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第一部 始動
第18話 疑心暗鬼の会議
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――――――――――――――――
残り時間――9時間34分
残りデストラップ――9個
残り生存者――10名
死亡者――2名
重体によるゲーム参加不能者――1名
――――――――――――――――
スオウたち三人が五階のホールに戻ってくると、さっそく円城が近寄ってきた。
「どうでした?」
「さっき円城さんが言った通り、九鬼のオッサンは確かに亡くなっていた。ただ、手にはこの薬をしっかり握っていたよ」
瓜生が手にした薬の箱を円城に見せた。
「それじゃ、ミネさんは助かる――」
「いや、これは完全に治す薬じゃないんだ。あくまでも症状を緩和させるだけの非常用の薬なんだ。まあ、とにかくバアさんにこの薬を使ってみよう」
瓜生がソファに横たわるミネの元に歩いていく。ミネのそばにいた愛莉が心配そうな表情でミネを見ている。
「バアさんはどんな感じだ?」
「ずっと苦しそうな息遣いのまま変わらずって感じ」
「分かった。これである程度で症状が軽くなってくれればいいが」
「ねえ、その使い方知ってるの?」
「医療関係の仕事に就いたことはないが、この程度の知識ならもってる。安心してくれ」
瓜生が薬の箱を開いて注射器を取り出すと、ミネの太ももに突き刺した。
「これでもう大丈夫なの?」
そばに来てミネの様子を見ていたイツカが、不安げにミネの顔色をうかがっている。薬の効果がさっそくあらわれたのか、ミネの呼吸が先ほどまでと比べて、若干落ち着きを取り戻したようにみえる。
「ああ、これで大丈夫のはずだ。もっとも俺たちにはこれ以上出来ることはないけどな。あとはバアさん自身の体力にかけるしかない」
「このゲームが終わるまでミネさんの体力はもちそう?」
「そればっかりは俺でも分からない。ゲーム終了まであと10時間を切っているから、そこまでなにがなんでも生きててもらうしかないさ」
瓜生はそれでミネの話は終わりだという風にホールの中央に戻っていく。
「さて、バアさんのアナフィラキシーショックは応急の処置を施したし、ここらで一度、作戦会議でも開こうと思うんだが、みんなはどう思う?」
瓜生が作戦会議の話を切り出した。あらかじめそのことを知っていたスオウは、冷静に他の参加者の様子を観察していた。この中にあるいは九鬼を階段から突き落とした犯人がいるかもしれないのだ。
「なんだそれ? 急に作戦会議なんておかしくねえか?」
さっそくヒロキが噛み付いてきた。
「おまえだって今のこの状況が危険だってことぐらいは分かってるだろう」
「そんなことおめえに言われなくたって分かってるさ! それと作戦会議がどうつながるか聞いてんだよ!」
「だから、ここで一度みんなで話し合って、デストラップに対して万全の体制を整えるんだよ。これ以上犠牲者を増やさない為にもな」
「けっ、罠にかかった奴はうかつだっただけだろうが」
「だとしても次のデストラップの犠牲者がお前じゃないとは言い切れないんだぜ。それでもいいのか?」
「オレは自分で自分を守れるからお構いなく」
「そこまで言うのならば好きにすればいいさ。――それじゃ、他の参加者はどうだ?」
瓜生がヒロキ以外の参加者に目を向けた。
「僕は瓜生さんの意見に賛成します。しっかり作戦会議をして、これからの行動をみんなで考えた方がいいと思います」
五十嵐が最初に瓜生の案に賛成票を投じた。
「私も作戦会議をした方がいいと思う。短時間でいろいろ起こりすぎて、自分では気付いていなくとも、内心では浮き足立っているだろうからな。一度冷静になる必要がある」
円城が五十嵐に続いた。
「アタシも賛成よ。じっと前兆を待っているぐらいなら、少しは行動した方がマシだと思うし」
愛莉が賛成に手を上げた。
「これで三人は作戦会議に賛成ということだな。残りは――」
瓜生が壁際でお腹をさすっている薫子に視線をやった。薫子は話し合いよりも自分のお腹が気になるようで、瓜生の視線に気付いていない。
「久里浜さんはどう思いますか?」
瓜生に代わってスオウは薫子に声をかけた。薫子の様子が最前から少し気になっていたのだ。薫子は情緒不安定ともいえるくらいに怯えている。
「えっ? あの……なんですか? 私のこと、呼びました……?」
どうやら話を聞いていなかったらしい。
「みんなでこれからどうしたらいいか、作戦会議をしようかという話をしていたんだけど」
「ああ……それなら、みなさんにお任せします」
答えになっていない答え方を薫子はした。
「分かりました。反対ではないということですね」
「あ、はい、そうかな……」
最後までこちらの話をちゃんと聞いているのかどうか分からない態度の薫子だった。話よりも、自分のお腹のことが気になっているらしい。個人的なことになるので聞こうかどうか迷ったが、これから重要な会議をするのだから、一応確認の意味も込めて聞いてみることにした。
「あの、さっきから随分お腹を気にしているみたいですが、もしかして体調がすぐれな――」
「いえ、そんなことありません! 私のことは構わないでくださいっ!」
「あっ、いや、そいうつもりじゃなかったんですが……すいませんでした」
突然、金切り声で張り上げた薫子の反応に、スオウは何がなんだか分からなかったが、とりあえず謝っておいた。
「スオウくん、ありがとう。薫子さんの意見は分かった。――ところで、君たちは二人は俺の案に賛成でいいんだろ?」
「はい、おれはもちろん瓜生さんの案に賛成です」
「わたしも賛成に一票入れます」
瓜生の問いかけにスオウとイツカは答えた。
「これで賛成が六票だな――」
これで意思表明をしていないのは、ヒロトと瑛斗の二人だけになった。
残り時間――9時間34分
残りデストラップ――9個
残り生存者――10名
死亡者――2名
重体によるゲーム参加不能者――1名
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スオウたち三人が五階のホールに戻ってくると、さっそく円城が近寄ってきた。
「どうでした?」
「さっき円城さんが言った通り、九鬼のオッサンは確かに亡くなっていた。ただ、手にはこの薬をしっかり握っていたよ」
瓜生が手にした薬の箱を円城に見せた。
「それじゃ、ミネさんは助かる――」
「いや、これは完全に治す薬じゃないんだ。あくまでも症状を緩和させるだけの非常用の薬なんだ。まあ、とにかくバアさんにこの薬を使ってみよう」
瓜生がソファに横たわるミネの元に歩いていく。ミネのそばにいた愛莉が心配そうな表情でミネを見ている。
「バアさんはどんな感じだ?」
「ずっと苦しそうな息遣いのまま変わらずって感じ」
「分かった。これである程度で症状が軽くなってくれればいいが」
「ねえ、その使い方知ってるの?」
「医療関係の仕事に就いたことはないが、この程度の知識ならもってる。安心してくれ」
瓜生が薬の箱を開いて注射器を取り出すと、ミネの太ももに突き刺した。
「これでもう大丈夫なの?」
そばに来てミネの様子を見ていたイツカが、不安げにミネの顔色をうかがっている。薬の効果がさっそくあらわれたのか、ミネの呼吸が先ほどまでと比べて、若干落ち着きを取り戻したようにみえる。
「ああ、これで大丈夫のはずだ。もっとも俺たちにはこれ以上出来ることはないけどな。あとはバアさん自身の体力にかけるしかない」
「このゲームが終わるまでミネさんの体力はもちそう?」
「そればっかりは俺でも分からない。ゲーム終了まであと10時間を切っているから、そこまでなにがなんでも生きててもらうしかないさ」
瓜生はそれでミネの話は終わりだという風にホールの中央に戻っていく。
「さて、バアさんのアナフィラキシーショックは応急の処置を施したし、ここらで一度、作戦会議でも開こうと思うんだが、みんなはどう思う?」
瓜生が作戦会議の話を切り出した。あらかじめそのことを知っていたスオウは、冷静に他の参加者の様子を観察していた。この中にあるいは九鬼を階段から突き落とした犯人がいるかもしれないのだ。
「なんだそれ? 急に作戦会議なんておかしくねえか?」
さっそくヒロキが噛み付いてきた。
「おまえだって今のこの状況が危険だってことぐらいは分かってるだろう」
「そんなことおめえに言われなくたって分かってるさ! それと作戦会議がどうつながるか聞いてんだよ!」
「だから、ここで一度みんなで話し合って、デストラップに対して万全の体制を整えるんだよ。これ以上犠牲者を増やさない為にもな」
「けっ、罠にかかった奴はうかつだっただけだろうが」
「だとしても次のデストラップの犠牲者がお前じゃないとは言い切れないんだぜ。それでもいいのか?」
「オレは自分で自分を守れるからお構いなく」
「そこまで言うのならば好きにすればいいさ。――それじゃ、他の参加者はどうだ?」
瓜生がヒロキ以外の参加者に目を向けた。
「僕は瓜生さんの意見に賛成します。しっかり作戦会議をして、これからの行動をみんなで考えた方がいいと思います」
五十嵐が最初に瓜生の案に賛成票を投じた。
「私も作戦会議をした方がいいと思う。短時間でいろいろ起こりすぎて、自分では気付いていなくとも、内心では浮き足立っているだろうからな。一度冷静になる必要がある」
円城が五十嵐に続いた。
「アタシも賛成よ。じっと前兆を待っているぐらいなら、少しは行動した方がマシだと思うし」
愛莉が賛成に手を上げた。
「これで三人は作戦会議に賛成ということだな。残りは――」
瓜生が壁際でお腹をさすっている薫子に視線をやった。薫子は話し合いよりも自分のお腹が気になるようで、瓜生の視線に気付いていない。
「久里浜さんはどう思いますか?」
瓜生に代わってスオウは薫子に声をかけた。薫子の様子が最前から少し気になっていたのだ。薫子は情緒不安定ともいえるくらいに怯えている。
「えっ? あの……なんですか? 私のこと、呼びました……?」
どうやら話を聞いていなかったらしい。
「みんなでこれからどうしたらいいか、作戦会議をしようかという話をしていたんだけど」
「ああ……それなら、みなさんにお任せします」
答えになっていない答え方を薫子はした。
「分かりました。反対ではないということですね」
「あ、はい、そうかな……」
最後までこちらの話をちゃんと聞いているのかどうか分からない態度の薫子だった。話よりも、自分のお腹のことが気になっているらしい。個人的なことになるので聞こうかどうか迷ったが、これから重要な会議をするのだから、一応確認の意味も込めて聞いてみることにした。
「あの、さっきから随分お腹を気にしているみたいですが、もしかして体調がすぐれな――」
「いえ、そんなことありません! 私のことは構わないでくださいっ!」
「あっ、いや、そいうつもりじゃなかったんですが……すいませんでした」
突然、金切り声で張り上げた薫子の反応に、スオウは何がなんだか分からなかったが、とりあえず謝っておいた。
「スオウくん、ありがとう。薫子さんの意見は分かった。――ところで、君たちは二人は俺の案に賛成でいいんだろ?」
「はい、おれはもちろん瓜生さんの案に賛成です」
「わたしも賛成に一票入れます」
瓜生の問いかけにスオウとイツカは答えた。
「これで賛成が六票だな――」
これで意思表明をしていないのは、ヒロトと瑛斗の二人だけになった。
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