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愛しくて、守りたい人 ②
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「ああ、わかったわ! あなたも仲間なのね。そうよね、〝人殺し〟は憎いわよね。私の主人は、あの人に殺され――」
「白哉先生は、人殺しなんかじゃない……」
『仲間』と言われ、杏依の中に怒りが芽生えた。
白哉はそんな人じゃない。自らを犠牲にして執刀し続ける、優しすぎるお医者さんだ。
小声だったが、出した声は震えていた。思わず左拳を握り締め、目の前の彼女を睨む。
彼女は杏依の顔を見て、黙ってしまった。杏依は耐えられず、叫んだ。
「白哉先生は人殺しなんかじゃありません! 私は彼に助けられました。ピアノは辞めなきゃいけなくなったけど、命を助けてくれたのは間違いなく彼で――」
すると、彼女は心底恨めしそうな顔でこちらを睨んだ。
「腕がないからってチヤホヤされて、うまく行ったんだからあなたは良いわよね。私は主人が亡くなってから、どれだけ一人で大変な目にあってきたか。私の苦労も、あなたみたいな成功者には分からないわよね!」
彼女がこちらに走ってくる。その腕が動いた。
右手に握られていた何かが、玄関の明かりに照らされてギラリと輝く。
ナイフだ、と気づいた時には、振り落とされていた。思わずぎゅっと目をつぶる。
死ぬ!
けれど、いつまでもその衝撃は来ない。そっと目を開ける。
見えたのは、杏依を庇うように包み込む、大きな左腕。ナイフが刺さり、血が垂れている。
「いってぇ……」
白哉、先生……?
驚きすぎて声が出ない。
見上げると、苦しそうに顔を歪める、愛しい人の顔があった。
視線を動かせば、犯人は腰を抜かして座り込み、青ざめた顔で固まっている。
「私は……私は悪くない! 悪いのは、主人を殺したあなたよ!」
ヒステリックに叫んだ彼女は、そのまま顔を覆って泣き崩れしまった。
「悪いのは俺だけだ。彼女を巻き込むのは、筋違いだろ」
苦し気に、それでも自分を守るために呟かれた白哉の声に、杏依の目頭が熱くなる。
「く……っ」
「白哉先生!」
白哉は腕を抑えたまま倒れ込む。杏依は慌てて、警察と消防に通報した。
「白哉先生は、人殺しなんかじゃない……」
『仲間』と言われ、杏依の中に怒りが芽生えた。
白哉はそんな人じゃない。自らを犠牲にして執刀し続ける、優しすぎるお医者さんだ。
小声だったが、出した声は震えていた。思わず左拳を握り締め、目の前の彼女を睨む。
彼女は杏依の顔を見て、黙ってしまった。杏依は耐えられず、叫んだ。
「白哉先生は人殺しなんかじゃありません! 私は彼に助けられました。ピアノは辞めなきゃいけなくなったけど、命を助けてくれたのは間違いなく彼で――」
すると、彼女は心底恨めしそうな顔でこちらを睨んだ。
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彼女がこちらに走ってくる。その腕が動いた。
右手に握られていた何かが、玄関の明かりに照らされてギラリと輝く。
ナイフだ、と気づいた時には、振り落とされていた。思わずぎゅっと目をつぶる。
死ぬ!
けれど、いつまでもその衝撃は来ない。そっと目を開ける。
見えたのは、杏依を庇うように包み込む、大きな左腕。ナイフが刺さり、血が垂れている。
「いってぇ……」
白哉、先生……?
驚きすぎて声が出ない。
見上げると、苦しそうに顔を歪める、愛しい人の顔があった。
視線を動かせば、犯人は腰を抜かして座り込み、青ざめた顔で固まっている。
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「く……っ」
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