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第二章 逃亡生活

061 エスケープ

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「ここは居心地が良かったが、残念ながら追手に気付かれたようだ。
今夜ここを出立する」

 俺たちの小さな幸せは、追手の出現で儚くも崩れ去った。
ここは本当に居心地の良い場所だった。
願わくばここに戻って平和に生活できれば良いのだが。

「目的地は、この陸上戦艦を修理できる遺跡だ。
一応、この艦のシステムコンソールが古い地図を持っている。
その地図に従って遺跡を探索する」

「わかったわ」
「しょうがないですわ」

 皆、ここの生活に慣れ始めていたので残念そうだ。
だが、納得してくれている。
誰も付いて行かないとは言いださなかった。
既に隷属契約は解除されている。自由になろうと思えば好きに出来るのだ。
俺はその気持ちが有難かった。


 日が落ちた。
俺は塔に登るとシステムコンソールに命令を下した。

「システムコンソール、修理拠点へ移動開始!」

『管理者クランドの命令を受諾。
重力制御レビテーション機関、第一、第二、第三、第四巡行時出力で作動開始。
艦体浮上します』

 森の中に隠れていた陸上戦艦が、重力から解き放たれて浮上する。
陸上戦艦は森の木々の上まで浮上すると空中に止まった。

『艦首重力制御機関作動、重力場推進作動します』

 陸上戦艦の艦首少し前に魔法による力場フィールドが発生する。
陸上戦艦はそこに落ちる・・・ことで前に進む。
落下速度は無限に加速していく。
今は巡航速度なので、制限があるが、やろうと思えば永遠に加速し続けることが出来る。
陸上戦艦の艦体には停滞フィールドが張られ、艦上もある一定の高さまでは慣性が制御されている。
なので屋敷内や家畜小屋、ワイバーン厩舎、森の木々も保護対象となっていた。

『巡航速度に達しました。加速終了。
目標、ポイント11に向かいます』

 ポイント11とは陸上戦艦の修理が可能な遺跡のことだそうだ。
そこがどうなっているか、陸上戦艦のシステムコンソールも把握していない様子だ。
どうやら陸上戦艦は数百年の年月を魔の森で眠っていたらしい。
その間、通信用のアンテナ類が破壊された状態であり、艦も傾いたままだったので俺が管理者となり復原するまで修理もままならなかったのだそうだ。
その情報の断絶期間で周囲に何が起こったかシステムコンソール――その先の電脳なのだが――は、把握できていないそうだ。

『ポイント11に通信を送信しましたが、返信は認められません』

 ポイント11が陸上戦艦同様に通信不能になっているだけかもしれないし、完全に破壊されているのかもしれなかった。

「行ってみるしかない。そういうことだな?」

『はい』

 まあ、穀物に野菜類や果物は俺の農園がある。肉や調味料の備蓄もある。
水は魔道具でいくらでも出る。
生活するには、他と接触しなくても数か月は問題ないだろう。
途中途中で街に寄れば補給も可能だ。
俺たちは逃亡生活を満喫することにした。


 日中は停止し夜間に移動する、その生活を続けて数日間は順調に進んでいた。

「拙いな。隠れる場所が何処にも無いぞ」

 日が昇る。陸上戦艦をどこかに停泊させ、隠れなければいけない時間にも拘らず隠れる場所が無かった。
そこは荒野で丘も谷も何もないまっ平な場所だった。

「仕方ないな」

 もう、ここで停泊するしかない。
偽装するにも、陸上戦艦がドンと泊っていたら目立ちすぎてしまう。
俺は土魔法で陸上戦艦がすっぽり入る穴を掘った。
陸上には農園の塀と木々が見えるだけの状態だ。
つまり、魔の森での状態を疑似的に再現したことになる。

「よし、これで小さな林があるようにしか見えないだろう」

 周囲に街もない。わざわざやって来る者もいないだろう。
その時はそう高を括っていた。
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