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第二部 ジェノサイド
第32話 スワンソング
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――――――――――――――――
残り時間――4時間02分
残りデストラップ――5個
残り生存者――13名
死亡者――6名
――――――――――――――――
なんとか見失うことなく櫻子のことを追いかけ続けてたどり着いた場所は、園内にある巨大な池だった。池のほとりには『白鳥の湖』と書かれた看板が設置されている。優雅に水面を泳ぐ白鳥のイラストが描かれている。
「あの女、なんでこんなところに来たんだよ!」
ヒカリは看板のイラストを苦々しい目で睨みつけた。足で蹴り付けたい気分だった。
ここにはどうしても『近付きたくない事情』があるのだ。
「とにかく、さっさとあの女を捜し出して生配信を再開させないとな」
櫻子ほどの美貌ならば、生配信の視聴者数がグンと増えることは間違いない。出来れば、櫻子と遺体の映像を一緒に映したいところだが、そう都合良く遺体を見つけることは出来ない。
池の端から木の桟橋が伸びていた。そこに二台のボートが横付けられている。一台は手漕ぎのボート。もう一台は、白鳥の姿を模した足で漕ぐスワンボート。
「あの女、あんなところにいやがったぜ」
今にも手漕ぎボートに乗り込もうとしている櫻子の姿があった。
「ボートになんか乗ってどこに行くつもりだ? 仕方がねえよな、こっちもボートに乗って追いかけるしかねえか」
ヒカリは桟橋に向かって走って行く。ネットの生配信はボートに乗ってから再開すればいい。
ギコギコという櫓を漕ぐ音が聞こえてくる。
「ちぇっ、もう出ちまったか。早く行かねえと追いつけねえな」
ヒカリの心に焦りが生じた。今のヒカリにとっての最優先事項はゲームを進めることではなく、櫻子の映像を生配信して視聴者数を増やすことであった。ここで取り逃がすわけにはいかない。
桟橋に足を踏み入れると、一台だけ残っていたスワンボートに飛び乗った。座席の足元にはペダルが設置されている。このペダルを踏み込んで推進力を生めば、勝手に前に進んでいく。
「体力には自信がねえけど、女に負けるわけはないからな」
櫻子の乗ったボートは視認することが出来る。距離的にはまだそれほど遠くには離れていないということだ。全速力で進めば十分に追いつける距離だった。
「よし。カメラマンが行くまで、そこで待ってろよ!」
ヒカリはペダルを強く踏み込んだ。最初こそ重たかったが、勢いがつくとスムーズにペダルが漕げるようになった。ボートのスピードもそれに伴って増していく。
ヒカリが乗ったスワンボートは薄暗い池の中心へと進んでいった。
「へへへ、これでさらに入金額を稼がせてもらうとするか。出来れば、この池に水死体のひとつでも浮かんでいれば、映像的には最高なんだけどな。さっきの生首はさすがに刺激が強すぎたからな、へへへ」
暗い情熱に突き動かされるようして、ヒカリは我が道を行く。
――――――――――――――――
お面を付けた男は手にしたマップを見ながら、園内の道をゆっくりと歩いていた。焦っている様子は特にない。
「あの2人を見付けたいのは山々だが、他にもまだいろいろありそうだな、今夜は」
その声にはどこか今の状況を楽しんでいる風な感じがある。
「あるいは上手く立ち回れば、あのクズヤクザを嵌めることが出来るかもしれないな。あの男とも、そろそろ潮時だったからな。手を切るにはちょうどいいぜ。あの男に全責任を負わせて、こっちは事件解決の手柄をいただくってもっていければ一番いいんだがな」
お面の男はスーツの脇に手を伸ばした。何かを確認するようにもぞもぞと指先を動かす。
「まったく、『コレ』を持ってきておいて良かったぜ。相手は暴力団の若頭だからな。これくらいの武器は用意している可能性もあるが、腕前はこっちが上だ。撃ったところで相手が暴力団ならば、問題になることはないだろうしな。むしろ社会のゴミを掃除したといって、世間から褒めてもらえるかもしれないな」
お面で表情は一切窺えないが、それが至ってこの男の不気味さを浮かび上がらせているように感じられた。
「さて、2人の犯罪者を追うか、それともヤクザを捜すか。やれやれ、『公僕』ってやつは本当に大変だよな」
足取りは変わらずに、お面の男は園内を歩いて行く。
――――――――――――――――
「れ、れ、玲子さん……。なんで……ここに……き、き、君が、いるんだ……?」
命の危機を救ってくれた女神は慧登にそっと微笑みかけた。
「話は後回しにして、とりあえずここから離れよう」
玲子は慧登の傍に膝を付くと、ヒカリの肩に腕を回した。慧登に立ち上がるように促す。
「ああ、分かったよ……」
慧登は玲子の体に寄りかかるようにして、なんとか立ち上がることが出来た。骨が折れたと思しき肋骨の辺りに激痛があったが、辛うじて歩くことぐらいならば出来そうである。
慧登と玲子の2人は、とりあえず牛頭の遺体から少し離れた場所まで迷宮内を移動することにした。遺体のそばでは精神的に休める気分になれそうになかったのだ。
慧登は顔をしかめながらも、隣の女神の顔をそっと見つめた。これが幻でも夢でもないことは、玲子の体から伝わる温もりで理解できた。
「この辺で少し休もうか」
しばらく歩いたところで、玲子が慧登の体をゆっくりと地面に下ろしてくれた。当たり前のように慧登に膝枕をしてくれる。一瞬前まで地獄にいたのが一変、今は天国にいる気分だった。
「体の痛みの方はどう?」
「君の顔を見たら痛みなんてあっという間に消えたよ、って言いたいところだけど……実際は体中痛くて、痛いところがないくらいだよ……」
慧登は正直に伝えた。ここで格好つけてもしょうがない。却って玲子に負担をかけてしまう結果になるだけである。
「だいぶひどくやられたみたいだね」
「そんなにひどいかな?」
今の状況では、自分で自分の顔は確認出来ない。
「そうね、例えるなら──ヘビー級のボクサーにコテンパンに殴られてもここまでひどくならないかな、っていうくらいひどい顔だよ」
「ははは……それじゃ、せっかくの二枚目が、台無しだよな……」
冗談っぽく返した。今の慧登には玲子を安心させる方法はそれくらいしかない。
「その点は大丈夫よ」
「えっ?」
「だって慧登君、元から二枚目じゃないでしょ」
どうやら口撃力は玲子の方が何枚も上手みたいだ。慧登は体の痛みも一瞬忘れて、思わず笑みを浮かべてしまった。
「まったく、それを言われたら返す言葉がないよ」
「いいじゃない。とにかく、こうして命だけでも助かったんだから」
「そうだね……。本当に玲子さんが助けに来てくれたおかげで助かったよ……。あっ、そうだ。どうして、玲子さんは俺の居場所が分かったの……? この迷宮はかなり大きくて、中も入り組んでいるけど……」
慧登はこの迷宮の怖さを身をもって知っていた。だからこそ、ここぞというタイミングで助けに現われた玲子のことが、奇跡としか思えなかったのである。
「ああ、そのことね。あたしも迷宮の中に入ってからどうやって慧登君のことを捜したらいいのか迷ったんだよね。そのときに、迷宮内から男の怒声が聞こえてきたの。それで、その声の方に向かって走っていったら──」
「俺のいる場所にたどり着いたという訳か……」
「そういうこと」
「なるほどね。これも因果応報っていうのかな……」
慧登はぼそっとつぶやいた。図らずも、牛頭が慧登のスマホの着信音を頼りにして慧登の居場所を突き止めたように、玲子もまた牛頭の大声を聞いて慧登の居場所を探り当てていたのだ。
「それでこれからどうする? みんなのところに戻った方がいいのかな?」
「うん……今はもう少しだけ──」
このままでいたかった。だから、慧登は何も言わずに玲子の顔をじっと見つめ続けた。
「もう、しょうがないなあ。これは特別サービスだからね。普段のあたしなら絶対にしないサービスなんだよ」
玲子はまるで手のかかる弟を優しく見つめる姉のような顔で慧登に微笑みかけると、上から顔を覆いかぶせてきた。そして、赤く腫れてしまった慧登の唇に、そっと自分の唇を重ねてきた。
誰かが言っていた。──危機的状況で落ちた恋は長続きしないと。
脳裏にそんな言葉が思い浮かんだ。でも、だからこそ──。
俺は絶対に玲子さんと一緒にこのゲームをクリアして、この恋を成就させてみせる!
そう心の中で強く誓う慧登であった。
――――――――――――――――
全力でスワンボートを走らせた結果、池の中央付近で櫻子のボートに追いつくことが出来た。二台のボートの距離は、およそ3メートル弱。この距離ならば逃がすことは絶対にない。
「そろそろ生配信を再開するか? それとも先にあの女を捕まえる方がいいか? いや、ひとつ良い案が思い浮かんだぜ」
ヒカリは暗い視線を櫻子のボートに向けた。木で出来たボートは少し力を加えれば、簡単に転覆しそうに見える。
ボートから池に落ちて、溺れ苦しむ櫻子。
頭の中でその状況が容易に想像出来た。
「へへ、こういうのを『水も滴る良い女』って言うのかもしれねえな。あの喪服が水に浸かって体に張り付けば、体のラインがモロ分かりだからな。男性視聴者も大興奮すること間違いなしだぜ!」
ヒカリの心は決まった。いかに視聴者数を増やすか考えた場合、ここでとるべき次の行動は、溺れる櫻子の映像を生配信することだ。
「悪いな。池に逃げたお前が悪いんだぜ。恨むんなら自分の判断ミスを恨みな」
ヒカリはペダルを逆回転させた。自転車では出来ないが、スワンボートならペダルを逆に踏み込むことで後進することが出来る。櫻子とのボートと少し距離をとり、勢いを付けたスワンボートを直接ぶつける作戦だった。
「さあ、転覆ショーの始まり始まり。これが生配信出来ないのが本当に悔しいぜ」
自らの手を使って女性を溺れさせるシーンはさすがに生配信出来ない。生配信しようものなら、いっせいに抗議のコメントが書き込みされてしまうのは目に見えている。もちろん、わざと『炎上』させることで視聴者数を増やす作戦もあるにはあるが、ヒカリは『過去に炎上で痛い目にあっている』ので、今回は櫻子がボートから落ちて、池で溺れているところから生配信することにした。
「距離的はこのくらいでいいな。それじゃ、一発目行くか。これでさっさと転覆してくれたらいいんだけどな」
ヒカリは前方のボートに狙いを定めた。櫻子はこちらの様子を伺っているが、かといって逃げる素振りはみせなかった。ヒカリの出方を見極めているのだろう。
「第二のタイタニック号になりやがれっ!」
ペダルを強く踏み込んで、櫻子の乗るボートに一直線に向かっていく。スピードは上々。加えて、ボートの形はスワンボートの方が絶対的に有利である。スワンボートは全体がカバーで覆われているので、間違ってもヒカリが湖上に投げ出されることはない。二台が衝突したら、先に転覆するのは櫻子のボートであろう。
スワンボートの突進に気付いたのか、櫻子がオールを手にして、急いで水面を漕ぎ始める。しかし、そのスピードは悲しいくらいに遅かった。男と女の体力差が出ている。
「気付くのが遅いんだよっ!」
スワンボートが櫻子のボートの横に激突した。櫻子はオールから手を離して、大きく傾いだボートから投げ出されないように、ボートの縁を必死で握り締めて耐える。
「クソっ! 一発じゃ決められなかったか。次こそ決めてやるから覚悟しなっ!」
ヒカリはスワンボートをまた後進させた。今度はもう少し距離を離して、助走を長くとることにした。
左右に大きく揺れていたボートがようやく正常に戻ると、櫻子が第二撃から逃れようとボートを走らせ始めた。
「スピードなら負けねえぜ!」
ヒカリはスワンボートを前進させた。先ほどよりもスピードはのっている。これなら櫻子のボートを転覆させれそうだ。
スワンボートの舳先が、櫻子のボートにめり込むように衝突した。先ほどの比ではないほど、櫻子の乗るボートが大きく傾いた。水面に対して直角近くまで傾く。ボートに乗っていた櫻子の体が一瞬浮いたように見えた。そして、次の瞬間──。
バシャンッ!
水面に何かを打ち付ける音が上がり、同時に水飛沫が飛び散っていった。
水面に浮かぶボートの上に、人影は見当たらない。
「よし、やったか?」
ヒカリは目を凝らして池を注視する。
ボートの縁に白い手が伸びた。さらにもう一本の手がボートの縁を掴む。そのままジャンプするように勢い良く体を持ち上げてボートに乗り込んだのは、全身びしょ濡れになった櫻子だった。
衝突の衝撃でボートから水中に振り落とされたが、ボートに再乗船したのだ。
「はああ? くそがっ! なんで溺れねえんだよっ! 溺れた方が映像的に興奮出来るんだよっ!」
ヒカリは悔し紛れにスワンボートのハンドルを両手で叩きつけた。いっそうのこと、櫻子のボートに自ら乗り込んで、力尽くで櫻子を池に落とすことも考えたが、それは良案ではないと即座に却下した。ヒカリにとって『池は鬼門』なのだ。下手に動くのはリスクが高すぎる。
「ちぇっ。やっぱりボート自体を転覆させるしかねえのか? 仕方ねえな。もう一度ぶつけるしかねえか」
幸い、櫻子は池に落ちたショックのせいか、まだオールを手にとってボートを進めようという態勢に入っていない。この隙にスワンボートをぶつければ、今度こそ櫻子のボートを転覆、あるいは上手くいけば沈没させることが出来そうだった。
ヒカリはスワンボートを後進させる。
「三度目の正直って言葉もあるからな。これで決めるぜっ!」
ペダルを強く踏み込んだ。スワンボートが前進する。さらに強くペダルを踏み込む。加速されたスワンボートが池を突き進んでいく。
「よしっ! これならいけるぜっ!」
さらに強くペダルを踏み込もうとしたとき、なんの前触れもなく──。
グギュン!
スワンボートの下から異音がした。途端に、ペダルを踏み込む際の抵抗が無くなった。
それが何を意味をしているのか、ヒカリは瞬時に察した。高校時代に自転車通学をしていたヒカリには、馴染みの感覚だったのである。
ペダルのチェーンが外れたのだ!
「クソがっ! あと一息だっていうのによっ!」
意味がないと分かっていながらも、ペダルを踏み込み続けるヒカリ。しかし、ペダルはなんの抵抗も無くスカスカと動くだけだった。
スワンボートのスピードは急速に落ちていき、すぐに惰性のみで水面を動くだけになった。そのままスワンボートの舳先が、櫻子のボートにちょんとぶつかった。いや、ぶつかったというよりは、触れたといった方がいいだろう。ボートはまるで微風に揺れる木の葉のように少しだけ左右に動いたが、傾くことはおろか、もちろん、転覆も沈没もしなかった。
ボートに乗った櫻子がじっとヒカリを見詰めてくる。全身ずぶ濡れの喪服姿は、その容貌と相俟って、冷艶たる美しさをたたえていた。
こんな非常時だというのに、ヒカリは一瞬櫻子の美に取り込まれてしまった。
何事も無かったかのように櫻子がオールに手を伸ばした。
「お、お、おい……待てよ……」
精神がこちらの世界に戻ってきたヒカリは慌てて櫻子を呼び止めた。むろん、櫻子はヒカリのことなど相手にもしなかった。キコキコとオールを漕いで、ボートを進ませる。
「おい、待てってば。聞いているのか?」
ヒカリもスワンボートのペダルを漕いで前へと進めようとするが、当然、スワンボートは1ミリも動かない。
「こうなったら、せめてあの女のずぶ濡れの姿だけでも生配信してやる」
服からスマホを取り出して、生配信を始めようとしたちょうどそのとき、メールの着信音がした。言うまでもなく、スマホにメールを送ってくる相手はひとりしかいない──紫人だ。
「こんなときになんだよ。どうせまたバカな誰かが死んだんだろう」
スマホを確認すると、予想通り、紫人からのメールが二通届いていた。一通は少し前に届いたものだった。櫻子を追うことに夢中になっていて、届いたのに気が付かなかったらしい。
先に届いていたメールを開いてみる。予想通り、牛頭という男が死んだことを知らせるメールであった。もっとも、ヒカリは牛頭という男に覚えがなかったが。
「途中参加したやつか? あのお面の男が牛頭だったらいいんだけどな」
でも、その可能性は低いだろうと思った。あのお面の男は一筋縄ではいかない雰囲気だった。おそらく、死んだのはお面の男以外だろう。
「二通目のメールはなんだ? やっぱり死者のお知らせか?」
だが、メールの内容はヒカリの想像していたものとは、はるかにかけ離れていた。そこに書かれていた内容は──。
『ヒカリ様。あなたはこのゲームの映像を無断で外部に配信していました。これは完全にルール違反の行為となります。よって、ここにペナルティとして、あなた限定のデストラップを仕掛けました』
「なんだって? デストラップだと!」
まだ本文の途中を読んでいるところで、思わず声を張り上げてしまった。
『デストラップの名前は『スワンソング』です。そういえば、あなたの乗っているボートは、偶然にもスワンボートでしたね。あるいは、これも死神の導きかもしれません。──さて、これからあなたにはネットの生配信を使って命乞いをしてもらいます。そうです、あなたが今まで垂れ流していた生配信を、逆にデストラップに流用させてもらいました。もしも、それであなたが助かれば、このデストラップはあなたの勝ちとなります。では、今からご自由に生配信を始めてください。そうそう、言い忘れていましたが、『スワンソング』というのは、白鳥が死の間際に唄うとされる歌のことです。あなたの『スワンソング』が、あなたの視聴者に届くように頑張ってください』
メールにはそう書かれていた。
「ふ、ふ、ふざけんなよ……。俺限定の、デストラップだと……?」
歯軋り交じりに言葉を吐き出した。このゲームについて外部に漏らしてはいけないということは、事前に聞いていた。しかし、それを破ったからといって、ペナルティとしてデストラップを仕掛けられるなんて聞いてはいなかった。
もっとも、それを今ここで言ったところで、もうどうしようもないことぐらいヒカリとて分かっている。今のヒカリに出来ることは、生配信で命乞いをすることだけである。
「でも、なんで生配信で命乞いをしなきゃいけねえんだよ? 俺はまだピンピンに生きているんだぜ。このボートが進まなくなったくらいで命乞いをするなんて、情けねえだけじゃねえかよ! けっ、なんだったら俺はゲーム終了まで、この池にいてやるよ。ここなら安全みたいだからな!」
ヒカリが不満を口にしていたとき、実はもうすでに『死神の足音』はすぐそばまで迫っていた。
憤懣やるかたない気持ちでいっぱいのヒカリは、まだそのことに気が付いていなかった――。
残り時間――4時間02分
残りデストラップ――5個
残り生存者――13名
死亡者――6名
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なんとか見失うことなく櫻子のことを追いかけ続けてたどり着いた場所は、園内にある巨大な池だった。池のほとりには『白鳥の湖』と書かれた看板が設置されている。優雅に水面を泳ぐ白鳥のイラストが描かれている。
「あの女、なんでこんなところに来たんだよ!」
ヒカリは看板のイラストを苦々しい目で睨みつけた。足で蹴り付けたい気分だった。
ここにはどうしても『近付きたくない事情』があるのだ。
「とにかく、さっさとあの女を捜し出して生配信を再開させないとな」
櫻子ほどの美貌ならば、生配信の視聴者数がグンと増えることは間違いない。出来れば、櫻子と遺体の映像を一緒に映したいところだが、そう都合良く遺体を見つけることは出来ない。
池の端から木の桟橋が伸びていた。そこに二台のボートが横付けられている。一台は手漕ぎのボート。もう一台は、白鳥の姿を模した足で漕ぐスワンボート。
「あの女、あんなところにいやがったぜ」
今にも手漕ぎボートに乗り込もうとしている櫻子の姿があった。
「ボートになんか乗ってどこに行くつもりだ? 仕方がねえよな、こっちもボートに乗って追いかけるしかねえか」
ヒカリは桟橋に向かって走って行く。ネットの生配信はボートに乗ってから再開すればいい。
ギコギコという櫓を漕ぐ音が聞こえてくる。
「ちぇっ、もう出ちまったか。早く行かねえと追いつけねえな」
ヒカリの心に焦りが生じた。今のヒカリにとっての最優先事項はゲームを進めることではなく、櫻子の映像を生配信して視聴者数を増やすことであった。ここで取り逃がすわけにはいかない。
桟橋に足を踏み入れると、一台だけ残っていたスワンボートに飛び乗った。座席の足元にはペダルが設置されている。このペダルを踏み込んで推進力を生めば、勝手に前に進んでいく。
「体力には自信がねえけど、女に負けるわけはないからな」
櫻子の乗ったボートは視認することが出来る。距離的にはまだそれほど遠くには離れていないということだ。全速力で進めば十分に追いつける距離だった。
「よし。カメラマンが行くまで、そこで待ってろよ!」
ヒカリはペダルを強く踏み込んだ。最初こそ重たかったが、勢いがつくとスムーズにペダルが漕げるようになった。ボートのスピードもそれに伴って増していく。
ヒカリが乗ったスワンボートは薄暗い池の中心へと進んでいった。
「へへへ、これでさらに入金額を稼がせてもらうとするか。出来れば、この池に水死体のひとつでも浮かんでいれば、映像的には最高なんだけどな。さっきの生首はさすがに刺激が強すぎたからな、へへへ」
暗い情熱に突き動かされるようして、ヒカリは我が道を行く。
――――――――――――――――
お面を付けた男は手にしたマップを見ながら、園内の道をゆっくりと歩いていた。焦っている様子は特にない。
「あの2人を見付けたいのは山々だが、他にもまだいろいろありそうだな、今夜は」
その声にはどこか今の状況を楽しんでいる風な感じがある。
「あるいは上手く立ち回れば、あのクズヤクザを嵌めることが出来るかもしれないな。あの男とも、そろそろ潮時だったからな。手を切るにはちょうどいいぜ。あの男に全責任を負わせて、こっちは事件解決の手柄をいただくってもっていければ一番いいんだがな」
お面の男はスーツの脇に手を伸ばした。何かを確認するようにもぞもぞと指先を動かす。
「まったく、『コレ』を持ってきておいて良かったぜ。相手は暴力団の若頭だからな。これくらいの武器は用意している可能性もあるが、腕前はこっちが上だ。撃ったところで相手が暴力団ならば、問題になることはないだろうしな。むしろ社会のゴミを掃除したといって、世間から褒めてもらえるかもしれないな」
お面で表情は一切窺えないが、それが至ってこの男の不気味さを浮かび上がらせているように感じられた。
「さて、2人の犯罪者を追うか、それともヤクザを捜すか。やれやれ、『公僕』ってやつは本当に大変だよな」
足取りは変わらずに、お面の男は園内を歩いて行く。
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「れ、れ、玲子さん……。なんで……ここに……き、き、君が、いるんだ……?」
命の危機を救ってくれた女神は慧登にそっと微笑みかけた。
「話は後回しにして、とりあえずここから離れよう」
玲子は慧登の傍に膝を付くと、ヒカリの肩に腕を回した。慧登に立ち上がるように促す。
「ああ、分かったよ……」
慧登は玲子の体に寄りかかるようにして、なんとか立ち上がることが出来た。骨が折れたと思しき肋骨の辺りに激痛があったが、辛うじて歩くことぐらいならば出来そうである。
慧登と玲子の2人は、とりあえず牛頭の遺体から少し離れた場所まで迷宮内を移動することにした。遺体のそばでは精神的に休める気分になれそうになかったのだ。
慧登は顔をしかめながらも、隣の女神の顔をそっと見つめた。これが幻でも夢でもないことは、玲子の体から伝わる温もりで理解できた。
「この辺で少し休もうか」
しばらく歩いたところで、玲子が慧登の体をゆっくりと地面に下ろしてくれた。当たり前のように慧登に膝枕をしてくれる。一瞬前まで地獄にいたのが一変、今は天国にいる気分だった。
「体の痛みの方はどう?」
「君の顔を見たら痛みなんてあっという間に消えたよ、って言いたいところだけど……実際は体中痛くて、痛いところがないくらいだよ……」
慧登は正直に伝えた。ここで格好つけてもしょうがない。却って玲子に負担をかけてしまう結果になるだけである。
「だいぶひどくやられたみたいだね」
「そんなにひどいかな?」
今の状況では、自分で自分の顔は確認出来ない。
「そうね、例えるなら──ヘビー級のボクサーにコテンパンに殴られてもここまでひどくならないかな、っていうくらいひどい顔だよ」
「ははは……それじゃ、せっかくの二枚目が、台無しだよな……」
冗談っぽく返した。今の慧登には玲子を安心させる方法はそれくらいしかない。
「その点は大丈夫よ」
「えっ?」
「だって慧登君、元から二枚目じゃないでしょ」
どうやら口撃力は玲子の方が何枚も上手みたいだ。慧登は体の痛みも一瞬忘れて、思わず笑みを浮かべてしまった。
「まったく、それを言われたら返す言葉がないよ」
「いいじゃない。とにかく、こうして命だけでも助かったんだから」
「そうだね……。本当に玲子さんが助けに来てくれたおかげで助かったよ……。あっ、そうだ。どうして、玲子さんは俺の居場所が分かったの……? この迷宮はかなり大きくて、中も入り組んでいるけど……」
慧登はこの迷宮の怖さを身をもって知っていた。だからこそ、ここぞというタイミングで助けに現われた玲子のことが、奇跡としか思えなかったのである。
「ああ、そのことね。あたしも迷宮の中に入ってからどうやって慧登君のことを捜したらいいのか迷ったんだよね。そのときに、迷宮内から男の怒声が聞こえてきたの。それで、その声の方に向かって走っていったら──」
「俺のいる場所にたどり着いたという訳か……」
「そういうこと」
「なるほどね。これも因果応報っていうのかな……」
慧登はぼそっとつぶやいた。図らずも、牛頭が慧登のスマホの着信音を頼りにして慧登の居場所を突き止めたように、玲子もまた牛頭の大声を聞いて慧登の居場所を探り当てていたのだ。
「それでこれからどうする? みんなのところに戻った方がいいのかな?」
「うん……今はもう少しだけ──」
このままでいたかった。だから、慧登は何も言わずに玲子の顔をじっと見つめ続けた。
「もう、しょうがないなあ。これは特別サービスだからね。普段のあたしなら絶対にしないサービスなんだよ」
玲子はまるで手のかかる弟を優しく見つめる姉のような顔で慧登に微笑みかけると、上から顔を覆いかぶせてきた。そして、赤く腫れてしまった慧登の唇に、そっと自分の唇を重ねてきた。
誰かが言っていた。──危機的状況で落ちた恋は長続きしないと。
脳裏にそんな言葉が思い浮かんだ。でも、だからこそ──。
俺は絶対に玲子さんと一緒にこのゲームをクリアして、この恋を成就させてみせる!
そう心の中で強く誓う慧登であった。
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全力でスワンボートを走らせた結果、池の中央付近で櫻子のボートに追いつくことが出来た。二台のボートの距離は、およそ3メートル弱。この距離ならば逃がすことは絶対にない。
「そろそろ生配信を再開するか? それとも先にあの女を捕まえる方がいいか? いや、ひとつ良い案が思い浮かんだぜ」
ヒカリは暗い視線を櫻子のボートに向けた。木で出来たボートは少し力を加えれば、簡単に転覆しそうに見える。
ボートから池に落ちて、溺れ苦しむ櫻子。
頭の中でその状況が容易に想像出来た。
「へへ、こういうのを『水も滴る良い女』って言うのかもしれねえな。あの喪服が水に浸かって体に張り付けば、体のラインがモロ分かりだからな。男性視聴者も大興奮すること間違いなしだぜ!」
ヒカリの心は決まった。いかに視聴者数を増やすか考えた場合、ここでとるべき次の行動は、溺れる櫻子の映像を生配信することだ。
「悪いな。池に逃げたお前が悪いんだぜ。恨むんなら自分の判断ミスを恨みな」
ヒカリはペダルを逆回転させた。自転車では出来ないが、スワンボートならペダルを逆に踏み込むことで後進することが出来る。櫻子とのボートと少し距離をとり、勢いを付けたスワンボートを直接ぶつける作戦だった。
「さあ、転覆ショーの始まり始まり。これが生配信出来ないのが本当に悔しいぜ」
自らの手を使って女性を溺れさせるシーンはさすがに生配信出来ない。生配信しようものなら、いっせいに抗議のコメントが書き込みされてしまうのは目に見えている。もちろん、わざと『炎上』させることで視聴者数を増やす作戦もあるにはあるが、ヒカリは『過去に炎上で痛い目にあっている』ので、今回は櫻子がボートから落ちて、池で溺れているところから生配信することにした。
「距離的はこのくらいでいいな。それじゃ、一発目行くか。これでさっさと転覆してくれたらいいんだけどな」
ヒカリは前方のボートに狙いを定めた。櫻子はこちらの様子を伺っているが、かといって逃げる素振りはみせなかった。ヒカリの出方を見極めているのだろう。
「第二のタイタニック号になりやがれっ!」
ペダルを強く踏み込んで、櫻子の乗るボートに一直線に向かっていく。スピードは上々。加えて、ボートの形はスワンボートの方が絶対的に有利である。スワンボートは全体がカバーで覆われているので、間違ってもヒカリが湖上に投げ出されることはない。二台が衝突したら、先に転覆するのは櫻子のボートであろう。
スワンボートの突進に気付いたのか、櫻子がオールを手にして、急いで水面を漕ぎ始める。しかし、そのスピードは悲しいくらいに遅かった。男と女の体力差が出ている。
「気付くのが遅いんだよっ!」
スワンボートが櫻子のボートの横に激突した。櫻子はオールから手を離して、大きく傾いだボートから投げ出されないように、ボートの縁を必死で握り締めて耐える。
「クソっ! 一発じゃ決められなかったか。次こそ決めてやるから覚悟しなっ!」
ヒカリはスワンボートをまた後進させた。今度はもう少し距離を離して、助走を長くとることにした。
左右に大きく揺れていたボートがようやく正常に戻ると、櫻子が第二撃から逃れようとボートを走らせ始めた。
「スピードなら負けねえぜ!」
ヒカリはスワンボートを前進させた。先ほどよりもスピードはのっている。これなら櫻子のボートを転覆させれそうだ。
スワンボートの舳先が、櫻子のボートにめり込むように衝突した。先ほどの比ではないほど、櫻子の乗るボートが大きく傾いた。水面に対して直角近くまで傾く。ボートに乗っていた櫻子の体が一瞬浮いたように見えた。そして、次の瞬間──。
バシャンッ!
水面に何かを打ち付ける音が上がり、同時に水飛沫が飛び散っていった。
水面に浮かぶボートの上に、人影は見当たらない。
「よし、やったか?」
ヒカリは目を凝らして池を注視する。
ボートの縁に白い手が伸びた。さらにもう一本の手がボートの縁を掴む。そのままジャンプするように勢い良く体を持ち上げてボートに乗り込んだのは、全身びしょ濡れになった櫻子だった。
衝突の衝撃でボートから水中に振り落とされたが、ボートに再乗船したのだ。
「はああ? くそがっ! なんで溺れねえんだよっ! 溺れた方が映像的に興奮出来るんだよっ!」
ヒカリは悔し紛れにスワンボートのハンドルを両手で叩きつけた。いっそうのこと、櫻子のボートに自ら乗り込んで、力尽くで櫻子を池に落とすことも考えたが、それは良案ではないと即座に却下した。ヒカリにとって『池は鬼門』なのだ。下手に動くのはリスクが高すぎる。
「ちぇっ。やっぱりボート自体を転覆させるしかねえのか? 仕方ねえな。もう一度ぶつけるしかねえか」
幸い、櫻子は池に落ちたショックのせいか、まだオールを手にとってボートを進めようという態勢に入っていない。この隙にスワンボートをぶつければ、今度こそ櫻子のボートを転覆、あるいは上手くいけば沈没させることが出来そうだった。
ヒカリはスワンボートを後進させる。
「三度目の正直って言葉もあるからな。これで決めるぜっ!」
ペダルを強く踏み込んだ。スワンボートが前進する。さらに強くペダルを踏み込む。加速されたスワンボートが池を突き進んでいく。
「よしっ! これならいけるぜっ!」
さらに強くペダルを踏み込もうとしたとき、なんの前触れもなく──。
グギュン!
スワンボートの下から異音がした。途端に、ペダルを踏み込む際の抵抗が無くなった。
それが何を意味をしているのか、ヒカリは瞬時に察した。高校時代に自転車通学をしていたヒカリには、馴染みの感覚だったのである。
ペダルのチェーンが外れたのだ!
「クソがっ! あと一息だっていうのによっ!」
意味がないと分かっていながらも、ペダルを踏み込み続けるヒカリ。しかし、ペダルはなんの抵抗も無くスカスカと動くだけだった。
スワンボートのスピードは急速に落ちていき、すぐに惰性のみで水面を動くだけになった。そのままスワンボートの舳先が、櫻子のボートにちょんとぶつかった。いや、ぶつかったというよりは、触れたといった方がいいだろう。ボートはまるで微風に揺れる木の葉のように少しだけ左右に動いたが、傾くことはおろか、もちろん、転覆も沈没もしなかった。
ボートに乗った櫻子がじっとヒカリを見詰めてくる。全身ずぶ濡れの喪服姿は、その容貌と相俟って、冷艶たる美しさをたたえていた。
こんな非常時だというのに、ヒカリは一瞬櫻子の美に取り込まれてしまった。
何事も無かったかのように櫻子がオールに手を伸ばした。
「お、お、おい……待てよ……」
精神がこちらの世界に戻ってきたヒカリは慌てて櫻子を呼び止めた。むろん、櫻子はヒカリのことなど相手にもしなかった。キコキコとオールを漕いで、ボートを進ませる。
「おい、待てってば。聞いているのか?」
ヒカリもスワンボートのペダルを漕いで前へと進めようとするが、当然、スワンボートは1ミリも動かない。
「こうなったら、せめてあの女のずぶ濡れの姿だけでも生配信してやる」
服からスマホを取り出して、生配信を始めようとしたちょうどそのとき、メールの着信音がした。言うまでもなく、スマホにメールを送ってくる相手はひとりしかいない──紫人だ。
「こんなときになんだよ。どうせまたバカな誰かが死んだんだろう」
スマホを確認すると、予想通り、紫人からのメールが二通届いていた。一通は少し前に届いたものだった。櫻子を追うことに夢中になっていて、届いたのに気が付かなかったらしい。
先に届いていたメールを開いてみる。予想通り、牛頭という男が死んだことを知らせるメールであった。もっとも、ヒカリは牛頭という男に覚えがなかったが。
「途中参加したやつか? あのお面の男が牛頭だったらいいんだけどな」
でも、その可能性は低いだろうと思った。あのお面の男は一筋縄ではいかない雰囲気だった。おそらく、死んだのはお面の男以外だろう。
「二通目のメールはなんだ? やっぱり死者のお知らせか?」
だが、メールの内容はヒカリの想像していたものとは、はるかにかけ離れていた。そこに書かれていた内容は──。
『ヒカリ様。あなたはこのゲームの映像を無断で外部に配信していました。これは完全にルール違反の行為となります。よって、ここにペナルティとして、あなた限定のデストラップを仕掛けました』
「なんだって? デストラップだと!」
まだ本文の途中を読んでいるところで、思わず声を張り上げてしまった。
『デストラップの名前は『スワンソング』です。そういえば、あなたの乗っているボートは、偶然にもスワンボートでしたね。あるいは、これも死神の導きかもしれません。──さて、これからあなたにはネットの生配信を使って命乞いをしてもらいます。そうです、あなたが今まで垂れ流していた生配信を、逆にデストラップに流用させてもらいました。もしも、それであなたが助かれば、このデストラップはあなたの勝ちとなります。では、今からご自由に生配信を始めてください。そうそう、言い忘れていましたが、『スワンソング』というのは、白鳥が死の間際に唄うとされる歌のことです。あなたの『スワンソング』が、あなたの視聴者に届くように頑張ってください』
メールにはそう書かれていた。
「ふ、ふ、ふざけんなよ……。俺限定の、デストラップだと……?」
歯軋り交じりに言葉を吐き出した。このゲームについて外部に漏らしてはいけないということは、事前に聞いていた。しかし、それを破ったからといって、ペナルティとしてデストラップを仕掛けられるなんて聞いてはいなかった。
もっとも、それを今ここで言ったところで、もうどうしようもないことぐらいヒカリとて分かっている。今のヒカリに出来ることは、生配信で命乞いをすることだけである。
「でも、なんで生配信で命乞いをしなきゃいけねえんだよ? 俺はまだピンピンに生きているんだぜ。このボートが進まなくなったくらいで命乞いをするなんて、情けねえだけじゃねえかよ! けっ、なんだったら俺はゲーム終了まで、この池にいてやるよ。ここなら安全みたいだからな!」
ヒカリが不満を口にしていたとき、実はもうすでに『死神の足音』はすぐそばまで迫っていた。
憤懣やるかたない気持ちでいっぱいのヒカリは、まだそのことに気が付いていなかった――。
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