、それでもワイバーンを軽く倒すほどには操縦に熟練していた。
棒に取り付けられた引き金を引くと飛行機械の先端から弾が出ることもわかっていた。
だが、この強力な飛行機械も未来永劫動き続けるわけではない。
弾にも限りがあるようで、座席の前にあるガラスの板には赤い警告が出ていた。
なぜそれが弾に関係するものだと思われたのかだが、弾を撃つ度に警告の色が変わり音が大きくなったからだ。
なので、この秘密兵器はここぞという時にしか使用出来なかった。
「今こそがそのここぞという時だ」
頭は覚悟を決めた。
「頭、やるんですかい?」
「ああ、こいつであいつらに目にもの見せてやる!」
憧れの秘密兵器が動く、手下も憧れの目で頭を見る。
仲間を殺され悔しい思いをした彼らにとって、その飛行機械はヒーローだった。
それは空賊という犯罪者の逆恨みでしかないのだが……。
手下が押さえる木の梯子を登って頭が飛行機械の操縦席に乗る。
操縦席正面横のスイッチを押すとエンジンに火が入った。
と同時に透明な覆いが下がり操縦席を覆う。
慌ただしく手下が梯子を担いで下がる。
頭が左側前にあるレバーを下げるとブレーキが解除され、エンジンの推力によって飛行機械が前進しだした。
頭は左横のレバーを前にスライドさせる。
すると推力が上がり飛行機械が滑走しだした。
飛行機械の速度が乗る。頃合いだと頭は判断し右側の棒を手前に引いた。
すると飛行機械は地を離れ、ついに大空へと飛び立った。
車輪は自動的に胴体に格納された。
「見てろよ、農家! やってやるぜ」
空賊の頭は農園の方角へと機首を向けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
一方、クランドは……。
俺は空賊を避けるため陸上戦艦を昼間も動かすことにした。
家畜のストレスと乗り物酔い対策は、艦内に家畜を格納することで我慢してもらうことにした。
定期的に休憩を挟んで外の空気を吸わせてあげればなんとかなるだろう。
「ポイント11の方角は、空賊が逃げた先なのか……。
ならば大きく迂回して避けた方が良さそうだな。
進路変更、面舵いっぱい、南西に進路をとれ」
空賊のアジトがどうやら南の進行方向にあるらしい。
ならば、迂回して避ければ良い。
少し遠回りになるが、空賊と鉢合わせればまた面倒なことになる。
今は魔導砲も使えない状態なので、何があるかわからないこの状況では、危険な場所にはなるべき近寄らない方が良いだろう。
しばらく平穏に進んでいるとシステムコンソールから警告が発せられた。
『魔導レーダーに感有り。未確認飛行物体接近中。
迎撃態勢をとってください』
「また来たか!
ゴーレム、対空戦闘用意」
『レーダー反応確認。友軍機FA69のもよう』
システムコンソールの言いように俺は首を傾げた。
友軍機など数百年埋まっていたこの陸上戦艦にはいるわけがない。
俺のように乗っている者は全くの無関係なのかもしれない。
例え機体が友軍機だろうが、操縦者によって敵である可能性は否定できない。
「例え機体が友軍機でも、乗ってるやつは敵かもしれないぞ?」
『友軍機であれば、こちらを攻撃できません』
何を言っているのかわからない。
攻撃するのは操縦しているやつの意思だろう?
「操縦してるやつが攻撃しようと思ってもか?」
『はい。敵味方識別信号によって攻撃不能のはずです』
「はずってことは、その信号を受信していなかったら攻撃されるってことだろ」
『……そうなります』
俺の指摘にシステムコンソールが一瞬間をあける。
まさか言いよどんだということか?
どちらにしろ危険は危険だ。
「攻撃されても大丈夫なのか?」
幸い俺の嫁と従業員たちは艦内に避難済みだ。
家畜も初めから艦内にいて避難の必要はなかった。
『FA69の固定武装では我が艦に被害を与えられません。
しかしASM75対艦ミサイルを装備していれば危険です』
拙いだろ。そんなものを撃たれたらどうするんだ。
「そのミサイルの迎撃は可能か?」
『……現在の対空装備では迎撃不能です。
速やかに整備ポイントまで向かってください』
こいつも壊れすぎていてダメなんじゃないか。
さてどうしようか。
俺が悩んでいるうちに事態は進展してしまう。
『ミサイル阻止限界点突破。
この内側でミサイルを発射され場合避けられません』
ここはミサイルを持っていないことを神に祈るしかない。
『敵味方識別信号受信確認しました』
それは攻撃出来ないってことでいいのかな?
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