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第七章 再びスローライフ
137 戦闘メイド
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「敵対者確認。単独行動のもよう。
周囲への影響小とみなします。
陽菜、制圧行動に入ります」
機械的な感情の籠っていない声で陽菜が呟く。
まるで軍事的な訓練を積んだことがあるような雰囲気を出していた。
アニメ声なのが台無しだが。
陽菜は敵対者と認定された商人風の男の前に一瞬で詰めると、ラリアットのようなかたちで右腕を男の首にかけ引き倒した。
「カハッ」
男は後方に一回転するとゴロゴロと転がって行った。
喉が詰まって変な声が出ている。
しかし、男は後ろに跳んで陽菜の攻撃を軽減させていたようで、直ぐに体制を整えると陽菜に向けて【ファイアボール】の魔法を放った。
それを軽く手で払う陽菜。
男と陽菜は距離を置いて対峙した。
「何をしやがる!」
突然の暴力に男が怒りの声を上げる。
当たり前だ。まだ何もしていないのだから。
男は北の大地で興った新国家の所謂破壊工作員だった。
ガイアベザル帝国亡き後にその支配地と技術を乗っ取り新たな王を立て、他国を侵略し続けていた。
このキルナール王国のズイオウ領にやって来たのも、噂の陸上戦艦や魔導具の技術を盗むのが目的で、あわよくばクランド王を亡き者にして国を乗っ取ろうと計画していた。
この首都は人口が激減して警備も緩くなっている。
男が活躍するには打って付けの場だった。
それが何もしないうちに変な女から攻撃を受けたのだ。
「我が国の敵対者と認定しました。
大人しく制圧されてください」
「何を言う。俺はしがない商人だぞ!」
「語るに落ちましたね。
商人がそんな体術を使うわけないじゃないですか!」
男は一瞬しまったという顔をしてしまった。
どうやら全てお見通しらしい。
ここは一つ逃げるしかないか?
男がそう考えていると、陽菜が攻撃態勢に入った。
「えいっ☆ ふぉとんれーざー」
「ギャーーーーッ!!!!」
陽菜の右腕から光の線が男に向かった。
その光の線は男の両太ももと両腕を貫き行動不能にしていた。
「これ以上抵抗しないでくださいね?」
男は陽菜に引き摺られ城門をくぐることになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
「ご主人様、制圧しましたー♡」
陽菜の右手が男の襟首を掴んでズルズルと引き摺っていた。
男は両ももと両腕を何かで貫かれて行動不能に陥っていた。
【探知】による男の表示は赤、先ほどから反応のあった敵対者その人だった。
「陽菜、敵対者を制圧しろと言ったけど、これは何かな?」
俺は穴の開いた太ももと腕を指差して訊ねた。
「制圧だよ?」
「……。次からはもっと穏便に制圧出来るかな?」
「怪我させちゃダメなの?」
アニメ声で小首を傾げる仕草があざとい。
「取り押さえる程度にして欲しいかな」
「わかった」
あの穴は戦闘用の700番代ゴーレムが装備しているレーザーより高性能な光線兵器で撃った痕だろう。
そういや陽菜の中身は第13ドック謹製のスペシャルゴーレムだった。
なんだか陽菜を野放しにしてはいけない気がして来た。
「俺は何もしていない……。助けてくれ……」
男がか細い弱々しい声で訴えて来る。
でも残念。敵対者であることは【探知】でバレバレだ。
【鑑定】でもガイアラン帝国の工作員って称号が見える。
どうしよう。
牢屋に入れておいても無駄飯食わすだけなんだよな。
そうだ。このまま釈放して、ここの警備の恐ろしさを伝えてもらおう。
「怪我させて悪かったな。
ほれ【ヒール】」
俺は【ヒール】で男を治療してやった。
「だが、君はステータスで工作員だと判明している」
男は魔法で傷が一瞬で癒えたことと、隠蔽したはずの称号がバレていることに驚いていた。
「このまま入国させるわけにはいかない。今後出入り禁止だ。
連れていけ。魔法枷――魔法が使えなくなる――は城壁の外ではずしてやる」
俺は城壁の外へ男を追放するようにと、数少ない警備の人間に命じた。
「陽菜、この程度なら捕まえて事情聴取して釈放だ。
傷つけたり殺したりするのは相手が行動を起こしてからだ」
「わかったー」
本当に理解したのかは疑問だが、陽菜は警備の者について男の後を追った。
まさか男が行動を起こすのを待っているのではあるまいな?
ああ、男が城門の外で処刑されるんじゃないかとビビってるじゃないか……。
周囲への影響小とみなします。
陽菜、制圧行動に入ります」
機械的な感情の籠っていない声で陽菜が呟く。
まるで軍事的な訓練を積んだことがあるような雰囲気を出していた。
アニメ声なのが台無しだが。
陽菜は敵対者と認定された商人風の男の前に一瞬で詰めると、ラリアットのようなかたちで右腕を男の首にかけ引き倒した。
「カハッ」
男は後方に一回転するとゴロゴロと転がって行った。
喉が詰まって変な声が出ている。
しかし、男は後ろに跳んで陽菜の攻撃を軽減させていたようで、直ぐに体制を整えると陽菜に向けて【ファイアボール】の魔法を放った。
それを軽く手で払う陽菜。
男と陽菜は距離を置いて対峙した。
「何をしやがる!」
突然の暴力に男が怒りの声を上げる。
当たり前だ。まだ何もしていないのだから。
男は北の大地で興った新国家の所謂破壊工作員だった。
ガイアベザル帝国亡き後にその支配地と技術を乗っ取り新たな王を立て、他国を侵略し続けていた。
このキルナール王国のズイオウ領にやって来たのも、噂の陸上戦艦や魔導具の技術を盗むのが目的で、あわよくばクランド王を亡き者にして国を乗っ取ろうと計画していた。
この首都は人口が激減して警備も緩くなっている。
男が活躍するには打って付けの場だった。
それが何もしないうちに変な女から攻撃を受けたのだ。
「我が国の敵対者と認定しました。
大人しく制圧されてください」
「何を言う。俺はしがない商人だぞ!」
「語るに落ちましたね。
商人がそんな体術を使うわけないじゃないですか!」
男は一瞬しまったという顔をしてしまった。
どうやら全てお見通しらしい。
ここは一つ逃げるしかないか?
男がそう考えていると、陽菜が攻撃態勢に入った。
「えいっ☆ ふぉとんれーざー」
「ギャーーーーッ!!!!」
陽菜の右腕から光の線が男に向かった。
その光の線は男の両太ももと両腕を貫き行動不能にしていた。
「これ以上抵抗しないでくださいね?」
男は陽菜に引き摺られ城門をくぐることになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
「ご主人様、制圧しましたー♡」
陽菜の右手が男の襟首を掴んでズルズルと引き摺っていた。
男は両ももと両腕を何かで貫かれて行動不能に陥っていた。
【探知】による男の表示は赤、先ほどから反応のあった敵対者その人だった。
「陽菜、敵対者を制圧しろと言ったけど、これは何かな?」
俺は穴の開いた太ももと腕を指差して訊ねた。
「制圧だよ?」
「……。次からはもっと穏便に制圧出来るかな?」
「怪我させちゃダメなの?」
アニメ声で小首を傾げる仕草があざとい。
「取り押さえる程度にして欲しいかな」
「わかった」
あの穴は戦闘用の700番代ゴーレムが装備しているレーザーより高性能な光線兵器で撃った痕だろう。
そういや陽菜の中身は第13ドック謹製のスペシャルゴーレムだった。
なんだか陽菜を野放しにしてはいけない気がして来た。
「俺は何もしていない……。助けてくれ……」
男がか細い弱々しい声で訴えて来る。
でも残念。敵対者であることは【探知】でバレバレだ。
【鑑定】でもガイアラン帝国の工作員って称号が見える。
どうしよう。
牢屋に入れておいても無駄飯食わすだけなんだよな。
そうだ。このまま釈放して、ここの警備の恐ろしさを伝えてもらおう。
「怪我させて悪かったな。
ほれ【ヒール】」
俺は【ヒール】で男を治療してやった。
「だが、君はステータスで工作員だと判明している」
男は魔法で傷が一瞬で癒えたことと、隠蔽したはずの称号がバレていることに驚いていた。
「このまま入国させるわけにはいかない。今後出入り禁止だ。
連れていけ。魔法枷――魔法が使えなくなる――は城壁の外ではずしてやる」
俺は城壁の外へ男を追放するようにと、数少ない警備の人間に命じた。
「陽菜、この程度なら捕まえて事情聴取して釈放だ。
傷つけたり殺したりするのは相手が行動を起こしてからだ」
「わかったー」
本当に理解したのかは疑問だが、陽菜は警備の者について男の後を追った。
まさか男が行動を起こすのを待っているのではあるまいな?
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