上 下
63 / 169
第二章 逃亡生活

063 飛行機械1

しおりを挟む
 空賊のかしらは、秘密兵器である古代遺物を使うことにした。
それは銀色に鈍く輝く金属で出来ており、矢じりの先のような形をしていて後部から炎を噴射して空を飛ぶ機械だった。
それは上部の水滴のような形をした透明な部分に人が乗れるようになっており、座席の右横にある突き出た棒を動かすことによって自由に動かすことが出来た。

 この飛行機械を見つけたのは偶然だった。
先代のかしらがアジトとして入り込んだ洞窟の先に広い空間があり、そこにこの飛行機械があった。
先代は、広い空間から外へと続く長い通路とその先の扉をみつけ、飛行機械を外へと持ち出した。
そして自らこの飛行機械に乗り、動作を確認し、操縦方法を会得するに至った。
その後、この飛行機械は空賊を生きながらえさせる秘密兵器となり、先代が死の淵に付くと今のかしらへと操縦方法の手引きとともに譲渡された。

 今のかしらは、先代ほど操縦が上手くはないが、それでもワイバーンを軽く倒すほどには操縦に熟練していた。
棒に取り付けられた引き金を引くと飛行機械の先端から弾が出ることもわかっていた。
だが、この強力な飛行機械も未来永劫動き続けるわけではない。
弾にも限りがあるようで、座席の前にあるガラスの板には赤い警告が出ていた。
なぜそれが弾に関係するものだと思われたのかだが、弾を撃つ度に警告の色が変わり音が大きくなったからだ。
なので、この秘密兵器はここぞという時にしか使用出来なかった。

「今こそがそのここぞという時だ」

 かしらは覚悟を決めた。

かしら、やるんですかい?」

「ああ、こいつであいつらに目にもの見せてやる!」

 憧れの秘密兵器が動く、手下も憧れの目でかしらを見る。
仲間を殺され悔しい思いをした彼らにとって、その飛行機械はヒーローだった。
それは空賊という犯罪者の逆恨みでしかないのだが……。

 手下が押さえる木の梯子を登ってかしらが飛行機械の操縦席に乗る。
操縦席正面横のスイッチを押すとエンジンに火が入った。
と同時に透明な覆いが下がり操縦席を覆う。
慌ただしく手下が梯子を担いで下がる。
かしらが左側前にあるレバーを下げるとブレーキが解除され、エンジンの推力によって飛行機械が前進しだした。
かしらは左横のレバーを前にスライドさせる。
すると推力が上がり飛行機械が滑走しだした。
飛行機械の速度が乗る。頃合いだとかしらは判断し右側の棒を手前に引いた。

 すると飛行機械は地を離れ、ついに大空へと飛び立った。
車輪は自動的に胴体に格納された。

「見てろよ、農家! やってやるぜ」

 空賊のかしらは農園の方角へと機首を向けた。


◇  ◇  ◇  ◇  ◆


 一方、クランドは……。

 俺は空賊を避けるため陸上戦艦を昼間も動かすことにした。
家畜のストレスと乗り物酔い対策は、艦内に家畜を格納することで我慢してもらうことにした。
定期的に休憩を挟んで外の空気を吸わせてあげればなんとかなるだろう。

「ポイント11の方角は、空賊が逃げた先なのか……。
ならば大きく迂回して避けた方が良さそうだな。
進路変更、面舵いっぱい、南西に進路をとれ」

 空賊のアジトがどうやら南の進行方向にあるらしい。
ならば、迂回して避ければ良い。
少し遠回りになるが、空賊と鉢合わせればまた面倒なことになる。
今は魔導砲も使えない状態なので、何があるかわからないこの状況では、危険な場所にはなるべき近寄らない方が良いだろう。

 しばらく平穏に進んでいるとシステムコンソールから警告が発せられた。

『魔導レーダーに感有り。未確認飛行物体接近中。
迎撃態勢をとってください』

「また来たか!
ゴーレム、対空戦闘用意」

『レーダー反応確認。友軍機FA69のもよう』

 システムコンソールの言いように俺は首を傾げた。
友軍機など数百年埋まっていたこの陸上戦艦にはいるわけがない。
俺のように乗っている者は全くの無関係なのかもしれない。
例え機体が友軍機だろうが、操縦者によって敵である可能性は否定できない。

「例え機体が友軍機でも、乗ってるやつは敵かもしれないぞ?」

『友軍機であれば、こちらを攻撃できません』

 何を言っているのかわからない。
攻撃するのは操縦しているやつの意思だろう?

「操縦してるやつが攻撃しようと思ってもか?」

『はい。敵味方識別信号によって攻撃不能のはずです』

「はずってことは、その信号を受信していなかったら攻撃されるってことだろ」 

『……そうなります』

 俺の指摘にシステムコンソールが一瞬間をあける。
まさか言いよどんだということか?
どちらにしろ危険は危険だ。

「攻撃されても大丈夫なのか?」

 幸い俺の嫁と従業員たちは艦内に避難済みだ。
家畜も初めから艦内にいて避難の必要はなかった。

『FA69の固定武装では我が艦に被害を与えられません。
しかしASM75対艦ミサイルを装備していれば危険です』

 拙いだろ。そんなものを撃たれたらどうするんだ。

「そのミサイルの迎撃は可能か?」

『……現在の対空装備では迎撃不能です。
速やかに整備ポイントまで向かってください』

 こいつも壊れすぎていてダメなんじゃないか。
さてどうしようか。
俺が悩んでいるうちに事態は進展してしまう。

『ミサイル阻止限界点突破。
この内側でミサイルを発射され場合避けられません』

 ここはミサイルを持っていないことを神に祈るしかない。

『敵味方識別信号受信確認しました』

 それは攻撃出来ないってことでいいのかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国

てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』  女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

処理中です...