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第一章 異世界スローライフ?

028 修羅場?

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「うわーん。どうしてよ!」

 農場に着くとサラーナが大泣きした。

「ごめん、サラーナ。また女性ひとを増やしちゃって」

 俺の言葉に、サラーナは増えた人数を再確認して、また泣き出した。
ちなみに今回買った三人の身体情報はこれ。
アイリーン:人 16歳 金色の腰までのストレートヘア 碧眼 白肌 162cm Cカップ
シャーロ:エルフ ??歳(見た目18歳) 金色の背中までのストレートヘア 翡翠眼 白肌 163cm Cカップ
ミーナ:獣人(豹) 20歳 黒色のショートヘア 黒眼 濃い褐色肌 170cm Dカップ

「違う! それもあるけど。その人に着せたワンピースはわらわのお気に入りだったんだぞ!」

「そっちかよ!」

 アイリーン、シャーロ、ミーナの三人には、今日買い物をして手に入れたばかりの洋服や靴をあてがっていた。
オークションが終わった時間では、もう洋品店が開いていなかったのだ。
昼間買い物をした全ての荷物は俺がインベントリに収納していた。
なので必要に迫られて彼女たちに着せてしまったのだ。
いや、いつまでも奴隷服に裸足ではいられないから、必要な措置だったと確信している。

 ただそれは、農場で待っていた五人の誰かが自分のために買ったものだったわけだ。
サイズ的に偏ったのか、たぶんサラーナの服が一番人気だった。
俺は彼女たちになるべく新品の服を買ってあげている。
それがいきなり中古になったということだ。しかもサラーナのお気に入りが。

「わかった。わかった。また直ぐに買ってやるから。
オークションで滅茶苦茶儲かったんだぞ。160億Gだぞ。
そうだ、今度ミンストルに家を買おう。そこに泊まって買い物三昧だ」

「約束だからね?」

 サラーナの機嫌が直った。
女性が増えたことは気にしていないようだ。
さすが放牧民、一夫多妻に理解があって助かる。
いや、まだ誰も妻にしてないんだけどね。

「主君、そちらはルナトーク王国第一王女のアイリーン殿とお見受けする」

 ターニャが余計なことに気付いた。
彼女も王族の元護衛だから、外交で知った他国の姫君の顔を覚えていたのだろう。

「格で言えば、我がキルト族の王国よりルナトーク王国の方が上。
主君、第一夫人はサラーナ様とアイリーン殿、どちらとするつもりか」

 また面倒なことを。またサラーナが泣き出した。
それにサラーナを妻にした気はまだ・・ないし、アイリーンも結婚相手じゃないんだからね?

「うわーん。どうせわらわは安売り姫。アイリーン様はいくらで買って来たのよ!」

「えーと、10サラーナだったかな? 本当の売値は100サラーナだったけど」

 サラーナが500万Gだから、10サラーナは5千万G、100サラーナは5億Gということだ。

「うわーん。あるじ様のばかぁ!」

 からかいすぎたか。サラーナが走って行ってしまった。

「サラーナごめん。冗談だからな」

 俺はサラーナの背に謝罪を投げかける。価格は事実だけどな。

「申し訳ございません。ご主人様。わたくしは第二夫人で構いません」

 アイリーンが一歩引いた発言をする。
いや、嫁にしようと連れて来たわけじゃないぞ?

「ターニャはいいの? 第三夫人で」

 サラーナが尋ねる。機嫌を直して戻って来たのだ。
ちょっと待て、ターニャも嫁になる気なのか?

「主君、私はサラーナ様さえご寵愛下されば妾でも構いません。
そこのエルフを第三夫人にするのも良いでしょう」

 勝手に話が決まって行き俺は焦る。

「ちょっと待って、誰も嫁にしようなんて思ってないぞ。
アイリーンはちょっとした事情があって仕方なく買ったんだよ。
シャーロは種族特性を見込んで畑を任せようと思ったからだし、ミーナは護衛役が足りないと思っていたからだし」

「ん。皆、性奴隷契約になってる」

 ニルが爆弾発言を放り込む。
首輪の奴隷紋で気付いたな。ニルめ細かい。
またダンキンが気を利かせたようだな。

「妻になってくれればいいなと思ってるけど、まだ恋人にもなれてないじゃないか!」

 俺は正直な気持ちをぶちまけた。実際に誰にも手を出していないんだからね。

「旦那様、私たちは皆、好きで旦那様の側にいるのですよ?」

「そうですよ。ご主人様。私達はご主人様が大好きなのです」

 アリマとナランが告白する。良い娘達だ。

「主君。我も好意を持っている。特にサラーナ様はベタ惚れだぞ。
新しい方たちはどうか知らないが……」

 ターニャが新人達に覚悟を示せと促す。

わたくしは、ご主人様に右腕の部位欠損と顔の傷を治していただきました。
この御恩は生涯身を捧げるに値します。どうかわたくしも末席にお加えください」

 アイリーンが三つ指を付いてお辞儀をする。
俺の妻になる気満々のようだ。

「私も好意的かな? 精霊がクランド様を良い人だって言ってます」

「ミーニャも嫌いじゃにゃいにゃ。クランドは良い匂いがするにゃ」

 こんな短い期間なのに、三人も俺に好意を持ってくれているようだ。

「ごめん。俺にはまだ覚悟が決まってないんだ」

 鈍感系主人公の俺でも、ここまで好意を示した貰ったら、気付かないわけにはいかない。
だが、その好意がダンキンによって付加された性奴隷契約によるものだったとしたら、俺は彼女たちに申し訳が立たない。

 ターニャが勝手に仕切りだした。
俺にはもう口を出すいとまもなかった。

「主君は近いうちに表に出て名をあげるだろう。
そのとき、夫人である王家の姫君を前面に出すことで、対外的に権威を示さねばならん。
よって第一夫人はアイリーン殿にするべきだ。
続けて第二夫人はサラーナ様、第三夫人にシャーロ。
我は護衛ゆえ第四夫人となる。
同列の護衛であるミーニャ、すまんミーナは第五夫人だ。
次の第六夫人が家事を取り仕切るアリマ。
第七夫人は年齢順でナラン。第八夫人が最年少のニルでどうだ」

 元々彼女たちの中での決まっていた序列に新人三人が加わった感じだ。

「サラーナ様もよろしいか?」

「それが一番だってわかるから仕方ない」

 サラーナも元一国の姫だ。対外的な権威を言われれば引かざるを得ない。

「皆もよろしいか?」

 ターニャが各々に確認をとる。
誰からも異論は出なかった。俺には異を唱える権限もない。
皆が皆、自らの意志で嫁になってくれると言う。ありがたいことだ。
だが、俺には一つ試さなければならないことがあった。
それは隷属契約を解除しても彼女たちは同じように好意を持ってくれるのかだ。
俺はそっと隷属契約の魔法を解除してみた。
この世界の国際法では違反となる違法行為だ。
だが、彼女たちの態度は全く変わらなかった。
良かった。俺は本気で愛されていたんだ。
だが、奴隷からの解放は奴隷商でやらないとならないと法で決まっている。
俺は断腸の思いで隷属契約魔法をかけ直した。

 この後、アイリーンは俺を”あなた”と呼ぶようにターニャに改めさせられた。
だが、恐れ多いと”あなた様”に落ち着いた。
ミーナが「主君」を言えなくて、クランド呼び捨てを止められなかったのには困ったもんだ。

 こうして嫁候補?三人が増えた俺の農場は、まったりのんびり生活が続いていく。はずだった。
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