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第二章 逃亡生活
044 新しい生活
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魔の森を逃げ出した俺達は陸上戦艦の甲板上でいつものように自給自足生活をしていた。
だが、移動する農園で生活していく上でいろいろと問題が発生していた。
「ご主人様、牛の体調が良くないです」
ナランによると、牛が体調を崩したらしい。
このままだとせっかく妊娠した母牛が流産してしまうかもしれないそうだ。
「これはストレスだな」
北の帝国の陸上戦艦との闘いと、この移動生活が問題なのかもしれない。
艦内に格納していたとはいえ、あれだけ陸上を砲撃されたのだ。
その音や振動は多大なストレスとなっていただろう。
それにあれから俺は陸上戦艦を昼夜問わず移動させ続けていた。
それも良くないのかもしれない。
元々この陸上戦艦は農園や牧場を乗せたまま動き回るようには造られていないのだから。
「ナラン、牛がストレスと言ってもわからないか……落ち着かない原因に心当たりはないか?」
「景色が凄い勢いで流れているからでしょうか?」
なるほど。
景色を見えなくすればいいのかな。
放牧地の周囲に目隠しの柵か生垣を造ることを検討するか。
「クランド、目が回るにゃ」
ミーナはミーナ自身が体調不良か。
「何か原因はわからないのか?」
ミーナはしばし考えて言う。
「【探知】スキルがおかしくなってクラクラするにゃ」
なるほど。
「ミーナ、【探知】スキルを切れ」
するとミーナがすっきりした顔になる。
「治ったにゃ。クランド、凄いにゃ」
「クランド様、果樹園の木々が悲鳴を上げてます」
ニルに代わって新たに果樹園担当となったシャーロがそう訴えて来た。
元々果樹園担当だったニルはワイバーンが増えたため、そっちにかかりきりになっていてワイバーン専属となっていたのだ。
良く話を訊くと、どうやらエルフであるシャーロが木の精霊と交信して苦情を受けたらしい。
木となるとなんだ? 日光か?
「シャーロ、もう少し詳しく、何が良くないのか精霊に聞いてくれ」
シャーロが目をつぶり精霊と交信しだした。
「日光の方向が逆に動いたり異常なのだそうです」
なるほど。
つまり、陸上戦艦が動くと必然的に乗っている農園が動いて、たまに進路変更しているから問題が発生しているんだな。
1日のうちに太陽の向きがコロコロ変わるのが植物にもストレスだということか。
これは山や街を避けるなど必要なことなので直進だけするわけにはいかない。
これは日中動かないなどしないと解決は無理かな。
「主君、馬が」
馬担当のターニャも馬の不調を訴えに来たのだろう。
「ターニャ、みなまで言うな。謎は解けた」
俺は一呼吸置くと対策を発表した。
「陸上戦艦の移動は夜間のみとする。
おそらく全ての異常は陸上戦艦が動くことによる風景の動きや日光の差し込む向きの変化が原因だ。
移動を夜間のみにすれば景色も見ずに済むし、日光も関係なくなる」
「「「「おおーー!」」」」
「主様、気持ち悪い」
「だんな様、気持ちが悪いです」
サラーナとアイリーンが具合悪そうにやって来た。
どうやら二人とも乗り物酔いらしい。
乗り物酔いはたしか目に映る景色のブレと振動による三半規管の異常がもたらしているはず。
「サラーナ、アイリーン。問題は解決したぞ。
これからは陸上戦艦の運行は夜間のみとする」
この陸上戦艦は地面から浮き上がって進んでいるので、揺れや振動で気持ち悪くなっているわけではないはず。
景色が見えなければ大丈夫だと思いたい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
この世界、街道から離れた場所では、ほとんど人通りがないのが普通だ。
魔の森でも俺たちの農園に客が立ち寄ることなどは皆無だった。
そして【結界魔法】と【隠蔽魔法】をかけておけば遠くに見える艦と農園の姿を気にする者はいないだろう。
俺たちは街道から外れた平原や荒野に陸上戦艦を泊めて昼間はひっそりと過ごすことにした。
この世界の時は24時間制だが、日の登っている時間を12等分した昼の1時間と、日の沈んでいる時間を12等分した夜の1時間では、同じ1時間でも時間の長さが違っていた。
もちろん、夏と冬で昼間の長さが変わるので、毎日の1時間も変化していく。
俺はモバイル端末に表示されているガイア帝国の時計を使っているので、3600秒で1時間という普遍的な長さの1時間で活動している。
この1秒とは、この惑星の自転周期を24時間とした等分により決まっているので、俺が生まれた地球の1秒とは違っているかもしれないが、感覚的には同じように感じている。
この惑星に季節があるのも地軸が傾いているためであり、案外地球にそっくりな惑星なのかもしれなかった。
「夜間にだけ陸上戦艦を動かすには、この世界の昼間と夜を把握しなければならないな。
日が昇ってから天頂まで来るのに6時間という感覚に慣れないと」
これは自動化出来ないものだろうか?
俺はシステムコンソールに訊ねてみた。
「日の出とともに停泊し、日の入りとともに移動を開始することは可能か?」
俺の質問にシステムコンソールは、あっさりと答えを出した。
『我が艦のシステムは、この惑星の動きを完全にトレース可能です。
つまり、現在地における毎日の日の出日の入りの時間から、日食の有無などの気象現象まで簡単に計算が可能です』
つまり、現在地が変わるごとにリアルタイムで暦を編纂出来るということか。
例えば地球でも東京と札幌では日の出日の入りの時間も日食の欠ける状況も変わるのだ、それを簡単に計算で導けるとは、さすが古代の英知の塊だ。
「わかった。この艦の移動を夜間のみにしたい。
出発時間と停泊時間はシステムコンソールに委ねる」
『かしこまりました。
停泊方位は魔の森にあった時の艦首方向で宜しいですね?』
「それで頼む」
どうやら、システムコンソールは、俺たちの会話を逐一聞いているようだ。
魔の森で植物が生えていた状態と同じ方位で艦を泊めてくれるみたいだ。
これで動物のストレスと乗り物酔い対策はどうにかなったと思いたい。
だが、移動する農園で生活していく上でいろいろと問題が発生していた。
「ご主人様、牛の体調が良くないです」
ナランによると、牛が体調を崩したらしい。
このままだとせっかく妊娠した母牛が流産してしまうかもしれないそうだ。
「これはストレスだな」
北の帝国の陸上戦艦との闘いと、この移動生活が問題なのかもしれない。
艦内に格納していたとはいえ、あれだけ陸上を砲撃されたのだ。
その音や振動は多大なストレスとなっていただろう。
それにあれから俺は陸上戦艦を昼夜問わず移動させ続けていた。
それも良くないのかもしれない。
元々この陸上戦艦は農園や牧場を乗せたまま動き回るようには造られていないのだから。
「ナラン、牛がストレスと言ってもわからないか……落ち着かない原因に心当たりはないか?」
「景色が凄い勢いで流れているからでしょうか?」
なるほど。
景色を見えなくすればいいのかな。
放牧地の周囲に目隠しの柵か生垣を造ることを検討するか。
「クランド、目が回るにゃ」
ミーナはミーナ自身が体調不良か。
「何か原因はわからないのか?」
ミーナはしばし考えて言う。
「【探知】スキルがおかしくなってクラクラするにゃ」
なるほど。
「ミーナ、【探知】スキルを切れ」
するとミーナがすっきりした顔になる。
「治ったにゃ。クランド、凄いにゃ」
「クランド様、果樹園の木々が悲鳴を上げてます」
ニルに代わって新たに果樹園担当となったシャーロがそう訴えて来た。
元々果樹園担当だったニルはワイバーンが増えたため、そっちにかかりきりになっていてワイバーン専属となっていたのだ。
良く話を訊くと、どうやらエルフであるシャーロが木の精霊と交信して苦情を受けたらしい。
木となるとなんだ? 日光か?
「シャーロ、もう少し詳しく、何が良くないのか精霊に聞いてくれ」
シャーロが目をつぶり精霊と交信しだした。
「日光の方向が逆に動いたり異常なのだそうです」
なるほど。
つまり、陸上戦艦が動くと必然的に乗っている農園が動いて、たまに進路変更しているから問題が発生しているんだな。
1日のうちに太陽の向きがコロコロ変わるのが植物にもストレスだということか。
これは山や街を避けるなど必要なことなので直進だけするわけにはいかない。
これは日中動かないなどしないと解決は無理かな。
「主君、馬が」
馬担当のターニャも馬の不調を訴えに来たのだろう。
「ターニャ、みなまで言うな。謎は解けた」
俺は一呼吸置くと対策を発表した。
「陸上戦艦の移動は夜間のみとする。
おそらく全ての異常は陸上戦艦が動くことによる風景の動きや日光の差し込む向きの変化が原因だ。
移動を夜間のみにすれば景色も見ずに済むし、日光も関係なくなる」
「「「「おおーー!」」」」
「主様、気持ち悪い」
「だんな様、気持ちが悪いです」
サラーナとアイリーンが具合悪そうにやって来た。
どうやら二人とも乗り物酔いらしい。
乗り物酔いはたしか目に映る景色のブレと振動による三半規管の異常がもたらしているはず。
「サラーナ、アイリーン。問題は解決したぞ。
これからは陸上戦艦の運行は夜間のみとする」
この陸上戦艦は地面から浮き上がって進んでいるので、揺れや振動で気持ち悪くなっているわけではないはず。
景色が見えなければ大丈夫だと思いたい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
この世界、街道から離れた場所では、ほとんど人通りがないのが普通だ。
魔の森でも俺たちの農園に客が立ち寄ることなどは皆無だった。
そして【結界魔法】と【隠蔽魔法】をかけておけば遠くに見える艦と農園の姿を気にする者はいないだろう。
俺たちは街道から外れた平原や荒野に陸上戦艦を泊めて昼間はひっそりと過ごすことにした。
この世界の時は24時間制だが、日の登っている時間を12等分した昼の1時間と、日の沈んでいる時間を12等分した夜の1時間では、同じ1時間でも時間の長さが違っていた。
もちろん、夏と冬で昼間の長さが変わるので、毎日の1時間も変化していく。
俺はモバイル端末に表示されているガイア帝国の時計を使っているので、3600秒で1時間という普遍的な長さの1時間で活動している。
この1秒とは、この惑星の自転周期を24時間とした等分により決まっているので、俺が生まれた地球の1秒とは違っているかもしれないが、感覚的には同じように感じている。
この惑星に季節があるのも地軸が傾いているためであり、案外地球にそっくりな惑星なのかもしれなかった。
「夜間にだけ陸上戦艦を動かすには、この世界の昼間と夜を把握しなければならないな。
日が昇ってから天頂まで来るのに6時間という感覚に慣れないと」
これは自動化出来ないものだろうか?
俺はシステムコンソールに訊ねてみた。
「日の出とともに停泊し、日の入りとともに移動を開始することは可能か?」
俺の質問にシステムコンソールは、あっさりと答えを出した。
『我が艦のシステムは、この惑星の動きを完全にトレース可能です。
つまり、現在地における毎日の日の出日の入りの時間から、日食の有無などの気象現象まで簡単に計算が可能です』
つまり、現在地が変わるごとにリアルタイムで暦を編纂出来るということか。
例えば地球でも東京と札幌では日の出日の入りの時間も日食の欠ける状況も変わるのだ、それを簡単に計算で導けるとは、さすが古代の英知の塊だ。
「わかった。この艦の移動を夜間のみにしたい。
出発時間と停泊時間はシステムコンソールに委ねる」
『かしこまりました。
停泊方位は魔の森にあった時の艦首方向で宜しいですね?』
「それで頼む」
どうやら、システムコンソールは、俺たちの会話を逐一聞いているようだ。
魔の森で植物が生えていた状態と同じ方位で艦を泊めてくれるみたいだ。
これで動物のストレスと乗り物酔い対策はどうにかなったと思いたい。
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