ここ掘れわんわんから始まる異世界生活―陸上戦艦なにそれ?―

北京犬(英)

文字の大きさ
上 下
25 / 169
第一章 異世界スローライフ?

025 オークション1

しおりを挟む
 ミンストル城塞都市は交通の要衝だ。
あらゆる物資がこの街に集まり、また方々へと散っていく。
そのため、ここに集まる希少な商品を捌くために、王国で一・二を争う規模のオークションが開催されていた。

 一時間ほど買い物を続けていると、ピン子がニルの上空に飛んで来た。
空荷状態なので、最高速で駆け付けたようだ。
ニルがピン子を呼んだ方法は、笛だった。
人には聞こえない高周波の音を遥か彼方のピン子が聞きつけてやって来る。
その笛の音は一つ一つが違っていて、ピン子は自分が呼ばれたと解かるのだ。
俺たちは西門を出てワイバーン厩舎に向かう。
そこでレッドと白のワイバーンを引き取ってターニャとサラーナに託す。

「今日中には戻れるはずだ。ニル、先導よろしくな」

「ん」

「ターニャも農場での護衛を頼む。アリマは食事の用意を。
ナランは家畜をよろしく」

「承知した」「畏まりました」「はい」

「じゃあ、またな」

「ちょっとあるじ様! わらわは?」

 サラーナが膨れている。
いやサラーナ、おまえは俺がいなければ仕事ないじゃん。

「サラーナは俺のベッドを温めとけ」

「もう♡ あるじ様ったら♡」

 俺の冗談をサラーナが本気にする。面倒なのでそのままスルーしておこう。

「じゃあ、気を付けろよ」

 三頭のワイバーンが空高く昇って行き西へと向かった。
一応直接農場の方向には飛ばない。一応偽装工作をしておいた方が良いだろう。

 皆を見送り、城門に戻る。

「なんだ、お前さんだけ戻って来たのか」

 俺がギルドカードを見せて入街料の銅貨1枚を払おうとしたら、衛兵が話しかけて来た。

「ああ、ちょっと別行動でな」

「なら入街料はいらないぞ」

「そうなのか」

 別に銅貨1枚ぐらいはどうってことないのだが、ここの衛兵はしっかり仕事をしているのだな。
今日一日で、いったい何人の人達の通過を見送って来たんだろう?
よく俺が戻って来たとわかったな。
もし衛兵が交代していたら気付かないようなことだろうに。
俺が訝しんでいるのがわかったのか、衛兵が説明する。

「知らなかったのか。
美人五人を連れたチワワを胸に抱く黒髪黒目っぽい男、おまえさん有名人だぞ」

 ああ、俺が悪目立ちしていただけか……。


◇  ◇  ◇  ◇  ◆


 しばらくブラブラして、時間も頃合いなので中央劇場のオークション会場に向かう。
オークションにはギルドを通じてグリーンドラゴンの頭を出品した。
俺はギルドマスターから受け取った出品者のチケットを持って受付に行く。
すると番号のついた立て札を渡された。

「クランド様ですね。この立て札を上げて競りに参加してください」

 どうやら俺も落札に参加して良いみたいだ。

「初めてなのだが、注意事項はあるか?」

「落札後は即時現金またはギルドカードでの決済をお願いします。
お金が足りない場合は落札無効のうえペナルティがあります。
場の空気に飲まれて予算オーバーしないように気を付けてください。
あと、あからさまな吊り上げ行為をしますと命に係わる場合がありますのでお気を付けください」

 落札妨害といった嫌がらせは報復される。そういうことか。

「これが今日出品される商品の目録です。それではお楽しみください」

 俺は係員に促されて会場に入った。
会場はオペラ劇場のような感じだった。
たぶん普段はオペラ劇場そのものなのかもしれない。

「そういや、中央劇場って言っていたな」

 舞台があり、そこへ向かって階段状の客席がある。
客席はボックスシートになっていて各々が独立するようになっている。
中央の一番良い席は貴賓席になっているようだ。

 俺はどうやら準貴賓扱いらしく中央前方やや右の席に案内された。
ボックスシートの飾りからして良い席なのは間違いないだろう。

 暇なので出品目録に目を通す。
最初は例のクレアが言っていた風と火の複合魔法が付与出来る属性石だ。
80万Gからのスタートだとか。
そして急遽出品の決まった水と風の複合魔法が付与出来る属性石が、追記で目録に追加されている。
これ俺の出品なんだけどね。
ギルドが出品した本日の目玉の価値が吹っ飛んでしまってすみません。
これが800万Gからのスタート。
ちょっと魔力を込めて【クリーン】の属性石やつとイメージして念じれば簡単に創れてしまうあの属性石がですよ。
確かに無に近い状態から創造しているのでMPは使う。
それも直ぐに回復してしまう量なのだ。
まさに息を吐くように創れるんだぞ?
それが800万Gからとか経済観念が崩壊する。

 そういえば例の光と聖の属性石だが、部位欠損を治せる【リカバー】が付与出来たよ。
俺自身は直接【リカバー】を唱えればいいから要らないんだけど、サラーナ達に渡すには丁度良い魔道具になっている。
これを出品したらいくらになるんだろうか。
あ、サラーナ達が持っているとわかったら、形振り構わず奪いに来るかもしれないな。
人の欲ほど危ないものはないから人前で使うなと言い含めておこう。
 
 続けて良くわからない魔導具と美術品が続き、奴隷コーナーの後、魔物素材が並んでいる。
魔物素材の目玉が追加出品されたグリーンドラゴンの頭部。
100億Gからって正気ですか?
確かに頭部には牙とか角とか希少な素材が盛りだくさんだけど……。
いや、鱗1枚が1億ならそんなもんか……。

 そんな感じで暇つぶしをしていると、俺のボックスシートに奴隷商のダンキンが挨拶に来た。

「これはこれは、クランド様、本日は何をご所望で?」

「いや、今日は出品と見学だ」

「ほう、出品ですか」

 ダンキンの目が光る。

「となると、あの追加出品の主は……」

「まあ、そこは内緒だな」

 ダンキンは訳知り顔で頷くと自分の出品の話をしだした。

「私共は奴隷を出させていただいております。
その亡国の姫君というのが目玉になっております」

 ダンキンが目録を指さす。
目録によると、”北の帝国に滅ぼされたあの国の姫君”とある。
俺はこの世界の情勢に疎いからわからないが、”あの国”で通じるらしい。
開始価格は5億Gからか。
そういやサラーナは言語の壁のせいで姫君だとは気づかれていなかったんだよな……。
まさか姉妹なんてことはないよね?

「この姫って放牧民の国の姫じゃないよね?」

「クランド様が購入された放牧民と同じルートで入って来ましたが、こちらは言葉も通じる"あの国”のお方です」

「落札価格が開始価格時点で予算オーバーだな。残念」

 俺が諦めの言葉を吐くと、ダンキンが畳みかけて来た。

「何をおっしゃります。あの品の落札価格は少なくとも100億G。
最後に清算すれば余裕でしょう」

 あ、ダンキン。グリーンドラゴンがやっぱり俺の出品だってわかってたんだ。

「まずは見てから考えとくよ」

「ご期待に添えますかと愚考いたします」

 そう言うとダンキンは去っていった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

見よう見まねで生産チート

立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します) ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。 神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。 もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ 楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。 ※基本的に主人公視点で進んでいきます。 ※趣味作品ですので不定期投稿となります。 コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...