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第二章 逃亡生活
050 武器
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朝の農作業である収穫と種苗出しを終えた俺は、いよいよ懸案事項だった武器開発に勤しむことにした。
敵対関係になってしまった北の帝国の陸上戦艦に俺は身を守るため対抗する武器を用意しなければならなかった。
そのためには敵戦力の分析をしなければならないだろう。
まず、敵陸上戦艦の攻撃力。
主武装として火薬式の大砲を舷側に十数基持ち、その砲弾は着弾と同時に爆発する炸裂弾だ。
次に防御力。舷側の装甲が古代文明の特殊鋼であるのと、魔法で防壁障壁を展開し防御している。
この舷側の火薬砲は元々は無かった装備のようで、ゴーレムがレーザーを撃ちこんだところ、防御障壁が展開せず、そのまま砲を破壊出来ていた。
おそらく防御障壁は艦本来の機能であり、艦に被害が及びそうな大規模攻撃を自動で防御するようになっているのだ。
その対象にはゴーレムのレーザー程度の低威力のものは含まれず、それらは舷側の装甲板で対処するという事なのだろう。
なのに、その装甲に北の帝国は勝手に穴を開けて砲を設置してしまった。
このことを自動設定は考慮していないため、先のように防御機構が作動しないのだ。
おそらく北の帝国は防御機構を制御出来ていないのだ。
これは敵の陸上戦艦の大きな弱点と見ていいだろう。
となると同程度の火薬砲を使用すれば、その弱点を攻撃出来るはずだ。
「となると、鹵獲したニムルドの残骸から火薬砲を探し出して設置するのが早いかな?」
いや、火薬砲と言ってもその火薬や砲弾が補充不可能なことは、システムコンソールにも指摘されていた。
今ある弾薬が切れたら使えなくなるんじゃ、わざわざ火薬砲を修理するのは無駄だ。
生産の極が反応し黒色火薬の製造方法は分かったけど、材料が手に入らない。
硝石ってどこで手に入るんだ? 便所? 何それ?
硫黄は火山地帯だろうけど、この世界で活火山ってどこにある?
さすがの生産の極も素材の在処までは把握してないか。
地球での知識によると窒素肥料――インベントリで製造しているやつ――からANFO爆薬が作れるはずだけど、その詳細なんて俺が覚えているわけがない。
ANFOが何の略か思い出せれば材料はわかりそうだけど……。
テロリストじゃないんだから記憶の底にも残ってない。
黒色火薬すら作れない状況では火薬砲を運用するのは無理だろう。
(作者注:この時点でのクランドは材料が無いと火薬は作れないと思っています。
召喚が地球上の物資にも及んでいることには全く気付いていません)
だが、弾丸を撃ち出すだけなら、ガスで飛ばせばいいわけで、蒸気機関を造って、その蒸気圧で撃ち出すというのはどうだろう?
蒸気砲だな。アメリカ海軍の空母に搭載されている蒸気カタパルトみたいな構造で行けるだろう。
弩の弓と弦の力が蒸気による力になっているようなものだ。
ただ弾体に爆発力を付けるのは……属性石の魔法付与で出来るか。
よしこれを造ってみよう。
錬金術で作った圧力容器に安全弁と放出弁をつけ、砲身の下部に射出体をはめたパイプを作る。
圧力容器には火と水の属性石を取り付け、蒸気を発生させて放出弁を開けると、蒸気圧で射出体が撃ち出される。
その射出体に押されて砲身内の弾体が撃ち出されるという仕組みだ。
ノリノリで作ってみたが、これって弾込めと射出体の引き戻しに人手がかかるな。
ここはゴーレムの腕を使って弾込めと射出体の引き戻しをさせよう。
というか全体をゴーレム化するか。そうすればゴーレムが照準も付けてくれるぞ。
何だかんだやっているうちにゴーレム動力とゴーレム制御が組み込まれた試作機が出来た。
ゴーレムの腕が砲尾(射出体の前方に弾体をセットする穴がある)から弾体を込める。
圧力容器に火と水の属性石で水蒸気が発生し体積が一瞬で1700倍に膨れ上がり圧力が高まる。
これは狭い圧力容器内で水蒸気爆発を起こしていると思ってもらえばいい。
発射のタイミングで放出弁を開くと射出体が撃ち出され、それに押されて弾体が発射される。
発射された弾体は砲身内に切られたライフル線条で回転を付けられ飛び出すと目標に着弾。
と同時に火の属性石による爆裂魔法が作動する。
砲身にも蒸気が逃げるが、パイプの放出弁を開き全ての蒸気を逃がす。
射出体をゴーレムの腕が引き戻し、弁を閉じる。
そしてゴーレムの腕が砲尾から弾体を込めると続く。
試射は成功。圧力容器の強度も問題なかった。
なんでもアダマンタイトとかいう硬度の高い謎金属を使っているので、壊れるなら圧力弁の方になる。
思った以上になかなか実用的だった。
大砲1基につきゴーレム制御用で魔宝石1燃料石1、蒸気発生源用で火と水の属性石1を使い、弾体1に対し火の属性石を1使う。
炸裂弾でなければ火の属性石は必要ない。
魔宝石以外は簡単に創れる石ばかり。魔宝石も魔力を大量に込めれば作れなくはない。
これはいけるんじゃないでしょうか?
俺は嬉々として蒸気砲を量産した。
これを農園の城壁の上に設置して全方位に撃てるように準備した。
それが終わった後、ふと思い出した。
そういえば、アメリカ海軍の空母は蒸気カタパルトからリニアカタパルトに換装されるとの噂が……。
雷の属性石を使えば、レールガンが出来たんじゃね?
まあ射出するための電路の極性制御とか難しそうだからやめておこう。
あれ? もしかして雷の魔法、いや光魔法をそのままぶっ放せば……。
それって魔導砲じゃないか?
つまり、威力を出すには魔導機関から魔力を供給しないとならないってことか。
しかし、レールガンが実用化出来るなら……。
今日の努力が徒労に終わった気がするのは気のせいだろうか?
敵対関係になってしまった北の帝国の陸上戦艦に俺は身を守るため対抗する武器を用意しなければならなかった。
そのためには敵戦力の分析をしなければならないだろう。
まず、敵陸上戦艦の攻撃力。
主武装として火薬式の大砲を舷側に十数基持ち、その砲弾は着弾と同時に爆発する炸裂弾だ。
次に防御力。舷側の装甲が古代文明の特殊鋼であるのと、魔法で防壁障壁を展開し防御している。
この舷側の火薬砲は元々は無かった装備のようで、ゴーレムがレーザーを撃ちこんだところ、防御障壁が展開せず、そのまま砲を破壊出来ていた。
おそらく防御障壁は艦本来の機能であり、艦に被害が及びそうな大規模攻撃を自動で防御するようになっているのだ。
その対象にはゴーレムのレーザー程度の低威力のものは含まれず、それらは舷側の装甲板で対処するという事なのだろう。
なのに、その装甲に北の帝国は勝手に穴を開けて砲を設置してしまった。
このことを自動設定は考慮していないため、先のように防御機構が作動しないのだ。
おそらく北の帝国は防御機構を制御出来ていないのだ。
これは敵の陸上戦艦の大きな弱点と見ていいだろう。
となると同程度の火薬砲を使用すれば、その弱点を攻撃出来るはずだ。
「となると、鹵獲したニムルドの残骸から火薬砲を探し出して設置するのが早いかな?」
いや、火薬砲と言ってもその火薬や砲弾が補充不可能なことは、システムコンソールにも指摘されていた。
今ある弾薬が切れたら使えなくなるんじゃ、わざわざ火薬砲を修理するのは無駄だ。
生産の極が反応し黒色火薬の製造方法は分かったけど、材料が手に入らない。
硝石ってどこで手に入るんだ? 便所? 何それ?
硫黄は火山地帯だろうけど、この世界で活火山ってどこにある?
さすがの生産の極も素材の在処までは把握してないか。
地球での知識によると窒素肥料――インベントリで製造しているやつ――からANFO爆薬が作れるはずだけど、その詳細なんて俺が覚えているわけがない。
ANFOが何の略か思い出せれば材料はわかりそうだけど……。
テロリストじゃないんだから記憶の底にも残ってない。
黒色火薬すら作れない状況では火薬砲を運用するのは無理だろう。
(作者注:この時点でのクランドは材料が無いと火薬は作れないと思っています。
召喚が地球上の物資にも及んでいることには全く気付いていません)
だが、弾丸を撃ち出すだけなら、ガスで飛ばせばいいわけで、蒸気機関を造って、その蒸気圧で撃ち出すというのはどうだろう?
蒸気砲だな。アメリカ海軍の空母に搭載されている蒸気カタパルトみたいな構造で行けるだろう。
弩の弓と弦の力が蒸気による力になっているようなものだ。
ただ弾体に爆発力を付けるのは……属性石の魔法付与で出来るか。
よしこれを造ってみよう。
錬金術で作った圧力容器に安全弁と放出弁をつけ、砲身の下部に射出体をはめたパイプを作る。
圧力容器には火と水の属性石を取り付け、蒸気を発生させて放出弁を開けると、蒸気圧で射出体が撃ち出される。
その射出体に押されて砲身内の弾体が撃ち出されるという仕組みだ。
ノリノリで作ってみたが、これって弾込めと射出体の引き戻しに人手がかかるな。
ここはゴーレムの腕を使って弾込めと射出体の引き戻しをさせよう。
というか全体をゴーレム化するか。そうすればゴーレムが照準も付けてくれるぞ。
何だかんだやっているうちにゴーレム動力とゴーレム制御が組み込まれた試作機が出来た。
ゴーレムの腕が砲尾(射出体の前方に弾体をセットする穴がある)から弾体を込める。
圧力容器に火と水の属性石で水蒸気が発生し体積が一瞬で1700倍に膨れ上がり圧力が高まる。
これは狭い圧力容器内で水蒸気爆発を起こしていると思ってもらえばいい。
発射のタイミングで放出弁を開くと射出体が撃ち出され、それに押されて弾体が発射される。
発射された弾体は砲身内に切られたライフル線条で回転を付けられ飛び出すと目標に着弾。
と同時に火の属性石による爆裂魔法が作動する。
砲身にも蒸気が逃げるが、パイプの放出弁を開き全ての蒸気を逃がす。
射出体をゴーレムの腕が引き戻し、弁を閉じる。
そしてゴーレムの腕が砲尾から弾体を込めると続く。
試射は成功。圧力容器の強度も問題なかった。
なんでもアダマンタイトとかいう硬度の高い謎金属を使っているので、壊れるなら圧力弁の方になる。
思った以上になかなか実用的だった。
大砲1基につきゴーレム制御用で魔宝石1燃料石1、蒸気発生源用で火と水の属性石1を使い、弾体1に対し火の属性石を1使う。
炸裂弾でなければ火の属性石は必要ない。
魔宝石以外は簡単に創れる石ばかり。魔宝石も魔力を大量に込めれば作れなくはない。
これはいけるんじゃないでしょうか?
俺は嬉々として蒸気砲を量産した。
これを農園の城壁の上に設置して全方位に撃てるように準備した。
それが終わった後、ふと思い出した。
そういえば、アメリカ海軍の空母は蒸気カタパルトからリニアカタパルトに換装されるとの噂が……。
雷の属性石を使えば、レールガンが出来たんじゃね?
まあ射出するための電路の極性制御とか難しそうだからやめておこう。
あれ? もしかして雷の魔法、いや光魔法をそのままぶっ放せば……。
それって魔導砲じゃないか?
つまり、威力を出すには魔導機関から魔力を供給しないとならないってことか。
しかし、レールガンが実用化出来るなら……。
今日の努力が徒労に終わった気がするのは気のせいだろうか?
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