デス13ゲーム ~死神に命を懸けた者たち~

鷹司

文字の大きさ
上 下
20 / 60
第一部 始動

第18話  疑心暗鬼の会議

しおりを挟む
 ――――――――――――――――

 残り時間――9時間34分  

 残りデストラップ――9個

 残り生存者――10名     
  
 死亡者――2名   

 重体によるゲーム参加不能者――1名

 ――――――――――――――――


 スオウたち三人が五階のホールに戻ってくると、さっそく円城が近寄ってきた。

「どうでした?」

「さっき円城さんが言った通り、九鬼のオッサンは確かに亡くなっていた。ただ、手にはこの薬をしっかり握っていたよ」

 瓜生が手にした薬の箱を円城に見せた。  

「それじゃ、ミネさんは助かる――」

「いや、これは完全に治す薬じゃないんだ。あくまでも症状を緩和させるだけの非常用の薬なんだ。まあ、とにかくバアさんにこの薬を使ってみよう」

 瓜生がソファに横たわるミネの元に歩いていく。ミネのそばにいた愛莉が心配そうな表情でミネを見ている。

「バアさんはどんな感じだ?」

「ずっと苦しそうな息遣いのまま変わらずって感じ」

「分かった。これである程度で症状が軽くなってくれればいいが」

「ねえ、その使い方知ってるの?」

「医療関係の仕事に就いたことはないが、この程度の知識ならもってる。安心してくれ」

 瓜生が薬の箱を開いて注射器を取り出すと、ミネの太ももに突き刺した。

「これでもう大丈夫なの?」

 そばに来てミネの様子を見ていたイツカが、不安げにミネの顔色をうかがっている。薬の効果がさっそくあらわれたのか、ミネの呼吸が先ほどまでと比べて、若干落ち着きを取り戻したようにみえる。

「ああ、これで大丈夫のはずだ。もっとも俺たちにはこれ以上出来ることはないけどな。あとはバアさん自身の体力にかけるしかない」

「このゲームが終わるまでミネさんの体力はもちそう?」

「そればっかりは俺でも分からない。ゲーム終了まであと10時間を切っているから、そこまでなにがなんでも生きててもらうしかないさ」

 瓜生はそれでミネの話は終わりだという風にホールの中央に戻っていく。

「さて、バアさんのアナフィラキシーショックは応急の処置を施したし、ここらで一度、作戦会議でも開こうと思うんだが、みんなはどう思う?」

 瓜生が作戦会議の話を切り出した。あらかじめそのことを知っていたスオウは、冷静に他の参加者の様子を観察していた。この中にあるいは九鬼を階段から突き落とした犯人がいるかもしれないのだ。

「なんだそれ? 急に作戦会議なんておかしくねえか?」

 さっそくヒロキが噛み付いてきた。

「おまえだって今のこの状況が危険だってことぐらいは分かってるだろう」

「そんなことおめえに言われなくたって分かってるさ! それと作戦会議がどうつながるか聞いてんだよ!」

「だから、ここで一度みんなで話し合って、デストラップに対して万全の体制を整えるんだよ。これ以上犠牲者を増やさない為にもな」

「けっ、罠にかかった奴はうかつだっただけだろうが」

「だとしても次のデストラップの犠牲者がお前じゃないとは言い切れないんだぜ。それでもいいのか?」

「オレは自分で自分を守れるからお構いなく」

「そこまで言うのならば好きにすればいいさ。――それじゃ、他の参加者はどうだ?」

 瓜生がヒロキ以外の参加者に目を向けた。

「僕は瓜生さんの意見に賛成します。しっかり作戦会議をして、これからの行動をみんなで考えた方がいいと思います」

 五十嵐が最初に瓜生の案に賛成票を投じた。

「私も作戦会議をした方がいいと思う。短時間でいろいろ起こりすぎて、自分では気付いていなくとも、内心では浮き足立っているだろうからな。一度冷静になる必要がある」

 円城が五十嵐に続いた。

「アタシも賛成よ。じっと前兆を待っているぐらいなら、少しは行動した方がマシだと思うし」

 愛莉が賛成に手を上げた。

「これで三人は作戦会議に賛成ということだな。残りは――」

 瓜生が壁際でお腹をさすっている薫子に視線をやった。薫子は話し合いよりも自分のお腹が気になるようで、瓜生の視線に気付いていない。

「久里浜さんはどう思いますか?」

 瓜生に代わってスオウは薫子に声をかけた。薫子の様子が最前から少し気になっていたのだ。薫子は情緒不安定ともいえるくらいに怯えている。

「えっ? あの……なんですか? 私のこと、呼びました……?」

 どうやら話を聞いていなかったらしい。

「みんなでこれからどうしたらいいか、作戦会議をしようかという話をしていたんだけど」

「ああ……それなら、みなさんにお任せします」

 答えになっていない答え方を薫子はした。

「分かりました。反対ではないということですね」

「あ、はい、そうかな……」

 最後までこちらの話をちゃんと聞いているのかどうか分からない態度の薫子だった。話よりも、自分のお腹のことが気になっているらしい。個人的なことになるので聞こうかどうか迷ったが、これから重要な会議をするのだから、一応確認の意味も込めて聞いてみることにした。

「あの、さっきから随分お腹を気にしているみたいですが、もしかして体調がすぐれな――」

「いえ、そんなことありません! 私のことは構わないでくださいっ!」

「あっ、いや、そいうつもりじゃなかったんですが……すいませんでした」

 突然、金切り声で張り上げた薫子の反応に、スオウは何がなんだか分からなかったが、とりあえず謝っておいた。

「スオウくん、ありがとう。薫子さんの意見は分かった。――ところで、君たちは二人は俺の案に賛成でいいんだろ?」

「はい、おれはもちろん瓜生さんの案に賛成です」

「わたしも賛成に一票入れます」

 瓜生の問いかけにスオウとイツカは答えた。

「これで賛成が六票だな――」

 これで意思表明をしていないのは、ヒロトと瑛斗の二人だけになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

【完結】『霧原村』~少女達の遊戯が幽の地に潜む怪異を招く~

潮ノ海月
ホラー
五月の中旬、昼休中に清水莉子と幸村葵が『こっくりさん』で遊び始めた。俺、月森和也、野風雄二、転校生の神代渉の三人が雑談していると、女子達のキャーという悲鳴が。その翌日から莉子は休み続け、学校中に『こっくりさん』の呪いや祟りの噂が広まる。そのことで和也、斉藤凪紗、雄二、葵、渉の五人が莉子の家を訪れると、彼女の母親は憔悴し、私室いた莉子は憑依された姿になっていた。莉子の家から葵を送り届け、暗い路地を歩く渉は不気味な怪異に遭遇する。それから恐怖の怪奇現象が頻発し、ついに女子達が犠牲に。そして怪異に翻弄されながらも、和也と渉の二人は一つの仮説を立て、思ってもみない結末へ導かれていく。【2025/3/11 完結】

常世の狭間

涼寺みすゞ
ホラー
生を終える時に目にするのが このような光景ならば夢見るように 二つの眼を永遠にとじても いや、夢の中で息絶え、そのまま身が白骨と化しても後悔などありはしない――。 その場所は 辿り着ける者と、そうでない者がいるらしい。 畦道を進むと広がる光景は、人それぞれ。 山の洞窟、あばら家か? それとも絢爛豪華な朱の御殿か? 中で待つのは、人か?幽鬼か? はたまた神か? ご覧候え、 ここは、現し世か? それとも、常世か?

apocalypsis

さくら
ホラー
女子生徒が持ち込んだ一冊の本により、数学教師の斎は非日常へと足を踏み入れる。

182年の人生

山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。 人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。 二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。 (表紙絵/山碕田鶴)  ※2024年11月〜 加筆修正の改稿工事中です。本日「71」まで済。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...