48 / 169
第二章 逃亡生活
048 帝国
しおりを挟む
ガイアベザル帝国の一室
「ニムルドが行方不明だと?」
第一宰相ゲッペルは、帝国の秘密兵器が行方不明と聞き、驚きの声を上げた。
陸上戦艦は帝国がここまで勝ち進んで来るのに貢献した大事な秘密兵器だった。
それが行方不明など有り得ない事態だった。
「はい。第五皇子アギト殿下が持ち出したもようです」
あのバカ殿下か。ゲッペルは心の中で毒づいた。
相手がどうしようもないバカでも、公に第五皇子を誹謗すれば不敬罪で自身の首が飛ぶ。
ゲッペルも、それぐらいは当然わきまえていた。
「殿下には困ったものだ。で、行先は何処か?」
「それが潜入工作員から黒髪黒目の男の情報を得たらしく、リーンワース王国との国境を越えた模様でして……」
ゲッペルは頭を抱えた。
知らないところで国際問題になっていたからだ。
「彼の国とは不可侵条約を結んでいる。それを浅はかにも破ってしまったのか……」
しかし、リーンワース王国に越境したのならば、行方不明とはどういうことだ?
ゲッペルは情報担当官に問いかける。
「その後、ニムルドはどうなったのだ? 行方不明とはどういうことか?」
「はい。ミンストル城塞都市までは潜入工作員により所在を確認しております。
その際、アギト殿下はミンストルを砲撃して領主を脅迫しておりまして……」
ゲッペルは開いた口が塞がらなかった。
戦争行為にまで及んでしまっている。
「これはダメかもしれんな」
ゲッペルは思考を巡らす。
今後の相手国の対応、それによる影響、皇帝陛下の不興、あらゆる物を天秤にかけ出した結論は……。
「皇帝陛下にそのままお伝えするしかないな」
「それはどうかと……」
情報担当官は言葉を濁した。
「まだ何かあるのか!」
「ニムルドのシグナルがロストしていまして……。それで行方不明と……。
潜入工作員からもニムルドが魔の森に向かった後、激しい砲撃音が轟き、そして巨大なキノコ雲が上がったと……」
まさか……。黒髪黒目の男となるとガイア帝国の末裔の可能性がある。
もしその男が失われたガイア帝国の遺産を持ち、あのバカが高圧的に接触したとなると……。
返り討ちで死んだか……。そうに違いない。
奴が勝って何らかの成果を得ていたなら、これ見よがしに自慢たらたらで凱旋していることだろう。
それが無いとなると最悪の事態しか思いつかない。
ゲッペルは頭を振ると外交担当官に指示を出した。
「リーンワース王国と接触しろ。
親善航行をしていたニムルドが行方不明だと。
ニムルドには第五皇子アギト殿下が座乗されていると伝えるのだ。
相手からの返答、事の仔細が分かり次第、全て皇帝陛下に報告する」
「今度はリーンワース王国と戦争か……」
ニムルドを失っていることに加えて、敵にはニムルドでさえも破壊出来るような戦力があるとなると……。
帝国でも数少ない陸上戦艦、それが失われ、それを破壊できる兵器を敵が持つ。
最悪の事態だ。さらに皇子が死んだとなると戦わないわけにはいかない。
「厳しい戦いになるな……」
ゲッペルは重い足を引きずりながら皇帝陛下にニムルド行方不明の第一報を伝えに向かった。
当然、未確定情報であるニムルド喪失、アギト戦死など報告出来るはずもなかった。
「ニムルドが行方不明だと?」
第一宰相ゲッペルは、帝国の秘密兵器が行方不明と聞き、驚きの声を上げた。
陸上戦艦は帝国がここまで勝ち進んで来るのに貢献した大事な秘密兵器だった。
それが行方不明など有り得ない事態だった。
「はい。第五皇子アギト殿下が持ち出したもようです」
あのバカ殿下か。ゲッペルは心の中で毒づいた。
相手がどうしようもないバカでも、公に第五皇子を誹謗すれば不敬罪で自身の首が飛ぶ。
ゲッペルも、それぐらいは当然わきまえていた。
「殿下には困ったものだ。で、行先は何処か?」
「それが潜入工作員から黒髪黒目の男の情報を得たらしく、リーンワース王国との国境を越えた模様でして……」
ゲッペルは頭を抱えた。
知らないところで国際問題になっていたからだ。
「彼の国とは不可侵条約を結んでいる。それを浅はかにも破ってしまったのか……」
しかし、リーンワース王国に越境したのならば、行方不明とはどういうことだ?
ゲッペルは情報担当官に問いかける。
「その後、ニムルドはどうなったのだ? 行方不明とはどういうことか?」
「はい。ミンストル城塞都市までは潜入工作員により所在を確認しております。
その際、アギト殿下はミンストルを砲撃して領主を脅迫しておりまして……」
ゲッペルは開いた口が塞がらなかった。
戦争行為にまで及んでしまっている。
「これはダメかもしれんな」
ゲッペルは思考を巡らす。
今後の相手国の対応、それによる影響、皇帝陛下の不興、あらゆる物を天秤にかけ出した結論は……。
「皇帝陛下にそのままお伝えするしかないな」
「それはどうかと……」
情報担当官は言葉を濁した。
「まだ何かあるのか!」
「ニムルドのシグナルがロストしていまして……。それで行方不明と……。
潜入工作員からもニムルドが魔の森に向かった後、激しい砲撃音が轟き、そして巨大なキノコ雲が上がったと……」
まさか……。黒髪黒目の男となるとガイア帝国の末裔の可能性がある。
もしその男が失われたガイア帝国の遺産を持ち、あのバカが高圧的に接触したとなると……。
返り討ちで死んだか……。そうに違いない。
奴が勝って何らかの成果を得ていたなら、これ見よがしに自慢たらたらで凱旋していることだろう。
それが無いとなると最悪の事態しか思いつかない。
ゲッペルは頭を振ると外交担当官に指示を出した。
「リーンワース王国と接触しろ。
親善航行をしていたニムルドが行方不明だと。
ニムルドには第五皇子アギト殿下が座乗されていると伝えるのだ。
相手からの返答、事の仔細が分かり次第、全て皇帝陛下に報告する」
「今度はリーンワース王国と戦争か……」
ニムルドを失っていることに加えて、敵にはニムルドでさえも破壊出来るような戦力があるとなると……。
帝国でも数少ない陸上戦艦、それが失われ、それを破壊できる兵器を敵が持つ。
最悪の事態だ。さらに皇子が死んだとなると戦わないわけにはいかない。
「厳しい戦いになるな……」
ゲッペルは重い足を引きずりながら皇帝陛下にニムルド行方不明の第一報を伝えに向かった。
当然、未確定情報であるニムルド喪失、アギト戦死など報告出来るはずもなかった。
0
お気に入りに追加
813
あなたにおすすめの小説
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
見よう見まねで生産チート
立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します)
ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。
神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。
もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ
楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。
※基本的に主人公視点で進んでいきます。
※趣味作品ですので不定期投稿となります。
コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる